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療育手帳の特徴と他の手帳との違いを徹底比較

📖 約33✍️ 金子 匠
療育手帳の特徴と他の手帳との違いを徹底比較
療育手帳は知的障害のある方に交付され、「愛の手帳」など地域によって独自の名称があります。他の手帳との最大の違いは、根拠法が国ではなく自治体の通知に基づいている点、そして子どもの成長を考慮した定期的な再判定が必要な点です。療育手帳を持つことで、所得税の障害者控除やJR運賃割引といった経済的メリット、共同生活援助や放課後等デイサービスなどの専門的な福祉サービスが受けられます。身体・精神の手帳との併用も可能です。申請は市町村窓口から開始し、児童相談所や更生相談所での専門的な知能・適応行動の判定を受けることが必要です。

療育手帳の特徴と他の手帳との違いを徹底比較

「療育手帳」は、知的障害のある方に交付される障害者手帳ですが、身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳と比べて、その特徴や受けられる支援の違いについて詳しく知らないという方もいるかもしれません。特に、どの手帳を申請すべきか迷っているご家族や支援者の方にとって、それぞれの違いを理解することは非常に重要です。

この記事では、療育手帳がどのような役割を持ち、他の二つの手帳と何が異なるのかを徹底的に比較し、療育手帳の具体的なメリットと申請のポイントを詳しく解説します。この記事を読むことで、あなたやご家族にとって最適な支援の形を見つけるヒントが得られるでしょう。

制度を正しく理解し、必要なサポートを確実に受けられるように準備を進めていきましょう。


療育手帳の基本的な特徴と交付基準

療育手帳は、知的障害のある方が一貫した支援を受けられるようにするために、自治体によって交付される手帳です。他の手帳と異なり、法律で全国一律の基準が定められていないという大きな特徴があります。そのため、地域によって名称や等級の区分が異なることがあります。

ここでは、療育手帳の基本的な定義、独自の名称、そして判定の基準について詳しく見ていきます。

療育手帳の目的と「独自の名称」

療育手帳の目的は、知的障害のある方が、その障害の特性に応じた適切な指導や援助を受けやすくすることです。しかし、この手帳は国の法律(障害者総合支援法など)に基づくものではなく、各自治体の判断で運用されています。

そのため、地域によっては以下のような独自の名称で呼ばれています。

  • 愛の手帳(東京都、横浜市など):特に知的障害の程度を示す等級(数字やA/Bなど)と組み合わせて使用されます。
  • みどりの手帳(群馬県など):地域によって親しみやすい名称が採用されている例です。

名称は異なっても、その目的や提供される支援の多くは共通しています。お住まいの地域でどのように呼ばれているかを確認し、混乱しないようにすることが大切です。

交付の前提となる「知的障害の定義」

療育手帳の交付対象となるのは、「知的障害」と判定された方です。知的障害とは、発達期(概ね18歳まで)に生じた知的機能の遅れと、日常生活や社会生活における適応行動の障害が認められる状態を指します。

💡 ポイント

知的機能の遅れだけでなく、「適応行動の障害」も重要な判定基準となります。適応行動とは、コミュニケーション、自己管理、社会性など、日常生活を送る上で必要な様々なスキルを指します。

手帳の申請の際には、児童相談所(18歳未満)または知的障害者更生相談所(18歳以上)での判定が必要となり、この判定において、知能検査(IQ)と適応行動の評価が行われます。

等級区分と「重度・軽度」の名称

療育手帳の等級区分も、自治体によって異なりますが、多くの地域で障害の程度に応じて区分され、提供されるサービスの内容にも影響します。

  1. 重度(最重度):「A」または「1度」と呼ばれることが多く、日常生活において全面的な援助が必要な状態です。
  2. 中度・軽度:「B」または「2度、3度」などに区分され、一定の援助があれば社会生活が可能、または、軽度の支援で生活できる状態です。

東京都の「愛の手帳」では、1度(最重度)から4度(軽度)に区分されており、知能指数(IQ)と合わせて、日常生活能力の程度も総合的に考慮されて判定されます。


三つの障害者手帳の「違い」を徹底比較

日本には「身体障害者手帳」「精神障害者保健福祉手帳」「療育手帳」という三種類の手帳があります。それぞれ対象とする障害の種類、根拠となる法律、そして有効期限の有無に大きな違いがあります。

