障害者手帳の等級の決まり方は?審査ポイントを詳しく解説

障害者手帳の等級の決まり方は?審査ポイントを詳しく解説
障害者手帳には、障害の程度に応じて「等級」が設けられており、この等級によって受けられる支援やサービスの内容が変わってきます。「自分の障害はどのくらいの等級になるのだろうか」「審査ではどんなところを見られるのだろうか」と不安に感じている方は多いのではないでしょうか。
手帳の等級は、単に障害の重さを表すだけでなく、必要な支援の度合いを公的に証明する重要な指標となります。この記事では、身体、精神、療育の三つの手帳について、等級がどのように決まるのか、審査における具体的なポイントや、申請時に注意すべき点を詳しく解説します。
等級決定の仕組みを理解することで、安心して申請手続きを進め、ご自身に本当に必要なサポートを受けるための第一歩を踏み出しましょう。
身体障害者手帳:医学的基準に基づく等級判定
身体障害者手帳の等級は、「身体障害者福祉法」に基づき、定められた医学的な基準と身体機能の測定結果によって決定されます。この手帳の等級は1級から7級までありますが、手帳が交付されるのは1級から6級までです(7級は二つ以上の障害が重複する場合などに6級となります)。
審査は、指定医によって作成された診断書と意見書に基づいて行われ、どの部位の障害であるかによって、判定基準が細かく定められています。
障害部位ごとの「機能レベル」が重要
身体障害者手帳の等級は、障害の種類(肢体不自由、視覚障害、聴覚障害、内部障害など)ごとに、その機能がどの程度失われているかによって判断されます。例えば、肢体不自由の場合、「関節の可動域」「筋力」「巧緻性(こうちせい:手先の器用さ)」などが詳細に測定されます。
- 視覚障害:視力、視野の欠損の程度(例:両眼の視力の和が0.01以下の場合は1級)
- 聴覚障害:聴力レベル、平衡機能の障害の程度(例:両耳の聴力レベルが100dB以上の場合は2級)
- 内部障害(心臓、腎臓など):人工透析の有無、心臓の機能、呼吸機能の検査結果(例:心臓機能の低下度を示すNYHA分類など)
診断書には、これらの客観的な測定値や検査結果が詳細に記載される必要があり、このデータが等級審査の根拠となります。
「日常生活動作」の困難度評価
医学的な測定値だけでなく、その障害が日常生活を送る上でどの程度の困難をもたらしているか(日常生活動作:ADL)も、等級を判断する際の重要な要素です。例えば、単に片足の機能が失われているだけでなく、それが原因で歩行が極めて困難である、といった状況です。
💡 ポイント
診断書を作成する際には、数値だけでなく、「歩行時の不安定さ」「食事動作の困難さ」「排泄動作の困難さ」など、具体的な生活上の支障を医師に正確に伝えることが、適切な等級認定を受けるための鍵となります。
特に、内部障害の場合、外見からは分かりにくいため、日常生活での息切れの頻度、疲労の程度、服薬の状況などが、等級決定に大きな影響を与えます。
重複障害の場合の「統合認定」
一つの体に二つ以上の異なる身体障害がある場合(例:肢体不自由と視覚障害)、それぞれの障害の等級を合計して等級を決定するわけではありません。これは「統合認定」と呼ばれ、複数の障害が組み合わさることで生じる生活上の困難度を総合的に評価し、最終的な等級を決定します。
例えば、片腕の障害が6級、片足の障害が6級の場合、これらを合わせて5級とされるなど、等級が繰り上げになることがあります。審査機関が、複数の障害による生活全体の制約を判断し、最も重い等級を主軸として総合的に判断します。
精神障害者保健福祉手帳:生活のしづらさに基づく等級判定
精神障害者保健福祉手帳の等級は、「精神保健福祉法」に基づき、ご本人の精神疾患が日常生活や社会生活にどれだけ制限を加えているかという「能力障害の状態」に着目して決定されます。等級は1級から3級まであり、1級が最も重度です。
