当事者同士が本音を話せる安心の場まとめ

「日々の生活や支援について、誰にも理解されない孤独感や、言いたくても言えない本音を抱えている」
「家族や支援者には心配をかけたくない。でも、同じ悩みを共有し、共感し合える仲間がいたら、どれほど心強いだろうか」
障害のある方、ご家族、そして支援者の皆様、それぞれの立場で抱える「本音の悩み」は、時に深く、重いものです。特に、当事者同士や同じ立場の人々だからこそ分かり合える感情や情報は、専門家の助言とはまた異なる、非常に大きな力となります。しかし、そのような「本音の場」がどこにあるのか、また、どうすれば安全に参加できるのか、迷われている方も多いでしょう。
この記事では、障害の種別や立場を超えて、参加者が安心して「本音」を語り合い、共感と希望を見出せる、地域のピアサポート・コミュニティの事例を、具体的な運営ルールと合わせてご紹介します。孤独を打ち破り、明日への活力を得るための「安心の場」を見つけるヒントを探っていきましょう。
本音を話せる「安心の場」の3つの柱
1.「ピアサポート」による深い共感と相互理解
ピアサポート(Peer Support)とは、同じような障害や病気、経験を持つ仲間(Peer)同士が、互いに支え合う活動です。当事者同士だからこそ、「言わずともわかる」深い共感が生まれます。
- 共感の力: 家族や専門家には話しにくい「正直な感情(例:仕事が続かない焦り、支援への不満)」を共有し、「自分だけじゃない」という安心感を得る。
- 経験知の共有: 病院や行政手続き、地域生活における「生きた情報(例:〇〇区のグループホームの空き状況、この薬の副作用の体験談)」を交換する。
- 役割の転換: 普段は支援される側の当事者が、「経験者」として誰かの役に立つことで、自己肯定感を高める。
「病院や施設では『治療』や『訓練』が中心になりますが、ここは『生きていく上での知恵』を交換する場です。『今日、笑えた』という小さな事実を共有できることが、何よりの支えになります。」
— 当事者会運営者 Nさん(千葉県松戸市)
この相互のサポートが、孤立を防ぎ、長期的な回復・安定を支えます。
2.「守秘義務(コンフィデンシャリティ)」の徹底
本音を話すためには、「ここで話したことは、この場限りで外に漏らさない」という信頼の担保が不可欠です。安心の場では、この「守秘義務」が運営ルールとして徹底されています。
- 参加時の誓約: 交流会の最初や、初めて参加する際に、「他者の情報を外部に持ち出さない」ことを参加者全員で確認する。
- ニックネームの使用: 本名や連絡先を教えることを強制しない、またはニックネームでの参加を推奨する。
- 支援者の役割限定: 支援者(専門職)が参加する場合でも、あくまで「中立的なファシリテーター」に徹し、個人的な支援計画に情報を持ち込まないことを明言する。
この「安心のバリア」があるからこそ、参加者は「自分の不利になることはない」と信じて、深い悩みを打ち明けられるのです。
3.判断・評価をしない「傾聴の姿勢」
本音を話す場では、誰かが話した内容に対して「それは間違っている」「もっと頑張るべきだ」といった判断や評価を下さないことが、基本的なマナーとされます。
- アドバイスは求められた時のみ: 基本は「聴くこと」に徹し、不用意な助言や励ましを控える。
- 「私メッセージ」の使用: 意見を述べる際は、「あなたは~すべきだ」ではなく、「私は~という経験をした」という「私メッセージ」で伝える。
- 感情の承認: 「それは辛かったですね」「そう感じても無理はありません」と、相手の感情をそのまま受け止める。
この「非評価的な環境」こそが、「どんな自分でも受け入れてもらえる」という強い安心感を生み出し、自己肯定感の回復に繋がります。
【立場別】本音を話せる安心の場事例
1.当事者(精神・発達障害)向け「ピアリングの家」
地域事例: 大阪府豊中市の当事者団体が運営する自立型グループ
特定の障害種別や年齢に特化せず、「生きづらさを抱える若者」全般を対象とし、セルフヘルプ(自助)の精神に基づいて運営されています。
安心の場の工夫:
- 「クローズドな会」の徹底: 参加者から信頼を得た人以外は、見学も含めて参加を制限し、外部からの情報流入を厳しく管理する。
- テーマ別分科会: 「仕事が続かない悩み」「恋愛・人間関係の悩み」「服薬への不安」など、より深い本音を話しやすいよう、具体的なテーマに分けて少人数で実施。
- 非飲酒・非喫煙環境: 精神的に不安定な方も安心して参加できるよう、依存症リスクや匂いによる刺激を排除した環境を徹底。
