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障害者手帳と医療費助成制度の関係をわかりやすく解説

📖 約32✍️ 金子 匠
障害者手帳と医療費助成制度の関係をわかりやすく解説
障害者手帳と医療費助成制度の関係は複雑ですが、経済的負担を軽減するために重要です。主な助成制度は、障害者総合支援法に基づく「自立支援医療」(自己負担1割)と、自治体独自の「心身障害者医療費助成制度」です。手帳の種類により利用できる自立支援医療の種類が異なり、自治体助成は手帳の等級と所得制限が前提となります。特に重度の方は、これらの制度を併用することで医療費の自己負担をほぼゼロにできます。これらの制度を最適に活用するためには、病院の医療ソーシャルワーカーや相談支援専門員に具体的なシミュレーションを依頼することが最も確実です。

障害者手帳と医療費助成制度の関係をわかりやすく解説

障害のある方やご家族にとって、医療費の負担は生活を支える上で非常に大きな問題です。国や自治体からは、この医療費の負担を軽減するためのさまざまな助成制度が提供されています。これらの制度を理解し、適切に活用することで、経済的な不安を大きく減らすことができます。

特に、「障害者手帳を持っていれば、全ての医療費が無料になるのか?」「手帳の種類によって使える制度が違うのか?」といった疑問は尽きません。医療費助成制度には、手帳を前提とするものと、手帳とは別の基準で適用されるものがあり、その関係性は複雑です。これらの制度を十分に活用できている方は、まだ少ないのが現状です。

この記事では、三つの障害者手帳(身体、精神、療育)が、主要な医療費助成制度とどのように関わり合っているのかを、一つひとつ分かりやすく整理して解説します。

正しい知識を身につけ、安心して治療や療養に専念できる環境を整えましょう。


日本の医療費助成制度の全体像

障害のある方々が利用できる医療費助成制度は、大きく分けて「障害者総合支援法に基づく制度」「難病法に基づく制度」「自治体独自の制度」の三つの柱で構成されています。障害者手帳は、これらのうち特定の制度を利用するための重要な「証明書」として機能します。

まず、手帳との関わりが深い主要な二つの制度の基本を押さえておきましょう。

自立支援医療制度(公費負担医療)

自立支援医療制度は、心身の障害を除去・軽減するための医療費について、自己負担額を軽減する公費負担医療制度です。これは障害者総合支援法に基づいており、以下の三種類があります。

  • 更生医療:18歳以上の身体障害者手帳を持つ方で、その障害を除去・軽減する手術や治療が対象。(例:人工関節置換術、腎臓機能障害の人工透析など)
  • 育成医療:18歳未満の身体障害がある児童で、その障害を除去・軽減する医療が対象。
  • 精神通院医療:全ての年齢の精神障害を持つ方で、精神科への通院医療費が対象。

この制度を利用する場合、医療費の自己負担額は原則1割になります(一般の保険診療は2割または3割)。さらに、世帯の所得に応じて月々の自己負担上限額が設けられているため、高額な治療を継続して受けても安心です。

心身障害者(児)医療費助成制度

「心身障害者(児)医療費助成制度」(自治体により名称は異なります)は、障害者手帳を持っている方を対象に、通常の医療保険や自立支援医療などで自己負担した残りの医療費を、自治体が補助する制度です。これは、自治体独自の制度であることが多く、地域によって助成の対象範囲や助成率が異なります。

多くの自治体では、重度の障害を持つ方(例:身体障害者手帳1級・2級など)を対象に、医療費の自己負担分を全額または一部助成しています。この制度の適用を受ければ、自己負担が大幅に軽減されます。

💡 ポイント

この自治体独自の制度は、障害者手帳を保有していることが前提条件となります。手帳を持っていない方は、原則としてこの制度の対象外となります。


三つの手帳と自立支援医療の関係

自立支援医療制度は、障害者手帳の有無が利用資格に直結する制度です。しかし、手帳の種類によって利用できる医療の種類が明確に分かれているため、その関係性を整理することが重要です。

