友人とのトラブルを避けるための基本ポイント

「友だちとの些細なやり取りから、いつの間にか大きなトラブルになってしまう」「なぜ相手が怒っているのか理解できず、関係を修復できない」「人間関係の摩擦が怖くて、新しい友だちを作るのが億劫になってしまう」
友人との関係は、私たちの生活に喜びと学びをもたらしますが、誤解や認知のズレから、予期せぬトラブルに発展することも少なくありません。特に、発達障害(ASD、ADHD)や精神的な課題を持つ方は、非言語的なサインの読み取り、衝動的な行動の抑制、感情のコントロールといった、人間関係の維持に必要な複合的なスキルに困難を抱えることが多く、意図せずトラブルを引き起こしてしまうことがあります。頻繁なトラブルは、自己肯定感を著しく低下させ、社会的な孤立を深める原因となります。
この記事では、友人間でのトラブルに繋がりやすい障害特性に起因する具体的な行動パターンを分析します。そして、「トラブルの芽」を事前に摘み取り、安定した関係を維持するための実践的な5つの基本ポイントを詳細に解説します。**「予測可能で一貫性のある自分」**を演出するための具体的な戦略(ルール化、待機、確認)を習得し、安心して友だち付き合いを楽しむためのロードマップを見つけましょう。
1.友人間でトラブルに繋がりやすい3つの特性パターン
友だちとのトラブルは、あなたの「意図」と「行動」が一致しないこと、または相手の「期待」とあなたの「特性」がミスマッチを起こすことで発生します。トラブルを引き起こしやすい3つのパターンを理解しましょう。
パターン1:コミュニケーションの「ズレ」と誤解(ASD特性)
相手の意図や感情を推測する能力(心の理論)の困難さから、意図せぬ誤解を生み、相手を不快にさせます。
- 発言の「字面通り」の解釈: 友だちの冗談や皮肉、比喩を真に受け、真剣に反論したり、深刻に受け止めすぎたりして、場の雰囲気を壊す。
- 非言語サインの見落とし: 友だちが「もう話をやめたい」というサイン(例:腕を組む、時計を見る、返事が短くなる)を読み取れず、一方的に話し続けてしまう。
- ルールへのこだわり: 遊びや約束のルールに過度に固執し、状況に応じた柔軟な変更に対応できず、友だちとの間に摩擦を生む。
- 感情表現の不一致: 喜びや感謝を適切な表情や言葉で表現できないため、「この人は本当に喜んでいるのだろうか」と友だちを不安にさせ、関係性の深まりを妨げる。
パターン2:衝動性と感情の調整困難(ADHD特性)
感情や行動を抑制する機能の弱さから、衝動的な言動によって相手の気持ちを傷つけたり、信頼を失ったりします。
- 会話の遮り: 友だちが話している途中で「言いたい!」という感情を抑えられず、話を遮って自分の話をし始める。
- 怒りの爆発: 些細なことでイライラしたり、自分の思い通りにならない時に感情的に怒鳴ったり、物を乱暴に扱ったりして、友だちを怖がらせる。
- 約束の不履行: 不注意から、友だちとの待ち合わせ時間や金銭に関する約束を忘れたり、貸し借りしたものを失くしたりして、相手の信頼を損なう。
- 一方的な行動: 遊びや活動を、友だちに相談なく勝手に終わらせたり、変えたりしてしまい、独りよがりだと受け取られる。
パターン3:境界線の設定と維持の困難(全般)
適切な「距離感」がわからないため、過度に親密になったり、逆に冷淡すぎたりして、関係性のバランスを崩します。
- 情報開示の失敗: 親しくない相手に、自分の極めて個人的な情報(病歴、家族の悩み)を急に開示し、相手に重荷を負わせる。
- 過度な依存: 友だちを「心の支え」として、頻繁な連絡や長時間の付き合いを求め、相手のプライベートな時間や空間を侵害する。
- 自己主張の欠如: トラブルを避けるために、自分の意見や感情をすべて飲み込みすぎ、結果的にストレスを溜め込み、ある日突然爆発して関係を壊してしまう。
2.基本ポイント1:曖昧なルールを「言語化」と「構造化」する
