ホーム/記事一覧/就労・進路サポート/職業訓練・スキルアップ/精神障害の方が取り組みやすい訓練内容

精神障害の方が取り組みやすい訓練内容

📖 約105✍️ 菅原 聡
精神障害の方が取り組みやすい訓練内容
精神障害の方が安定就労を目指すには、専門スキルと体調管理能力の習得が必須です。就労移行支援事業所では、短時間勤務や個別支援など体調の波に合わせた柔軟な訓練を受けられます。訓練内容は、PC事務、IT補助、簿記などのストレス負荷が低い定型業務スキルが中心です。特に、体調管理シートを使ったストレスの可視化やコーピングスキルの習得に重点を置きます。就職後は、SSTで培ったスキルを活用し、定着支援を受けながら、無理なく長く働けるキャリアを築きましょう。

🌱 精神障害の方が取り組みやすい訓練内容:体調の波に合わせた安定就労へのロードマップ

精神障害(うつ病、双極性障害、統合失調症など)があっても、無理なくスキルを身につけられる訓練を知りたい」「体調の波に対応できる柔軟なカリキュラムがあるだろうか?」「専門スキルだけでなく、ストレス管理コミュニケーションも同時に学びたい」

精神障害を持つ方々が就労を目指す際、最も重要となるのは、「専門スキルの習得」と「体調管理能力の向上」の両立です。体調の波やストレスへの脆弱性といった特性があるため、一般的な職業訓練のように画一的で負荷の高いカリキュラムでは、途中で挫折してしまうリスクが高くなります。

しかし、近年、就労移行支援事業所をはじめとする障害者向けの職業訓練では、精神障害の特性を深く理解し、「再発予防」と「安定した勤務」を最優先にした柔軟で段階的な訓練プログラムが充実しています。特に、ストレスが少ない環境で、集中力を要する事務・ITスキルや、共感性を活かせるサポート業務のスキルを学ぶことは、安定就労への確かな道筋となります。

この記事では、精神障害のある方が安心してスキルアップできる訓練内容の具体例、体調の波に合わせた訓練の進め方、安定就労に不可欠なストレス管理・セルフケアの訓練方法、そして柔軟な働き方を目指すためのキャリア戦略を、全6500字以上の大ボリュームで徹底的に解説します。あなたのペースと特性を活かし、「無理なく長く働く」**という目標を実現させましょう。


😊 1. 精神障害の方が訓練で重視すべき2つの柱

精神障害を持つ方が就職・定着を目指す上で、専門スキル以上に訓練で磨くべき重要な能力です。

柱①:安定した体調管理能力(セルフケアスキル)

体調の波を自分で把握し、悪化する前に適切な行動をとる能力です。

  • **具体的な訓練内容:**体調のモニタリング(記録)、ストレスへの対処法(コーピングスキル)、規則正しい生活リズムの確立。
  • **重要性:**この能力がなければ、どんなに高いスキルを身につけても、安定して勤務を続けることはできません。

柱②:専門性と配慮を両立できる専門スキル

体調が安定している時に集中して取り組める、かつ、柔軟な働き方(リモート、時短など)が可能なスキルです。

  • 具体的な訓練内容:****データ処理(Excel)、Web制作、事務処理、経理基礎など。
  • **重要性:専門スキルを持つことで、企業側も「配慮しても採用したい」**という動機が生まれ、合理的配慮を引き出しやすくなります。


🏫 2. 精神障害の方が取り組みやすい訓練コースの実例

体調の安定とスキル習得を両立できる、公的な支援機関の具体的な訓練コースを紹介します。

A. 就労移行支援事業所(基礎・事務・IT特化型)

最も推奨される支援機関です。体調管理や就職活動サポートと並行してスキルを習得できます。

  • 特徴:
    • 個別支援計画:体調に応じて訓練時間や内容を柔軟に調整できる(午前のみ、週3日からなど)。
    • プログラムの柔軟性:****SST(ソーシャルスキルトレーニング)や認知行動療法に基づくプログラムが充実している。
    • **費用面:**利用者負担が原則無料(所得による)。
  • 訓練内容例:****PC基礎、MOS(Word/Excel)対策、ビジネスマナー、体調モニタリングなど、基礎を固める訓練が中心。

B. 職業訓練校(事務・経理・Webデザイン科)

体調が比較的安定している方が、専門資格を集中的に取得したい場合に適しています。

  • 特徴:
    • **学習内容:**日商簿記、Webデザイン、OA事務など、実践的なスキルを短期間(半年〜1年)で集中的に学ぶ。
    • **費用面:**授業料は無料(教材費は自己負担)。給付金制度の利用も可能。
  • **留意点:**カリキュラムの進度が速く、欠席や遅刻への柔軟性は就労移行支援に比べて低い場合があるため、体調の安定度を考慮する必要がある。


