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障害福祉サービスと障害者手帳の関係を整理

📖 約31✍️ 阿部 菜摘
障害福祉サービスと障害者手帳の関係を整理
障害福祉サービスと障害者手帳の関係を整理します。サービスの利用資格は、手帳ではなく、主に障害者総合支援法に基づく「障害支援区分」によって決定されますが、手帳を持っていることで手続きが簡略化されます。手帳は、税制優遇や公共交通機関の割引、障害者雇用枠への応募など、サービス以外の公的支援を受けるための必須の証明書です。手帳がない場合でも、診断書などでサービスの申請は可能ですが、手帳を持つことで得られるメリットは多大です。サービス利用の際は、相談支援専門員に計画作成を依頼することが重要です。

障害福祉サービスと障害者手帳の関係を整理

障害福祉サービスとは、障害のある方が地域社会で自分らしく生活できるよう、国が定めた法律(障害者総合支援法)に基づいて提供される多岐にわたる支援のことです。しかし、これらのサービスを利用する際、「障害者手帳は必ず必要なのだろうか?」「手帳の等級とサービス内容は関係あるのか?」といった疑問を持たれる方は少なくありません。

障害者手帳と障害福祉サービスは密接に関わり合っていますが、その関係性は一律ではありません。特に制度が複雑なため、その全体像を理解するのは難しいと感じる方もいるでしょう。この記事では、障害福祉サービスの利用資格と、障害者手帳(身体、精神、療育)がそれぞれどのように関わってくるのかを、体系的に分かりやすく整理して解説します。

サービスの利用資格を正確に理解し、必要な支援をスムーズに受けられるように、知識を深めていきましょう。


障害福祉サービスの基本と利用の流れ

まず、障害福祉サービスとは何か、そしてその利用が始まるまでの基本的な流れを理解することが、手帳との関係性を整理する上での出発点となります。これらのサービスは、日常生活のサポートから就労支援まで、幅広いニーズに対応しています。

サービスの根拠となる法律と、利用開始までの重要なステップを確認します。

根拠となる「障害者総合支援法」

日本の障害福祉サービスは、主に「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(障害者総合支援法)に基づいて提供されています。この法律は、障害のある方が、その能力と適性に応じた自立した日常生活または社会生活を営むことができるよう、必要な支援を行うことを目的としています。

サービスの対象となるのは、身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、そして難病を持つ方々です。重要なのは、この法律の対象となるには、障害者手帳の有無にかかわらず、自治体による「障害支援区分の認定」など、一定の手続きが必要であるという点です。

ただし、障害者手帳を保有していることで、手続きの一部が簡素化される場合があるため、手帳の存在はやはり重要です。

サービス利用の「二つの基準」

障害福祉サービスを利用するためには、主に二つの基準を満たす必要があります。一つは「対象者であること」、もう一つは「支援の必要性が認められること」です。

  • 対象者:身体、知的、精神、発達障害、難病の方など、法律で定められた範囲に該当すること。
  • 支援の必要性:市区町村による「障害支援区分」の認定を受け、サービスの種類ごとに定める基準を満たしていること。

💡 ポイント

障害支援区分は、サービスの必要度を表す指標であり、区分1から6まであります。これは、手帳の等級とは別に、ご本人の心身の状態や生活全般の困難さを総合的に評価して決定されます。

手帳は対象者であることを証明する一つの手段ですが、サービス内容を決定するのは、この障害支援区分認定の結果や、サービス等利用計画の内容となります。

利用開始までの「三つのステップ」

障害福祉サービスを利用開始するまでの流れは、概ね以下のステップで進みます。

  1. 相談と申請:市区町村の窓口や相談支援事業所に相談し、サービスの利用申請を行います。
  2. 認定調査と区分認定:自治体の職員などによる訪問調査が行われ、その結果に基づき「障害支援区分」が認定されます。
  3. 計画作成と支給決定:相談支援専門員が作成するサービス等利用計画に基づき、自治体が利用するサービスの種類や量を決定し、受給者証が交付されます。

