障害者手帳を家族が代わりに申請する際の注意点

障害者手帳を家族が代わりに申請する際の注意点
障害者手帳は、障害のある方が様々な公的支援を受けるための重要な証明書です。しかし、ご本人が病状や障害の特性、あるいは手続きの煩雑さから、ご自身で申請手続きを行うことが難しいケースは少なくありません。そうした状況では、ご家族や支援者が代わりに申請を行う「代理申請」が重要な役割を果たします。
代理申請はご本人にとって大きなサポートになりますが、手続きにはご本人とは異なる多くの書類や注意点が存在します。「何を持っていけば良いのか」「どんなことに気をつけなければいけないのか」と悩まれているご家族の方も多いでしょう。この記事では、三つの障害者手帳の代理申請について、必要な手順、必要書類、そしてスムーズに進めるための具体的な注意点を詳しく解説します。
正しい知識を持って、安心して代理申請を進め、ご家族の支援を確実に受けられるようにしましょう。
代理申請が可能なケースと基本的な手順
障害者手帳の申請は、原則としてご本人が行うものですが、疾病や障害の状況によってご本人の申請が困難な場合は、ご家族が代理人として申請を行うことが認められています。この代理申請の仕組みは、手帳を必要とする方々が円滑に制度を利用するために不可欠です。
ここでは、代理申請の対象者と、三つの手帳に共通する基本的な手順を解説します。
代理人となれる「家族の範囲」
障害者手帳の申請における代理人として認められるのは、一般的に以下の範囲のご家族です。
- 配偶者
- 親権者、扶養義務者(子ども、父母など)
- 後見人(成年後見人など)
- その他、ご本人に代わって申請手続きを行うことが適切だと認められる親族
代理申請を行う際は、ご本人との関係性を証明するための書類(住民票、戸籍謄本など)が必要になる場合があります。特に、成年後見人が代理人となる場合は、登記事項証明書といった法的な証明が必要です。
代理申請の「基本的な流れ」
障害者手帳の代理申請は、ご本人が申請する場合と基本的に同じ流れで進みますが、代理人としての手続きが追加されます。
- 相談:まずはお住まいの市区町村の福祉担当窓口に相談し、申請に必要な書類一式と代理申請に必要な追加書類を確認します。
- 診断書の取得:指定医(身体・精神)または判定機関(療育)で、手帳申請用の診断書や意見書を作成してもらいます。
- 代理申請:必要書類を全て揃え、ご本人の代わりに窓口で申請手続きを行います。
- 手帳の交付:審査後、自治体からご本人または代理人に手帳が交付されます。
代理申請では、窓口での本人確認が二重になるため、必要書類の漏れがないかを特に慎重に確認する必要があります。
「本人署名」の必要性と対応
申請書には、ご本人の氏名や住所などの情報に加えて、原則としてご本人の署名(または記名・押印)が必要です。しかし、ご本人が病状や障害により署名ができない場合があります。
💡 ポイント
ご本人が署名できない場合、申請書にその旨を記載するか、自治体によっては代理人による署名と、ご本人が署名できない理由書の提出を求められることがあります。事前に窓口に確認し、必要な書式を準備しておきましょう。
ご本人の意思確認が難しい場合は、成年後見人制度を利用するなど、法的な手続きが必要になることもあります。まずは、ご本人の現在の状況を正直に窓口に伝えることが大切です。
三つの手帳別:代理申請に必要な追加書類
代理申請を行う場合、ご本人の書類(申請書、診断書、写真など)に加えて、「代理人であること」を証明するための書類を提出しなければなりません。この代理人の証明書類は、手帳の種類にかかわらず共通していますが、確認の厳格さが異なることがあります。
ここでは、代理申請で必ず必要となる主要な書類と、準備のポイントを解説します。
代理人自身の「本人確認書類」
窓口で申請手続きを行う代理人自身の身元を証明するための書類が必須です。これは、手続きが正当な人物によって行われていることを担保するために重要です。
- 顔写真付きのもの(1点):マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど
- 顔写真のないもの(2点):健康保険証、年金手帳、公共料金の領収書など
有効期限内の書類であることを確認し、複数点求められる可能性があるため、あらかじめ多めに準備しておきましょう。特にマイナンバーカード(個人番号カード)は、本人確認書類として最も優先されます。
ご本人との関係を証明する書類
代理申請では、代理人がご本人とどのような関係にあるか(配偶者、親、親族など)を公的に証明する必要があります。これは、第三者による不正な申請を防ぐための重要な手続きです。
一般的に、ご本人と代理人が同一世帯であれば、住民票の写し(続柄が記載されたもの)で関係性を証明できます。別世帯の場合は、戸籍謄本など、ご本人との親族関係が確認できる書類が必要になることがあります。
⚠️ 注意
住民票や戸籍謄本は、発行から3ヶ月以内など、有効期限が定められている場合があります。申請直前に取得するようにしましょう。
「委任状」の作成と重要な役割
代理申請において、ご本人の意思を明確にするために最も重要な書類が「委任状」です。委任状には、「誰が」「誰に」「何を委任したのか」を具体的に記載する必要があります。
記載事項の例:
- 委任者(ご本人)の氏名、住所、生年月日、署名
