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職業訓練ってどんなもの?障害のある方でも安心して学べる制度を解説

📖 約24✍️ 伊藤 真由美
職業訓練ってどんなもの?障害のある方でも安心して学べる制度を解説
職業訓練は、障害のある方が就職に必要なスキルや知識を習得し、自信を持って就職活動に臨むための公的な制度です。特に「障害者職業能力開発校」では、長期間にわたり、専門的な設備と職員による合理的配慮を受けながら、無料で訓練を受けられます。委託訓練では短期間で地域のニーズに合ったスキルを習得可能です。訓練受講はハローワークの職業相談から始まり、就労移行支援事業所と連携することで、訓練後の就職活動や定着支援も円滑になります。訓練は「就職への手段」と捉え、自身の目標達成に必要なスキルを学ぶことが重要です。

「働きたいけれど、自信を持って働けるスキルがない」「ブランクが長く、職場の雰囲気に慣れるか不安だ」

働くことへの意欲はあっても、障害や病気の影響、あるいは長年のブランクによって、就職活動に踏み出せずにいる方もいるかもしれません。そのような方にとって、「職業訓練」は、スキルを身につけ、自信を回復し、就職への道を切り開くための非常に有効な手段となり得ます。

職業訓練と聞くと、一般的な訓練を想像するかもしれませんが、障害のある方が安心して、個々のペースに合わせて学べるように、様々な配慮やサポートが用意された制度があります。この制度を上手に活用することで、就職の可能性を大きく広げることができます。

この記事では、障害のある方を対象とした職業訓練に焦点を当て、どのような種類があり、どんなことが学べるのか、そして利用するための手続きやサポート体制について、わかりやすく解説します。

この情報が、あなたの「働きたい」という願いを具体的な一歩へと変えるための後押しとなれば幸いです。


職業訓練とは?就職に必要なスキルを身につける場

職業訓練とは、主に国や都道府県、または認定を受けた民間企業が実施するもので、就職や転職に必要な知識や技能を無料で(または低額で)習得するための制度です。正式には「公的職業訓練」と呼ばれます。

この訓練は、単に技術を教えるだけでなく、就職活動のサポートや、職業意識の向上なども目的としており、受講することで就職の幅を広げることができます。

障害のある方の場合、一般の職業訓練のコースを選ぶことも可能ですが、障害特性に合わせた環境や専門的なサポートが整った、専用の訓練機関やコースが用意されています。

障害者向けの訓練制度の種類

障害のある方を対象とした職業訓練には、主に以下の2種類があり、目的に応じて選択できます。

  1. 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営する訓練:主に障害者職業能力開発校で実施されます。障害の特性に合わせた設備や専門職員が配置されており、長期間かけてじっくりと専門スキルを学ぶことができます。
  2. 地域の民間教育機関などへの委託訓練:ハローワークなどが委託して行う訓練です。比較的短期間で、地域企業が求める即戦力となるスキル(簿記、パソコン操作など)を学ぶことができます。

どちらも、障害者手帳を持つ方が主な対象ですが、中には手帳を持たない方も含めた「一般求職者向け」の訓練でも、合理的配慮を求めながら受講できる場合があります。

訓練で学べる分野の広がり

職業訓練で学べる内容は多岐にわたり、単なる事務作業に留まりません。具体的な例としては、以下のような分野があります。

  • 情報技術系:パソコンの基本操作、Word・Excelなどのオフィスソフト、Webサイト制作、プログラミングなど。
  • 事務・会計系:簿記、経理、医療事務、ビジネスマナーなど。
  • 製造・サービス系:CAD(製図)技術、DTP(デザイン)、清掃業務、パン・菓子製造など。

障害者職業能力開発校では、それぞれの分野に特化したコースが半年から1年程度の期間で用意されており、基礎から応用まで体系的に学ぶことができます。

💡 ポイント

訓練コースを選ぶ際は、ご自身の興味・関心だけでなく、体力や集中力、そして地域の求人状況を考慮することが大切です。ハローワークで求人動向を確認し、就職に直結するスキルを選ぶよう心がけましょう。

障害者職業能力開発校のメリットと特徴

障害者向けの職業訓練の中でも、特に専門性が高く、手厚いサポートを受けられるのが障害者職業能力開発校です。これは、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営する専門機関です。