このプロセス全体を通して、手帳はご本人の基本情報や障害の種別を証明する書類として活用されますが、手帳の提出がなくても、診断書や難病の証明書で代替できる場合があります。


障害者手帳と利用資格の「密接な関係」

障害福祉サービスの利用資格は、手帳がなくても得られる場合がありますが、実際には手帳を保有していることで、手続きがスムーズになったり、特定のサービスを利用する上での「証明書」として機能したりします。

手帳の種類ごとに、サービス利用資格との関係性を詳しく見ていきましょう。

身体障害者手帳と「区分認定」の関連

身体障害者手帳を保有している方は、障害者総合支援法の「対象者」であることに疑義が生じないため、サービスの利用申請をスムーズに進めることができます。

しかし、手帳の等級がそのまま障害支援区分に置き換わるわけではありません。例えば、身体障害者手帳1級(最重度)の方でも、日常生活の困難さが低いと評価されれば区分1となる可能性もあります。ただし、実際には重度な身体障害を持つ方は、区分認定のプロセスで高い区分が認定される傾向にあります。

特に、補装具や日常生活用具の給付については、身体障害者手帳の有無が直接的に利用資格に影響する項目も多く、手帳の存在が不可欠です。

精神障害者保健福祉手帳の「対象年齢」

精神障害者保健福祉手帳(精神手帳)を持つ方も、障害者総合支援法の対象者となります。精神手帳は、主に就労支援や地域生活支援のサービスで活用されます。特に、就労移行支援や就労継続支援(A型・B型)といった就労系サービスの利用資格を得る上で、手帳を持っていることは一つの証明となります。

「精神手帳の交付を受けることで、私は就労移行支援事業所にスムーズに入ることができ、職場定着支援まで受けられました。手帳が、自立に向けた第一歩を踏み出すための公的なパスポートのような役割を果たしてくれました。」

— 30代・精神障害者保健福祉手帳保持者

ただし、精神手帳は2年ごとの更新が必要であるため、サービスを継続利用するためには、手帳も継続して保持している必要があります。

療育手帳(知的障害)とサービス利用

療育手帳を持つ方は、知的障害者更生相談所または児童相談所による判定(手帳の交付判定)を既に受けているため、障害支援区分の認定手続きの一部が簡略化されることがあります。

療育手帳は、知的障害を持つ方のグループホームや日中活動系のサービス(生活介護、自立訓練など)を利用する上で、非常に重要な証明となります。手帳の等級(A/Bなど)は、サービス利用の際の支給量を決定する上での重要な参考情報として扱われます。

療育手帳は、自治体によって名称が異なる(愛の手帳、みどりの手帳など)ため、お住まいの地域の名称を確認することが大切です。


手帳の有無で「利用資格が変わるサービス」

障害福祉サービスの中には、障害者総合支援法に基づくサービス以外にも、手帳の有無が直接的に利用資格に影響を与える公的支援や優遇措置が多く存在します。これらのサービスは、日常生活の経済的負担軽減に直結します。

ここでは、手帳の存在が不可欠となる代表的なサービスについて解説します。

経済的支援の核となる「税制優遇」

障害者手帳を保有している方は、所得税や住民税の控除、贈与税の非課税措置など、様々な税制上の優遇措置を受けることができます。これらの優遇措置は、手帳を保有していることを前提としており、手帳がなければ利用資格がありません。

  • 障害者控除:ご本人や扶養家族が手帳を持っている場合、所得税や住民税が軽減されます。特に重度の場合、控除額が大きくなります。
  • 自動車税・軽自動車税の減免:一定の要件を満たす場合、自動車税などが減免されます。

これらの税制優遇は、手帳の等級やご本人の状況に応じて適用される範囲が異なります。毎年、年末調整や確定申告の際に、忘れずに手帳の情報を申告しましょう。

交通機関・公共施設の「割引サービス」

JRなどの鉄道、バス、航空機といった公共交通機関の運賃割引や、美術館、動物園、映画館などの公共施設の入場料割引は、現物の障害者手帳を提示することが利用の絶対条件となります。

