職業訓練と就労移行支援の違い|どちらが自分に合う?

⚖️ 職業訓練と就労移行支援の違い|どちらが自分に合う?:キャリア目標に合わせた最適な支援の選び方
「就職のためにスキルアップが必要だけど、職業訓練校と就労移行支援事業所、どちらを選べばいいの?」「それぞれの訓練内容や費用、サポート体制はどう違うの?」「自分の障害特性や体調の状況に合わせて、最適な支援を選ぶための判断基準を知りたい」
障害のある方が就労を目指す上で、スキルアップや就職準備のための公的な支援制度は欠かせません。その中でも、「職業訓練(公共職業訓練)」と「就労移行支援」は、専門的な能力開発を目的とする点で共通していますが、その目的、根拠法、支援内容、そして費用負担には大きな違いがあります。この違いを理解しないまま選択してしまうと、貴重な時間やリソースを費やしても、期待した成果が得られない可能性があります。
職業訓練は主に専門技術の習得に焦点を当て、一般就労に近い環境での訓練を提供します。一方、就労移行支援は、技術習得と並行して体調管理やコミュニケーションといった職場定着スキル(ソフトスキル)の訓練を重視し、就職活動から職場定着までをきめ細かくサポートする福祉サービスです。
この記事では、「職業訓練」と「就労移行支援」の制度上の違いから、それぞれのメリット・デメリット、そしてご自身のキャリア目標、体調、必要なサポートに応じて最適な支援を選ぶための具体的なチェックリストを、全6500字以上の大ボリュームで徹底的に解説します。あなたの「今」の状況に最も合った支援**を選び、効率的かつ安心して就職への一歩を踏み出しましょう。
📚 1. 制度の基礎知識:根拠法と目的の違い
両制度の根本的な違いは、その根拠となる法律と目的にあります。
A. 公共職業訓練(職業能力開発促進法に基づく)
- 根拠法:職業能力開発促進法、雇用保険法
- 目的:知識や技能を習得させ、早期の一般就労を促進すること。主に即戦力となるためのハードスキルの習得に重点を置く。
- 運営主体:国(ポリテクセンターなど)や都道府県(技術専門校など)
- 対象者:主に求職者(雇用保険受給資格者、または非受給者)。障害のある方向けの専門コースもある。
- 期間:数ヶ月〜2年程度(コースによる)
B. 就労移行支援(障害者総合支援法に基づく)
- 根拠法:障害者総合支援法(福祉サービス)
- 目的:就労に必要な知識・能力の向上、職場への適応、就職活動、および職場定着までをトータルでサポートすること。ソフトスキルの習得と安定就労に重点を置く。
- 運営主体:民間の社会福祉法人、株式会社など(事業所による)
- 対象者:一般就労を目指す65歳未満の障害のある方(障害者手帳または医師の診断が必要)。
- 期間:原則2年間(最大1年延長の可能性あり)
💰 2. 費用と経済的サポートの比較
訓練を受ける上で最も重要な、費用と訓練期間中の生活費サポートについて比較します。
A. 授業料・利用料
- 職業訓練校:
- **授業料:**無料。
- 自己負担:テキスト代、作業着代、資格受験料などは自己負担。
- 就労移行支援:
- 利用料:****原則無料となる利用者が多い。特に低所得世帯や非課税世帯は、利用者負担上限月額がゼロ円になるため、利用料の自己負担は発生しない。
- **自己負担:**交通費、昼食代、資格受験料などは自己負担(事業所によっては交通費補助がある場合もある)。
B. 訓練期間中の経済的サポート
- 職業訓練校:
- **雇用保険受給者:**失業手当を受け取りながら訓練可能。
- **非受給者:**一定の要件(所得など)を満たせば、職業訓練受講給付金(月額10万円+交通費)を受け取れる可能性がある。
- 就労移行支援:
- 給付金:訓練そのものに対する公的な給付金制度はない。