友だち付き合いは曖昧なルールが多いですが、特性を持つ方は、曖昧さを具体的な行動のルールに変換することで、トラブルを回避しやすくなります。
ルール1:会話における「待機と確認」の構造化
衝動的な発言や、一方的な会話を防ぐための具体的なルールを設けます。
- 「会話の交通整理」: 自分が話す前に、心の中で三秒間数える(待機)。そして、「話しても大丈夫?」と相手に確認してから話し始める。
- 「話題のタイマー」: 自分の好きな話題(こだわり)を話す際は、「〇〇の話題は、5分だけ話していい」と事前に自分の中で時間を区切り、時間が来たら友だちの関心のある話題に戻す。
- 「共感の定型文」: 友だちが愚痴や悩みを話した際、すぐにアドバイスをせず、「それは大変だったね」「すごく辛いよね」といった**共感の言葉(定型文)**をまず先に述べることを習慣化する。
ルール2:「約束」に関する確認の徹底
不注意による約束の不履行は、信頼関係を著しく損ないます。約束を**「見える化」し、トラブルを回避しましょう。
- 「5W1H」確認: 待ち合わせやイベントの約束をした後、必ず「いつ(When)、どこで(Where)、誰と(Who)、何をするか(What)、なぜ(Why)、どうやって(How)」をメッセージで復唱し、確認する。
- 「リマインダー」の活用: 約束や期限を忘れないよう、スマートフォンのリマインダー機能やカレンダーに、具体的な行動と共に通知を設定する。
- 金銭のルール: 友だちとの金銭の貸し借りは一切しない、または、少額であっても借りた日時と返却予定日を必ずメモ**に残すことを徹底する。
3.基本ポイント2:感情と衝動の「タイムアウト戦略」
感情の爆発や衝動的な行動は、関係を一瞬で破壊します。感情と行動の間に意図的な距離を作り、冷静さを取り戻すための戦略を準備しましょう。
戦略1:衝動を抑える「待機行動(アンカリング)」
怒りや苛立ちを感じたとき、すぐに反応せず、感情を鎮めるための代替行動を取ります。
- 物理的な行動: 強い感情を感じたら、「深呼吸を3回する」「手に持っているものをギュッと握る」「水を飲む」など、感情とは無関係な行動を意図的に行う。
- 場所の移動: その場を離れることが許される状況であれば、「ごめん、ちょっとトイレに行ってくる」などと言って、物理的にその場を離れ、感情をリセットする時間を確保する。
- 感情のラベリング: 怒りや悲しみを感じたとき、「これはイライラだ」「これは不安だ」と心の中で**感情に名前を付ける(ラベリング)**ことで、感情を客観視し、コントロールしやすくする。
戦略2:トラブル後の「迅速なリカバリー」
衝動的に友だちを傷つけてしまった、または約束を破ってしまった場合、迅速かつ建設的な対応を行うことで、関係の破綻を防ぎます。
- 即座の謝罪: トラブルが起こったら、時間を置かず、「感情的になってしまって本当にごめんなさい」と、感情的になったこと自体について謝罪する。
- 特性の説明: 謝罪後、「〇〇という特性があり、感情の調整が苦手で、あなたの話を遮ってしまった」と、自分の特性と行動の関連を簡潔に説明し、理解を求める。
- 具体的な改善策の提示: 「次は、怒りそうになったらその場を離れるようにする」など、具体的な再発防止策を提示し、誠意を示す。
4.基本ポイント3:健全な「境界線」の設定と維持
友だちとの関係を長期的に維持するためには、お互いのプライバシーと自由を尊重する境界線(バウンダリー)が必要です。この線引きを明確にしましょう。
ルール1:情報開示の「段階的ルール」
親しくない相手にプライベートな情報を開示しすぎるのは、距離感を間違える大きな原因です。情報開示のルールを設定します。
- 自己開示の制限: 初対面や知人には、趣味、仕事(職種)、天気など、一般的で当たり障りのない話題に限定する。
- 「個人的すぎる」話題の定義: 自分の病歴、家族の収入、過去の恋愛遍歴、金銭の状況など、相手が困惑する可能性のある話題は、カテゴリC(親友)以外には話さないことを徹底する。
