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精神障害者保健福祉手帳の取得メリットと注意点

📖 約32✍️ 高橋 健一
精神障害者保健福祉手帳の取得メリットと注意点
精神障害者保健福祉手帳は、精神疾患を持つ方が日常生活や社会生活を円滑に送るための支援を受けるための公的な証明書です。取得する最大のメリットは、所得税・住民税の障害者控除や公共交通機関の割引など、多岐にわたる経済的優遇措置です。また、就労移行支援などの福祉サービスの利用や、障害者雇用枠での就職を可能にし、安定した生活をサポートします。注意点として、手帳の有効期限は2年間で、定期的な更新手続き(再認定)が必要であること、申請には初診日から6ヶ月以上の治療期間が必要であることを解説します。手帳を「生活を支えるツール」として捉え、積極的に活用することが重要です。

精神障害者保健福祉手帳の取得メリットと注意点

精神的な病気や障害によって日常生活や社会生活に支障がある方が利用できる「精神障害者保健福祉手帳」をご存知でしょうか。この手帳を取得することで、様々な公的支援や優遇措置を受けることが可能になります。

しかし、「申請は面倒ではないか」「取得しても本当に役立つのか」といった疑問や、プライバシーに関する不安から、申請をためらっている方もいらっしゃるかもしれません。この記事では、精神障害者保健福祉手帳を取得する具体的なメリットと、知っておくべき注意点を分かりやすく解説します。

手帳が、あなたの生活を支える強力なツールとなるよう、正しい知識を身につけていきましょう。


手帳がもたらす経済的な大きなメリット

精神障害者保健福祉手帳の取得メリットの中でも、特に生活に直結し、継続的な恩恵があるのが経済的な優遇措置です。手帳があることで、日々の支出を抑えたり、税金の負担が軽減されたりするなど、家計の安定に大きく貢献します。

ここでは、代表的な経済的メリットについて、具体的な内容を見ていきましょう。

税金負担を軽減する「障害者控除」

手帳を取得することで、ご本人または扶養しているご家族が、所得税と住民税の「障害者控除」を受けられます。これは、ご本人の障害の程度に応じて、課税対象となる所得から一定額を差し引くことができる制度です。

控除額は、手帳の等級や、特別障害者(1級)に該当するかどうか、また、同居の有無によって異なりますが、一般の障害者控除で所得税は27万円、住民税は26万円が控除されます。これにより、毎年支払う税金の額が減り、実質的な手取り収入が増えることになります。

💡 ポイント

控除を受けるためには、年末調整や確定申告の際に手帳の情報を申告する必要があります。忘れずに手続きを行うことで、この大きな経済的メリットを享受することができます。

また、相続税についても、手帳保持者に適用される控除制度があり、ご家族の将来的な負担軽減にも繋がる場合があります。税金に関するメリットは、長期的に見ると非常に大きな助けとなります。

公共交通機関の「割引制度」

日常生活で電車やバスなどの公共交通機関を頻繁に利用する方にとって、交通費の割引は大きなメリットです。精神障害者保健福祉手帳を持っている場合、多くの自治体や交通事業者で、運賃の割引が適用されます。

  • バス運賃:多くのバス会社で、手帳提示により運賃が割引(半額など)になります。
  • タクシー運賃:一部のタクシー会社で、運賃が割引になります。
  • 航空運賃:国内線の航空会社では、特定の路線や条件で割引運賃が適用されることがあります。

ただし、JR(鉄道)については、精神障害者保健福祉手帳単独では割引が適用されません(身体障害者手帳や療育手帳とは制度が異なります)。自治体によっては、バスや地下鉄などで使える独自の無料乗車券や割引制度を設けている場合があるため、お住まいの地域の制度を確認することが大切です。

通信・公共料金の優遇と生活支援

通信費や公共料金に関しても、手帳による優遇措置が用意されていることがあります。例えば、携帯電話会社によっては、基本料金や通話料が割引になるプランを提供している場合があります。

また、NHK放送受信料については、世帯構成や手帳の等級などの条件を満たすことで、全額または半額の免除を受けられる制度があります。さらに、生活保護を受給されている方や、自治体の定める低所得世帯に該当する場合、水道料金や下水道料金の減免措置を受けられることもあります。