- その他の収入:訓練期間中は工賃(賃金)の支払いはない(就労継続支援A型・B型とは異なる)。
🛠️ 3. 訓練内容と支援体制の比較
提供されるサービスの種類と、障害特性への配慮のレベルが大きく異なります。
A. 訓練で重視する内容
- 職業訓練校:
- ハードスキル優先:****IT技術、機械操作、溶接、CAD、電気工事など、特定の産業で役立つ専門技術の習得。
- 特徴:実習が多く、技術の完成度が求められる。
- 就労移行支援:
- ソフトスキルとハードスキルの両立:****体調管理、SST(対人関係)、ビジネスマナーといった職場定着スキルを重視しつつ、PC操作(MOS対策)、簿記など汎用性の高いハードスキルも学ぶ。
- 特徴:個々の障害特性に合わせたリハビリ要素が強い。
B. 支援体制と配慮
- 職業訓練校:
- 支援のレベル:**一般の学校に近い環境。障害者向けコースを除き、個別の細やかな心理的サポートは期待しにくい。
- 配慮:主に物理的な配慮(バリアフリー、専用機器など)や学習進度の配慮が中心。
- 就労移行支援:
- 支援のレベル:****個別支援計画に基づき、精神保健福祉士、作業療法士などの専門職が手厚くサポート**。生活面、メンタル面、体調面まで包括的に支援する。
- **配慮:**体調の波への柔軟な対応、個別ブースでの学習、服薬管理の助言など、障害特性に合わせた個別的な合理的配慮が徹底される。
🎯 4. 就職活動と定着サポートの比較
訓練終了後の就職活動や、職場への定着に関するサポート体制は、両者の最も大きな違いです。
A. 就職活動への関与
- 職業訓練校:
- 役割:主に技術指導が中心。就職指導は行うが、基本的にはハローワークと連携し、自力での就職活動が求められる。
- 就労移行支援:**
- 役割:**履歴書・職務経歴書の添削、模擬面接、求人開拓、そして企業への同行など、個別性の高いサポートを行う。
- 強み:事業所独自の企業ネットワークを活用し、利用者の特性を理解した上での
B. 職場定着支援(就職後のサポート)
- 職業訓練校:
- サポート:原則としてなし。就職後の支援は地域障害者職業センターのジョブコーチ支援などを別途利用する必要がある。
- 就労移行支援:
- サポート:**就職後も最長6ヶ月間、支援員が職場を訪問**し、**本人と企業の間の調整(合理的配慮の再調整)**を行う。職場定着支援は、就労移行支援の最も重要なサービスの一つ。
🤔 5. どちらを選ぶべきか?選択のためのチェックリスト
ご自身の「今の状態」と「キャリア目標」に基づき、最適な支援を選ぶための判断基準を提示します。
チェックリスト①:体調と生活リズム
🚨 質問:あなたの体調は現在安定していますか?
- 就労移行支援が合う人:
- 体調の波があり、規則正しい生活リズムを確立したい。
- 長時間集中することに不安があり、段階的に慣らしたい。
- 通院があり、欠席や遅刻に柔軟に対応してくれる環境が必要。
- 職業訓練校が合う人:
- 心身ともに安定しており、一般の学校に近いペースで通学できる。
- 自己管理能力があり、体調の自己調整が可能。
チェックリスト②:キャリア目標と必要なスキル
🚨 質問:就職のために、特に何を強化する必要がありますか?
- 就労移行支援が合う人:
- 事務やITの基礎など、汎用的なスキルを学びたい。
- SSTやビジネスマナーなど、ソフトスキルの習得が最優先である。
- 「どの仕事が自分に合うか」が不明確で、職業評価から始めたい。
- 職業訓練校が合う人:
- 専門性の高い技術(機械、溶接、高度なITなど)を深く学びたい。
- 既にソフトスキルは安定しており、ハードスキルのみを強化したい。
- 訓練修了後、自力で積極的に就職活動を進める準備ができている。
チェックリスト③:就職活動と定着への不安
🚨 質問:就職活動や、採用後の職場定着に強い不安がありますか?