- 受任者(代理人)の氏名、住所、ご本人との関係
- 委任する内容(例:障害者手帳の新規申請手続き一切)
委任状の書式は自治体のウェブサイトからダウンロードできることが多いです。ご本人が病状などで作成が困難な場合は、前述の「署名ができない理由書」と合わせて、窓口で対応を確認してください。
診断書作成における家族の役割と注意点
障害者手帳の等級を決定づけるのは、医師や判定員が作成する診断書や意見書です。代理申請の場合、ご本人が診察や面談に同席できない、または十分な意思表示ができない状況が想定されます。そのため、ご家族がご本人の状況を正確に伝えることが非常に重要になります。
ここでは、診断書作成時にご家族が果たすべき役割と、留意すべき点について詳しく解説します。
生活の困難さを伝える「情報提供の具体性」
診断書作成のために医師の診察を受ける際、ご家族は代理人として診察に同席し、日頃のご本人の生活状況や介護の必要性を具体的に伝える役割を担います。医師は、この情報を基に、手帳の等級基準に照らし合わせた診断書を作成するためです。
- 身体障害:「自分で食事はできるが、着替えや入浴は全介助が必要」「歩行は可能だが、50メートル以上は休憩が必要」など、介助の具体的な必要度を伝えます。
- 精神障害:「毎朝起き上がれない日が週に3日ある」「一人で電車に乗れない」「対人関係で常にトラブルが生じる」など、日常生活や社会生活の制限を具体的に伝えます。
事前に、ご本人の困難な状況や介助内容をメモや日誌に記録しておくと、診察時に正確に伝えることができます。
療育手帳特有の「判定機関への同席」
療育手帳(知的障害)の場合、申請には児童相談所(18歳未満)または知的障害者更生相談所(18歳以上)での判定が必要です。この判定の際、ご本人が知能検査や面談を受けることになりますが、ご家族の同席と情報提供が必須となります。
「判定員は、知能検査の結果だけでなく、ご家族からの情報提供を通じて、ご本人の日常生活における適応行動の様子を評価します。『家でどのような役割を担っているか』『学校や職場での対人関係はどうか』など、具体的な生活の様子が、等級決定に大きく影響します。」
— 知的障害者更生相談所の判定員
この判定面談で伝える情報が、療育手帳の等級(重度・軽度)を決定づける鍵となるため、ご家族は最も重要な役割を担うことになります。
診断書が「等級基準」を満たしているか確認
診断書を医師から受け取った後、可能であれば、記載内容が申請する手帳の等級基準に照らして適切かどうかを、ご家族自身で確認することが望ましいです。特に、身体障害や精神障害では、診断書の記載内容が直接的に等級に結びつくためです。
もし、実際の障害の重さや生活の困難さに比べて、診断書の内容が軽く記載されていると感じた場合は、申請前に医師に相談し、再度記載内容の見直しを依頼することを検討しましょう。申請後の不服審査請求は手間がかかるため、事前の確認が成功のコツです。
手続きをスムーズにするための具体的な注意点
代理申請の手続きを滞りなく進め、手帳を速やかに交付してもらうためには、事前にいくつかの注意点を把握し、対策を講じることが大切です。特に、市町村によって異なるローカルルールへの対応が重要になります。
ここでは、申請プロセスにおける具体的な留意事項を解説します。
窓口訪問前の「事前確認」を徹底する
障害者手帳の申請手続きは、市町村や区によって必要書類や手続きの流れが微妙に異なることがあります。そのため、窓口へ行く前に、必ず電話やウェブサイトで以下の点を確認しましょう。
- 代理申請の必要書類:委任状の書式、ご本人と代理人の関係を証明する書類の最新の要件。
- 指定医の確認:身体障害者手帳の場合、自治体が指定する医師でなければ診断書は無効となります。
- 受付時間と混雑状況:事前に予約が必要な場合もあるため、確認しておくと待ち時間を短縮できます。
✅ 成功のコツ
窓口に相談した際、担当者名と相談日時をメモしておくと、後で質問や確認事項が発生した場合にスムーズに対応してもらえます。
三つの手帳の「同時申請」の検討
ご本人が複数の障害(例:肢体不自由と知的障害)を併せ持っている場合、それぞれの手帳(身体と療育など)を同時に申請することを検討しましょう。これにより、それぞれの制度のメリットを総合的に受けることが可能になります。
同時申請の場合、それぞれの手帳ごとに診断書や判定が必要になりますが、代理申請に必要な書類(委任状、本人確認書類)は共通化できることが多く、手続きの負担を軽減できます。窓口に同時申請が可能かどうか、その場合の必要書類を一括で確認しましょう。
手帳交付までの「期間と生活への影響」
障害者手帳の申請から交付までの期間は、審査機関や手帳の種類によって異なりますが、一般的に1ヶ月から3ヶ月程度かかることが多いです。この期間は、手帳が必要なサービス(例:補装具の申請)を利用できない期間となります。
代理人であるご家族は、この期間を考慮して、緊急に必要な支援がないかを事前に確認しておく必要があります。もし急を要する医療費の助成などが必要な場合は、窓口でその旨を伝え、特別な対応が可能かどうかを相談しましょう。
よくある質問(FAQ)と今後のアクション
障害者手帳の代理申請は、ご家族にとって重要な役割である反面、疑問も尽きません。ここでは、代理申請に関してよくある質問にお答えし、次のアクションについて提案します。
Q1:申請代行を「福祉サービス」として依頼できるか?
