買い物が不安…外出をラクにする工夫と支援

「買い物が不安」を解消する!外出をラクにする工夫と支援の活用法
生活に欠かせない買い物ですが、「重い荷物を運ぶのがつらい」「お店の中で混乱してしまう」「店員さんとのやり取りが不安」など、障害の特性によって、買い物が大きなストレスや困難となる方は少なくありません。
買い物に関する不安や負担を抱えているのは、あなた一人ではありません。しかし、適切な事前準備、ツールの活用、そして公的な支援サービスを組み合わせることで、その負担を大幅に軽減し、安心して日常生活を送ることが可能です。無理なく、自分らしいペースで、買い物の不安を克服する方法を一緒に探していきましょう。
この記事では、障害特性別の困難の原因を解説し、買い物をラクにするための具体的な工夫、そして福祉サービスによる支援の活用法について、詳しくご紹介します。
買い物の困難を生む障害特性とアプローチ
買い物が困難になる理由は、身体的な制約からくるものと、認知機能や精神的な不安からくるものに大別されます。原因に合わせたアプローチが重要です。
身体的な制約:移動と運搬の負担
肢体不自由や慢性的な疾患がある場合、以下のような動作が買い物の大きなハードルとなります。
- 移動の困難: 店舗内での長時間の歩行、カートを押しながらの移動、混雑した場所での移動の不安定さ。
- 荷物の運搬: 購入した重い食材や日用品を、自宅まで運ぶ作業。特に階段の上り下りがある場合、事故のリスクも伴います。
- 手の届かない場所: 棚の高い位置や低い位置の商品に手を伸ばす、レジでの細かい現金の受け渡しといった動作。
この場合、支援は「代行(ヘルパーや宅配)」、または「物理的な補助(福祉用具)」が中心となります。
認知機能・精神的な制約:計画と対応の困難
発達障害(ASD、ADHDなど)や精神障害のある方の場合、買い物は以下のような認知機能や感覚の課題を引き起こします。
- 計画性の欠如: 必要なもの(リスト)を持たずに店舗に入り、衝動的に無駄なものを買ってしまったり、買い忘れが発生したりする(特にADHD特性)。
- 感覚過敏: 店舗の蛍光灯のまぶしさ、BGMやアナウンスの音、商品の陳列の雑然とした視覚情報などが過剰な刺激となり、パニックや疲労を引き起こす(特にASD特性)。
- 対人不安: 店員とのコミュニケーション(商品の場所を尋ねる、袋詰めを依頼するなど)や、レジでのやり取りに強い緊張や不安を感じる。
この場合、支援の基本は、「事前の構造化(リスト、ルート)」と「刺激の遮断(ノイズキャンセリングなど)」です。
💡 ポイント
買い物は単なる消費行動ではなく、「計画」「移動」「金銭管理」「対人交渉」「運搬」という複数のスキルを同時に要求される複合的な活動です。困難な部分を特定し、その部分だけを支援で補うことが、負担軽減の鍵となります。
外出前の準備と買い物の「見える化」テクニック
買い物の不安を減らすためには、店舗に入る前に「何を」「どこで」「どのように」買うかを明確にする、事前の構造化が非常に有効です。
買い物リストの徹底的な活用
衝動買いを防ぎ、買い忘れをなくすための最も重要なステップは、買い物リストの作成です。リストはただ書き出すだけでなく、さらに工夫を加えます。
- 店舗内ルート順に作成: 訪問する店舗の陳列順序(例:野菜→肉→乳製品→日用品)に合わせてリストを並び替えます。これにより、店舗内を無駄に歩き回る必要がなくなり、疲労と刺激の暴露時間を減らせます。
- 視覚的なリストの作成: 文字情報が苦手な場合は、必要な商品の写真やイラストを並べたリストを作成します。また、購入が完了したらチェックボックスにチェックを入れるなど、作業の完了を視覚的に確認できる仕組みにします。
- 予算の記載: 各アイテムの横に予定の金額や予算を記載することで、金銭管理の意識を高め、衝動買いを抑制する効果があります。
買い物時の携帯アイテムの工夫
外出時の不安や困難を和らげるために、持ち物に工夫を加えましょう。
- ノイズキャンセリングアイテム: 聴覚過敏がある場合、高性能なノイズキャンセリングイヤホンや耳栓を装着し、店舗内の不快なBGMや騒音を遮断します。
- ヘルプマーク・IDカード: 外見から障害が分かりにくい場合、ヘルプマークや、支援が必要な内容を記載したIDカード(例:「パニックになりやすいので、声をかけずに見守ってください」「ゆっくりと話してください」)を提示できるようにしておきます。
- キャスター付きバッグ・カート: 重い荷物の運搬が困難な場合、軽量で安定性の高いキャスター付きのショッピングカートや、福祉用具としてのショッピングカート(歩行補助機能付き)を活用します。
