学校や職場で心と体が疲れやすい人のための工夫

学校や職場で心と体が疲れやすい人のための工夫
「学校や職場から帰ると、動けなくなるほど疲れてしまう」「周りの人が当たり前にできていることが、自分にとってはものすごく負担だ」「いつも頑張っているのに、疲れが取れず体調を崩しやすい」—学校や職場の環境で、心身の消耗が激しいと感じていませんか。
集団生活の場は、多くの人にとって感覚刺激の多さ、複雑な対人関係、そして高い集中力が求められるため、特に障害の特性を持つ方にとって、強い疲労とストレスの原因となりやすい場所です。
この記事では、なぜ学校や職場で疲れやすいのかというメカニズムを解説し、心身のエネルギーを無駄に消耗しないための具体的な「環境調整」や「セルフケア」の工夫をご紹介します。
自分の特性を理解し、環境を自分に合わせて整える「ライフハック」を身につけることで、毎日をより楽に、長く安定して活動を続けられるようになるためのヒントを見つけていきましょう。
学校・職場で「疲弊」してしまう根本的な原因
学校や職場での疲労は、単なる肉体的な疲労だけでなく、脳の過剰な働きや、社会的な適応に伴うストレスが大きく影響しています。
感覚情報の「処理オーバーロード」
特にASDなどの特性を持つ方は、感覚過敏により、学校のチャイム、蛍光灯の音、職員室の雑音、同僚のキーボードの音など、全ての環境音や光を「ノイズ」として処理し続けなければなりません。
この情報処理の継続的な過負荷が、脳のエネルギーを急激に消耗させ、通常の業務や学習に集中する前に、既に疲れ果ててしまう状態(脳疲労)を引き起こします。
「カモフラージュ」と対人関係の努力
自分の障害特性(ミスが多い、空気が読めないなど)を隠し、周囲に溶け込もうと努力すること(カモフラージュ、擬態)は、非常に高い精神的なコストを伴います。
- 他者の表情や意図を常に分析し、適切な反応を瞬時に返そうとする。
- 自分の衝動的な行動や言動を、意識的に抑制し続ける。
この「演技」を一日中続けることは、重度の精神的な疲労につながり、帰宅後に何もできないほどの消耗(二次障害のリスク)を招きます。
時間管理と計画性の難しさ
ADHDや精神障害の回復期にある方は、実行機能(計画、時間配分)の困難から、タスク管理が難しくなりがちです。
「この課題をいつまでに、どれくらい進めるべきか」「優先順位の高い仕事は何か」を判断し、行動に移すことに強い困難を抱えます。これにより、締め切り直前に焦って無理をしたり、ミスを連発したりして、結果的に自己肯定感の低下と過度なストレスを招きます。
感覚負荷を軽減する「環境調整」の具体策
疲労を減らすためには、まず自分にとってストレスとなる環境要因を、物理的に排除したり、調整したりすることが重要です。
音・光の「バリア」を積極的に使う
感覚過敏による疲労は、物理的なツールを使うことで大幅に軽減できます。
- 聴覚:授業中や業務中に、ノイズキャンセリングイヤホンや高性能な耳栓(特定周波数カットタイプ)の使用を許可してもらう。
- 視覚:蛍光灯のちらつきや、PC画面の強い光が苦手な場合は、ブルーライトカット眼鏡や、調光機能付きの眼鏡を常用する。
これらのツールの使用は、合理的配慮として職場や学校に相談してみましょう。
座席・作業スペースの「定位置化」
常に周囲の動きや刺激が視界に入る場所にいることは、脳に負担をかけます。
✅ 成功のコツ
可能であれば、壁を背にする、パーテーションで視界を遮るなど、刺激の少ない場所を作業スペースにしてもらいましょう。
座席や机の上が定位置化されていると、安心して集中しやすくなります。
タスクと指示の「見える化」を徹底する
曖昧な指示は、タスク処理に余計なエネルギーを費やさせます。
受け取った口頭での指示やタスクは、必ず「文書」「メール」「メモ」などで具体的に記録し、「いつまでに、何を、どうする」かを明確にしましょう。これにより、実行機能の負担を軽減できます。
