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A型・B型の給与の仕組み|工賃・最低賃金の考え方を解説

📖 約36✍️ 伊藤 真由美
A型・B型の給与の仕組み|工賃・最低賃金の考え方を解説
就労継続支援A型とB型、それぞれの収入の仕組みを解説。A型は雇用契約に基づく「給与」で最低賃金以上が保証され、平均月額8万円台(令和4年度)です。一方、B型は雇用契約がなく「工賃」として作業の対価が支払われ、最低賃金の適用はなく平均月額1.6万円台(令和4年度)です。この違いは、A型が「働くこと」を目的とするのに対し、B型が「リハビリや社会参加」に重点を置くためです。給与・工賃は障害年金や生活保護に影響を与える可能性があるため、事前に専門家への相談が不可欠です。

就労継続支援(A型・B型)の利用を考える際、最も気になることの一つが「お金」に関することではないでしょうか。「A型は給与、B型は工賃と聞くけれど、具体的にどう違うの?」「最低賃金は保証されるの?」「どれくらい稼げるのだろう?」といった疑問を抱えているご本人やご家族は少なくありません。

働くことは、単に収入を得るだけでなく、生活の安定や社会参加にも繋がる大切な活動です。この制度を最大限に活用し、安心して働き始めるためには、A型とB型それぞれの収入の仕組みを正確に理解しておくことが不可欠です。

この記事では、就労継続支援A型で支払われる「給与」と、B型で支払われる「工賃」の違い、そして最低賃金の考え方について、具体的なデータや制度に基づいてわかりやすく解説します。読み終わる頃には、ご自身にとって最適な働き方と、収入に対する具体的な見通しが得られるはずです。


就労継続支援の給与・工賃の基礎知識

A型とB型の収入形態の根本的な違い

就労継続支援にはA型(雇用型)とB型(非雇用型)の2種類があり、この二つは収入の形態が根本的に異なります。この違いは、事業所との間に雇用契約を結ぶかどうかによって生じます。

A型では、事業所と雇用契約を結ぶため、利用者は「労働者」として扱われ、その労働の対価として「給与」が支払われます。給与には、労働基準法や最低賃金法などの法律が適用されます。一方、B型では、原則として雇用契約を結ばないため、作業の成果に応じて「工賃」が支払われます。工賃は、給与とは異なり、最低賃金法の適用外となります。

この契約形態の違いが、収入の額や社会保険の加入など、様々な側面に影響を与えます。ご自身の目標や体調に合わせて、どちらの形態が適しているかを検討することが重要です。

「給与」と「工賃」の法的な位置づけ

「給与」と「工賃」は、法的な位置づけが大きく異なります。給与は、労働者が労働を提供したことに対して、使用者が支払うべき報酬であり、労働基準法によって厳しく保護されています。例えば、残業代の支払い義務や有給休暇の取得などが定められています。

これに対し、B型の工賃は、生産活動への参加によって得られた収益から、経費を差し引いた上で利用者に分配されるものです。これはあくまでも作業の対価であり、雇用契約に基づく賃金ではないため、労働基準法や最低賃金法などの直接的な適用はありません。

💡 ポイント

A型では「働く」ことが目的であるのに対し、B型では「働くことを通じたリハビリや社会参加」に重点が置かれており、収入の位置づけもそれに伴い変わります。

最低賃金制度の基本的な考え方

最低賃金制度は、働く人たちの生活を安定させるため、国が定める賃金の最低額を企業に義務付ける制度です。日本では、都道府県ごとに定められた「地域別最低賃金」があり、労働者を雇用するすべての企業がこの基準以上の賃金を支払わなければなりません。

この制度は、A型事業所のように雇用契約を結ぶ場合には適用されますが、B型事業所のように雇用契約を結ばない場合には適用されません。この最低賃金の適用有無が、A型とB型の収入差の最大の要因となっています。


就労継続支援A型:給与の仕組みと最低賃金

A型は最低賃金が保証される「雇用型」

就労継続支援A型事業所を利用する場合、利用者と事業所の間で雇用契約が結ばれます。これにより、利用者は法的に労働者とみなされ、労働基準法が適用されます。最も重要な点は、各都道府県で定められた最低賃金以上の給与が保証されることです。