これらの細かい割引を積み重ねることで、月々の固定費を大きく削減することが可能です。手帳を取得したら、まずは現在利用している各種サービス提供元に、優遇制度の有無を確認してみましょう。


日常生活を豊かにする福祉サービスと優遇

精神障害者保健福祉手帳のメリットは、経済的なものだけではありません。日常生活や社会生活を送る上で必要な様々なサポート、いわゆる「福祉サービス」を利用するためのパスポートとしての役割も持っています。

特に、就労や自立を目指す上で、手帳があることで利用できる支援は非常に重要です。

就労を強力にサポートする支援サービス

精神的な障害を持つ方が働くことを支援する「就労移行支援」や、雇用契約を結ばずに働く訓練を行う「就労継続支援(A型・B型)」といった障害福祉サービスは、原則として手帳(または特定疾患の診断)を持つことで利用の対象となります。

「手帳を取得したことで、以前は利用をためらっていた就労移行支援事業所に通う決心がつきました。そこで自分のペースでスキルアップし、最終的には障害者雇用枠で希望の企業に就職できました。手帳がなければ、今の生活はなかったと思います。」

— 30代・精神障害者保健福祉手帳保持者の体験談

これらのサービスは、職業訓練だけでなく、生活リズムの調整、履歴書作成や面接対策など、就職活動全体をきめ細かくサポートしてくれます。手帳の取得は、ご自身のキャリアの選択肢を大きく広げることにつながります。

障害者雇用枠という「働き方」の選択肢

手帳を持っていることで、一般の求人とは別に設けられている「障害者雇用枠」に応募する選択肢が生まれます。障害者雇用枠では、ご自身の障害特性や体調に配慮された職務内容や勤務時間、職場環境の調整(合理的配慮)を企業に求めやすくなります。

手帳をオープンにして働くことで、採用後のミスマッチを防ぎ、長期的な安定就労に繋がる可能性が高まります。企業には、障害者の法定雇用率が義務付けられているため、障害者雇用枠の求人は一定数存在し、ご自身のペースで働きたい方にとって非常に有用です。

趣味や余暇を楽しむための優遇措置

精神障害者保健福祉手帳を持っていると、日常生活を豊かにするための優遇措置も受けられます。例えば、公営の動物園、水族館、博物館、美術館などの公共施設では、入場料が無料になったり、大幅な割引が適用されたりする場合があります。

また、一部の民間企業が運営する映画館やレジャー施設でも、割引サービスを提供していることがあります。これらの施設を利用する際は、必ず窓口で手帳を提示し、割引の有無を確認してみましょう。趣味や外出の機会が増えることで、生活の質の向上(QOLの改善)に役立ちます。


手帳申請から運用における「注意すべき点」

手帳のメリットは多岐にわたりますが、申請手続きや実際の運用においては、いくつかの注意点があります。これらのポイントを事前に理解しておくことで、スムーズな手続きと、不安の軽減に繋がります。

特に、有効期限やプライバシーへの配慮については、事前にしっかりと把握しておく必要があります。

有効期限と定期的な「更新手続き」

精神障害者保健福祉手帳の有効期間は、交付日から2年間です。このため、手帳を継続して利用するためには、2年ごとに更新手続きを行う必要があります。更新時には、再度、医師の診断書や意見書が必要となり、この診断書を作成してもらうための費用も発生します。

⚠️ 注意

更新手続きは、有効期限の約3ヶ月前から行うことができます。手続きを忘れて期限が過ぎてしまうと、その間にサービスや優遇措置を受けられなくなってしまうため、期限の管理を徹底することが極めて重要です。

また、更新時の審査の結果、病状の改善などにより、等級が変更になったり、手帳の交付対象外(非該当)になったりする可能性もあることを理解しておく必要があります。この再認定制度があることで、ご自身の現在の状態に見合った適切な支援を受けられるようになっています。

診断書取得に必要な「治療期間」の条件

精神障害者保健福祉手帳を申請するためには、原則として、初診日から6ヶ月以上が経過していることが必要です。これは、精神疾患の診断が一時的なものではなく、ある程度継続した治療が必要な状態であることを確認するためです。

