学校で友だちができない…悩みの背景と支援方法

「うちの子は、いつも学校で一人で過ごしているようだ」「クラスの輪に入れず、休み時間がつらいと言っている」「どうすれば、苦手な集団の中で居場所を見つけられるのだろう」
学校生活における「友だちづくり」は、社会性を育む上で非常に重要な経験です。しかし、発達障害(ASD、ADHD)や精神的な課題を持つお子さんにとって、学校という集団の中での複雑な人間関係や非言語的なルールは、大きな壁となり得ます。「友だちができない」という悩みは、単に「寂しい」という感情だけでなく、自己肯定感の低下、不登校、さらには二次障害の発症につながる深刻な問題です。
この記事では、学校で友だちができない背景にある障害特性と認知特性のズレを具体的に解説します。そして、「友だちをつくる」という目標そのものを見直すことから始め、お子さん自身が安心感を持って学校生活を送るための具体的な支援方法を、ご家庭、学校、外部支援の3つの側面から詳しく紹介します。お子さんが自分らしく、心地よい学校生活を送るためのヒントを見つけてください。
1.友だちができない根本原因:特性から見るコミュニケーションの壁
友だちができないのは、「性格が悪い」「努力が足りない」からではありません。多くの場合、お子さんの持つ特性と、学校生活で求められるコミュニケーション能力との間に、構造的なギャップが存在します。このギャップを理解することが、支援の出発点です。
原因1:非言語コミュニケーションの困難さ(ASD特性)
ASD(自閉スペクトラム症)の特性を持つお子さんは、言葉以外の情報(非言語コミュニケーション)を読み取ることが苦手です。友だち同士のコミュニケーションは、特に非言語的な要素に大きく依存します。
- 「空気」の読み取り困難: 多数の友だちがいる場で、誰が話の中心か、いつ発言すべきか、相手が退屈していないかといった場の雰囲気を察知することが難しい。
- 表情と感情の不一致: 相手の冗談を真に受けてしまったり、友だちの「ちょっとイラッとした」というサインを読み取れずに不快感を与えてしまう。
- 会話のキャッチボールの困難: 自分の好きな話題を一方的に話し続けてしまったり、相手の関心に気づかずに会話が続かない。
この結果、周囲からは「変わっている」「話が通じない」と見なされ、自然と距離を置かれてしまいがちです。
原因2:衝動性とルールの逸脱(ADHD特性)
ADHD(注意欠如・多動症)の特性を持つお子さんは、衝動性や不注意によって、集団行動のルールや友だちとの約束をうっかり破ってしまい、トラブルを繰り返すことがあります。
- 衝動的な行動: 遊びの最中にルールを破る、列に割り込む、感情的になって手が出てしまうなど、その場の衝動に駆られて行動し、友だちからの信頼を失う。
- 約束の不履行: 友だちとの遊びの約束を忘れる、貸したものを失くすなど、不注意によるミスが「無責任だ」と誤解される。
- 感覚過敏によるイライラ: 騒がしい教室や体育館の環境に耐えられずイライラし、周囲への攻撃的な態度として現れてしまう。
原因3:「完璧主義」や「不安」による回避行動(精神的な課題)
過去の失敗経験や、不安傾向の強いお子さんは、「また失敗したらどうしよう」「完璧に振る舞わなければ」というプレッシャーから、対人交流そのものを回避してしまうことがあります。
- 対人恐怖: 友だちとの関わりで傷つくことを恐れ、休み時間や放課後に教室から出ずに一人で本を読んだり、下を向いて過ごしたりする。
- 完璧主義: 友だちに声をかけるタイミングや、遊び方を間違えたくないと考えすぎ、結果として行動を起こせない。
この回避行動は、周囲からは「関わりたくないのだろう」と受け取られ、孤立を深めてしまいます。
2.支援の基盤:「友だちの定義」を見直す
支援を始める前に、ご家庭と支援者が共有すべき最も重要な視点は、「友だちの定義」を見直すことです。すべてのお子さんが、外交的で多くの友だちを持つ必要はありません。
見直し1:「量」ではなく「質」を重視する
支援の目標は、「クラス全員と仲良くする」「人気者になる」ことではありません。目標を「安心できる、信頼できる関係を1人でも築く」ことに切り替えましょう。
- 「友だち」の再定義: 一緒に特定の活動(例:ボードゲーム、読書)ができる相手、特性を理解してくれそうな相手、自分を否定しない相手を1人見つけることを最優先の目標とする。
- 大人との関係性の重視: 担任の先生、スクールカウンセラー、支援級の先生など、安心できる大人と信頼関係を築くことが、まずは最重要の「心の安全基地」となります。
特定の相手との深いつながりや、安心できる居場所があれば、集団の中にいなくても自己肯定感を保つことができます。
見直し2:「相互理解」を支援の軸とする
支援は、お子さん一方に「友だちづくりのスキル」を押し付けるものであってはいけません。友だちができないのは、特性による認知の違いが原因であるため、**「相互理解」**を軸とした支援が必要です。