身体手帳のような客観的な数値基準が少ないため、医師の診断書における「記載内容の具体性」が非常に重要になります。
判断の軸となる「能力障害の状態」
精神障害者保健福祉手帳の審査では、「能力障害の状態」が評価の中心となります。これは、ご本人の精神疾患によって、日常生活や社会生活に必要な能力がどの程度損なわれているかを示すものです。
評価項目は、以下の6つのカテゴリーに分けられます。
- 日常生活能力の程度:食事、清潔保持、金銭管理、服薬などの項目
- 家事能力:調理、掃除などの家事の遂行能力
- 対人交流能力:他人とのコミュニケーション、集団での適応能力
- 身辺の安全保持及び危機対応能力:危険察知、突発的な事態への対応能力
- 社会生活の能力:通勤・通学、作業遂行能力、余暇活動の活用
これらの項目について、全くできない、援助があれば可能、ほとんど問題ない、のいずれかで評価され、この評価結果が等級決定の核心となります。
医師の診断書における「具体的な記載」
精神障害者保健福祉手帳の等級を決定づけるのは、主治医が作成する診断書です。審査を行う都道府県や政令指定都市の精神保健福祉センターは、診断書に記載された「具体的な日常生活の様子」を基に審査を行います。
「診断書では、『抑うつ状態にある』といった抽象的な表現ではなく、『朝は起き上がれず、週に3回は食事の準備ができない』『公共交通機関を利用して一人で通院することは困難で、家族の付き添いが必要である』など、具体的なエピソードや頻度を盛り込むことが望ましいです。」
— 精神保健福祉士の助言
ご本人が日頃感じている生活の困難さや、家族の介護・援助の状況を、受診時に主治医に詳しく伝えることが、適切な診断書作成に繋がります。
等級ごとの「生活制限の目安」
精神障害者保健福祉手帳の等級は、能力障害の重さによって以下のように分類されます。
| 等級 | 日常生活の制限の目安 |
|---|---|
| 1級 | 日常生活が著しい制限を受けるか、または常時援助を必要とする程度。 |
| 2級 | 日常生活が著しい制限を受けるか、または援助なしでは困難な程度。 |
| 3級 | 日常生活や社会生活に一定の制限を受ける程度。 |
この「生活制限の目安」に照らし合わせ、提出された診断書や意見書、病歴・治療経過を確認し、総合的に判断されます。特に1級は、常に誰かの介護や援助が必要な状態が想定されています。
療育手帳:知的機能と適応行動に基づく判定
療育手帳の等級は、他の二つの手帳と異なり、法律で全国一律の基準が定められていません。自治体ごとに独自の名称と等級区分が用いられますが、判定の基本となるのは「知的機能(知能指数:IQ)」と「適応行動の障害の程度」の二つです。
審査は、児童相談所(18歳未満)または知的障害者更生相談所(18歳以上)で行われます。
判定の鍵となる「知能指数(IQ)」
療育手帳の等級を決定する際の最も客観的な指標の一つが、知能検査によって測定される知能指数(IQ)です。多くの自治体で、IQの数値が等級区分の目安として用いられています。
- 重度(最重度):IQが概ね20以下
- 重度:IQが概ね35以下
- 中度:IQが概ね50以下
- 軽度:IQが概ね70以下
ただし、IQの数値だけで等級が決定されるわけではありません。この数値は、あくまで総合的な判断のための重要な参考情報の一つであることを理解しておく必要があります。
日常生活における「適応行動の評価」
IQの数値と同様に重要視されるのが、「適応行動の障害の程度」です。これは、知的障害のある方が、年齢や文化的な基準に照らして、日常生活や社会生活においてどの程度の困難を抱えているかを評価するものです。
評価項目は、コミュニケーション能力、自己管理能力、社会性、学業、仕事、余暇活動など多岐にわたります。例えば、IQが同じ程度でも、他者とのコミュニケーションが極めて困難な場合は、適応行動の評価が低くなり、より重い等級に認定される可能性があります。