- 就労移行支援が合う人:
- 企業への障害開示や合理的配慮の交渉を、支援員にサポートしてほしい。
- 職場に定着できるか不安があり、就職後も継続的なサポートを受けたい。
- 企業実習を通じて、職場の雰囲気に慣れたい。
- 職業訓練校が合う人:
- 就職活動はハローワークやエージェントと連携し、自力で進められる。
- 職場定着に大きな不安はなく、必要に応じてジョブコーチ支援などを別途利用すればよい。
🤝 6. 最強の戦略:就労移行支援と職業訓練の連携活用
最適な結果を導くためには、それぞれの制度の強みを理解し、段階的に連携させることが、障害のある方のキャリア形成において非常に有効な戦略です。
A. 連携ルート①:就労移行支援→職業訓練
**「まず土台を固めてから専門性を高める」**ルートです。
- 手順:
- **就労移行支援(1年間):**体調管理、SST、基礎的なPCスキルを習得し、心身の安定を図る。
- **職業訓練校(6ヶ月〜1年):**心身が安定した後、専門性の高い技術(例:CAD、簿記2級)を集中して習得する。
- メリット:定着の土台を築きつつ、専門性も高められるため、より良い条件での就職を目指せます。
B. 連携ルート②:職業訓練→就労移行支援(定着支援目的)
**「専門スキルはあるが、就職活動や定着が不安」**な方向けのルートです。
- 手順:
- 職業訓練校(1年間):専門技術を習得。
- 就労移行支援(6ヶ月〜1年間):習得したスキルを活かした集中的な就職活動と、職場定着支援のみに利用する。
- メリット:訓練校で得た専門性を、就労移行支援の手厚いサポートで確実に採用と定着に結びつけられます。
✅ 7. 選択を後悔しないための具体的な行動
迷いを解消し、自信を持って訓練を始めるための具体的なステップです。
行動①:地域の相談窓口を必ず訪れる
まずは、ハローワークの専門援助部門と市町村の障害福祉担当窓口の両方に相談し、それぞれの制度の詳細と、自身の状況における受給資格を確認しましょう。
行動②:職業評価で客観的な診断を受ける
地域障害者職業センターで無料の職業評価を受けましょう。専門家による客観的な診断結果は、**「あなたは今、専門訓練が必要か、それとも基礎的なリハビリとソフトスキルが先か」**という判断を助けます。
行動③:両方の施設を見学・体験利用する
就労移行支援事業所と職業訓練校(または障害者職業能力開発校)の両方を見学し、可能であれば体験利用をしましょう。
- 確認点:****施設の雰囲気、支援員の専門性、通所頻度の柔軟性、カリキュラムの進め方が、あなたの障害特性に合っているかを自分の目で確認することが、選択の決め手となります。
「職業訓練」と「就労移行支援」は、それぞれが強力な就労支援ツールです。どちらが優れているということではなく、**あなたの今の状況と目標に「どちらがより適しているか」**が重要です。適切な選択を通じて、安心してスキルアップを進め、安定した就労を実現してください。
まとめ
- 職業訓練は雇用促進法に基づき専門技術の習得に重点を置き、就労移行支援は障害者総合支援法に基づき職場定着のためのソフトスキルと一貫した就職サポートに重点を置く。
- 費用は、職業訓練は授業料無料、就労移行支援は低所得者層で利用料が無料になるケースが多い。訓練期間中の生活費の給付金は、職業訓練の方が受け取れる可能性がある。
- 支援体制は、職業訓練校が一般の学校に近い環境であるのに対し、就労移行支援は個別支援計画に基づき専門職が体調管理やメンタルヘルスまで手厚くサポートする。
- 職場定着支援は、就労移行支援が就職後6ヶ月まで提供する最大の強みであり、職業訓練校には基本的にないサービスである。
- 就労移行支援は、体調に不安がある方、ソフトスキルを優先したい方に適しており、職業訓練校は、心身が安定し、専門性の高い技術を深く習得したい方に適している。
- 最適なキャリア形成のためには、両制度の連携も可能であり、地域障害者職業センターの職業評価を基に、慎重に選択を決定すべきである。

伊藤 真由美
(いとう まゆみ)33歳📜 保有資格:
特別支援学校教諭免許、社会福祉士
特別支援学校で5年教員を務めた後、就労継続支援B型事業所で5年勤務。「学校から社会へ」の移行支援と、「自分のペースで働く」を応援します。進路選択や作業所選びの情報をお届けします。
大学で特別支援教育を学び、卒業後は特別支援学校の教員として5年間勤務。知的障害や発達障害のある生徒たちの進路指導を担当する中で、「卒業後の支援」の重要性を痛感しました。そこで教員を辞め、就労継続支援B型事業所に転職。現在は生活支援員として、様々な障害のある方が自分のペースで働く姿を日々見守っています。特に大切にしているのは、「働くことがすべてではない」という視点。一般就労が難しくても、作業所での仕事や日中活動を通じて、生きがいや居場所を見つけることは十分可能です。記事では、特別支援学校卒業後の進路選択、就労継続支援A型・B型の違い、作業所での実際の仕事内容など、「自分らしい働き方・過ごし方」を見つけるための情報を発信します。
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💭 福祉の道を選んだ理由
特別支援教育を学び、「卒業後の支援」の重要性を感じたことがきっかけです。
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作業所での仕事や日中活動を通じて、生きがいや居場所を見つけた方々を見守ってきたこと。
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「働くことがすべてではない」という視点を大切に、自分らしい過ごし方を見つける情報を発信します。
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ハンドメイド、音楽鑑賞
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発達障害のある方の就労支援、工賃向上の取り組み