これらの割引サービスは、障害者総合支援法とは別の制度に基づいており、手帳の等級(特に第一種/第二種、または1級/2級など)によって、ご本人だけでなく、介護者も割引の対象となるかどうかが異なります。手帳の提示は、これらの優遇措置を受けるための公的な証明書として機能します。

「障害者雇用」への応募資格

一般の求人とは別に、企業に障害者の雇用を義務付ける「法定雇用率制度」に基づく障害者雇用枠の求人に応募できるのは、原則として障害者手帳を保有している方に限られます。

✅ 成功のコツ

就職活動において、手帳を持っていることで、企業側に合理的配慮を法的に要求しやすくなる、就労移行支援などの専門的なサポートを受けられるといった長期的な安定就労のためのメリットがあります。働く意欲がある場合は、手帳の取得を積極的に検討しましょう。

手帳は、就労支援サービスを受けるための資格であると同時に、障害者雇用枠という安定した働き方への扉を開く鍵となります。


手帳がない場合の「サービス利用の代替策」

障害福祉サービスの中には、障害者手帳を持っていなくても、医師の診断書やその他の証明書があれば、利用申請が可能なものも存在します。これは、手帳の申請・交付を待たずに、緊急に必要な支援を受けられるようにするための配慮です。

ここでは、手帳がない場合の代替手段と、利用できる代表的なサービスについて解説します。

精神・発達障害と「診断書の活用」

精神障害や発達障害の方で、手帳の申請中や、何らかの理由で手帳をまだ持っていない場合でも、自立支援医療(精神通院医療)の受給者証や、医師の診断書を提出することで、障害福祉サービスの利用申請が可能です。

特に、就労移行支援や就労継続支援(B型)など、地域活動や訓練系のサービスでは、診断書や主治医の意見書が、ご本人の状態や支援の必要性を証明する重要な書類となります。まずは市区町村の窓口で、手帳がない場合の必要書類を確認しましょう。

難病患者と「特定疾患医療受給者証」

障害者総合支援法は、360以上の指定難病を患っている方も、障害福祉サービスの対象としています。この場合、障害者手帳を持っていなくても、難病指定医が発行する特定疾患医療受給者証や診断書を提出することで、サービス利用申請が可能です。

難病の方は、手帳を持つことに抵抗がある場合や、手帳の基準を満たさない場合でも、必要な支援(居宅介護、訪問入浴など)を受けられるようになっています。難病指定医や難病相談支援センターに相談することが第一歩です。

手帳取得までの「暫定的な利用」

手帳の申請手続きには、診断書の作成期間を含め、通常1ヶ月から3ヶ月程度の時間がかかります。この手帳交付までの待機期間中に、緊急で支援が必要な場合は、自治体の判断により、暫定的にサービス利用が認められるケースがあります。

⚠️ 注意

この暫定的な利用は、全ての自治体で一律に認められているわけではなく、自治体の裁量と、ご本人の支援の緊急性に応じて判断されます。必ず窓口で「手帳が届くまでの暫定利用」について相談してください。

暫定利用が認められた場合でも、後日手帳が交付されなかったり、障害支援区分の認定が降りなかったりした場合は、サービスの利用ができなくなる可能性があります。


よくある質問(FAQ)と次のアクション

障害福祉サービスと障害者手帳の関係は複雑なため、利用者から多くの質問が寄せられます。ここでは、よくある疑問に答え、支援を受けるための次のアクションを提案します。

Q1:手帳の等級が上がると「サービス量は増える」のか?

A:手帳の等級が上がった(重度になった)からといって、自動的にサービス量が増えるわけではありません。サービス量(支給決定)は、主に障害支援区分と、相談支援専門員が作成するサービス等利用計画に基づいて決定されます。

しかし、等級が上がるということは、ご本人の状態が悪化し、より多くの支援が必要になったことを示唆します。この場合、速やかに相談支援専門員に連絡し、障害支援区分の変更申請サービス等利用計画の見直しを行うことが重要です。

Q2:障害者手帳と「療育手帳」を両方持てるか?