特に「恋愛や将来への不安」といった、家族や支援者に話しにくいテーマが、ここでは本音で語られています。
2.家族向け「介護者のつどい」と「レスパイト」機能
地域事例: 愛知県名古屋市の社会福祉協議会(社協)が主催する家族会
重度の身体障害や知的障害のある方のご家族(特に母親や配偶者)向けに特化し、日常の過酷な介護負担からくる「本音の疲労」を共有する場です。
安心の場の工夫:
- レスパイト(一時預かり)の併設: 交流会開催中、障害のある本人を別室で専門スタッフが預かることで、家族が心から安心して交流に集中できるようにする。
- 匿名アンケートの実施: 「一番辛かったこと」「誰にも言えなかったこと」などを匿名で集め、それをテーマに話し合うことで、発言が苦手な人の本音も引き出す。
- 支援者の同席: 家族のニーズを直接把握するため、相談支援専門員やケアマネジャーが同席し、話された本音を今後の支援計画に活かす(個人の特定はしない)。
ここでは、「自分の人生を犠牲にしているのではないか」といった、家族の深い葛藤が共有され、相互に慰め合われています。
3.支援者向け「非公式スーパービジョン・サークル」
地域事例: 東京都立川市の事業所横断型の若手支援者グループ
障害福祉の現場で働く支援者同士が、「失敗談」「利用者への不満」「自身のバーンアウト(燃え尽き)の危機」など、職場内では言えない本音を語り合うための非公式な集まりです。
安心の場の工夫:
- 徹底した「他事業所の守秘義務」: 利用者の個人情報や事業所の内情が外部に漏れないよう、参加者同士の誓約を徹底。
- 専門家(ベテラン支援者)のファシリテーション: 話し合いが感情論に流れすぎないよう、経験豊富な専門家が中立的な立場から進行をサポート。
- セルフケアの重視: 「自分の心の状態」をテーマに話し合い、支援者自身のメンタルヘルス維持を目的とする。
支援者の「本音のストレス」を安全に発散することは、支援の質の向上と離職防止に直結します。
本音の場に安全に参加するためのヒント
4.「誰」が主催しているかをチェックする
安心の場を選ぶ際、最も重要なのは「誰がその場を主催・運営しているか」です。主催者の種類によって、場の雰囲気やルールが大きく異なります。
- 当事者団体(ピアサポート団体): 共感と本音の共有を最重視する傾向。ルールは比較的緩やかだが、専門的なアドバイスは期待できない。
- 行政・社協(社会福祉協議会): 守秘義務や進行がしっかりしており、安心感がある。ただし、本音よりも「制度的な情報交換」が中心になることもある。
- 医療機関(デイケアなど): 専門職のサポートがあり、医療的な情報も得やすいが、参加者が固定されやすい。
最初は「行政・社協」主催の場で雰囲気を掴み、より深い本音を求める場合は「当事者団体」へ移行するなど、段階的に参加場所を選ぶのが賢明です。
5.最初の参加は「傾聴メイン」で臨む
初めて安心の場に参加する際は、すぐに自分の深い本音を語る必要はありません。まずは「聞き役(傾聴)」に徹しましょう。
- 場の雰囲気の確認: 参加者の「話し方」「表情」「主催者の介入の仕方」などを観察し、「この場でなら安全に話せそうだ」と感じられるか確認する。
- 「共感」の練習: 他者の話を聞きながら、「自分も同じ経験をした」と感じる瞬間を探し、軽く頷く、相槌を打つといった非言語的な共感を試みる。
- 簡単な自己紹介に留める: 自分の障害名や現在の状況など、差し支えない範囲の情報に留め、「まだ言いたくないこと」は無理に話さない。
「本音を話す」ことは義務ではありません。「安心してそこにいること」自体が、参加の最大の目的です。
6.「合わない」と感じたらすぐに離れる勇気を持つ
安心の場であるべき場所でも、「雰囲気や参加者が合わない」「アドバイスが押し付けがましい」と感じることがあれば、すぐにその場から離れる勇気を持ちましょう。
- 体調を理由に退席: 「急に頭が痛くなってきたので、今日はこれで失礼します」など、角の立たない理由をつけて、途中退出して構いません。
- 主催者へのフィードバック: 後日、「会の雰囲気が少し合わなかった」と主催者に伝えることで、場の改善に繋がることもあります。
- 複数の会を試す: 一つの会で満足できなくても、他の地域の会や、テーマが異なる会を探し、「自分に合った場」を根気強く探しましょう。
「自分を守る」ことが最優先です。安心の場は、あなたに我慢を強いる場所であってはなりません。
よくある質問(FAQ)と情報入手先
安心の場(ピアサポート)に関するQ&A
Q1:家族や支援者に内緒で参加しても大丈夫ですか?