これらの違いを正確に理解することで、ご自身の状況に最も適した手帳の選択、あるいは複数手帳の併用を検討することができます。

対象とする「障害種別」と根拠法

三つの手帳は、対象とする障害が明確に異なります。

  • 身体障害者手帳:肢体不自由、視覚・聴覚・平衡機能の障害、心臓・腎臓・呼吸器などの内部障害など、身体機能の永続的な障害が対象です。根拠法は「身体障害者福祉法」です。
  • 精神障害者保健福祉手帳:統合失調症、うつ病、てんかん、発達障害、アルコール依存症など、精神疾患による長期的な生活の制約が対象です。根拠法は「精神保健福祉法」です。
  • 療育手帳:知的障害が対象です。根拠となる全国的な法律はなく、厚生労働省の通知に基づき、各自治体が独自に実施しています。

この障害種別の違いが、手帳の申請窓口、判定基準、そして受けられる専門的な支援の内容に直結します。

「有効期限」と「再判定」の有無

手帳の種類によって、有効期限の取り扱いが大きく異なります。

手帳の種類 有効期限の有無 再判定のタイミング
身体障害者手帳 原則なし(永続的) 障害が軽減する見込みがある場合など、限定的
精神障害者保健福祉手帳 あり(2年間) 2年ごとの更新が必須
療育手帳 自治体による(数年ごと) 一定の年齢での再判定(例:18歳時など)が一般的

療育手帳は、特に子どもの成長・発達に伴う変化を考慮し、数年ごとや18歳の成人時に再判定を行う自治体が多いです。精神の手帳は2年ごとの更新が義務付けられているため、期限管理の負担が異なります。

「併用交付」が可能なケース

三つの手帳は、それぞれ異なる障害を対象としているため、複数の手帳を同時に持つこと(併用交付)が可能です。例えば、知的障害がありながら身体にも障害がある方は「療育手帳」と「身体障害者手帳」を併せて持つことができます。

「私の娘は、知的障害と重度の肢体不自由があるため、療育手帳(最重度)と身体障害者手帳(1級)の両方を持っています。これにより、療育手帳の生活支援と、身体障害者手帳の医療費助成や移動支援の両方を受けることができ、生活の安心感が格段に増しました。」

— 50代・知的障害と重度肢体不自由のある娘を持つ母親

併用することで、それぞれの制度のメリットを総合的に享受できるため、多岐にわたるサポートが必要な方にとっては、必ず検討すべき選択肢となります。


療育手帳を持つことの具体的なメリット

療育手帳を取得することで、知的障害のある方が地域社会で安心して生活し、その人らしく活動するための多岐にわたる支援を受けることができます。特に、経済的優遇と専門的な生活サポートは大きなメリットです。

ここでは、療育手帳によって具体的にどのような支援が受けられるのかを解説します。

経済的負担を軽減する「税制優遇」

他の手帳と同様に、療育手帳を持つことで、ご本人または扶養しているご家族が所得税と住民税の障害者控除を受けられます。手帳の等級に応じて控除額は異なりますが、最重度(1級・A判定など)の場合は「特別障害者」として、一般の障害者控除よりもさらに大きな額の控除が適用されます。

特別障害者の控除額は、所得税で40万円、住民税で30万円(同居の特別障害者の場合はさらに加算)とされており、毎年発生する税金負担の軽減に大きく貢献します。この優遇措置は、長期的な家計の安定に不可欠です。

また、相続税や贈与税についても、手帳保持者のいる世帯に対する優遇措置が設けられている場合があります。これらの税制上のメリットは、手帳を取得する大きな理由の一つです。

福祉サービス利用の「必須条件」

療育手帳は、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスを利用するための基本的な証明となります。知的障害のある方が利用できる主なサービスには、以下のようなものがあります。

