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障害者控除の受け方:手帳がなくても対象になるケースとは?

📖 約31✍️ 金子 匠
障害者控除の受け方:手帳がなくても対象になるケースとは?
障害者控除は、納税者の経済的な負担を軽減する税制優遇措置です。控除を受けるには障害者手帳の提示が一般的ですが、65歳以上の要介護高齢者や、特定の精神障害を持つ方は、手帳がなくても控除対象となるケースがあります。特に要介護高齢者は、お住まいの市区町村が発行する「障害者控除対象者認定書」を取得することで、控除を適用できます。この認定書は毎年申請が必要で、特別障害者と認定されれば控除額が大きくなります。過去の申告漏れも5年以内であれば更正の請求で取り戻せるため、心当たりのある方は確認しましょう。

障害者控除の受け方:手帳がなくても対象になるケースとは?

障害者控除は、納税者ご自身や、生計を一にする配偶者、扶養親族に障害がある場合に、所得税や住民税の負担を軽減できる重要な税制優遇措置です。この控除を受けるためには、多くの方が「障害者手帳が必要」と考えているかもしれません。

確かに、控除の適用を受けるための最も一般的な証明方法は、身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳を提示することです。しかし、実は手帳を持っていなくても、特定の条件を満たすことで障害者控除の対象となるケースが存在します。「うちの家族は手帳がないから無理だ」と諦めていた方も、控除を受けられる可能性があります。

この記事では、障害者控除の基本的な受け方から、手帳がない場合に控除を受けるための具体的な手続き、そしてその対象となる方の特徴を詳しく解説します。経済的な負担を軽減するために、しっかりと知識を身につけましょう。


障害者控除の基本と控除額の仕組み

障害者控除は、障害を持つ方がいることで生じる経済的な負担を考慮し、納税者の所得から一定額を差し引く(控除する)ことで、課税対象となる所得額を減らす制度です。控除額は、障害の程度や同居の有無によって異なります。

まずは、この制度の基本的な仕組みと、控除の区分について理解しましょう。

所得税と住民税における控除額

障害者控除は、所得税と住民税の両方で適用されますが、それぞれの控除額は異なります。控除の区分は、「障害者」「特別障害者」「同居特別障害者」の三種類です。

控除の区分 所得税の控除額(年間) 住民税の控除額(年間)
障害者 27万円 26万円
特別障害者 40万円 30万円
同居特別障害者 75万円 30万円

特別障害者とは、障害の程度が重いと認められた方(例:身体障害者手帳1級・2級、精神障害者保健福祉手帳1級など)を指します。同居特別障害者とは、特別障害者である配偶者または扶養親族と常に同居している場合の、所得税に適用される特別な控除額です。

この控除により、課税所得が減少し、結果として納める税金が安くなります。税額に直結するため、非常に重要な控除です。

控除を受けるための「対象者」の範囲

障害者控除の対象となるのは、納税者自身だけでなく、生計を一にする配偶者や扶養親族です。「生計を一にする」とは、必ずしも同居している必要はなく、生活費などを援助している場合も含みます。

例えば、親が離れて暮らす子どもに生活費を仕送りしている場合や、施設に入所している親の費用を負担している場合などです。この場合、納税者がその扶養親族について障害者控除を受けることができます。

💡 ポイント

扶養親族の要件として、年間の合計所得金額が48万円以下(令和2年以降)である必要があります。ただし、配偶者控除の適用を受ける配偶者の場合は、これとは別に所得制限があります。

控除の適用は「その年の現況」で判断

障害者控除は、その年の12月31日時点の現況で判断されます。例えば、年の途中で手帳を取得した場合でも、12月31日時点で手帳を保有していれば、その年の全期間について控除の対象となります。

逆に、年の途中で亡くなった方の場合は、その亡くなった時点の現況で判断されます。特に、手帳を取得していない方が年の中途で亡くなった場合でも、後述する「障害者控除対象者認定書」があれば、控除を受けられる可能性があります。


手帳がなくても控除対象となる二つのケース

いよいよ本題です。障害者控除の適用を受けるための最も一般的な証明書は障害者手帳ですが、税法上の「障害者」の定義は、手帳の保有者に限定されていません。以下の二つのケースでは、手帳がなくても控除の対象となることが認められています。

控除を諦めていた方は、これらの要件に該当しないか確認しましょう。

ケース1:65歳以上の要介護高齢者

一つ目のケースは、65歳以上で、寝たきりなど、要介護認定を受けている高齢者です。自治体が発行する「障害者控除対象者認定書」を取得できれば、手帳がなくても控除の対象となります。

この認定書は、その高齢者が身体上または精神上の障害により、6ヶ月以上にわたり日常生活に支障がある状態であり、その状態が手帳の基準に準じていると市区町村が認めた場合に交付されます。基準は自治体によって若干異なりますが、多くの場合、以下の公的証明書と関連しています。