A:はい、可能です。手帳の申請手続きは、相談支援事業所の相談支援専門員が支援の一環として代行(同行)してくれることがあります。また、行政書士などの専門家が有料で代行を引き受けることもあります。
ご家族自身の負担が大きい場合や、手続きに不安がある場合は、まずは地域の相談支援事業所に連絡し、申請代行や同行が可能かどうかを相談してみましょう。専門家のサポートを得ることで、手続きを確実かつスムーズに進めることができます。
Q2:手帳の「受け取り」も代理人ができるか?
A:はい、手帳の受け取りも、申請時と同様に代理人が行うことが可能です。この場合も、代理人の本人確認書類と、手帳の交付通知書、そして必要に応じて委任状の提示を求められることがあります。
自治体によっては、郵送での交付を受け付けている場合もありますので、窓口での受け取りが難しい場合は、郵送対応が可能かを確認してみましょう。交付された手帳は、速やかにご本人にお渡しください。
Q3:手帳交付後も「代理人として」手続きが必要か?
A:手帳交付後も、手帳の更新(精神・療育)や住所変更、氏名変更、等級変更、再交付など、様々な手続きで代理人として窓口対応が必要になる場面が多く発生します。
特に、精神障害者保健福祉手帳は2年ごとの更新が必須です。代理人として、更新時期や必要書類の管理をしっかりと行い、手続きを忘れないようにすることが重要です。長期的な支援のため、ご家族がサポート体制を維持することが大切です。
次のアクション:まずは「福祉担当窓口」に電話相談を
障害者手帳の代理申請を成功させるための第一歩は、お住まいの市区町村の福祉担当窓口に、ご本人の状況と代理申請を希望する旨を伝えることです。電話相談を通じて、最新の必要書類リストと、診断書作成のための指定医リストを入手しましょう。
特に、ご本人の署名が難しい場合や、複数の手帳を申請したい場合は、窓口の担当者と事前に具体的な対応方法を確認しておくことで、二度手間を防ぎ、スムーズな手続きが可能になります。この一歩が、ご家族が安心して支援を受けるための大切なスタートラインです。
まとめ
- 障害者手帳の代理申請は、ご本人の申請が困難な場合に、配偶者や親族などが代わりに行うことができます。この際、委任状と代理人自身の本人確認書類・関係を証明する書類が必須です。
- 診断書作成時、代理人は医師や判定員に対し、ご本人の日常生活の困難さや介護の必要性を具体的かつ正確に伝え、適切な等級認定に繋がるよう努める重要な役割を担います。
- 手続きを円滑に進めるためには、窓口への事前確認を徹底し、必要書類の漏れを防ぐことが大切です。また、手帳交付後の更新手続きについても、代理人として継続的にサポートしていく必要があります。

金子 匠
(かねこ たくみ)55歳📜 保有資格:
社会福祉士、精神保健福祉士
障害者支援施設で30年間勤務し、施設長を経験。現在はすぐサポ編集長として、障害のある方とご家族が必要な情報にアクセスできる環境づくりに取り組んでいます。「制度は複雑だけど、使えば生活が楽になる」という信念のもと、分かりやすい情報発信を心がけています。
大学卒業後、障害者支援施設に就職し、30年間にわたり現場で支援に携わってきました。生活支援員として10年、サービス管理責任者として15年、そして施設長として5年の経験があります。特に印象に残っているのは、重度の知的障害があり、施設入所が当然と思われていた方が、適切な支援と環境調整により地域での一人暮らしを実現したケースです。「できない」と決めつけず、その人に合った支援を考えることの大切さを学びました。現在は現場を離れ、すぐサポの編集長として、これまでの経験を記事という形で多くの方に届けることをミッションとしています。制度や法律の解説記事では、「専門用語を使わず、中学生でも分かる言葉で」を心がけています。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学で社会福祉を学び、実習で出会った利用者の方々の笑顔に感動したことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
重度の知的障害のある方が、適切な支援により地域での一人暮らしを実現したこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
専門用語を使わず、中学生でも分かる言葉で伝えることを大切にしています。
🎨 趣味・特技
読書、散歩
🔍 最近気になっているテーマ
障害者総合支援法の改正動向、ICTを活用した新しい支援の形