  • 共同生活援助(グループホーム):地域で共同生活を送るための住居と支援を提供します。
  • 生活介護:常に介護が必要な方に、入浴、排泄、食事などの介護や創作的活動の機会を提供します。
  • 放課後等デイサービス(18歳未満):学校の授業終了後や休日に、生活能力向上のための訓練や余暇活動を提供します。

これらの専門的な支援を受けることで、ご本人の生活能力の維持・向上と、ご家族の介護負担の軽減につながります。

交通機関と施設の「割引優遇」

移動に関するサポートも充実しており、療育手帳を持つ方は、JR運賃の割引を始めとする公共交通機関の優遇措置を受けられます。身体障害者手帳と同じく、割引が適用される等級(第1種または第2種)に応じて、ご本人単独または介護者同伴で割引が適用されます。

⚠️ 注意

JR運賃の割引は、精神障害者保健福祉手帳では適用されません。療育手帳と身体障害者手帳の大きなメリットの一つです。

さらに、有料道路の通行料金割引、携帯電話料金の割引、美術館や博物館などの公共施設の入場料割引など、日常生活の様々な場面で手帳を活用できます。これにより、外出の機会が増え、社会との繋がりを持つことにも繋がります。


療育手帳ならではの「判定と更新」のポイント

療育手帳の運用で、特に他の手帳と異なるのが「判定のプロセス」と「再判定の仕組み」です。知的障害の評価は、身体の機能測定や病状の診断とは異なり、専門的な知能検査と生活面での評価が必要となります。

申請から更新までの流れと、特有の注意点について理解を深めましょう。

知能検査と「専門家による判定」

療育手帳の申請においては、必ず児童相談所または知的障害者更生相談所といった専門機関での判定を受ける必要があります。この判定では、以下の二つの要素が評価されます。

  • 知能検査:田中ビネー知能検査やWISC(ウィスク)などの標準化された検査を通じて、知能指数(IQ)を測定します。
  • 適応行動の評価:社会生活を送る上でのコミュニケーション能力、自己管理能力、地域社会への参加などのスキルを評価します。

この二つの要素を総合的に判断し、知的障害の有無と程度(等級)が決定されます。判定には時間がかかる場合があるため、余裕をもって予約を取りましょう。

成長を考慮した「定期的な再判定」

療育手帳の大きな特徴は、特に18歳未満の子どもの場合、発達・成長に伴う状態の変化を考慮して、定期的な再判定が設定されることです。再判定の時期は、手帳に記載されていますが、概ね数年ごとや、就学・進学といった節目(6歳、12歳、18歳など)に設定されることが多いです。

特に、18歳時の判定は重要です。この時点で障害の状態が「永続的」なものとして固定的に評価され、成人後の支援の方向性が決定されるためです。再判定を怠ると、手帳の効力が失効し、その間サービスが受けられなくなる可能性があるため、期限管理は最も重要な注意点です。

✅ 成功のコツ

再判定の通知が来たら、すぐに判定機関に連絡を取り、予約を確保しましょう。特に進学や就職を控える時期の再判定は、支援の移行に直結するため、計画的に行うことが成功の鍵となります。

手帳の交付と「障害児支援」の開始

療育手帳が交付されることで、保護者の方は「障害児通所支援」といった専門的な支援を利用できるようになります。これは、知的障害のある子どもが、早期から療育を受けることを目的としたサービスです。

  • 児童発達支援:未就学児が対象で、日常生活の自立支援や集団生活への適応訓練を行います。
  • 放課後等デイサービス:就学児が対象で、放課後や休日の居場所作りと、生活能力向上のための訓練を行います。

これらのサービスは、手帳の有無にかかわらず利用できる場合もありますが、手帳があることでスムーズにサービス利用計画(サービス等利用計画)の作成に進むことができ、専門的な療育を早期に開始できます。


よくある質問(FAQ)と次のアクション

療育手帳に関する疑問は、特に初めて手帳を申請するご家族にとって多くあります。ここでは、よくある質問にお答えし、安心して次のステップに進むための具体的なアクションを提案します。

Q1:療育手帳の「申請窓口」はどこですか?