⚠️ 注意
判定を受ける際は、普段の生活におけるご本人の具体的な様子や、介助が必要な場面などをまとめた情報(家庭内での様子、学校・職場での様子など)をご家族や支援者が詳細に伝えることが非常に重要です。
自治体ごとの「等級名称と区分」
前述の通り、療育手帳の等級名称は地域によって異なります。主な区分と名称の例は以下の通りです。
| 自治体名(例) | 最重度 | 重度 | 中度 | 軽度 |
|---|---|---|---|---|
| 東京都(愛の手帳) | 1度(最重度) | 2度 | 3度 | 4度(軽度) |
| 多くの自治体 | A1 | A2 | B1 | B2 |
ご自身がどの等級に該当するかは、お住まいの自治体の福祉担当窓口や判定機関の資料を参照して確認してください。名称が異なっても、支援の内容は概ね重度であるほど手厚くなる傾向があります。
等級審査をスムーズに進めるための成功のコツ
手帳の等級は、一度決定されると、生活の質や受けられる支援に長期的に影響します。そのため、申請時には、ご自身の障害や生活の困難さを正確に伝え、適切な等級認定を受けるための準備を万全にしておくことが大切です。
ここでは、三つの手帳に共通して使える、審査をスムーズにするための具体的なコツをご紹介します。
医師や判定員への「情報共有の具体性」
等級審査の根拠となる診断書や判定資料の質は、ご本人やご家族が主治医や判定員に提供する情報に大きく左右されます。抽象的な表現ではなく、具体的なエピソードや数値を交えて伝える
ことが重要です。
- 記録をつける:体調不良や困難が生じた日時、具体的な内容(例:〇月〇日に階段で転倒した、〇時にパニックを起こした)、その時の対処法などを日誌やメモとして記録しておきましょう。
- 生活状況シートの活用:日常生活の困難な動作や、家族が介護に費やしている時間などをまとめたシートを作成し、医師や判定員に渡すと、状況が伝わりやすくなります。
特に精神障害や知的障害の場合、外見からは分かりにくい困難さが多いため、具体的な情報提供が欠かせません。
申請は「体調が良い時」よりも「通常時」を伝える
障害や病気の症状には波があることが多いため、申請時や診察時に体調が良いと、障害の程度が軽く評価されてしまう可能性があります。医師や判定員には、体調が良い日ではなく、最も症状が重い状態や、平均的な状態を正確に伝えることが重要です。
面接や診察の場では緊張してしまい、普段の困難さをうまく話せないこともあります。その場合は、事前に作成したメモや日誌を読み上げる、またはご家族に同席してもらい、代わりに説明してもらうといった対策を取りましょう。
✅ 成功のコツ
診断書作成を依頼する際、医師に「この診断書は手帳の申請に使われること」「適切な等級を受けることが生活に不可欠であること」を伝え、等級認定基準を踏まえた記載をお願いすることも重要です。
判定結果に納得できない場合の「不服審査請求」
提出した資料に基づいて等級が決定されたものの、その結果にご自身やご家族が納得できない場合(例:想定よりも軽い等級に認定された)、不服審査請求(行政不服審査法に基づく)を行うことができます。
不服審査請求は、裁決の通知を受け取った日から3ヶ月以内など、期限が定められています。請求を行うには、なぜその決定が不当だと考えるのか、具体的な根拠を明確にした書面を作成し、提出する必要があります。この手続きは複雑なため、必要に応じて福祉の専門家や弁護士に相談することを検討してください。
よくある質問(FAQ)と今後のアクション
手帳の等級決定は、ご本人の将来にわたる支援に影響するため、不安や疑問が多く生じます。ここでは、等級認定に関するよくある質問にお答えし、次のアクションを明確にします。
Q1:一度決まった等級は「永久に変わらない」のか?
