障害者手帳の「級変更申請」はどうする?必要な準備まとめ

障害者手帳の「級変更申請」はどうする?必要な準備まとめ
障害者手帳の等級は、受けられる公的支援や優遇措置の範囲を決定する重要な要素です。しかし、障害の状態は時間の経過とともに変化することがあります。病気の進行や、新たな障害の併発により、「今の等級では実態に合っていないのではないか」と感じる方もいるでしょう。
特に、状態が悪化し、より重い等級(例:身体障害者手帳4級から2級へ)に変更されると、受けられる医療費助成の範囲が広がったり、交通機関の割引率が上がったりと、生活の質に直結するメリットがあります。しかし、「級変更の申請手続きは複雑そう」「医師にどう伝えればいいかわからない」といった不安から、申請をためらっている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、障害者手帳の級変更申請を行うべきタイミング、三つの手帳(身体、精神、療育)ごとの申請手続きの違い、そして申請を成功させるために必要な「三つの準備」を具体的に解説します。安心して手続きを進めるためのロードマップとして、ぜひご活用ください。
級変更申請が必要になる主なケースとタイミング
級変更申請は、障害の状態が元の手帳交付時よりも明らかに変化し、現行の等級基準と乖離が生じた場合に行います。状態の変化は、悪化だけでなく、回復・改善の場合もあり、そのどちらも申請の対象となり得ます。
ここでは、級変更申請を検討すべき代表的なケースと、手続きのタイミングについて解説します。
状態が悪化した際の「等級変更」
最も多く級変更申請が行われるケースは、障害の状態が悪化し、現行の等級よりも重い基準に該当するようになった場合です。特に、進行性の病気や、慢性的な病状の悪化に伴って、日常生活の制限が増えた場合に重要となります。
具体的な例としては、以下のものが挙げられます。
- 身体障害:人工関節置換術を受けたが、術後の機能回復が思わしくなく、移動能力が以前より低下した。または、進行性の難病により、肢体不自由の程度が重くなった。
- 精神障害:長期にわたる治療にもかかわらず、幻覚や妄想などの症状が重くなり、単身での生活が困難になった(2級から1級への変更など)。
状態が悪化したと感じたら、主治医にその状況を詳しく伝え、医師の視点から等級変更の可能性があるか相談することが第一歩です。
回復・改善した際の「等級返還」
逆に、手術やリハビリテーション、あるいは治療薬の効果などにより、障害の状態が大幅に回復・改善し、現行の等級基準よりも軽くなった場合も、級変更申請の対象となります。これを「等級返還」と呼ぶこともあります。
「私は一時的に精神状態が非常に悪く1級の認定を受けていましたが、安定した治療と生活環境の改善により、日常生活の多くのことが自分でできるようになりました。正直、今の等級ではサービスを利用しすぎるようで心苦しく、医師と相談して等級が軽くなる申請を行いました。適切な支援を受けるためにも、実態に合わせた等級に戻すことは大切だと感じています。」
— 50代・元精神障害者保健福祉手帳1級保持者
回復・改善が見られた場合、手帳の再認定時期が設定されていることが多いため、その時期を待って再認定を受けることが一般的です。
「再認定時期」を待つか、今すぐ申請するか
障害者手帳には、障害の状態が変動する可能性がある場合、「再認定(再判定)の時期」が指定されていることがあります(例:3年後、5年後)。
⚠️ 注意
再認定時期が指定されている場合でも、状態が明らかに悪化し、日常生活に大きな支障が出ている場合は、その時期を待たずに「再交付申請(等級変更)」を行うことが可能です。ただし、回復が見込まれる場合は、再認定時期を待つ方が手続きがスムーズなことがあります。
再認定時期よりも早く申請する場合、その変化を証明するための客観的な医療記録が必要不可欠となります。主治医と相談の上、最も適切なタイミングを決定しましょう。
三つの手帳ごとの「級変更申請」手続き
障害者手帳には、身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳の三種類があり、それぞれ根拠法や管轄が異なるため、級変更申請の手続きにも違いがあります。手続きの際は、それぞれの特性を理解しておくことが大切です。
身体障害者手帳の「再交付申請」
身体障害者手帳の級変更申請は、正式には「身体障害者手帳再交付申請(等級変更)」という名称で行われます。これは、障害の程度が変化したことを証明し、新たな等級の手帳を交付してもらう手続きです。
- 主治医への相談:現在の障害の状態を伝え、新たな等級に該当する可能性について医師の意見を聞きます。
- 指定医による診断書の作成:身体障害者福祉法で定められた指定医に、所定の様式(身体障害者手帳診断書・意見書)で現在の状態を記載してもらいます。
- 市区町村窓口への提出:診断書、申請書、現在の手帳を添えて、お住まいの市区町村の福祉担当窓口に提出します。
この診断書の作成は有料(自費診療)となることが多いため、費用についても事前に医療機関に確認が必要です。
精神障害者手帳の「更新時の診断書」
精神障害者保健福祉手帳の場合、通常は2年ごとの更新時に、等級の見直しが行われます。級変更の希望がある場合は、この更新手続きの際に提出する診断書に、現在の症状の重さや、日常生活・社会生活への支障の程度を詳細に記載してもらうことが重要です。
精神手帳の等級は、障害の程度を総合的に判断する「精神障害者保健福祉手帳の障害等級判定基準」に基づいて決定されます。医師には、この判定基準のどの項目に該当するかの視点も踏まえて記載をお願いしましょう。
💡 ポイント
精神障害者手帳は、更新時期以外でも、状態が著しく悪化した場合は「等級の変更申請」を行うことができます。この場合も、新たな診断書が必要となります。