A1: はい、大丈夫です。多くのピアサポートグループは、参加者のプライバシー保護を最優先しています。ただし、公的な機関(社協や行政)が主催している会では、参加者名簿に本名で記入する場合があります。内緒にしたい場合は、事前に主催者に匿名参加が可能か確認しましょう。
Q2:参加することで、自分の病状が悪化したりしないか不安です。
A2: ピアサポートは、前向きな共感を目的としていますが、他者の重い話を聞くことで、精神的に負担を感じることもあります。もし不安が強い場合は、必ず事前に専門職(かかりつけ医、カウンセラー)に相談し、「話す時間」と「静かに過ごす時間」を明確に区切るなどの自己防衛策を決めて参加しましょう。
Q3:安心の場は、地域でどのように見つけられますか?
A3: 地域の精神保健福祉センターや、発達障害者支援センターが、地域のピアサポートグループや家族会の一覧を保有していることが最も多いです。また、社会福祉協議会でも、ボランティアや自助グループの情報を得ることができます。
困った時の相談窓口と参考リンク
本音を話せる安心の場に関する相談は、以下の窓口をご利用ください。
- お住まいの地域の精神保健福祉センター: ピアサポート活動への参加に関する専門相談や、会の紹介。
- 各市町村の社会福祉協議会(社協): 家族会、ボランティア活動、自助グループの運営情報。
- 当ポータルサイトのピアサポート検索: 「当事者」「家族」「支援者」といった立場で絞り込み検索。
全国の当事者同士が本音を話せる安心の場に関する情報は、当ポータルサイトのピアサポート特集ページでも随時更新しています。
まとめ
この記事では、当事者同士や同じ立場の人々が本音を話せる安心の場、ピアサポート・コミュニティの重要性と事例をご紹介しました。
松戸市の「ピアリングの家」、名古屋市の「介護者のつどい」、立川市の「非公式スーパービジョン・サークル」など、「ピアサポートによる共感」「守秘義務の徹底」「非評価的な傾聴の姿勢」が、これらの場の核となっています。これらの場は、孤独感を打ち破り、自己肯定感を回復させ、明日への活力を得るための命綱です。
安全に参加するためには、主催者のチェックや、最初は「傾聴メイン」で臨むことが大切です。合わないと感じたらすぐに離れる勇気を持ち、あなたにとって最も安心できる「本音の場」を、地域で見つけてください。
- 安心の場は、ピアサポートによる深い共感と相互理解が核です。
- 守秘義務の徹底と、判断・評価をしない姿勢が信頼を築きます。
- 最初は「傾聴メイン」で臨み、場の雰囲気を確かめましょう。
- 精神保健福祉センターで、ピアサポートグループの情報が得られます。

谷口 理恵
(たにぐち りえ)45歳📜 保有資格:
介護福祉士、ケアマネージャー、サービス管理責任者
介護福祉士として15年間現場で働き、現在はグループホームの管理者。「地域で自分らしく暮らす」を支えるために、住まい・生活・地域資源に関する情報発信を担当しています。実際の支援現場で感じた「これ知りたかった!」という情報をお届けします。
介護福祉士として障害者施設で10年、その後ケアマネージャーの資格を取得し、相談支援専門員として5年勤務。現在はグループホーム(定員10名)の管理者として、利用者の方々の日々の生活を支えています。この仕事を選んだきっかけは、大学時代のボランティアで知的障害のある方と出会ったこと。「普通」の定義は人それぞれで、大切なのは本人が望む生活を実現することだと気づかされました。特に力を入れているのは、地域との繋がりづくり。近所のスーパーや美容院、カフェなど、日常的に利用できる場所を増やすことで、「施設の中だけ」ではない豊かな生活を支援しています。記事では、グループホームでの実際の生活の様子や、地域の障害福祉サービス事業所の選び方など、現場の生の声をお伝えしていきます。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学時代のボランティアで知的障害のある方と出会い、「普通」の定義は人それぞれだと気づいたことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
近所のスーパーや美容院など、日常的に利用できる場所を増やすことで、利用者の生活が豊かになったこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
現場の生の声を大切に、「これ知りたかった!」という情報を届けることを心がけています。
🎨 趣味・特技
料理、ガーデニング
🔍 最近気になっているテーマ
一人暮らし支援の新しい形、地域住民との共生