給与は、利用者が実際に働いた時間に応じて計算されるのが一般的です。例えば、東京都の最低賃金が時間額1,113円(2025年現在、例示)だとすると、A型事業所は利用者に対して、最低でもその額以上の時給を支払わなければなりません。

この最低賃金の保証は、A型が経済的な自立を目指すためのサービスとして機能していることを示しており、利用者は安定した収入源を確保できます。

A型の平均給与と収入の相場

A型事業所の給与は最低賃金以上が保証されていますが、具体的な平均給与はどのくらいなのでしょうか。厚生労働省の統計によると、令和4年度の就労継続支援A型の全国平均賃金は、月額83,576円(出典:厚生労働省)となっています。

この平均額は、利用者が働く労働時間や、事業所が所在する地域の最低賃金水準、そして事業所の経営状況によって変動します。大都市圏では最低賃金が高いため、地方よりも平均給与が高くなる傾向があります。また、事業所によっては、ボーナスや昇給制度を設けているところもあり、利用者のモチベーションに繋がっています。

✅ 成功のコツ

A型事業所を選ぶ際は、その地域の最低賃金を基に、平均的な労働時間と給与の見込み額を具体的に計算してもらい、生活設計を立ててみましょう。

給与から控除されるものと社会保険

A型で支払われる給与は、一般企業と同様に、各種の控除が行われた上で手取り額が支払われます。主な控除項目は以下の通りです。

  • 所得税:年間所得が一定額を超えた場合に源泉徴収されます。
  • 社会保険料:週の労働時間など、一定の要件を満たす場合、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料などが控除されます。

特に社会保険に加入できることは、A型を利用する大きなメリットの一つです。保険料は給与から引かれますが、将来の年金受給額の増加や、病気・怪我の際の保障が手厚くなるなど、長期的な安心感に繋がります。

「給与が安定しているおかげで、毎月の生活費の心配が減りました。社会保険にも加入できたので、将来の不安も少し解消されました。」

— 30代・精神障害のある利用者


就労継続支援B型:工賃の仕組みと最低賃金外の考え方

B型は雇用契約なしの「非雇用型」

就労継続支援B型事業所では、利用者と事業所が雇用契約を結びません。そのため、利用者は労働者ではなく、生産活動に参加する利用者という位置づけになります。これが、B型の報酬が「給与」ではなく「工賃」と呼ばれる理由です。

工賃は、作業の成果に応じて、事業所の売上から必要経費(原材料費、光熱費など)を差し引いた後に、利用者に分配されるものです。工賃は、事業所の運営状況や売上の変動に直接影響を受けるため、A型の給与のように安定しているわけではありません。

工賃の算出方法と最低賃金が適用されない理由

B型は雇用契約がないため、最低賃金法の適用を受けません。最低賃金が適用されないのは、B型が働く能力の向上やリハビリテーションに重点を置いており、労働力の提供を主目的としていないからです。利用者は、自分の体調や障害特性に合わせて無理なく作業に参加できることが優先されます。

工賃の算出方法には、主に以下の2種類があります。

  • 出来高払い(歩合制):個々の利用者が完成させた作業量に応じて工賃が支払われます。
  • 時間給ベース:作業に参加した時間に応じて工賃が支払われますが、これは「給与」ではなく、あくまで作業参加への分配金です。

多くの事業所では、両者を組み合わせた形で工賃を計算しています。重要なのは、事業所の収益が工賃に直結するため、収益構造が安定しているか、効率的な作業が行われているかどうかが、工賃の水準を左右するということです。

B型の平均工賃と工賃底上げの動向

B型の工賃はA型と比べて低い水準にあります。厚生労働省の統計によると、令和4年度の就労継続支援B型の全国平均工賃は、月額16,507円(出典:厚生労働省)となっています。これは、A型の平均給与と比べると、かなり低い水準です。