療育手帳の「再判定申請」
療育手帳(知的障害)の場合、級の変更は「再判定」という形で行われます。療育手帳の等級は、知能検査や日常生活能力の評価に基づいて、児童相談所(18歳未満)または知的障害者更生相談所(18歳以上)で判定されます。
級変更を希望する場合:
- 窓口への相談:市区町村の福祉担当窓口に、現在の生活状況や、新たな知的機能の検査結果がある場合はそれを添えて再判定を申請します。
- 相談所での判定:指定された日に相談所に出向き、専門の職員による面接や検査を受けます。
療育手帳の判定は、申請者の成長・発達の状況を考慮するため、特に児童の場合は定期的な再判定が重要となります。
申請を成功させるための「三つの準備」
級変更申請は、単に書類を提出すれば良いわけではありません。「なぜ等級を変える必要があるのか」という客観的な根拠と、現在の生活での困難さを具体的に示すことが、成功の鍵となります。以下の三つの準備をしっかりと行いましょう。
準備1:主治医との綿密な連携
級変更申請において、最も重要な役割を果たすのが主治医です。手帳の等級は、医師が作成する診断書の内容に大きく依存します。したがって、医師と以下の点を共有し、連携を取ることが不可欠です。
- 具体的な困難さの共有:「調子が悪い」という抽象的な表現ではなく、「以前は自分でできていた入浴・着替えが困難になった」「幻聴が悪化して一人で外出できなくなった」など、日常生活における具体的な変化や支障を時系列で記録し、医師に伝えます。
- 等級基準の確認:現在の状態が、希望する等級の基準(例:身体障害認定基準の〇〇級の項目)にどの程度当てはまるか、医師と一緒に確認します。
- 診断書の記載依頼:医師に、単に病名だけでなく、「生活機能への影響」に重点を置いて診断書を作成してもらうよう依頼します。
準備2:生活状況の「詳細な記録(日誌)」
医師の診察時間は限られており、日々の全ての困難さを正確に伝えるのは難しいものです。そこで役立つのが、ご本人やご家族が作成する「生活状況の詳細な記録(日誌)」です。この記録は、申請の客観的な根拠となります。
| 記録すべき項目 | 具体的な内容の例 |
|---|---|
| 日付・時間 | 症状が悪化した、介助が必要になった時間 |
| 介助内容 | 入浴、排泄、食事、着替えで必要となった介助の具体的な内容と時間 |
| 精神症状 | 幻覚、妄想、不安、パニック発作の頻度と程度 |
| 社会生活への支障 | 外出頻度の減少、コミュニケーションの困難さ |
最低でも3ヶ月から6ヶ月間の記録があると、症状の推移や状態の悪化がより明確になり、診断書や行政の審査で有利になります。
準備3:現在の「手帳の再確認」
級変更申請を行う前に、現在持っている手帳の記載内容を改めて確認しましょう。特に重要なのは、再認定の時期と、手帳に記載されている障害名です。
✅ 成功のコツ
現在の障害名と、級変更の原因となった病状の悪化が一致しているかを確認します。もし、新たな障害が併発している場合は、級変更申請ではなく、「障害の追加」や「新規申請」を検討する必要があるかもしれません。窓口でどの手続きが最適かを相談しましょう。
手帳に記載されている再認定の時期が近い場合は、その時期に合わせた準備を進める方が、診断書費用などの負担が少なくて済みます。
申請後の流れと「不支給」の場合の対応
申請書類を提出した後も、不安になることなく結果を待つことが大切です。申請後の審査の流れと、万が一、級変更が認められなかった場合の対処法についても知っておきましょう。
行政の審査と結果通知までの期間
申請書類が自治体の窓口に提出されると、そこから都道府県や指定都市の専門機関(身体障害者更生相談所など)に送られ、診断書の内容に基づいて審査が行われます。
- 審査期間:通常、1ヶ月から3ヶ月程度かかります。ただし、年末年始や年度初めなど、申請が集中する時期はさらに時間がかかることがあります。
- 結果通知:審査が完了すると、新たな手帳の交付(等級変更が認められた場合)または結果通知書(等級が維持または変更が認められなかった場合)が送付されます。
審査の途中で、追加の診断書や情報の提出を求められることがあります。迅速に対応できるよう、窓口からの連絡には注意を払いましょう。
等級変更が認められた際の「各種手続き」
等級変更が認められ、より重い等級の手帳が交付された場合、受けられるサービスや優遇措置が変わるため、以下の手続きを速やかに行う必要があります。
- 福祉サービスの変更申請:障害支援区分(サービス利用の基準)の変更申請を行います。重度化に伴い、居宅介護やデイサービスの利用時間が延長される可能性があります。
- 医療費助成の再申請:心身障害者(児)医療費助成制度など、自治体独自の助成の対象となるか再確認し、申請を行います。
- 各種割引の再登録:JR、バス、タクシーなどの割引サービスについて、新たな等級を適用するための手続きを行います。
不支給や現状維持だった場合の「不服申し立て」
申請したにもかかわらず、級変更が認められなかったり、希望した等級にならなかったりする場合があります。この場合、結果に納得がいかないときは「不服申し立て(審査請求)」を行うことが可能です。
⚠️ 注意
不服申し立ては、結果通知を受け取った日の翌日から3ヶ月以内に行う必要があります。申し立てには、等級変更の必要性を裏付ける新たな医学的根拠や、元の診断書に誤りがあったことの証明が必要となります。
不服申し立てを行う際は、行政の専門家(行政書士など)や、相談支援事業所の専門員に相談し、客観的な意見を取り入れて慎重に進めることが重要です。
よくある質問(FAQ)と次のアクション
級変更申請に関する実務的な疑問にお答えし、安心して次のステップに進むための具体的なアクションを提案します。
Q1:級変更申請の「回数制限」はあるか?