A:いいえ、手帳の種類によって異なりますが、等級は変わることがあります。特に精神障害者保健福祉手帳(2年ごとの更新)や療育手帳(定期的な再判定)は、障害の状態の変化を反映するために、等級が変動する可能性があります。
身体障害者手帳でも、障害が軽減する見込みがあるとされた場合や、病状が進行した場合などは、再認定の手続きにより等級が変更されることがあります。ご自身の状態が変わったと感じたら、遠慮せず主治医や自治体の窓口に相談し、再認定の申請を検討しましょう。
Q2:手帳の等級は「障害年金」の等級と同じになるか?
A:必ずしも同じになるとは限りません。障害者手帳と障害年金は、根拠とする法律や目的が異なるため、それぞれ独立して審査が行われます。例えば、精神障害者保健福祉手帳の2級と、障害年金の2級は、基準が似ているため一致するケースが多いですが、身体障害や知的障害では、等級が異なることもあります。
両方の制度を申請する際は、それぞれに必要な診断書を、それぞれの制度の認定基準を理解している医師に作成してもらうことが大切です。
Q3:手帳の等級が低いと「支援が受けられない」のか?
A:手帳の等級が軽い(数字が大きい、または軽度)からといって、全ての支援が受けられないわけではありません。税制優遇や交通費割引など、多くの制度は等級に応じて内容が変わるものの、手帳を持っていること自体が支援の入り口となります。
ただし、重度訪問介護や特別な医療費助成など、一部の特に手厚い支援は、1級や重度(A判定)といった上位等級のみが対象となる場合があります。利用したいサービスがどの等級を対象としているか、事前に確認しましょう。
次のアクション:申請の前に「相談支援事業所」を活用
手帳の等級認定を確実にし、その後のサービス利用に繋げるためには、地域の相談支援事業所を活用することが非常に有効です。相談支援専門員は、手帳の申請手続き、必要な診断書のポイント、そして等級認定後に利用できる福祉サービスの計画作成までをサポートしてくれます。
特に、初めて手帳を申請する方や、どの等級になるか不安な方は、専門家のサポートを得ることで、手続きの負担を減らし、適切な支援をスムーズに受け始めることができます。
まとめ
- 身体障害者手帳は、医学的な機能測定と日常生活動作の困難度に基づき1~6級で等級が決定され、複数の障害は「統合認定」されます。
- 精神障害者保健福祉手帳は、精神疾患による「能力障害の状態」、すなわち日常生活や社会生活の制限の程度に基づき1~3級で等級が決定されます。
- 療育手帳は、知能指数(IQ)と適応行動の評価を総合的に判断して決定されます。適切な等級認定を受けるためには、日々の困難さを具体的なエピソードで医師や判定員に伝えることが成功の鍵となります。

高橋 健一
(たかはし けんいち)50歳📜 保有資格:
社会福祉士
市役所の障害福祉課で20年間勤務し、制度の運用や窓口対応を担当してきました。「制度は難しい」と言われますが、知れば使える便利なツールです。行政の内側から見た制度のポイントを、分かりやすくお伝えします。
大学卒業後、地方自治体に入庁し、障害福祉課に配属されて20年。障害者手帳の交付、障害福祉サービスの支給決定、各種手当の申請受付など、幅広い業務を経験しました。行政職員として心がけていたのは、「制度を正確に伝えつつ、温かく対応する」こと。窓口に来られる方は不安を抱えています。制度の説明だけでなく、その方の状況に合わせた情報提供を大切にしてきました。退職後、民間の相談支援事業所に転職し、今度は「申請する側」の視点も理解できました。行政と民間、両方の経験を活かして、制度の仕組みだけでなく、「実際にどう使うか」まで伝えられるのが強みです。記事では、障害者総合支援法、障害者雇用促進法、各種手当など、制度の正確な情報を「難しい言葉を使わず」解説します。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
公務員として地域に貢献したいと思い、障害福祉課に配属されたことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
窓口対応で、制度を活用して生活が楽になったと感謝されたこと。行政と民間両方の視点を得られたこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
制度の正確な情報を「難しい言葉を使わず」伝えることを大切にしています。
🎨 趣味・特技
将棋、歴史小説
🔍 最近気になっているテーマ
マイナンバーと福祉制度の連携、自治体DXの進展