  • 要介護認定:要介護1〜5のいずれかの認定を受けていること。
  • 寝たきり度:身体障害者手帳の等級に準ずる状態にあること。

この認定書を交付してもらうためには、お住まいの市区町村の高齢者福祉担当窓口に申請が必要です。この制度は、主に介護保険制度の利用者に適用される、非常に重要な制度です。

ケース2:精神障害者保健福祉手帳の交付を受けられない者

二つ目のケースは、精神障害や発達障害などで、精神障害者保健福祉手帳の交付を申請中、または何らかの理由で手帳を持たない方です。この場合も、特定の証明書があれば控除を受けられます。

その証明書とは、「精神上の障害により、常に生活上の援助を必要とする」と認められることを示す医師の診断書や、それに準ずる公的書類です。特に、手帳の取得に抵抗がある方や、手帳の申請手続きをまだ行っていない方が対象となることが多いです。

⚠️ 注意

このケースで控除を受けるためには、納税者ご自身で医師に税法上の障害者控除に関する診断書を作成してもらう必要があります。通常の診断書とは異なる書式や記載内容が求められる場合があるため、事前に税務署や自治体に確認してください。

このケースは、手帳の制度とは別に、税法が定める障害の定義に合致するかどうかを、医療的な証明書によって判断するものです。


「障害者控除対象者認定書」の活用法

手帳がなくても障害者控除を受けるための鍵となるのが、市区町村が発行する「障害者控除対象者認定書」です。これは、特に65歳以上の要介護高齢者のケースで非常に重要となります。

ここでは、認定書を取得するための具体的な手続きと、注意点について解説します。

認定書の申請先と必要書類

障害者控除対象者認定書の申請窓口は、お住まいの市区町村の高齢者福祉担当課または介護保険担当課です。申請の際には、一般的に以下の書類が必要となります。

  • 認定申請書:自治体指定の書式。
  • 対象者の介護保険被保険者証:要介護認定を受けていることを証明するため。
  • 対象者の健康保険証:
  • 申請者(納税者または代理人)の本人確認書類:

自治体は、提出された書類と、既に保有している介護保険の認定情報や、主治医意見書などに基づき、税法上の障害者に準ずる状態にあるかどうかを審査します。

認定書の基準と「特別障害者」の判断

認定書の発行基準は、身体障害者手帳や療育手帳の等級に準じた状態にあるかどうかで判断されます。特に、寝たきり度や認知症の程度が重要な判断材料となります。

認定区分 判定基準の例(自治体による)
障害者 要介護認定で一定以上の基準を満たす、または寝たきり度が低い。
特別障害者 要介護認定で重度の基準を満たす、または寝たきり度が常に重度であり、身体障害者手帳1級・2級に準ずる状態

特別障害者の認定を受けることができれば、控除額が大幅に増えるため、申請時に重度な状態であることを示す情報(主治医意見書など)をしっかりと提供することが重要です。

認定書の「有効期間」と申請の時期

障害者控除対象者認定書は、その年限りのものとして発行されることが一般的です。したがって、翌年以降も控除を受けたい場合は、毎年申請が必要となります。

✅ 成功のコツ

認定書は、控除を受けたい年の12月31日時点の現況に基づいて発行されるため、年末(11月〜12月頃)から翌年1月頃に申請するのが一般的です。ただし、自治体によって申請時期が異なるため、必ず事前に確認して手続きの漏れを防ぎましょう。

この認定書は、住民税の申告時にも必要となるため、大切に保管しておきましょう。


控除を適用するための具体的な手続き

障害者控除の適用を受けるためには、年末調整または確定申告の手続きが必要です。手帳の有無にかかわらず、控除に必要な書類を準備し、正確に申告することが大切です。

ここでは、会社員と個人事業主、それぞれの手続きのポイントを解説します。

会社員(給与所得者)の「年末調整」

会社員の方は、勤務先で行われる年末調整で控除の申告を行います。提出する「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の「障害者」の欄に、控除の対象となる方(ご自身、配偶者、扶養親族)の氏名、マイナンバー、そして障害の区分(特別障害者か一般の障害者か)を記入します。

会社に提出する際、手帳を持っている場合はその手帳の提示または写しが必要となります。手帳がない場合は、「障害者控除対象者認定書」を添付または提示します。これらの書類を提出することで、会社が所得税と住民税の計算に控除を適用してくれます。

個人事業主の「確定申告」

個人事業主や、年収2,000万円を超える会社員などで確定申告が必要な方は、ご自身で申告書を作成します。確定申告書の「障害者控除」の欄に、控除額を記入します。

確定申告書を税務署に提出する際、原則として障害者手帳や認定書の添付は不要ですが、税務署から提示を求められた際にすぐに出せるよう、これらの証明書は必ず保管しておかなければなりません。オンラインで申告するe-Taxを利用する場合も同様です。

控除の「漏れ」を発見した場合の対処法

もし、過去の年末調整や確定申告で障害者控除の申告を忘れていた場合でも、さかのぼって控除を受けることが可能です。これは「更正の請求」という手続きで行います。

⚠️ 注意

更正の請求は、控除を忘れていた年(提出期限)から5年以内に、所轄の税務署に対して行わなければなりません。手続きには、申告書と合わせて、障害者手帳や認定書といった証明書類が必要となります。

過去に遡って控除が認められれば、源泉徴収されていた税金が還付金として戻ってきます。心当たりのある方は、税務署や税理士に相談してみましょう。


よくある質問(FAQ)と次のアクション

障害者控除に関する手続きや適用範囲について、よくある具体的な質問にお答えし、控除を確実に受けるための次のアクションを提案します。

Q1:難病患者は「障害者控除」の対象になるか?