A:原則として、級変更申請の回数に制限はありません。状態が悪化したと感じた場合、いつでも申請を行うことができます。ただし、短期間に何度も申請することは、行政の審査を煩雑にする可能性があります。
重要なのは、前回の申請時からの状態の変化を客観的に証明できることです。申請の際には、前回の不支給理由や、前回から現在までの医療記録や生活日誌をしっかりと準備することが大切です。
Q2:申請から結果が出るまで「サービスは受けられる」か?
A:級変更申請中であっても、現在利用している福祉サービスはそのまま継続して利用できます。ただし、もし等級変更が認められ、より重い等級になったとしても、等級変更が正式に認められる前のサービス利用分について、さかのぼってサービス量が増えることはありません。
また、重度化に伴いすぐにサービス量の見直しが必要な場合は、手帳の級変更申請とは別に、自治体に障害支援区分の変更申請を同時に行うことも検討しましょう。
Q3:診断書作成の「費用」はいくらかかるか?
A:手帳申請用の診断書作成費用は、健康保険の適用外(自費診療)となります。医療機関や診断書の種類(身体、精神)によって異なりますが、一般的には5,000円から10,000円程度かかることが多いです。
自治体によっては、再交付申請時の診断書作成費用を補助する制度を設けている場合があるため、申請前に福祉担当窓口に確認してみましょう。
次のアクション:主治医への相談予約と日誌の準備
障害者手帳の級変更申請を検討する場合、まず最初に行うべき次のアクションは、主治医に相談するための予約を取り、現在の生活で困っていることや状態の変化を記録した日誌(メモ)を準備することです。
「等級の見直しが必要かどうか先生の意見を聞きたい」と具体的に伝え、日誌を見せながら客観的な情報を共有しましょう。この準備こそが、後の診断書作成と申請の成否を分ける最も重要なステップとなります。
まとめ
- 障害者手帳の級変更申請は、状態が悪化し現行の等級と実態に乖離が生じた場合に、再認定時期を待たずに行うことが可能です。
- 申請を成功させるための鍵は、主治医との綿密な連携、そして日常生活の困難さを具体的に示す詳細な記録(日誌)を行政に提出することです。
- 級変更が認められた場合、サービス利用や優遇措置が変わるため、速やかに障害支援区分の変更申請や各種制度の再手続きを行う必要があります。

高橋 健一
(たかはし けんいち)50歳📜 保有資格:
社会福祉士
市役所の障害福祉課で20年間勤務し、制度の運用や窓口対応を担当してきました。「制度は難しい」と言われますが、知れば使える便利なツールです。行政の内側から見た制度のポイントを、分かりやすくお伝えします。
大学卒業後、地方自治体に入庁し、障害福祉課に配属されて20年。障害者手帳の交付、障害福祉サービスの支給決定、各種手当の申請受付など、幅広い業務を経験しました。行政職員として心がけていたのは、「制度を正確に伝えつつ、温かく対応する」こと。窓口に来られる方は不安を抱えています。制度の説明だけでなく、その方の状況に合わせた情報提供を大切にしてきました。退職後、民間の相談支援事業所に転職し、今度は「申請する側」の視点も理解できました。行政と民間、両方の経験を活かして、制度の仕組みだけでなく、「実際にどう使うか」まで伝えられるのが強みです。記事では、障害者総合支援法、障害者雇用促進法、各種手当など、制度の正確な情報を「難しい言葉を使わず」解説します。
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💭 福祉の道を選んだ理由
公務員として地域に貢献したいと思い、障害福祉課に配属されたことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
窓口対応で、制度を活用して生活が楽になったと感謝されたこと。行政と民間両方の視点を得られたこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
制度の正確な情報を「難しい言葉を使わず」伝えることを大切にしています。
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将棋、歴史小説
🔍 最近気になっているテーマ
マイナンバーと福祉制度の連携、自治体DXの進展