- 自己理解の促進: お子さん自身が「自分はこういう場面が苦手だ」「こういう理由でイライラしやすい」と、自分の特性と言動の関係を理解できるように支援する。
- 周囲への理解促進: 担任の先生を通して、クラスメイトに「多様な特性があること」「みんなが同じように感じているわけではないこと」を伝える啓発的な教育を行う(例:合理的配慮の観点から)。
見直し3:「活動」を介した交流を促す
複雑な会話やジェスチャーを介した交流が苦手なら、**「共通の活動」**を通じて友だちと関わる機会を作りましょう。
- 共通の趣味: お子さんの興味・関心(例:鉄道、ゲーム、特定の知識)が合う友だちを先生に探してもらう。
- ルールのある遊び: 曖昧な自由遊びよりも、ルールが明確なボードゲーム、カードゲーム、特定のスポーツなどを介した交流を促す。
活動中は、会話以外のルール(例:順番を守る、勝ち負けを冷静に受け止める)を意識的に教えることが重要です。
3.家庭でできる支援:安心感とコミュニケーションの構造化
家庭は、お子さんにとっての究極の安全基地です。学校で受けたストレスをリセットし、次のステップに進むためのエネルギーを充電できるよう、ご家庭で以下の支援を行いましょう。
支援1:徹底的な「共感」と「安心の場」の提供
学校で友だちができないことで、お子さん自身が最も傷ついています。まずは、失敗や寂しさを否定せず、ありのままを受け止める共感的な姿勢を示しましょう。
- 感情の言語化: 「友だちと遊べなくて、今日は寂しかったんだね」「輪に入れなくて、すごくつらかったよね」と、お子さんの感情を親が言語化して伝える。
- 学校情報の調整: 親が学校での状況をすべて把握しようとせず、お子さんが話したいことだけを聞き、話したくないことは無理に聞き出さない。
- 感覚的なリセット: お子さんの感覚特性に合わせた環境(例:静かで暗い部屋、好きな音楽を聴く時間)を提供し、学校での刺激から解放される時間を確保する。
この安心感が、次の対人関係に挑戦するためのエネルギーとなります。
支援2:日常的な「SST(ソーシャルスキルトレーニング)」の実施
家庭内の日常的な会話や遊びの中で、具体的な対人スキルを練習(SST)として組み込みましょう。これは、曖昧な「空気」を「具体的なルール」に置き換える作業です。
- ロールプレイング: 「友だちに遊びに誘われた時の断り方」「相手が不機嫌な時の適切な声のかけ方」など、具体的な場面を設定して親が相手役になり練習する。
- 会話のテンプレート化: 「人の話を聞く時は、まず『うん』や『そうなんだ』と言う」といった、会話を円滑にするための定型文を一緒に作成する。
- 感情表現の学習: テレビや絵本を使って、「この登場人物はなぜ怒っているのだろう?」「この時の表情はどんな感情を表しているのだろう?」と、感情と表情の関係を言語で確認する。
支援3:学校への「情報提供」を担任と連携する
学校の先生は、お子さんの特性をすべて把握しているわけではありません。家庭で気づいたこと、困っていることを具体的な情報として定期的に伝えましょう。
- 具体的なトリガー: 「うちの子は、給食の時間に大きな声で話されると、ストレスでイライラしやすくなります」など、トラブルの引き金を具体的に伝える。
- 成功体験の共有: 「家では、ボードゲームをしている時が一番落ち着いています。クラスで同様の活動を試していただけると嬉しいです」など、家庭での成功事例を共有し、学校での活動のヒントとする。
4.学校と外部支援の活用:合理的配慮と安心の居場所
学校生活の中での安心感を高め、対人関係の課題を構造的に解決するためには、学校の環境調整と外部支援の活用が不可欠です。
支援1:担任・特別支援教育コーディネーターとの連携
友だちができない問題を、**「学級経営」の問題として捉え、学校全体で対応してもらうための連携を強化します。
- 特別支援級・通級の活用: 通常級での対人交流が困難な場合、特別支援教室(通級指導教室)で個別または小集団でSSTを受けたり、情緒を安定させるための時間を確保したりする。
- 学校内の安心スペースの確保: 休み時間に一人で静かに過ごせる「心のシェルター」(例:図書室の特定の席、保健室、特別支援室)を公式に設定してもらう。
- ピアサポートの導入: 担任に、特性を理解してくれる優しいクラスメイト(ピアサポーター)を選定してもらい、休憩時間や移動時などに緩やかに見守ってもらう。
これは、お子さんが集団の中で「見捨てられていない」**と感じるために非常に重要です。
支援2:SST・集団活動の専門的活用
より専門的なSSTや集団活動の訓練は、療育機関や児童発達支援・放課後等デイサービスといった外部支援で行うのが効果的です。
- 集団活動の場: 障害特性を持つ子どもたちが集まるデイサービスなどで、ルールの明確な集団遊びやチーム活動に参加する。失敗しても許容される環境で、コミュニケーションスキルを練習できる。
- 専門家によるアセスメント: 専門家が、お子さんの対人スキルの強みと弱みを客観的にアセスメントし、学校や家庭での具体的な支援目標を設定してくれる。