✅ 成功のコツ
買い物の不安が特に強い方は、まず最も空いている曜日・時間帯(例:平日の午前中など)を選んで訪問しましょう。混雑を避けるだけでも、感覚的な刺激と対人ストレスを大幅に軽減できます。
買い物の負担を軽減する外部サービス
全てを自力で行う必要はありません。公的な支援サービスや民間のサービスを賢く利用することで、買い物の手間や運搬の負担を丸ごと外部に委託できます。
居宅介護サービス:生活援助による買い物代行
障害福祉サービスの一つである居宅介護(生活援助)を利用すれば、ホームヘルパーが自宅を訪問し、ご本人に代わって買い物を行ってくれます。
- 代行ショッピング: 献立や在庫状況を確認し、必要な食材や日用品の買い物リストを作成し、ヘルパーが店舗へ出向いて購入してくれます。これにより、移動・運搬・対人交渉の負担を全て回避できます。
- 同行支援(身体介護): 一人で店舗内を歩行するのが困難な場合や、パニックのリスクが高い場合、ヘルパーが身体介護の一環として買い物に同行し、移動のサポートや、必要に応じて店員とのコミュニケーションを支援してくれます。
- 金銭管理のサポート: ヘルパーが金銭授受を行う際は、必ず現金の額とレシートを明確にし、金銭管理の記録を残します。
生活援助の利用可否や頻度は、市町村の支給決定に基づきます。まずは特定相談支援事業所に相談し、サービス等利用計画を作成してもらいましょう。
民間サービスの積極的な活用
福祉サービスと並行して、一般の民間サービスも強力な支援ツールとなります。
- ネットスーパー・生協の宅配: 食材、日用品、飲料など、重いものや日々の買い物を自宅まで届けてもらえるネットスーパーや生協の宅配サービスを積極的に活用しましょう。これにより、重い荷物を運ぶ負担が完全に解消されます。
- 配食サービス・ミールキット: そもそも食材の買い物が苦手な場合は、調理済みの弁当を届けてもらう配食サービスや、カット済みの食材が届くミールキットを利用することで、買い物の頻度自体を大幅に減らすことができます。
特に、身体的な負担が大きい方は、ネットスーパーや宅配サービスの利用料を払っても、得られる時間と労力のメリットの方が大きい場合が多いため、生活の基本インフラとして組み込むことを推奨します。
自立を促す訓練と専門家によるアプローチ
「自分一人で買い物ができるようになりたい」という目標を持つ方には、福祉サービスを活用した段階的な訓練が有効です。
自立訓練(生活訓練)による買い物スキル習得
障害福祉サービスの自立訓練(生活訓練)では、安全かつ段階的に買い物スキルを習得するためのプログラムが提供されます。
- 計画立案の練習: 献立から逆算して必要な食材をリストアップする、予算内で買い物を収める計画を立てる、といった買い物前の計画立案能力を訓練します。
- 実地訓練とフィードバック: 支援員と同行し、実際に店舗で買い物を実施します。買い物の動作(カートの使い方、レジでの対応、商品の選定)について、その場で具体的かつ肯定的なフィードバックを受けながら練習します。
- 対人スキル練習: 店員に商品の場所を尋ねる、ポイントカードの提示、袋詰めの依頼といった必要最低限のコミュニケーションスキルをロールプレイングなどで練習します。
EさんはASDの特性があり、店員に質問するのが苦手でしたが、訓練で「質問したいことがあるときは、まずリストのメモを店員に見せる」というマイルールを支援員と一緒に作り、安心して質問ができるようになりました。
作業療法士(OT)による環境整備と福祉用具の選定
リハビリテーションの専門職である作業療法士(OT)は、買い物の動作に関する専門的なアセスメント(評価)とアドバイスを提供できます。
- 姿勢・動作の評価: 荷物の持ち方、カートの押し方、長時間の立ち姿勢など、買い物の動作が身体に与える負担を評価します。
- 福祉用具の選定: 身体的な負担を減らすための軽量な歩行補助カートや、商品の上げ下ろしを楽にするマジックハンドなどの福祉用具について、最適なものを提案し、使い方を指導してくれます。
- 感覚特性への対応: 店舗内の刺激(光、音)に対する具体的な対策アイテム(遮光眼鏡、耳栓など)について、個別の特性に合わせた選定を支援します。
よくある質問(FAQ):買い物の不安と支援
買い物の不安や支援サービスについて、当事者やご家族からよくいただく質問とその回答をまとめました。
Q1: 居宅介護の生活援助で、ヘルパーと一緒に買い物に行くことはできますか?