疲労回復とエネルギー管理のためのセルフケア
環境調整と並行して、日々の疲労を溜め込まないための、活動量の管理と休憩方法を身につけることが不可欠です。
「休憩時間」を意図的に確保する
疲れやすい人は、休憩時間を「サボり」と捉えがちですが、休憩は脳の機能を回復させるための「必須のタスク」と認識しましょう。
- マイクロブレイク:集中が途切れる前に、5分間、席を立って伸びをする、水を飲むなどの小さな休憩を挟む。
- 感覚遮断休憩:昼休みなどの長い休憩では、静かな場所でイヤホンをして目を閉じるなど、積極的に感覚刺激を遮断する。
作業時間と休憩時間を1:1で管理するポモドーロ・テクニック(例:25分集中+5分休憩)なども有効です。
体調不良の「前兆」を記録する
心身の疲労が限界に達する前に、そのサイン(前兆)を把握しておくことが、重大な体調不良を防ぐ鍵です。
⚠️ 注意
体調日記をつけ、頭痛、胃の不調、強いイライラ、睡眠時間の変化など、自分の疲労サインを特定しましょう。これらのサインが出たら、すぐに活動を中断するか、翌日の活動量を大幅に減らすなど、ペーシング(活動量の調整)を意識しましょう。
「コーピング・スキル」でストレスを乗り切る
ストレスが高まった時に、心を落ち着かせるための具体的な対処法(コーピング・スキル)をいくつか用意しておきましょう。
| ストレスの種類 | 具体的なコーピング |
|---|---|
| 強い不安・緊張 | ゆっくりとした深呼吸(腹式呼吸)、手のひらで物を握る(圧覚刺激)。 |
| 怒り・イライラ | その場から離れる、信頼できる人に短いメッセージを送る、好きな音楽を3分間聞く。 |
支援者・周囲のための「適切な配慮と理解」
当事者が安心して活動を続けるためには、学校や職場での支援者、そして周囲の理解と協力が不可欠です。
「頑張っていること」を言語化して認める
「普通にやっている」ように見える裏で、当事者がいかに多くのエネルギーを消耗しているかを理解することが、支援の土台です。
支援者は、単に結果だけでなく、「毎日出勤していること」「困難な状況でも集中しようと努めていること」など、プロセスにおける努力を具体的に褒め、承認する機会を設けましょう。これにより、カモフラージュの疲れが少し和らぎます。
「情報の非同期化」の配慮
会議や集団の場で、情報が次々と非同期(バラバラ)に発信されることは、当事者にとって大きな混乱を招きます。
学校・職場側ができる配慮:
- 会議資料の事前配布:議論のテーマや流れを事前に確認できるようにする。
- 指示の記録:口頭での指示の直後に、必ずメールやチャットで要点を文書化して送る。
- 質問の許可:曖昧な点や理解できない点があった場合、後で個別で質問する時間を設けることを許可する。
「疲労サイン」への早期介入
当事者が疲れのサイン(欠勤が増える、ミスが増える、イライラしているなど)を見せ始めたら、無理に業務を続けさせず、すぐに介入することが重要です。
介入の際は、「疲れているようだから、休憩室で休んでください」といった指示ではなく、「最近、体調はどうですか?」と寄り添う形で声をかけ、本人の希望を聞く姿勢を大切にしましょう。
よくある質問(FAQ)と相談窓口リスト
学校や職場での疲労に関する、当事者の方やご家族からの疑問にお答えします。
Q. 疲れている時、どこまで休むべきか判断が難しいです。
A. 判断基準は、「翌日の活動に必要なエネルギーが残っているか」です。
帰宅後、食事や入浴など最低限の生活活動を行う気力もなく、布団に直行してしまう状態が続くなら、それは休養不足のサインです。翌日の活動量を減らすか、思い切って一日休みを取り、完全にエネルギーをリセットすることが必要です。主治医とも相談し、休養の必要性を客観的に判断してもらいましょう。