専門的な設備と合理的配慮の提供

能力開発校の最大の特徴は、障害特性に合わせた専門的な環境が整っていることです。これにより、一般の訓練機関では難しい配慮も可能となります。

  • 設備面の配慮:聴覚障害者向けの磁気ループや字幕付き教材、肢体不自由者向けの昇降デスクやバリアフリー設備、視覚障害者向けの点字教材や音声読み上げソフトなど。
  • 訓練内容の配慮:体調の波に合わせて休憩時間を柔軟に調整したり、訓練時間を短縮したりといった、個々の状況に応じた合理的配慮が提供されます。
  • 専門職員の配置:障害者職業訓練指導員や、職業カウンセラーなど、障害に関する専門知識を持つ職員が常駐しており、技術指導だけでなく、精神面や生活面の相談にも対応してくれます。

訓練生は、障害をオープンにした状態で、安心して訓練に集中できる環境で学ぶことができます。

長期的な訓練で確かなスキルを習得

能力開発校の訓練期間は、概ね6ヶ月から1年と比較的長期間に設定されています。これは、じっくりと基礎から学び、確かな知識と技能を身につけて、自信を持って就職に臨めるようにするためです。

訓練の後半には、企業での実習(インターンシップ)がカリキュラムに組み込まれていることも多く、実際の職場の雰囲気を体験したり、訓練で学んだことが通用するかを試したりする貴重な機会となります。

「能力開発校で半年間、簿記とPCスキルを学びました。訓練期間が長かったおかげで、体調を崩しても遅れを取り戻す時間があり、最後には自信を持って就職活動に臨めました。今は経理事務として働いています。」

— 訓練修了者の声

無料で受講できる経済的なメリット

能力開発校の訓練は、原則として受講料が無料です(教材費や作業服代などは自己負担となる場合があります)。スキルアップに多額の費用をかけずに済むのは、訓練生にとって大きな経済的メリットです。

さらに、一定の要件を満たす方には、訓練期間中の生活を支援するための職業訓練受講給付金(求職者支援制度)が支給される場合もあります。経済的な不安なく訓練に専念できる体制が整っています。

⚠️ 注意

能力開発校は入校選考があります。選考では、訓練を受ける意欲や就職への熱意、そして訓練内容を習得できる見込みがあるかが判断されます。事前の情報収集と、ハローワークでの十分な相談が重要です。

委託訓練と一般求職者向け訓練の活用法

能力開発校以外にも、地域の企業や専門学校に委託して行われる「委託訓練」や、一般の求職者向け訓練を、障害のある方が活用することも可能です。これらは、短期間で特定のスキルを身につけたい場合に特に有効です。

地域のニーズに合わせた委託訓練

委託訓練は、ハローワークなどが民間の教育機関に訓練を委託して実施するもので、3ヶ月から6ヶ月程度の短期間で集中的にスキルを習得します。

  • メリット:地域の企業が求める最新のスキルや、特定の職種に特化した内容を学べる点です。また、訓練施設が地域に分散しているため、自宅から通いやすい場所で見つけやすいという利点もあります。
  • デメリット:能力開発校のような専門的な合理的配慮の体制は期待できない場合があるため、事前に訓練実施機関に問い合わせて、必要な配慮が可能かどうかを確認する必要があります。

「すぐにでも就職したい」「特定の資格だけ取りたい」といった目的が明確な方には、委託訓練が適している場合があります。

一般求職者向け訓練を検討する際の注意点

障害者手帳を持たない方も含めた「一般求職者向け」の訓練コースも、受講資格を満たせば利用できます。特に、発達障害や軽度の精神障害など、障害特性への配慮が比較的小さく済む方にとっては、選択肢が広がる可能性があります。

しかし、この場合も、訓練実施機関は障害者専門ではないため、合理的配慮の提供は個別の交渉になります。ハローワークを通じて、訓練校側に事前に必要な配慮(例:静かな席の確保、途中休憩の許可など)が可能かどうかを照会してもらうことが必須です。