A:難病患者の方が、障害者手帳(身体、精神)の交付を受けている場合は、控除の対象となります。しかし、手帳の基準を満たさない場合でも、65歳以上で要介護認定を受けている場合は、「障害者控除対象者認定書」の取得により控除を受けられる可能性があります。

難病指定医の診断書や特定疾患医療受給者証だけでは、原則として障害者控除の対象にはなりませんが、自治体の認定基準は広いため、まずはお住まいの地域の高齢者福祉担当窓口に相談してみましょう。

Q2:手帳を「申請中」の場合、控除は受けられるか?

A:年の途中で手帳を申請し、12月31日までに手帳が交付された場合は、その年の全期間について控除の対象となります。年末調整の時期に手帳がまだ手元にない場合は、会社にその旨を伝え、交付後に確定申告で対応することも可能です。

ただし、12月31日を過ぎても交付されない場合は、その年の控除は受けられません。手帳がなくても控除対象となるケース(認定書など)に該当しないかを確認してください。

Q3:「特別障害者」と「同居特別障害者」の違いは?

A:特別障害者は、障害の程度が重い人(手帳1・2級など)自身を指し、納税者本人または扶養親族であれば適用されます。同居特別障害者は、その特別障害者である配偶者または扶養親族と常に一つ屋根の下で同居している納税者に適用される、所得税の控除額(75万円)です。

施設に入所している場合は「同居」とは認められませんが、控除の対象外となるわけではありません。その場合は、同居特別障害者ではなく、単なる特別障害者控除(40万円)として申告することになります。

次のアクション:自治体の福祉窓口に「認定書」を相談

ご自身やご家族に障害者手帳がない場合でも、特に65歳以上の要介護高齢者がいる場合は、お住まいの市区町村の高齢者福祉担当窓口に連絡し、障害者控除対象者認定書が取得可能かどうかを相談することが、次の最も重要なアクションです。

「手帳がないが、税制上の障害者控除を受けられるか」という具体的な質問を投げかけ、認定書の申請要件や必要書類を確認しましょう。この認定書一枚で、家計の経済的な負担が大きく軽減される可能性があります。


まとめ

  • 障害者控除は、納税者自身や扶養親族に障害がある場合に、所得から一定額(一般で27万円、特別で40万円など)を控除し、税負担を軽減する重要な制度です。
  • 控除を受けるための最も一般的な証明書は障害者手帳ですが、65歳以上の要介護高齢者は、市区町村が発行する「障害者控除対象者認定書」があれば、手帳がなくても控除の対象となります。
  • 控除の適用を受けるためには、手帳または認定書を準備し、年末調整または確定申告で正確に申告する必要があります。過去5年間の申告漏れは「更正の請求」で取り戻せる可能性があります。

金子 匠

金子 匠

かねこ たくみ55
編集長📚 実務経験 30
🎯 生活サポート🎯 制度・法律

📜 保有資格:
社会福祉士、精神保健福祉士

障害者支援施設で30年間勤務し、施設長を経験。現在はすぐサポ編集長として、障害のある方とご家族が必要な情報にアクセスできる環境づくりに取り組んでいます。「制度は複雑だけど、使えば生活が楽になる」という信念のもと、分かりやすい情報発信を心がけています。

大学卒業後、障害者支援施設に就職し、30年間にわたり現場で支援に携わってきました。生活支援員として10年、サービス管理責任者として15年、そして施設長として5年の経験があります。特に印象に残っているのは、重度の知的障害があり、施設入所が当然と思われていた方が、適切な支援と環境調整により地域での一人暮らしを実現したケースです。「できない」と決めつけず、その人に合った支援を考えることの大切さを学びました。現在は現場を離れ、すぐサポの編集長として、これまでの経験を記事という形で多くの方に届けることをミッションとしています。制度や法律の解説記事では、「専門用語を使わず、中学生でも分かる言葉で」を心がけています。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学で社会福祉を学び、実習で出会った利用者の方々の笑顔に感動したことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

重度の知的障害のある方が、適切な支援により地域での一人暮らしを実現したこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

専門用語を使わず、中学生でも分かる言葉で伝えることを大切にしています。

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読書、散歩

🔍 最近気になっているテーマ

障害者総合支援法の改正動向、ICTを活用した新しい支援の形

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