Q. 合理的配慮を求めるのは「わがまま」ではないですか?
A. 合理的配慮は、障害者差別解消法に基づき、当事者が他の人と平等に活動に参加するために、社会が提供すべき義務として定められています。「わがまま」ではなく、「権利」です。
ただし、配慮を求める際は、感情的にならず、「特性によってどのような困難が生じているか」と、「その困難を解消するためにどのような具体的な措置が必要か」を論理的に説明することが大切です。
Q. 誰に相談すれば、職場への配慮を求められますか?
A. 以下の専門機関が、配慮の相談と調整をサポートしてくれます。
| 相談先 | 主な役割 |
|---|---|
| 障害者職業センター | 合理的配慮の具体的内容の助言、ジョブコーチ支援。 |
| 産業医・産業保健師 | 健康面から見た配慮の必要性を会社に進言。 |
| 就労移行支援事業所 | 職場定着のための相談、セルフマネジメント指導。 |
まとめ
- 学校・職場で疲れやすい原因は、感覚過敏による脳疲労と、カモフラージュによる精神的消耗です。
- 対策は、ノイズキャンセリングや座席調整などの「環境調整」で、刺激を物理的に遮断することです。
- 疲労回復には、意図的な「感覚遮断休憩」と、体調日記による疲労サインの早期把握(ペーシング)が重要です。
疲れやすさは、あなたの努力不足ではありません。自分の特性に合った環境を整えることは、長く安定して生活を続けるための最も重要なスキルです。
まずは、今日、「日中の活動時間と休憩時間を記録する『疲労ログ』」をつけ、自分のエネルギーサイクルを客観的に把握してみましょう。
主な相談窓口・参考情報
- ハローワーク(専門援助部門): 障害者雇用での求人情報と支援制度の紹介。
- 発達障害者支援センター: 特性理解と学校・職場での具体的な工夫の相談。
- 心療内科・精神科: 疲労に伴う二次障害の診断と治療。

谷口 理恵
(たにぐち りえ)45歳📜 保有資格:
介護福祉士、ケアマネージャー、サービス管理責任者
介護福祉士として15年間現場で働き、現在はグループホームの管理者。「地域で自分らしく暮らす」を支えるために、住まい・生活・地域資源に関する情報発信を担当しています。実際の支援現場で感じた「これ知りたかった!」という情報をお届けします。
介護福祉士として障害者施設で10年、その後ケアマネージャーの資格を取得し、相談支援専門員として5年勤務。現在はグループホーム(定員10名)の管理者として、利用者の方々の日々の生活を支えています。この仕事を選んだきっかけは、大学時代のボランティアで知的障害のある方と出会ったこと。「普通」の定義は人それぞれで、大切なのは本人が望む生活を実現することだと気づかされました。特に力を入れているのは、地域との繋がりづくり。近所のスーパーや美容院、カフェなど、日常的に利用できる場所を増やすことで、「施設の中だけ」ではない豊かな生活を支援しています。記事では、グループホームでの実際の生活の様子や、地域の障害福祉サービス事業所の選び方など、現場の生の声をお伝えしていきます。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学時代のボランティアで知的障害のある方と出会い、「普通」の定義は人それぞれだと気づいたことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
近所のスーパーや美容院など、日常的に利用できる場所を増やすことで、利用者の生活が豊かになったこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
現場の生の声を大切に、「これ知りたかった!」という情報を届けることを心がけています。
🎨 趣味・特技
料理、ガーデニング
🔍 最近気になっているテーマ
一人暮らし支援の新しい形、地域住民との共生