手帳の種類ごとに、利用できる自立支援医療の種類を解説します。

身体障害者手帳と「更生医療・育成医療」

身体障害者手帳を持つ方は、主に更生医療(18歳以上)または育成医療(18歳未満)の対象となります。これらの医療は、障害の機能回復や維持を目的とした外科的治療やリハビリテーションなどが中心です。

  • 人工透析:腎臓機能障害(身体障害者手帳)を持つ方が、透析治療を受ける場合に適用されます。
  • ペースメーカー移植術:心臓機能障害を持つ方が、ペースメーカーの植え込み手術を受ける場合に適用されます。
  • 抗精神病薬:精神的な障害に伴い身体機能に影響がある場合など、例外的に身体障害者手帳の保持者が精神科の通院医療を受けるケースもありますが、基本は精神手帳が主となります。

申請には、身体障害者手帳の写しと、指定医による更生医療意見書が必要です。手帳の等級そのものは助成の有無には影響しませんが、治療の対象が手帳に記載された障害と一致している必要があります。

精神障害者手帳と「精神通院医療」

精神障害者保健福祉手帳を持つ方は、精神通院医療の対象となります。これは、精神疾患の治療を目的とした通院医療費を助成するものであり、入院費やデイケアなどの費用は含まれません。

「精神通院医療のおかげで、毎月の薬代と診察代の自己負担が1割になり、上限額も決まっているので、経済的な不安なく治療を続けられています。この制度は、継続的な服薬が必要な私たちにとって生命線のようなものです。」

— 40代・精神障害者保健福祉手帳保持者

精神障害者手帳の申請と、精神通院医療の申請は同時に行うことが可能です。特に、手帳がなくても精神通院医療の申請は可能ですが、手帳を持っていることで手続きがスムーズになる場合があります。

療育手帳と「自立支援医療」

療育手帳(知的障害)を持つ方で、知的障害に伴う精神疾患を併発している場合、その精神科への通院医療費について精神通院医療の対象となることがあります。

純粋に知的障害のみである場合、療育手帳が自立支援医療(更生医療・育成医療)の利用資格に直接繋がることは通常ありません。しかし、知的障害と身体障害を重複して持つ場合(重複障害)は、身体障害者手帳を取得することで、更生医療の対象となり得ます。

知的障害のある方が身体的な治療を必要とする場合は、重複して手帳を申請・取得することが、医療費助成の適用範囲を広げる鍵となります。


心身障害者医療費助成制度の徹底活用

自立支援医療で1割負担となった医療費や、それ以外の一般診療の医療費をさらに軽減してくれるのが、自治体独自の心身障害者(児)医療費助成制度です。この制度は、手帳の等級と所得制限が非常に重要になります。

ここでは、自治体独自の助成制度の活用ポイントを解説します。

自治体独自の「対象者と助成範囲」

心身障害者医療費助成制度は、市区町村や都道府県がその財源で実施しているため、地域によって以下の点が大きく異なります。

  • 対象となる手帳の等級:重度(身体1級・2級、療育Aなど)のみを対象としている自治体もあれば、比較的軽度(身体3級・4級など)まで対象を広げている自治体もあります。
  • 助成の範囲:自己負担分を全額助成(無料化)する自治体もあれば、月額数百円の自己負担金を設けている自治体もあります。
  • 所得制限:ご本人または扶養義務者の所得が一定額を超えると、助成の対象外となる場合があります。

⚠️ 注意

この制度は、手帳の等級と所得制限が利用の可否を決定します。手帳を取得したら、すぐに福祉担当窓口で、ご自身の等級と所得で利用可能かを確認しましょう。

自立支援医療との「併用」のメリット

心身障害者医療費助成制度は、自立支援医療制度と併用することができます。この併用こそが、医療費の負担をほぼゼロにする最強の組み合わせです。

併用した場合の計算の流れ:

  1. 通常の保険診療(3割負担)を受ける。
  2. まず自立支援医療制度が適用され、自己負担が1割に軽減される。
  3. 次に心身障害者医療費助成制度が適用され、自立支援医療で発生した1割負担分が、自治体によって助成される(全額助成の場合)。

これにより、継続的な医療が必要な方でも、自己負担なしで治療を続けることが可能になります。申請手続きは、両方の制度を同時に行うことが望ましいです。

申請の「漏れ」を防ぐための確認事項

自治体独自の助成制度を利用するためには、改めて市区町村の窓口で申請手続きを行い、「医療証」(マル福や障がい者医療などの名称)を交付してもらう必要があります。手帳を交付されただけでは、自動的に助成を受けられるわけではありません。

以下の点を必ず確認しましょう。

  • 医療証の有効期限:毎年更新が必要な場合が多いです。
  • 医療証の提示:医療機関の窓口では、健康保険証と自立支援医療受給者証、そしてこの医療証の三点セットを必ず提示する必要があります。
  • 償還払い:医療証を提示できなかった場合、一度全額を支払い、後日自治体に申請して払い戻しを受ける「償還払い」の手続きが必要となります。

手帳以外の医療費助成制度と連携

障害者手帳の有無にかかわらず、利用できる医療費助成制度も存在します。特に「難病」や「長期的な精神疾患」の治療を行う場合、手帳の申請とは別に、これらの制度も併せて活用することが重要です。

ここでは、手帳との連携が重要となるその他の制度を解説します。

難病患者の「医療費助成制度」

「難病の患者に対する医療等に関する法律」(難病法)に基づき、国が定める指定難病と診断された方は、手帳の有無にかかわらず、医療費の自己負担額が軽減される助成を受けることができます。

この制度は、重度の難病患者を対象としており、自己負担が2割となり、やはり所得に応じた月々の自己負担上限額が設けられます。難病患者の方で、身体障害者手帳の基準も満たしている場合は、難病の助成と手帳に基づく助成(自立支援医療や自治体助成)のどちらか有利な方を選択することになります。

どちらの制度が適用されるか、またどのように連携させるかは、複雑な判断が必要なため、専門家(相談支援専門員や自治体の担当者)に相談することが不可欠です。

精神障害と「高額療養費制度」

高額療養費制度は、医療費が高額になった場合に、自己負担額が一定額を超えた分について払い戻しを受けられる、全ての国民が利用できる制度です。精神通院医療や難病の助成制度は、この高額療養費制度の仕組みを応用して、自己負担上限額を設けています。

例えば、精神障害者保健福祉手帳を持っていない方でも、長期の精神科治療で医療費が高額になった場合、高額療養費制度を利用することで負担を軽減できます。しかし、精神通院医療制度の方が自己負担上限額が低く設定されているケースが多いため、精神疾患の治療が長期にわたる場合は、手帳を取得し、精神通院医療の申請を行うことが最善策となります。

複数の助成制度の「優先順位」

複数の医療費助成制度(例:自立支援医療、難病助成、自治体助成、高額療養費)を同時に利用できる場合、適用には優先順位があります。

  1. 公費負担医療(自立支援医療、難病助成など)がまず適用され、自己負担額が軽減される。
  2. 残った自己負担額に対して、自治体独自の医療費助成が適用される。
  3. これら全てを適用した後でも、自己負担額が高額療養費制度の上限を超えた場合は、払い戻しの対象となる。

この複雑な優先順位を理解し、適切にサービスを受けるためには、担当の医療ソーシャルワーカー相談支援専門員にシミュレーションしてもらうことが最も確実な方法です。


よくある質問(FAQ)と次のアクション

障害者手帳と医療費助成制度について、利用者からよく寄せられる疑問にお答えし、安心して支援を受けるための次のアクションを提案します。

Q1:手帳を取ると「全ての病気の治療費」が無料になるか?