「手帳がすぐに必要だから」といって、初診から6ヶ月経たないうちに申請することはできません。申請を検討されている方は、まず主治医と相談し、現在の治療状況や初診日を確認しておくことが大切です。また、診断書を作成できるのは、手帳制度で認められた医師に限られるため、事前に医療機関に確認しましょう。

プライバシーの保護と「利用範囲」の選択

手帳を取得することへの最大の懸念の一つが、自分の精神障害の事実が周囲に知られてしまうのではないかという「プライバシー」の問題です。手帳を提示してサービスを受ける際は、確かにご自身の障害情報が他者に知られることになります。

しかし、手帳を提示するかどうかは、全てご自身の判断に委ねられています。例えば、税制上の優遇措置だけを利用し、交通費の割引は使わない、といった選択も可能です。職場に対しても、手帳を隠して一般雇用で働くという選択肢もあります。

ご自身の不安の度合いに応じて、手帳の利用範囲を限定することで、プライバシーを保護しながら、必要なメリットだけを享受することができます。


手帳と関連制度の「併用と等級」の正しい理解

精神障害者保健福祉手帳は、日本の障害者福祉制度の一部であり、他の障害者手帳や年金制度と関連付けられています。これらの制度を正しく理解し、併用することで、より強力な生活基盤を築くことができます。

手帳の等級の意味や、障害年金との関係性について詳しく見ていきましょう。

手帳の「等級」が意味するもの

精神障害者保健福祉手帳には、障害の程度に応じて1級、2級、3級の等級があります。この等級は、精神疾患による生活能力の障害の程度に基づいて認定されます。

等級 障害の程度(生活能力の判断) 目安となる状態
1級 精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの 常に誰かの援助が必要な状態
2級 精神障害であって、日常生活に著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの 日常生活能力が著しく低下し、援助なしでは困難な状態
3級 精神障害であって、日常生活若しくは社会生活に制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの 日常生活や社会生活に一定の制限を受ける状態

この等級によって、受けられるサービスや優遇措置の内容が変わることがあります。例えば、NHK受信料の全額免除は1級のみが対象となるなど、上位等級ほど手厚い支援を受けられる傾向にあります。

障害年金と手帳の「深い関係」

精神障害者保健福祉手帳の等級と、障害年金の等級(1級・2級)は、認定基準が類似している部分があります。手帳の申請の際に、障害年金の診断書を代わりに利用できる自治体もあります。

一般的に、障害年金1級に認定される方は手帳の1級に、障害年金2級に認定される方は手帳の2級に認定される可能性が高いとされています。ただし、両者は目的とする法律が異なるため、必ずしも等級が一致するわけではありません。

✅ 成功のコツ

手帳と障害年金は、どちらも経済的な安定に繋がる重要な制度です。どちらか一方だけでなく、両方の取得を目指して手続きを進めることで、より強固な生活基盤を築くことができます。申請の際は、主治医や社会保険労務士に相談することをお勧めします。

他の障害者手帳との「同時利用」について

精神障害者保健福祉手帳は、身体障害者手帳や療育手帳と同時に持つことができます(重複交付)。例えば、精神疾患と身体的な疾患を併発している場合や、知的障害と精神疾患を併発している場合などです。

手帳の種類が増えることで、それぞれの制度が持つメリットを総合的に享受できるようになります。例えば、精神の手帳では受けられないJR運賃の割引が、身体障害者手帳では受けられる、といったケースです。ご自身の状態に応じて、必要な手帳の取得を検討しましょう。


よくある質問(FAQ)と今後のアクション

手帳取得を検討する際に出てくる具体的な疑問や、次の一歩を踏み出すための具体的なアドバイスをご紹介します。手帳は、ご本人とご家族の不安を和らげ、より安心できる生活を送るためのサポートツールです。

Q1:手帳申請は「どのくらい時間がかかる」のか?

A:手帳の申請手続きにかかる期間は、自治体によって異なりますが、一般的に、申請書を提出してから交付されるまでに1ヶ月半から3ヶ月程度かかることが多いです。診断書作成にかかる期間や、自治体の審査期間によって変動します。

  • 医師に診断書作成を依頼(数週間)
  • 市町村窓口に申請書類一式を提出
  • 都道府県による審査(1ヶ月~2ヶ月)
  • 手帳の交付

特に、年度の変わり目や年末年始などは、窓口や審査機関が混み合い、さらに時間がかかる場合があります。余裕を持って手続きを進めることが大切です。

Q2:手帳を持つと「車の保険料」は高くなるのか?