- 相手の開示を待つ: 相手が自分のプライベートな話題を開示してくれるまで、自分のことは開示しない、という受動的な姿勢を意識的に取る。
ルール2:「断る力(アサーション)」の強化
トラブルを避けるために、すべて「イエス」と言い続けていると、関係は歪み、あなたのストレスで破綻します。**自分を守る「断る力」**を磨きましょう。
- I(アイ)メッセージで断る: 「〇〇は嫌だ」という感情的な表現ではなく、「私(I)は、今、疲れていて、あなたの誘いに応じることができない」という、自分の状態を主語にした表現で断る。
- 断りの定型文の用意: 誘いや要求を断る際、「ごめん、今回は難しい。でも、誘ってくれてありがとう」という、丁寧な断りの言葉をいくつか用意しておく。
- 断られても受け入れる: 友だちが自分からの誘いを断ったとき、過度に落ち込んだり、追求したりしない。友だちにも、あなたと同じように「断る権利」があることを尊重する。
5.基本ポイント4:外部支援による「客観的なフィードバック」の活用
自分の行動が友だちにどう映っているかを知ることは、特性を持つ方にとって非常に困難です。専門家による客観的なフィードバックを積極的に活用しましょう。
活用1:SST(ソーシャルスキルトレーニング)での実践練習
療育機関や就労移行支援事業所などで行われるSSTは、安全な環境で実践的な対人スキルを練習する場です。
- ロールプレイング: 過去にトラブルになった場面を想定し、支援員を友だち役にしてロールプレイングを行う。会話のスピード、アイコンタクトの量、物理的な距離などを支援員から客観的に評価してもらう。
- ビデオフィードバック: 会話の様子を録画し、自分の表情や声のトーンが、意図したものと一致しているかを確認し、自己修正を促す。
活用2:支援者・家族による「通訳」と「緩衝材」
トラブルが起こったとき、あるいはトラブルの兆候が見えたときに、支援者や家族に介入してもらうためのルールを作ります。
- トラブルの通訳: 友だちとの間で誤解や摩擦が生じた際、支援者や家族が間に入り、特性を持つ方の「意図」と、友だちの「受け取り方」を翻訳し合う。
- 「連絡の緩衝材」: 衝動的に友だちに怒りのメッセージを送りそうになったとき、送る前に必ず支援者や家族に内容を見てもらうというルールを設ける(連絡の苦手さへの対応でも触れたポイントです)。
活用3:心理カウンセリングの活用
頻繁なトラブルの背景には、自己肯定感の低さや強い対人不安が隠れていることがあります。カウンセラーと共に、これらの心理的な課題に取り組みます。
- 認知行動療法(CBT): 「トラブルが起こったら、もう誰も私を好きになってくれない」といった**極端な思考(認知の歪み)**を修正し、「トラブルは学びの機会」と捉え直すトレーニングを行う。
6.基本ポイント5:トラブル後の「回復力(レジリエンス)」を育む
どれだけ準備しても、友だちとのトラブルを完全にゼロにすることは不可能です。トラブル後の**心の回復力(レジリエンス)**を育むことが、長期的な安定につながります。
レジリエンス1:感情の切り替えと「一人時間」の確保
トラブルが起こったら、ネガティブな感情に支配され続けないよう、意識的に心を切り替えます。
- 冷却期間の徹底: トラブル後は、すぐに解決しようとせず、特定の時間(例:半日、一晩)は友だちとの接触を避け、**自分の好きなこと(趣味、運動、読書)**に集中し、感情をクールダウンさせる。
- 自己肯定感の回復: トラブルの原因となった失敗だけでなく、「自分にはこういう良いところがある」という長所や、過去の成功体験を書き出し、自分を慰める。
レジリエンス2:客観的な「事後分析」の習慣化
トラブルを「自分はダメだ」という結論で終わらせず、**次の関係に活かす「データ」**として捉えます。