訓練の進度や環境についていけるか不安がある場合は、無理をせず、障害者職業能力開発校などの専門機関から検討することを強くおすすめします。

訓練受講までの流れとサポート体制

職業訓練は、就職活動の一環として位置づけられています。訓練を受けたいと思ったら、まずは就労支援の専門機関であるハローワークに相談することからスタートします。

訓練受講までの4つのステップ

  1. ハローワークに相談:まずは、お住まいの地域を管轄するハローワーク(または障害者専門窓口)に行き、職業相談を受けます。そこで、就職の目標や必要なスキル、障害特性を伝えます。
  2. コースの検討・決定:ハローワークの職員と相談しながら、能力開発校や委託訓練の中から、ご自身の希望や適性、必要な配慮に合ったコースを選びます。
  3. 応募・選考:受講したい訓練コースに応募します。能力開発校の場合は選考(筆記試験、面接など)が行われます。ハローワークの推薦状が求められることもあります。
  4. 受講開始:選考に合格したら、所定の手続きを経て訓練を開始します。

この一連の流れは、ハローワークの職員が丁寧にサポートしてくれます。迷うことなく、まずは気軽に相談してみましょう。

就労移行支援事業所との連携

職業訓練を受ける前に、就労移行支援事業所を利用することも非常に有効です。就労移行支援は、就職に向けた準備を行う福祉サービスであり、職業訓練の橋渡し役を担ってくれます。

  • 連携のメリット:
    • 自己理解を深め、訓練で何を学ぶべきかを明確にできる。
    • 訓練に必要な基礎的なPCスキルやビジネスマナーを事前に習得できる。
    • 訓練受講中や修了後の就職活動や定着支援を、引き続き受けることができる。

特に、訓練校の選考対策や、訓練後の就職活動を円滑に進める上で、就労移行支援の利用は非常に強力なサポートとなります。

✅ 成功のコツ

職業訓練は「ゴール」ではなく、あくまで「就職への手段」です。訓練を始める前に、「どんな仕事に就きたいか」を明確にし、そのために必要なスキルを学ぶという意識を持つことが、成功への鍵となります。

まとめ

この記事では、障害のある方を対象とした職業訓練の制度について解説しました。

  • 職業訓練は、就職に必要な知識や技能を身につけ、就職への自信を高めるための重要な制度です。
  • 障害者職業能力開発校では、専門的な設備と職員により、個々の障害特性に応じた手厚い合理的配慮を受けながら、長期間かけてじっくりとスキルを学べます。
  • 訓練受講は、ハローワークでの職業相談からスタートし、就労移行支援事業所などの専門機関と連携することで、より効果的に進めることができます。

働くために必要なスキルや自信は、必ず身につけることができます。一歩踏み出し、職業訓練という制度を上手に活用して、あなたの可能性を大きく広げてください。

✅ 次のアクション

まずは、お近くのハローワークの障害者専門窓口に相談し、現在募集中の職業訓練コースや、就労移行支援事業所の情報について尋ねてみましょう。

伊藤 真由美

伊藤 真由美

いとう まゆみ33
担当📚 実務経験 10
🎯 就労支援🎯 進路支援

📜 保有資格:
特別支援学校教諭免許、社会福祉士

特別支援学校で5年教員を務めた後、就労継続支援B型事業所で5年勤務。「学校から社会へ」の移行支援と、「自分のペースで働く」を応援します。進路選択や作業所選びの情報をお届けします。

大学で特別支援教育を学び、卒業後は特別支援学校の教員として5年間勤務。知的障害や発達障害のある生徒たちの進路指導を担当する中で、「卒業後の支援」の重要性を痛感しました。そこで教員を辞め、就労継続支援B型事業所に転職。現在は生活支援員として、様々な障害のある方が自分のペースで働く姿を日々見守っています。特に大切にしているのは、「働くことがすべてではない」という視点。一般就労が難しくても、作業所での仕事や日中活動を通じて、生きがいや居場所を見つけることは十分可能です。記事では、特別支援学校卒業後の進路選択、就労継続支援A型・B型の違い、作業所での実際の仕事内容など、「自分らしい働き方・過ごし方」を見つけるための情報を発信します。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

特別支援教育を学び、「卒業後の支援」の重要性を感じたことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

作業所での仕事や日中活動を通じて、生きがいや居場所を見つけた方々を見守ってきたこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

「働くことがすべてではない」という視点を大切に、自分らしい過ごし方を見つける情報を発信します。

🎨 趣味・特技

ハンドメイド、音楽鑑賞

🔍 最近気になっているテーマ

発達障害のある方の就労支援、工賃向上の取り組み

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