しかし、国は工賃の向上(工賃底上げ)を重要な政策課題として位置づけており、工賃が高い事業所を評価する報酬制度(工賃向上計画)を導入するなど、様々な取り組みを進めています。そのため、事業所によっては平均を大きく上回る工賃を支払っているところもあります。

⚠️ 注意

B型を選ぶ際は、工賃の額だけで判断するのではなく、作業内容が自分に合っているか、体調に合わせた柔軟な働き方ができるかどうかを重視することが大切です。工賃が低いからといって、サービスの質が低いわけではありません。


給与・工賃と他の収入(年金・手当)の関係

障害年金受給者が給与・工賃を得る場合

障害年金を受給している方が、就労継続支援を利用して給与や工賃を得た場合、原則として年金受給額が直ちに減額されたり、支給停止になったりすることはありません。障害年金は、原則として「働けるかどうか」ではなく、「障害の状態」に基づいて支給されるためです。

ただし、障害年金の中には「所得制限」が設けられている加算部分(例えば、子の加算)があり、給与・工賃が一定額を超えると、その加算部分が減額される可能性があります。また、精神障害などで働ける状態になったと判断された場合、年金等級の見直しが行われる可能性はゼロではありませんが、これは収入があることだけが原因ではないことがほとんどです。

もし不安な場合は、給与や工賃の額が確定した時点で、市区町村の年金窓口や社会保険労務士に相談することをおすすめします。

生活保護受給者が給与・工賃を得る場合

生活保護を受給している方が給与(A型)や工賃(B型)を得た場合、その収入は「収入認定」の対象となります。生活保護費は、厚生労働大臣が定める最低生活費から収入額を差し引いて計算されるため、収入が増えればその分、保護費が減額されます

しかし、収入の全てが保護費から差し引かれるわけではありません。例えば、働くために必要な費用(交通費や食費など)や、自立を促すための「控除額」が定められており、収入の一部は手元に残せる仕組みになっています。この控除額は、利用者が働く意欲を失わないよう配慮するためのものです。

生活保護と就労継続支援の利用を検討する際は、必ず福祉事務所のケースワーカーに相談し、収入と保護費の具体的な計算方法を確認しましょう。適切な計画を立てることで、収入を得る喜びと安定した生活を両立させることができます。

生活保護制度に関する外部サイトで、詳細を確認することもできます。

給与・工賃と税金・扶養控除の関係

給与や工賃も、年間所得が一定額を超えると所得税や住民税の課税対象となります。特にA型では、給与が高くなると税金や社会保険料の負担が増える可能性があります。

また、ご家族の扶養に入っている場合、ご本人の年間所得が一定額(一般的に103万円など)を超えると、扶養者の税制上の控除(扶養控除)が受けられなくなることがあります。利用を始める前に、年間の収入見込み額を計算し、ご家族や税理士と相談して、扶養控除の適用について確認することが重要です。

💡 ポイント

B型の工賃は、所得税法上は原則として「雑所得」として扱われます。年間所得が基礎控除額などを超えた場合、確定申告が必要になることがあります。


事業所選びと収入に関するよくある疑問

Q. A型とB型、どちらを選ぶべき?

A型とB型の選択は、収入の額だけでなく、ご自身の現在の体調や、将来の目標によって判断すべきです。収入を重視し、一般就労への意欲が高い方、そして安定した勤務が可能と見込まれる方はA型が適しています。しかし、体力に不安があり、自分のペースで無理なく社会参加を継続したい方は、B型が適しているでしょう。

選ぶ際のポイント A型が向いている方 B型が向いている方
収入の重視度 高い(最低賃金以上を求める) 低い(工賃は副収入と考える)
体調の安定度 比較的安定している 体調に波があり、欠勤・早退が多い
目指す将来 一般就労への移行 長期的な居場所の確保、リハビリ