- 分析の質問: 「自分のどの行動が引き金になったか?」「相手はどんな気持ちだったと推測されるか?」「次に同じことが起こったら、どう行動を変えるか?」という3つの質問を、支援者と共に考える。
- サポートブックへの追加: トラブルの具体例と、そこから得られた教訓を、自分の「人間関係マニュアル」としてサポートブックに追記し、今後の行動ルールを更新する。
レジリエンス3:関係性の多様化と分散
特定の一人との関係がすべてだと考えず、心の支えを多様化・分散させておくことで、一つの関係が壊れても、深刻なダメージを避けられます。
- 複数の居場所: 友だち関係だけでなく、趣味のコミュニティ、家族、支援者、仕事仲間など、複数の「安心できる居場所」を持つ。
- 「完璧な関係はない」という受容: どんなに親しい友だちでも、摩擦や誤解は生じるものであり、完璧な人間関係など存在しない、という事実を受け入れる。
トラブルを経験するたびに、あなたはより賢く、より強くなれます。失敗を恐れず、学びの機会として捉え直しましょう。
まとめ
友だちとのトラブルを避けるためには、特性によるコミュニケーションのズレや衝動的な行動を理解し、**「予測可能で一貫性のある自分」**を演出するための具体的なルールを構築することが不可欠です。
- 曖昧な人間関係を「待機と確認の構造化」「約束の5W1H徹底」によって言語化・ルール化しましょう。
- 感情的な爆発を防ぐために、深呼吸や場所の移動といった「タイムアウト戦略」を準備し、衝動的な行動と感情の間に距離を作りましょう。
- 健全な関係を維持するために、個人的すぎる話題の制限と、I(アイ)メッセージによる非攻撃的な「断る力(アサーション)」を強化しましょう。
- SSTでのロールプレイングや支援者による客観的なフィードバックを活用し、トラブルを単なる失敗ではなく、次の関係に活かすための学びの機会として捉え直しましょう。
トラブルを恐れず、特性に合った戦略を持つことが、あなたの人間関係を豊かにします。

谷口 理恵
(たにぐち りえ)45歳📜 保有資格:
介護福祉士、ケアマネージャー、サービス管理責任者
介護福祉士として15年間現場で働き、現在はグループホームの管理者。「地域で自分らしく暮らす」を支えるために、住まい・生活・地域資源に関する情報発信を担当しています。実際の支援現場で感じた「これ知りたかった!」という情報をお届けします。
介護福祉士として障害者施設で10年、その後ケアマネージャーの資格を取得し、相談支援専門員として5年勤務。現在はグループホーム(定員10名)の管理者として、利用者の方々の日々の生活を支えています。この仕事を選んだきっかけは、大学時代のボランティアで知的障害のある方と出会ったこと。「普通」の定義は人それぞれで、大切なのは本人が望む生活を実現することだと気づかされました。特に力を入れているのは、地域との繋がりづくり。近所のスーパーや美容院、カフェなど、日常的に利用できる場所を増やすことで、「施設の中だけ」ではない豊かな生活を支援しています。記事では、グループホームでの実際の生活の様子や、地域の障害福祉サービス事業所の選び方など、現場の生の声をお伝えしていきます。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学時代のボランティアで知的障害のある方と出会い、「普通」の定義は人それぞれだと気づいたことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
近所のスーパーや美容院など、日常的に利用できる場所を増やすことで、利用者の生活が豊かになったこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
現場の生の声を大切に、「これ知りたかった!」という情報を届けることを心がけています。
🎨 趣味・特技
料理、ガーデニング
🔍 最近気になっているテーマ
一人暮らし支援の新しい形、地域住民との共生