A:はい、身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳の三つの手帳は、それぞれ重複して持つことが可能です。例えば、知的障害と精神障害を併せ持つ方は、療育手帳と精神手帳の両方を取得できます。

複数の手帳を持つことで、それぞれの制度に基づく優遇措置(税制、割引、サービス)を総合的に受けることが可能になります。ただし、それぞれの手帳で申請手続きや更新時期が異なるため、管理には注意が必要です。

Q3:手帳の申請は「サービスの申請と同時に」できるか?

A:サービスの利用申請(障害支援区分認定)と、手帳の申請は、手続きが異なりますが、同時に並行して進めることは可能です。特に療育手帳のように、判定に時間がかかる場合は、サービスの利用申請も同時に行うことが一般的です。

サービスの申請時に、手帳の申請中であることを窓口に伝え、手帳申請用の診断書や意見書のコピーを提出することで、手続きがスムーズになることがあります。相談支援専門員と連携し、効率的に申請を進めましょう。

次のアクション:相談支援事業所にサービス計画を相談する

障害福祉サービスを利用し、手帳のメリットを最大限に享受するための次のアクションは、地域の相談支援事業所に連絡を取り、サービス等利用計画の作成を依頼することです。既に手帳を持っている方、これから手帳を取得する方も、この計画が支援の質と量を決定します。

相談支援専門員は、手帳の等級や障害支援区分に基づき、あなたに本当に必要なサービスを組み合わせて提案してくれます。まずは、ご自身の現在の生活の困難さや希望を、専門員に詳しく伝えてみましょう。


まとめ

  • 障害福祉サービスの利用資格は、主に障害者総合支援法に基づく障害支援区分によって決定され、手帳の有無にかかわらず、診断書などで申請が可能です。
  • 障害者手帳は、税制優遇、交通機関の割引、障害者雇用枠への応募など、法律に基づくサービス以外の公的支援を受けるための必須の証明書として機能します。
  • サービス量を増やすには、手帳の等級向上よりも、障害支援区分の変更申請と、相談支援専門員によるサービス等利用計画の見直しが重要です。

阿部 菜摘

阿部 菜摘

あべ なつみ36
担当📚 実務経験 12
🎯 制度・法律🎯 医療・福祉制度

📜 保有資格:
社会保険労務士、精神保健福祉士

社会保険労務士として障害年金の申請支援を専門に12年。「難しい」と言われる障害年金を、分かりやすく解説します。医療費助成、各種手当など、お金に関する制度情報をお届けします。

大学卒業後、社会保険労務士事務所に就職し、障害年金の申請支援を専門に担当してきました。これまで500件以上の申請をサポートし、多くの方の生活を支えるお手伝いをしてきました。障害年金は「難しい」「通らない」と諦めている方が多いですが、適切な書類準備と申請を行えば、受給できる可能性は十分あります。実際、初診日の証明が難しいケースでも工夫して認定を受けた例もあります。特に心に残っているのは、精神障害で長年苦しんでいた方が障害年金を受給できたことで、「経済的な不安が減り、治療に専念できるようになった」と感謝されたこと。制度を知ることの大切さを実感しました。記事では、障害年金の申請方法、特別障害者手当、医療費助成など、「知らないと損する」お金の制度を、専門家として正確かつ分かりやすく解説します。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

社会保険労務士として、障害年金の申請支援を通じて多くの方の生活を支えたいと思ったことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

精神障害のある方が障害年金を受給でき、「経済的な不安が減り、治療に専念できるようになった」と感謝されたこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

「知らないと損する」お金の制度を、専門家として正確かつ分かりやすく解説します。

🎨 趣味・特技

資格勉強、温泉巡り

🔍 最近気になっているテーマ

障害年金のオンライン申請、制度の周知不足問題

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