A型とB型、あなたに合うのはどっち?利用の目安と判断ポイント

「就労継続支援A型とB型、それぞれの違いはわかったけれど、結局自分(または家族)に合っているのはどっちだろう?」
この記事を読んでいるあなたは今、まさにそのように悩んでいらっしゃるかもしれませんね。A型とB型、どちらを選ぶかは、今後の生活やキャリアプランに大きく影響するため、慎重に判断したいと考えるのは当然のことです。
働く意欲はあるものの、体力や体調、スキルなどに不安がある方にとって、就労継続支援は働く経験を積み、自信を回復するための大切なステップです。だからこそ、ご自身にぴったりの場所を見つけることが、長く働き続けるための鍵となります。
この記事では、前回のおさらいを踏まえつつ、「あなたに合うのはA型かB型か」を判断するための具体的な利用の目安と、チェックすべき重要なポイントを詳しく解説します。
ご自身の状況と照らし合わせながら読み進め、最適な選択をするためのヒントを見つけてください。
就労継続支援A型・B型とは?改めて基本をおさらい
最適な選択をするためには、まずA型とB型の基本的な違いをしっかり理解しておくことが重要です。前回も解説しましたが、ここでは特に選択の判断材料となるポイントに絞って、改めて基本事項を確認しましょう。
A型は「雇用契約あり」の労働環境
就労継続支援A型は、「雇用型」とも呼ばれ、利用者と事業所が雇用契約を結ぶことが最大の特徴です。これにより、利用者さんは事業所の「労働者」となり、労働基準法などの法律が適用されます。
労働者となるため、その地域の最低賃金以上の賃金(給与)が保証されます。安定した収入を得られるという大きなメリットがある一方で、一定の勤務時間や出勤日数が求められ、体調管理や責任感を持って働くことが必要になります。
A型は、一般就労(障害者雇用を含む)への移行を最終的な目標とし、実践的な業務経験やビジネスマナーを身につけるための「訓練」の場でもあります。
B型は「雇用契約なし」の訓練環境
就労継続支援B型は、「非雇用型」と呼ばれ、事業所と雇用契約を結びません。利用者さんは、作業を通じて知識や能力を高める訓練を受ける立場です。
雇用契約がないため、最低賃金の保証はなく、作業の成果に応じて「工賃」が支払われます。工賃はA型に比べて低い傾向にありますが、働く時間や出勤日数を自分の体調に合わせて柔軟に決められるという最大のメリットがあります。
B型は、体力や体調が不安定な方、または年齢的に一般就労が難しい方が、社会とのつながりや生活リズムを維持するために、無理なく活動できる場として機能しています。
⚠️ 注意
A型は「賃金」、B型は「工賃」という違いを正確に把握しておくことが、サービスを選ぶ上での重要な基礎知識となります。特に収入面での期待値が大きく異なるため、注意が必要です。
【判断基準1】体力・体調の安定度で選ぶ
A型とB型のどちらを選ぶかを判断する上で、最も重要で優先すべき基準が、ご自身の体力と体調の安定度です。これは、働く上での責任の重さが両者で大きく異なるためです。
A型利用の目安:週5日、1日4時間以上の勤務が可能か
A型事業所は雇用契約を結ぶため、事業所側も安定した生産活動を行う責任があります。そのため、利用者さんには比較的安定した出勤が求められます。
- 具体的な目安:週に4〜5日、1日あたり4時間以上、継続して勤務できる体力が求められます。
- 体調の安定度:急な欠勤や遅刻が少なく、服薬や体調管理を自己責任でしっかり行えることが望ましいです。
もちろん、障害特性に応じた配慮はありますが、「労働者」として契約を維持するためには、最低限の出勤義務を果たすことが前提となります。もし、体調の波が大きく、週に何日か休んでしまう可能性がある場合は、A型での継続は難しいかもしれません。
B型利用の目安:まずは週1日、短時間からスタートしたい
B型は、体調の安定を最優先し、自分のペースで働く訓練を積むための場です。そのため、体力や体調に不安がある方に特に適しています。
- 具体的な目安:週に1〜3日、1日あたり2〜3時間程度の短時間勤務から始めたい方。
- 体調の安定度:精神疾患などで体調の波があり、決まった時間に出勤するのが難しい方、または長期間のブランクがあり、体力に自信がない方。
B型であれば、体調が悪ければ当日連絡して休むことも比較的容易であり、「無理なく働く」ことに重点を置くことができます。B型で働く習慣を身につけてから、体力やスキルが向上すればA型へステップアップすることも可能です。
「以前、一般就労を目指してA型に挑戦しましたが、体調を崩してしまい辞めてしまいました。今はB型で週3日、午前中のみの作業に切り替え、体調を整えることを優先しています。気持ちが楽になり、作業も楽しく続けられています。」
— 利用者さんの声
【判断基準2】収入と生活設計で選ぶ
A型とB型を分けるもう一つの大きな違いは、「収入」です。経済的な自立を目指すのか、それとも福祉的なサポートを受けながら活動を継続するのかという、生活設計に基づいて選択する必要があります。
A型は安定収入と社会保険のメリット