💻 3. 精神障害の方が取り組みやすい専門スキル分野

体調の波やストレスの影響を受けにくく、集中力や共感性を活かせるスキル分野です。

スキル分野①:定型的なPC事務・データ処理

対人コミュニケーションが少なく、手順が明確な業務に集中できます。

  • **向いている理由:**手順が明確なため、曖昧さによる不安が少ない。リモートワークとの相性も良い。
  • 習得すべきスキル:
    • **Excel(VLOOKUP、ピボットテーブル):**データの集計・分析能力。
    • **データ入力:**正確性とスピード。
    • **ファイリング・文書作成:**Word、PowerPointを用いた資料作成。

スキル分野②:Web・IT補助業務

デザイン補助、テスト業務など、創造性と論理性をバランス良く活かせます。

  • 向いている理由:作業の多くがデジタルで完結し、場所を選ばないため、体調に合わせた働き方がしやすい。
  • 習得すべきスキル:
    • **Webデザインソフト基礎(Photoshop):**画像の簡単な加工、バナー制作。
    • **HTML/CSS基礎:**企業のブログ更新、Webサイトの簡単な修正。
    • **システムテスト・評価:**手順書に基づいた動作確認。

スキル分野③:経理・簿記の基礎

正確なルールに基づいて処理を行うため、ルーティンワークが得意な方に向いています。

  • 向いている理由:****正確な記録が求められ、対人交流の頻度が低い。スキルが専門的であるため、キャリアの安定に繋がる。
  • 習得すべきスキル:
    • **日商簿記3級:**会計の基本的なルールと流れ。
    • **会計ソフト操作:**弥生会計などの実務ソフトの操作。


🧠 4. 訓練の核となる「セルフケア・ストレス管理」プログラム

精神障害の方が安定就労するために、専門スキル以上に時間と労力をかけるべき訓練内容です。

A. ストレス・体調の「可視化」訓練(モニタリング)

自分の体調の変化ストレス源を客観的に把握し、悪化のサインを早期に察知する訓練です。

  • 訓練内容:毎日、睡眠時間、疲労度、気分を記録する体調管理シート(ウェルネス手帳など)の作成と活用。**「朝起きられない」「食欲がない」といったサインと、「原因となった出来事」**を結びつける分析練習。
  • 目標:病気の再発リスクを下げ、自分自身の取扱説明書を作成する。

B. コーピングスキルの習得と実践

ストレスを感じた際に、健康的な方法で対処する具体的なスキル(コーピング)を身につけます。

  • **訓練内容:**リラックス法(深呼吸、マインドフルネス)、問題解決志向のコーピング(原因分析、優先順位付け)、感情発散(運動、趣味)など、複数のコーピングリストを作成し、訓練中に実践して効果を検証する。
  • **重要性:**コーピングリストを持つことで、感情的な衝動に流されず、冷静に行動を選択できるようになります。

C. 適切な「休憩・休む」スキルの訓練

日本の職場で特に苦手とされがちな、**「罪悪感なく、適切に休む」**スキルを習得します。

  • 訓練内容:訓練中に「疲れた」と感じた時に、すぐに支援員に伝え、休憩を取るという練習を徹底する。休憩後、すぐに業務に戻るという切り替えの練習も重要。
  • **目標:****「無理をして悪化させる」のではなく、「早期に休んで回復し、業務を継続する」**というサイクルを確立する。


🤝 5. コミュニケーションとSST(ソーシャルスキルトレーニング)

対人ストレスを軽減し、職場で安定した人間関係を築くために必要な訓練です。

A. SST(ソーシャルスキルトレーニング)の活用

職場で求められる基本的な対人スキルを、ロールプレイングを通じて安全な環境で習得します。

  • 訓練内容:****適切な挨拶、報告・連絡・相談(ホウレンソウ)の仕方、依頼・断り方、上司への質問の仕方など。
  • 特徴:失敗しても心理的な安全が保たれた環境で、反復練習を行うため、苦手意識の軽減に繋がる。

B. 感情のコントロール訓練(アサーション)

自己主張他者配慮を両立させ、感情的にならずに自分の意見を伝える技術です。

  • 訓練内容:****「I(私)」メッセージを使った表現(例:「〇〇された時、私は△△と感じました」)の練習。攻撃的でも、卑屈的でもない、健全な自己主張を習得する。

C. 職場への配慮の伝え方訓練

就職時に、体調や必要な配慮具体的かつ前向きに企業に伝えるための訓練です。

  • 訓練内容:「体調の波がある」という抽象的な表現ではなく、「午前中に集中力が高いため、重要度の高い業務を午前中に割り振ってほしい」「週に一度、体調を報告する短い面談をお願いしたい」といった、具体的な要求期待できる成果をセットで伝える練習。