A1: はい、可能です。ただし、ヘルパーがご本人に同行して、移動や店舗内での介助を行う場合は、身体介護(移動の介助、体調の確認・見守りなど)として支給決定される必要があります。単にヘルパーが代わりに運転したり、荷物を持ったりするだけの支援は、生活援助またはサービス対象外となる可能性があります。まずは相談支援専門員に詳細なニーズを伝えて相談してください。
Q2: 衝動買いを防ぐための具体的な金銭管理の工夫を教えてください。
A2: 衝動買いを防ぐためには、「使えるお金」を物理的に限定する方法が最も効果的です。例えば、
- 予算袋の活用: 1週間分の買い物予算だけを封筒や特定の財布に入れて持ち運びます。
- プリペイドカードの利用: 買い物用のプリペイドカードやデビットカードに、必要な額だけをチャージして利用します。
これにより、手持ちの予算を超える買い物が物理的に不可能になります。金銭管理の訓練は、自立訓練で学ぶことも可能です。
Q3: 店舗でパニックになったとき、どう対処すればいいですか?
A3: パニック発作が起きた、または起こりそうになった際は、まず「その場から離れる」ことを最優先しましょう。店舗の外の静かな場所、または車の中など、刺激の少ない安全な場所に移動します。落ち着くための携帯アイテム(例:ノイズキャンセリングイヤホン、香り玉、お守り)があればそれを使います。事前に支援者や家族と、パニック時の対処手順を決めておくことが大切です。
Q4: ネットスーパーの操作が苦手ですが、ヘルパーに操作を頼めますか?
A4: ヘルパーによるサービスは、原則として身体的な介護や家事代行が中心です。しかし、居宅介護の生活援助の範囲内で、ご本人の代わりにネットスーパーで注文入力を行うことは、認められる場合があります。特に、紙媒体での注文書作成や電話での注文が難しい場合は、相談支援専門員と事業所の間で協議が必要です。まずは相談員に「ネット操作が苦手」という状況を詳しく伝えてみましょう。
次の一歩:安心できる買い物環境を築くために
買い物の不安を解消することは、生活の自立度を高め、大きな自信につながります。無理をせず、一歩ずつ、自分に合った方法で快適な買い物環境を築いていきましょう。
行動チェックリスト
- 困難の言語化: 買い物のどの部分(移動、運搬、パニック、金銭管理)が一番困難かを特定しましたか?
- 相談窓口への連絡: 特定相談支援事業所または市町村の障害福祉窓口に連絡し、居宅介護の買い物代行・同行支援について相談しましたか?
- アイテムの試行: ノイズキャンセリングイヤホンや、キャスター付きカートなど、負担を減らすアイテムを一つ導入しましたか?
- サービスの比較: 居宅介護と、ネットスーパーや生協の宅配サービスのメリット・デメリットを比較検討しましたか?
参考相談先とリンク
- 特定相談支援事業所: 障害福祉サービス全般の利用計画作成、コーディネート
- お住まいの市町村役場 障害福祉担当課: 制度全般、申請手続き
- リハビリテーション施設(作業療法士): 動作評価、福祉用具の選定相談
- 地域包括支援センター(65歳以上): 介護保険サービス(買い物代行含む)の相談
まとめ
- 事前の構造化が鍵: 買い物の不安を減らすためには、ルート順の買い物リスト作成、ノイズキャンセリングイヤホンの着用、空いている時間帯の利用など、事前の構造化と環境調整が不可欠です。
- サービスの代行・同行: 身体的・精神的な負担が強い場合は、居宅介護(生活援助・身体介護)による買い物代行や同行支援、またはネットスーパーや宅配サービスを積極的に活用し、負担を外部化しましょう。
- スキル習得と専門家の知見: 自立を目指すなら自立訓練で買い物スキルを段階的に習得し、作業療法士から福祉用具や環境整備の専門的なアドバイスを受けましょう。

鈴木 美咲
(すずき みさき)42歳📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員
相談支援専門員として15年、障害のある方とそのご家族の「困った」に寄り添ってきました。実際の相談事例をもとに、当事者やご家族のリアルな声、具体的な解決策をお届けします。「一人で悩まないで」がモットーです。
社会福祉士として障害者相談支援事業所に勤務し15年。年間約100件の相談に対応し、サービス等利用計画の作成や、関係機関との調整を行っています。この仕事の魅力は、「困っている」状態から「解決した!」という笑顔に変わる瞬間に立ち会えること。ただし、制度が複雑で「どこに相談すればいいか分からない」という声を本当によく聞きます。特に印象深いのは、お子さんの障害を受け入れられず孤立していたお母さんが、同じ境遇の親の会に繋がり、「一人じゃないと分かって救われた」と涙ながらに話してくださったこと。情報と繋がりの大切さを実感しました。記事では、実際の相談事例(もちろん個人情報は特定できないよう配慮)をベースに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えていきます。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学のボランティアで障害のある方と出会い、「困っている」を「解決した!」に変える仕事がしたいと思ったことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
孤立していたお母さんが、親の会に繋がり「一人じゃないと分かって救われた」と話してくださったこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
実際の相談事例をもとに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えることを大切にしています。
🎨 趣味・特技
ヨガ、カフェ巡り
🔍 最近気になっているテーマ
ヤングケアラー支援、家族のレスパイトケア