A:療育手帳の申請窓口は、お住まいの市区町村の福祉担当窓口(障害福祉課など)です。まず窓口に相談し、申請書を受け取り、その後の判定機関(児童相談所や更生相談所)への予約方法や必要書類について確認します。

手続きの流れは、自治体によって若干異なるため、事前に電話やウェブサイトで確認しておくとスムーズです。多くの場合、申請書、同意書、写真、そして判定機関からの通知書が必要となります。

Q2:療育手帳を持つと「車の運転」はできますか?

A:療育手帳を持っていること自体が、運転免許の取得や更新を直接的に禁止するものではありません。免許の取得・更新は、ご本人の認知機能や判断能力、交通ルールの理解度などを総合的に判断して行われます。

運転免許センターでの適性検査や、必要に応じて専門医の診断書を求められることがあります。安全性の観点から、ご自身の判断能力に不安がある場合は、主治医や相談機関とよく相談し、慎重に判断することが大切です。

Q3:手帳を持つことで「差別」されることはないか心配です。

A:手帳を取得する最大の不安の一つが、周囲からの偏見や差別の可能性です。しかし、手帳の提示が必要なのは、割引サービスを受ける窓口や、支援を受けるための行政手続きの場などに限られています。それ以外の日常生活で手帳の有無を公開するかどうかは、ご本人の意思で決めることができます

企業が採用選考で手帳の有無を差別することは法律で禁じられています。手帳は、差別されるためのものではなく、あなたやご家族の生活を守り、支援を受けるための「権利の証明」であると前向きに捉えることが大切です。

次のアクション:まずは専門家との連携を

療育手帳の申請や活用をスムーズに進めるためには、相談支援事業所や地域の障害者支援センターといった専門家と連携を取ることが最も重要です。彼らは、申請手続きのサポート、サービス等利用計画の作成、そして成人後の移行支援まで、ライフステージに応じた一貫した支援を提供してくれます。

特に、再判定の時期や、利用できる福祉サービスの内容は複雑です。専門家とタッグを組むことで、制度の抜け漏れを防ぎ、ご本人の能力を最大限に伸ばすための最適な支援計画を立てることができます。


まとめ

  • 療育手帳は、知的障害のある方を対象とし、他の手帳(身体・精神)と異なり、自治体が独自に運用しているため、名称や等級区分が地域によって異なります。
  • 療育手帳の大きなメリットは、税制優遇、JR運賃割引、そして共同生活援助や生活介護など、知的障害のある方の生活に特化した福祉サービスが利用可能になることです。
  • 療育手帳の運用で特に重要なのは、児童相談所・更生相談所での専門的な判定を受けることと、子どもの成長を考慮した定期的な再判定(特に18歳時)を忘れないことです。

金子 匠

金子 匠

かねこ たくみ55
編集長📚 実務経験 30
🎯 生活サポート🎯 制度・法律

📜 保有資格:
社会福祉士、精神保健福祉士

障害者支援施設で30年間勤務し、施設長を経験。現在はすぐサポ編集長として、障害のある方とご家族が必要な情報にアクセスできる環境づくりに取り組んでいます。「制度は複雑だけど、使えば生活が楽になる」という信念のもと、分かりやすい情報発信を心がけています。

大学卒業後、障害者支援施設に就職し、30年間にわたり現場で支援に携わってきました。生活支援員として10年、サービス管理責任者として15年、そして施設長として5年の経験があります。特に印象に残っているのは、重度の知的障害があり、施設入所が当然と思われていた方が、適切な支援と環境調整により地域での一人暮らしを実現したケースです。「できない」と決めつけず、その人に合った支援を考えることの大切さを学びました。現在は現場を離れ、すぐサポの編集長として、これまでの経験を記事という形で多くの方に届けることをミッションとしています。制度や法律の解説記事では、「専門用語を使わず、中学生でも分かる言葉で」を心がけています。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学で社会福祉を学び、実習で出会った利用者の方々の笑顔に感動したことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

重度の知的障害のある方が、適切な支援により地域での一人暮らしを実現したこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

専門用語を使わず、中学生でも分かる言葉で伝えることを大切にしています。

🎨 趣味・特技

読書、散歩

🔍 最近気になっているテーマ

障害者総合支援法の改正動向、ICTを活用した新しい支援の形

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