- 親へのペアレントトレーニング: 親が、お子さんの特性を理解し、家で効果的な関わり方(例:褒め方、指示の出し方)を学ぶことで、家庭内での安心感を高める。
支援3:進路と「卒業後」を見据えた支援
友だちができないという問題は、将来の就労や社会生活に直結します。早い段階から、将来を見据えた進路選択のサポートも検討しましょう。
- 就労の視点: お子さんの特性が活かせる職業(例:対人交流が少ない職種、専門知識を活かせる職種)を早期から検討し、「友だちの多さ」=「将来の成功」ではないというメッセージを伝える。
- 進路相談の活用: 中学・高校への進学時に、進路指導主事や特別支援教育コーディネーターと連携し、支援体制の整った学校や、少人数の環境を選べるように検討する。
「友だちづくり」という短期的な課題解決だけでなく、「安定した社会生活」という長期的な目標を見据えることで、親も子も安心できます。
5.親と支援者が避けるべき3つの行動
良かれと思って行う行動が、かえってお子さんを追い詰めてしまうことがあります。以下の3つの行動は避けましょう。
行動1:子どもの気持ちを無視して「友だちを作りなさい」と強要する
親の「心配」から来る行動ですが、「友だちがいないのはいけないことだ」というメッセージは、お子さんの自己否定感を深めます。子どもは「努力が足りない」と責められていると感じ、親に悩みを話さなくなります。
- 避けるべき言葉: 「どうして〇〇ちゃんみたいに友だちと遊べないの?」「頑張って話しかけてみなさい」
- 代わりの言葉: 「一人で過ごすのも大切な時間だよ。もし寂しくなったら、先生に相談してみようか」「あなたが無理して友だちを作る必要はないよ」
行動2:学校や相手の親に「一方的な改善」を要求する
学校や相手の親に「うちの子に配慮してほしい」「あの子の行動を直してほしい」と一方的に要求すると、かえって関係が悪化し、お子さんが学校で浮く原因になりかねません。
- NG行動: 「うちの子は障害だから、遊ぶときは必ずルールを守らせてほしい」
- OK行動: 「うちの子の特性から、こういう場面が苦手なようです。お互いに気持ちよく過ごすために、何か学校側でサポートできることはありますか?」と、協力的な姿勢で相談する。
行動3:友だちができないことを「障害のせいだ」と決めつけてしまう
友だちができない原因をすべて障害特性のせいにしてしまうと、自己理解の機会を奪うことになります。トラブルの原因は、特性だけでなく、その場の状況、相手の性格、単なるスキル不足など、複合的です。
- すべきこと: 「特性があるから仕方ない」で終わらせず、「特性があるから、どうすればうまくいくか」という建設的な対策に焦点を当てる。
まとめ
学校で友だちができないという悩みは、単なるスキルの問題ではなく、お子さんの持つ特性と集団のルールのミスマッチから生じる構造的な課題です。この課題を乗り越えるためには、まず**「友だちの定義」を見直し、「安心感」を最優先**にすることが大切です。
- ご家庭では、徹底的な共感と、日常的なSST(ソーシャルスキルトレーニング)で安心の場と具体的なスキルを提供しましょう。
- 学校では、特別支援級や通級を活用し、一人で静かに過ごせる「心のシェルター」を確保してもらいましょう。
- 外部支援機関(療育、デイサービス)での専門的な集団訓練や、親へのペアレントトレーニングを積極的に活用しましょう。
最も重要なのは、お子さんが「友だちがいなくても、自分は大切な存在だ」と感じられることです。

酒井 勝利
(さかい かつとし)38歳📜 保有資格:
作業療法士、福祉住環境コーディネーター
作業療法士として病院・施設で12年勤務。「できないこと」を「できる」に変える福祉用具や環境調整の専門家です。車椅子、杖、リフトなどの選び方から、住宅改修まで、実践的な情報をお届けします。
リハビリテーション専門学校を卒業後、総合病院で5年、障害者支援施設で7年、作業療法士として勤務してきました。特に力を入れているのは、福祉用具を活用した「できることを増やす」支援。例えば、片麻痺がある方が自助具を使って料理ができるようになったり、車椅子の選び方一つで外出の頻度が劇的に変わったりします。印象的だったのは、重度の身体障害がある方が、適切な電動車椅子と環境調整により、念願だった一人での買い物を実現したこと。「自分でできる」という自信が、その方の人生を大きく変えました。記事では、福祉用具の選び方、住宅改修のポイント、補助金の活用方法など、「生活をより便利に、より自立的に」するための情報を発信します。
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💭 福祉の道を選んだ理由
リハビリの仕事を通じて、「できないこと」を「できる」に変える喜びを知ったことがきっかけです。
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