A型の大きなメリットは、最低賃金が保証された安定した「賃金」を得られることです。地域や事業所によって差はありますが、月額8万円前後(令和4年度実績)の収入が見込めます。
- 経済的なメリット:この収入により、生活費の一部を賄うことができ、経済的な自立に一歩近づけます。
- 社会保険:雇用契約を結び、一定の労働時間を満たせば、社会保険(雇用保険、健康保険、厚生年金)に加入できる場合があり、これは大きな安心材料となります。
「働くことで得られる収入を生活の基盤にしたい」「将来のために厚生年金に加入しておきたい」と考える方には、A型が適しています。
B型は工賃のみ、収入は補足的なもの
B型で支払われるのは「工賃」であり、その額は非常に低くなっています。平均月額は約1.7万円(令和4年度実績)と、生活費を工賃だけで賄うことは難しいのが現状です。
- 経済的な側面:工賃は、障害年金やその他の収入を補う程度のものとして捉える必要があります。
- 重視すべき点:収入よりも、社会参加、生活リズムの維持、対人関係スキルの向上など、非経済的なメリットを重視する方に適しています。
💡 ポイント
ご自身の生活費をどのように賄っているか(障害年金、家族のサポート、貯蓄など)を整理し、「月にいくら程度の収入が必要か、またはあれば安心か」を具体的に計算してみましょう。その上で、A型・B型のどちらが適しているかを判断してください。
【判断基準3】キャリアプランと将来の目標で選ぶ
A型とB型は、どちらも働くことを支援するサービスですが、最終的な目標設定が異なります。ご自身が将来、どのような働き方を目指しているのかを明確にして判断しましょう。
A型:一般就労への「架け橋」を目指す方
A型は、多くの場合、「一般就労(企業への就職)」への移行を強く意識したステップと位置づけられています。A型事業所で働く中で、企業で求められる実践的なスキルや経験を積むことができます。
- 目標:「数年以内に一般企業で働くことを目指したい」という明確な目標がある方。
- 得られる経験:企業と同じようにタイムカードを押し、業務目標に向かって働く経験は、就職活動の大きなアピールポイントになります。
- 移行率:A型の方がB型よりも一般就労への移行率が高い傾向にあり、移行への意欲が高い方をサポートする体制が整っています。
B型:長く社会参加を継続する「居場所」を求める方
B型は、一般就労への移行よりも、働くこと自体を通じた生活の安定や社会との繋がりを重視するサービスです。年齢制限がないため、65歳以降も活動を続けたい方や、長期的な居場所を求める方にも選ばれています。
- 目標:「無理なく活動を続けたい」「体調を整えながら社会との接点を持ちたい」といった、比較的柔軟な目標を持つ方。
- 活動内容:農作業や手芸、自主製品の制作など、地域に根差した活動が多く、働くことの楽しさややりがいを見つけやすい環境です。
- スキルアップ:B型から一般就労を目指すことも可能ですが、その場合は就労移行支援などのサービスと連携してスキルアップを図るケースが多くなります。
✅ 成功のコツ
A型もB型も、ご自身の目標達成のための「手段」です。目標が曖昧な場合は、まずはB型で働く習慣を身につけてから、改めてA型への移行や一般就労を検討するなど、段階的なステップアップを視野に入れるのが成功のコツです。
【詳細比較】A型とB型をチェックリストで最終診断
これまでの判断基準を踏まえ、A型とB型、それぞれが「向いている」とされる特徴をチェックリスト形式でまとめました。ご自身に当てはまる項目を数えてみましょう。
就労継続支援A型が向いている方チェックリスト
- 週4〜5日、1日4時間以上の勤務が継続的に可能である。
- 体調の自己管理ができ、急な欠勤・遅刻が少ない。
- 最低賃金以上の安定収入(賃金)を必要としている。
- 将来的に一般企業への就職を強く目指している。
- ある程度の責任やプレッシャーがあっても大丈夫である。
- 社会保険への加入など、労働者としての権利を確保したい。
就労継続支援B型が向いている方チェックリスト
- 体調の波が大きく、決まった時間に働くのが難しい。
- まずは週1〜3日、短時間の勤務からスタートしたい。
- 収入よりも、働く習慣や社会との繋がりを最優先したい。
- 工賃は低いが、障害年金などで生活基盤は安定している。
- 作業内容よりも、職場の雰囲気や人間関係を重視したい。
- 年齢が65歳以上で、長く活動できる居場所を探している。
チェックした項目の数が多かった方が、現時点での「より適切な選択肢」である可能性が高いと言えます。もちろん、チェックリストの結果がすべてではありませんが、客観的な判断材料として活用してください。
| 判断ポイント | A型が適切な場合の傾向 | B型が適切な場合の傾向 |
|---|---|---|
| 体調の安定度 | 安定している(週4〜5日出勤可能) | 不安定である(週3日未満、短時間希望) |
| 収入への期待 | 生活費の一部を賄う安定収入を求める | 収入は補足的でよく、工賃の額は問わない |
| 将来の目標 | 一般就労への移行を目指す | 社会参加や生活リズムの維持が目標 |