どちらを選ぶか迷った場合は、両方のタイプの事業所を見学・体験利用し、支援員や相談支援専門員とよく話し合って決めましょう。

Q. 工賃の高いB型事業所を選ぶ際の注意点は?

工賃が高いB型事業所は魅力的ですが、その裏側にある実態も確認することが大切です。工賃が高い事業所は、以下のような特徴を持っていることがあります。

  • 作業内容の負荷が高い:工賃が高い分、求められる作業量や質が厳しく、体調への負担が大きい可能性があります。
  • 作業内容が限定的:高い工賃を維持するために、特定の高収益な作業に特化しており、スキルアップの幅が狭い可能性があります。
  • 作業環境が一般企業に近い:リハビリよりも生産性を重視しているため、障害特性への配慮が十分でない可能性があります。

工賃が高いことは素晴らしいことですが、無理なく継続できるかどうかを最優先に考え、見学時に作業のペースや環境をよく観察しましょう。

Q. A型で最低賃金より低い給与になることはある?

原則として、A型事業所は利用者に対して最低賃金以上の給与を支払う義務があります。しかし、例外的に、都道府県労働局長の許可を得た場合に限り、最低賃金の減額特例が適用されることがあります。これは、利用者の能力が著しく低く、最低賃金を支払うのが困難であると認められた場合に限られます。

この減額特例が適用されている事業所は非常に少なく、また利用者本人の同意が必要です。もし、雇用契約を結ぶ際に減額特例の説明を受けた場合は、必ず相談支援専門員やハローワークに相談し、内容を十分に理解してから契約を結ぶようにしましょう。

✅ 成功のコツ

工賃や給与だけでなく、事業所が提供する「支援の質」を重視しましょう。質の高い支援は、体調の安定や一般就労への移行に繋がり、結果的に長期的な収入増加に貢献します。


まとめ

就労継続支援A型で支払われる「給与」は最低賃金が保証される労働の対価であり、B型で支払われる「工賃」は最低賃金が適用されない生産活動の分配金であるという違いを理解することは、サービス利用の第一歩です。

A型は安定した収入と社会保険の加入による生活の安定、B型は体調優先の柔軟な働き方による社会参加の継続という、それぞれのメリットがあります。ご自身の状況に応じて、収入と支援のバランスを考慮し、最適な事業所を見つけることが大切です。不安な点は、地域の相談窓口や支援機関を積極的に活用し、専門家のアドバイスを受けながら決定しましょう。

まとめ

  • A型(雇用型)給与が支払われ、最低賃金が保証されます。
  • B型(非雇用型)工賃が支払われ、最低賃金の適用はありません
  • 給与・工賃は、障害年金や生活保護に影響を与える可能性があるため、事前にケースワーカーや年金窓口への相談が必要です。

伊藤 真由美

伊藤 真由美

いとう まゆみ33
担当📚 実務経験 10
🎯 就労支援🎯 進路支援

📜 保有資格:
特別支援学校教諭免許、社会福祉士

特別支援学校で5年教員を務めた後、就労継続支援B型事業所で5年勤務。「学校から社会へ」の移行支援と、「自分のペースで働く」を応援します。進路選択や作業所選びの情報をお届けします。

大学で特別支援教育を学び、卒業後は特別支援学校の教員として5年間勤務。知的障害や発達障害のある生徒たちの進路指導を担当する中で、「卒業後の支援」の重要性を痛感しました。そこで教員を辞め、就労継続支援B型事業所に転職。現在は生活支援員として、様々な障害のある方が自分のペースで働く姿を日々見守っています。特に大切にしているのは、「働くことがすべてではない」という視点。一般就労が難しくても、作業所での仕事や日中活動を通じて、生きがいや居場所を見つけることは十分可能です。記事では、特別支援学校卒業後の進路選択、就労継続支援A型・B型の違い、作業所での実際の仕事内容など、「自分らしい働き方・過ごし方」を見つけるための情報を発信します。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

特別支援教育を学び、「卒業後の支援」の重要性を感じたことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

作業所での仕事や日中活動を通じて、生きがいや居場所を見つけた方々を見守ってきたこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

「働くことがすべてではない」という視点を大切に、自分らしい過ごし方を見つける情報を発信します。

🎨 趣味・特技

ハンドメイド、音楽鑑賞

🔍 最近気になっているテーマ

発達障害のある方の就労支援、工賃向上の取り組み

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