A:自動車保険の保険料は、手帳の有無によって高くなることはありません。保険料は、主に運転歴、車種、年齢、保険の種類などによって決定されます。保険会社が障害者手帳の有無を理由に保険料を決定したり、加入を拒否したりすることは通常ありません

ただし、ご自身の病状や服薬状況によっては、運転に支障がないか主治医とよく相談し、安全な運転に努めることが重要です。安全運転の義務は、手帳の有無にかかわらず全ての方に求められます。

Q3:手帳を「家族が代わりに申請」できるか?

A:はい、ご本人が病状などで手続きが困難な場合は、ご家族や成年後見人などが代理で申請手続きを行うことができます。多くの自治体では、代理人の本人確認書類と、ご本人との関係を証明する書類(保険証など)があれば手続きが可能です。

特に、体調の波が大きい方や、手続きに不安がある方は、支援者やご家族に相談し、サポートを受けながら申請を進めることをお勧めします。相談支援事業所の職員などがサポートしてくれる場合もあります。

次のアクション:まずは主治医に相談を

精神障害者保健福祉手帳の取得を検討する上で、最初に行うべきことは、現在治療を受けている主治医に相談することです。主治医は、あなたの病状や生活の状況を最もよく理解しており、手帳の申請が可能かどうか、どの等級になる見込みがあるかについて、専門的な意見をくれます。

主治医との相談を通じて、申請に必要な診断書の作成が可能かを確認し、その後の手続きの流れや、手帳を取得することで利用できる支援について具体的なイメージを持つことができます。不安な点や疑問点も、遠慮なく主治医に質問してみましょう。


まとめ

  • 精神障害者保健福祉手帳の取得は、税制優遇(障害者控除)や公共交通機関の割引など、家計を助ける経済的メリットが非常に大きいことが最大の魅力です。
  • 手帳は、就労移行支援や障害者雇用枠といった就労支援サービス利用の鍵となり、QOL(生活の質)向上のための公共施設の優遇も受けられます。
  • 注意点として、2年ごとの更新手続きの徹底と、初診日から6ヶ月以上経過しているという申請条件があります。プライバシーについては、ご自身の意思で利用範囲をコントロールできます。

高橋 健一

高橋 健一

たかはし けんいち50
担当📚 実務経験 25
🎯 制度・法律🎯 医療・福祉制度

📜 保有資格:
社会福祉士

市役所の障害福祉課で20年間勤務し、制度の運用や窓口対応を担当してきました。「制度は難しい」と言われますが、知れば使える便利なツールです。行政の内側から見た制度のポイントを、分かりやすくお伝えします。

大学卒業後、地方自治体に入庁し、障害福祉課に配属されて20年。障害者手帳の交付、障害福祉サービスの支給決定、各種手当の申請受付など、幅広い業務を経験しました。行政職員として心がけていたのは、「制度を正確に伝えつつ、温かく対応する」こと。窓口に来られる方は不安を抱えています。制度の説明だけでなく、その方の状況に合わせた情報提供を大切にしてきました。退職後、民間の相談支援事業所に転職し、今度は「申請する側」の視点も理解できました。行政と民間、両方の経験を活かして、制度の仕組みだけでなく、「実際にどう使うか」まで伝えられるのが強みです。記事では、障害者総合支援法、障害者雇用促進法、各種手当など、制度の正確な情報を「難しい言葉を使わず」解説します。

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💭 福祉の道を選んだ理由

公務員として地域に貢献したいと思い、障害福祉課に配属されたことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

窓口対応で、制度を活用して生活が楽になったと感謝されたこと。行政と民間両方の視点を得られたこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

制度の正確な情報を「難しい言葉を使わず」伝えることを大切にしています。

🎨 趣味・特技

将棋、歴史小説

🔍 最近気になっているテーマ

マイナンバーと福祉制度の連携、自治体DXの進展

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