| 責任の許容度 | 雇用契約に伴う責任を受け入れられる | 責任やプレッシャーが少ない環境を求める |
迷った時のアクションプラン:相談と体験利用を重視する
チェックリストや比較表を見ても、まだ決めきれないという方は、次のアクションプランを実行に移すことを強くおすすめします。机上の判断だけでなく、現実を知ることが最も重要です。
ステップ1:専門家に相談する
まずは、お住まいの地域にある相談支援事業所の専門家(相談支援専門員)に相談しましょう。専門家は、ご本人の障害特性、生活状況、利用可能な地域の事業所の情報など、多角的な視点からアドバイスを提供してくれます。
- 相談時に伝えるべきこと:
- 現在の体力、服薬状況、体調の波。
- 過去の就労経験やブランクの長さ。
- 月に必要な最低限の収入額。
- 将来的に目指したい働き方や生活。
専門家のアドバイスは、ご自身の判断を客観的に裏付ける強力な情報となります。
ステップ2:事業所の「見学・体験利用」を徹底する
A型、B型に関わらず、必ず複数の事業所を見学し、可能であれば体験利用をさせてもらいましょう。パンフレットやウェブサイトの情報だけではわからない、職場の雰囲気や実際の作業内容、職員さんのサポート体制を知ることができます。
特にA型は、面接の前に体験利用を設けている事業所が多くあります。実際に働いてみて、体力的な負担や人間関係、作業の難易度などを肌で感じることが、ミスマッチを防ぐ最善策です。
💡 ポイント
見学・体験利用の際には、利用者さん同士の会話や職員さんの指導の様子など、「職場の生きた雰囲気」を観察しましょう。自分らしくいられるか、安心して働けそうか、という感覚も大切にしてください。
ステップ3:B型からA型へのステップアップも視野に入れる
「A型で働きたいけれど、体力に自信がない」と悩んでいる場合は、B型を「準備期間」として利用することを検討しましょう。B型で数ヶ月〜1年程度、規則正しい生活リズムと働く体力を養ってから、A型への移行を目指すというキャリアプランは非常に有効です。
このステップアップは、決して回り道ではありません。体調が安定した状態でA型に挑戦できるため、定着率も高まりやすくなります。相談支援専門員に、移行支援を見据えた計画を立ててもらいましょう。
まとめ
この記事では、就労継続支援A型とB型、どちらを選ぶべきかの判断基準について解説しました。
- 体力・体調の安定度:A型(安定)かB型(不安定)かを判断する最優先の基準です。
- 収入と生活設計:安定収入(A型)か、収入は補足的で良い(B型)かで選びます。
- 将来の目標:一般就労を目指す(A型)か、無理なく社会参加を続ける(B型)かで判断します。
あなたの選択は、今後の生活の質に大きく影響します。焦らず、ご自身のペースで、専門家や家族とよく話し合いながら進めていきましょう。ご自身に合った環境で、働く喜びを見つけられるよう心から願っています。
✅ 次のアクション
まずは「相談」と「見学」から始めましょう。お住まいの市区町村の障害福祉課、または施設検索ページからお近くの相談支援事業所にお問い合わせください。

菅原 聡
(すがわら さとし)38歳📜 保有資格:
職業指導員、キャリアコンサルタント、精神保健福祉士
就労移行支援事業所で10年以上、障害のある方の「働く」を支援してきました。一般就労への移行支援から就労継続支援まで、幅広い経験をもとに、「自分に合った働き方」を見つけるための情報をお届けします。
大学で社会福祉を学び、卒業後すぐに就労移行支援事業所に就職。当初は「障害があっても一般企業で働けるんだ」という驚きと感動の連続でした。これまで150名以上の方の就労支援に携わり、その8割が一般企業への就職を実現。ただし、「就職がゴール」ではなく、「長く働き続けられること」が本当のゴールだと考えています。印象的だったのは、精神障害のある方が、障害をオープンにして自分のペースで働ける職場を見つけ、「初めて仕事が楽しいと思えた」と言ってくださったこと。その笑顔が忘れられません。記事では、就労移行支援と就労継続支援の違い、企業選びのポイント、障害者雇用の現実など、実際の支援経験に基づいた実践的な情報をお伝えします。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学で社会福祉を学び、「障害があっても一般企業で働ける」という可能性に感動したことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
精神障害のある方が、自分のペースで働ける職場を見つけ、「初めて仕事が楽しいと思えた」と言ってくださったこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
「就職がゴール」ではなく、「長く働き続けられること」を大切に、実践的な情報を発信します。
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リモートワークと障害者雇用、週20時間未満の短時間雇用