🚀 6. 訓練から安定就労へのロードマップ

精神障害のある方が、訓練で身につけたスキルと自己管理能力を活かして就職し、定着するための手順です。

ステップ①:体調の安定と基礎訓練(0〜6ヶ月)

就労移行支援などで、生活リズムの確立体調管理スキルの習得に集中する。同時に、PCの基礎操作ビジネスマナーといったすべての仕事に共通する基礎を固める。

ステップ②:専門スキルの習得と配慮の試行(6〜12ヶ月)

体調が安定したら、事務、IT、経理など、興味のある分野の専門スキルを学ぶ。訓練中に短時間勤務、リモート訓練、休憩の頻度など、必要な合理的配慮を試行し、効果を検証する。

ステップ③:企業実習と配慮の調整(12〜18ヶ月)

訓練の成果を活かし、短期間の企業実習トライアル雇用に参加する。実習中に、実際に働いた場合に必要な配慮(例:残業を避ける、業務の明確化)を企業側と具体的な言葉で調整する。

ステップ④:就職と定着支援の活用(18ヶ月以降)

就職後も、就労移行支援の定着支援(最大6ヶ月)やジョブコーチ支援を継続して活用する。

  • 定着支援の活用例:業務負荷が増加した際の上司との調整交渉再発のサインが見られた際の早期介入、職場の人間関係の相談など。

精神障害を持つ方の就労は、**「どれだけスキルが高いか」よりも「どれだけ安定して勤務を継続できるか」**が鍵となります。就労移行支援などの訓練は、専門スキルを教えるだけでなく、**あなた自身が自分の病気やストレスと上手く付き合い、長く働き続けるための「生きるための技術」**を身につける場でもあります。焦らず、自分のペースと特性を大切にしながら、安定したキャリアを築いていきましょう。


まとめ

  • 精神障害のある方が訓練で最優先すべきは、専門スキルと並行した体調管理能力(セルフケアスキル)の向上である。
  • 就労移行支援事業所は、個別支援計画に基づき、短時間勤務や柔軟なスケジュールなど体調の波に合わせた合理的配慮を受けながら訓練を進められるため、特に推奨される。
  • 取り組みやすい専門スキル分野は、対人交流が少なく手順が明確PC事務・データ処理、Web・IT補助、経理・簿記基礎などである。
  • 訓練の核となるのは、体調管理シートを用いたストレス・体調の可視化健康的なストレス対処法を学ぶコーピングスキルの習得、そして適切な「休憩・休む」技術の習得である。
  • SSTやアサーション訓練を通じて、感情的にならず自己主張できる健全なコミュニケーションスキルを磨き、就職時には必要な配慮前向きかつ具体的に伝える練習をする。
  • 安定就労のためには、体調安定と基礎訓練から始め、専門スキル習得、企業実習での配慮試行を経て、就職後も定着支援を継続して活用する段階的なロードマップが不可欠である。

菅原 聡

菅原 聡

すがわら さとし38
デスク📚 実務経験 12
🎯 就労支援🎯 進路支援

📜 保有資格:
職業指導員、キャリアコンサルタント、精神保健福祉士

就労移行支援事業所で10年以上、障害のある方の「働く」を支援してきました。一般就労への移行支援から就労継続支援まで、幅広い経験をもとに、「自分に合った働き方」を見つけるための情報をお届けします。

大学で社会福祉を学び、卒業後すぐに就労移行支援事業所に就職。当初は「障害があっても一般企業で働けるんだ」という驚きと感動の連続でした。これまで150名以上の方の就労支援に携わり、その8割が一般企業への就職を実現。ただし、「就職がゴール」ではなく、「長く働き続けられること」が本当のゴールだと考えています。印象的だったのは、精神障害のある方が、障害をオープンにして自分のペースで働ける職場を見つけ、「初めて仕事が楽しいと思えた」と言ってくださったこと。その笑顔が忘れられません。記事では、就労移行支援と就労継続支援の違い、企業選びのポイント、障害者雇用の現実など、実際の支援経験に基づいた実践的な情報をお伝えします。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学で社会福祉を学び、「障害があっても一般企業で働ける」という可能性に感動したことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

精神障害のある方が、自分のペースで働ける職場を見つけ、「初めて仕事が楽しいと思えた」と言ってくださったこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

「就職がゴール」ではなく、「長く働き続けられること」を大切に、実践的な情報を発信します。

🎨 趣味・特技

ランニング、ビジネス書を読むこと

🔍 最近気になっているテーマ

リモートワークと障害者雇用、週20時間未満の短時間雇用

📢 この記事をシェア

関連記事