A:いいえ、必ずしも全てが無料になるわけではありません。無料化の対象となるのは、主に自治体独自の心身障害者医療費助成制度の適用を受けられる場合です。この助成が受けられるのは、通常、重度の障害を持つ方に限られます。

また、この助成が適用されたとしても、健康保険の適用外となる自由診療や、自費でのサービス(例:差額ベッド代、健康食品など)は助成の対象外となります。手帳はあくまで公的な医療費助成を受けるための資格証であり、保険診療の範囲内での助成となります。

Q2:精神通院医療は「入院費」も対象になるか?

A:いいえ、自立支援医療(精神通院医療)の対象となるのは、精神科の通院医療費と、それに伴う薬代、訪問看護の費用などです。精神科への入院費は対象外です。

精神科の入院費が高額になった場合は、一般の高額療養費制度や、自治体独自のその他の生活支援制度を活用して負担軽減を図る必要があります。

Q3:医療費助成は「所得制限」があるか?

A:主要な医療費助成制度の多くには、所得制限が設けられています。

  • 自立支援医療:世帯の所得(住民税の課税状況)に応じて、月々の自己負担上限額が設定されます。所得が非常に高い場合は、上限額が高くなります。
  • 心身障害者医療費助成制度:自治体によっては、扶養義務者(親など)の所得に基づき、助成の対象外となる所得制限が設けられていることがあります。

所得制限の基準は毎年見直されるため、利用資格や自己負担額が変わる可能性があることを理解しておきましょう。

次のアクション:医療ソーシャルワーカーに相談

あなたやご家族が最も有利な形で医療費助成を受けるための次のアクションは、治療を受けている病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)または地域の相談支援事業所の専門員に相談することです。

MSWは、ご本人の診断名、手帳の有無、世帯の所得状況などに基づき、どの制度をどのように組み合わせるのが最も自己負担が少なくなるかを具体的にシミュレーションしてくれます。まずは、「医療費の負担が重いので、利用できる助成制度について知りたい」と相談してみましょう。


まとめ

  • 障害者手帳と医療費助成制度の関係は、自立支援医療制度自治体独自の心身障害者医療費助成制度を中心に構成されます。
  • 自立支援医療(更生医療、育成医療、精神通院医療)は、手帳の種類によって利用できる医療が分かれており、自己負担が原則1割となります。
  • 自治体独自の助成は、手帳保有者を対象に、自立支援医療などで残った自己負担分をさらに軽減(無料化)するものであり、手帳の等級と所得制限が利用の鍵となります。

金子 匠

金子 匠

かねこ たくみ55
編集長📚 実務経験 30
🎯 生活サポート🎯 制度・法律

📜 保有資格:
社会福祉士、精神保健福祉士

障害者支援施設で30年間勤務し、施設長を経験。現在はすぐサポ編集長として、障害のある方とご家族が必要な情報にアクセスできる環境づくりに取り組んでいます。「制度は複雑だけど、使えば生活が楽になる」という信念のもと、分かりやすい情報発信を心がけています。

大学卒業後、障害者支援施設に就職し、30年間にわたり現場で支援に携わってきました。生活支援員として10年、サービス管理責任者として15年、そして施設長として5年の経験があります。特に印象に残っているのは、重度の知的障害があり、施設入所が当然と思われていた方が、適切な支援と環境調整により地域での一人暮らしを実現したケースです。「できない」と決めつけず、その人に合った支援を考えることの大切さを学びました。現在は現場を離れ、すぐサポの編集長として、これまでの経験を記事という形で多くの方に届けることをミッションとしています。制度や法律の解説記事では、「専門用語を使わず、中学生でも分かる言葉で」を心がけています。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学で社会福祉を学び、実習で出会った利用者の方々の笑顔に感動したことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

重度の知的障害のある方が、適切な支援により地域での一人暮らしを実現したこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

専門用語を使わず、中学生でも分かる言葉で伝えることを大切にしています。

🎨 趣味・特技

読書、散歩

🔍 最近気になっているテーマ

障害者総合支援法の改正動向、ICTを活用した新しい支援の形

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