ホーム/記事一覧/就労・進路サポート/就労継続支援(A型・B型)/支援内容が全然違う?事業所ごとの特徴の見極め方

支援内容が全然違う?事業所ごとの特徴の見極め方

📖 約32✍️ 菅原 聡
支援内容が全然違う?事業所ごとの特徴の見極め方
就労継続支援事業所は、同じA型・B型でも、経営母体や作業内容によって支援内容が大きく異なります。この個性の違いを見極めることが、最適な事業所選びのカギです。事業所は「訓練重視型」(就職やスキルアップが目標)と「居場所重視型」(生活の安定とリハビリが目標)に大別され、利用者自身の目的に合わせて選択すべきです。工賃・給与の安定性、職員の質、そして事業所の専門分野(IT特化、農福連携など)をチェックリストで確認し、ミスマッチを防ぐために体験利用や相談支援専門員のアドバイスを最大限に活用しましょう。

就労継続支援(A型・B型)の利用を検討し、いくつかの事業所のパンフレットやウェブサイトを見てみると、「同じA型なのに、活動内容が全然違う」「B型でも、工賃の実績に大きな差があるのはなぜだろう?」といった疑問に直面することがあります。実は、就労継続支援は、法律で定められた最低限の基準を満たしていれば、その支援内容や経営方針は事業所ごとに大きく異なるのが実情です。

この事業所ごとの「個性の違い」こそが、利用者が自分に合った最適な場所を選ぶためのカギとなります。しかし、その特徴を外見だけで見極めるのは容易ではありません。

この記事では、「なぜ事業所ごとに支援内容が違うのか」という背景を理解しつつ、利用者の目的や障害特性に合わせて「良い事業所の特徴」を見極めるための具体的なチェックポイントを解説します。事業所の「個性」を正しく把握することで、あなたの目標達成を力強く後押ししてくれる場所をきっと見つけられるはずです。


事業所ごとの個性が生まれる背景

事業所の経営母体の違いと影響

就労継続支援事業所は、運営している「経営母体」によって、その支援方針や活動内容が大きく影響を受けます。主な経営母体は以下の通りです。

  • 社会福祉法人・NPO法人:福祉的な視点が強く、利用者の生活支援やリハビリテーションを重視する傾向があります。地域との連携を重視し、工賃(給与)よりも活動の質や継続性を重視することが多いです。
  • 一般企業・株式会社ビジネス的な視点が強く、生産性や市場性を重視します。A型では特にこの傾向が強く、高い給与(工賃)や、一般就労に近い実践的なスキル習得を目指した支援が特徴的です。

例えば、一般企業が運営するA型事業所ではITやデザインといった専門性の高い作業が多く、福祉法人が運営するB型事業所では農作業や創作活動が多い、といった違いが見られます。

得意とする障害種別と支援ノウハウ

事業所は、すべての障害種別に対応していますが、実際には特定の障害種別の利用者が多い、またはその障害に対する支援ノウハウが蓄積されていることがあります。

  • 精神障害・発達障害に特化:コミュニケーションの訓練、メンタルヘルスケア、生活リズムの安定に重点を置き、比較的静かで集中できる作業環境を提供することが多いです。
  • 知的障害・身体障害に特化:作業の工程を細分化し、反復作業や身体的なサポートに重点を置く傾向があります。バリアフリー設備や医療連携も充実していることが多いです。

特に、自分の障害特性に合わせた支援ノウハウを持つ事業所を選ぶことで、より効果的な訓練を受けることができます。

💡 ポイント

事業所の「個性」は、「誰が」「何を目的として」その事業所を立ち上げ、運営しているか、という背景から生まれています。その背景を想像してみると、特徴が見えてきます。

作業内容が事業所の個性を決定づける

事業所の特徴を最もわかりやすく示しているのが「作業内容」です。作業内容が違えば、利用者や職員に求められるスキル、そして得られる収入(工賃・給与)も大きく変わってきます。

  • 製造・加工系:パンや菓子の製造、部品の組み立てなど。衛生管理や納期の厳守など、規律性が求められます。
  • IT・事務系:データ入力、ウェブ制作、名刺作成など。高い集中力とPCスキルの習得に繋がります。
  • 農作業・園芸系:野菜の栽培、草刈りなど。体力維持や季節を感じる活動が重視されます。

作業内容があなたの興味や目標と一致しているかどうかが、継続利用とモチベーションを保つための第一歩です。


事業所の「支援スタイル」を見極める

訓練重視型 vs 居場所重視型

就労継続支援には、大きく分けて「訓練重視型」と「居場所重視型」の二つの支援スタイルがあります。ご自身の目的が「就職」か「生活の安定」かによって、どちらを選ぶべきかが決まります。

  • 訓練重視型一般就労への移行を明確な目標とし、ビジネスマナー研修、資格取得支援、企業実習などを積極的に取り入れています。A型や、移行実績の多いB型に多く見られます。
  • 居場所重視型働くこと自体がリハビリや生活の一部であり、作業内容よりも、安心して通える雰囲気、人間関係、体調管理を最優先します。工賃(給与)の目標は低めですが、利用者の定着率は高い傾向があります。

見学時に「この事業所は利用者に対してどのようなゴールを設定しているか」を質問してみると、どちらのスタイルに近いかが見えてくるでしょう。

支援の厳しさ・柔軟性の見分け方

支援のスタイルは、「厳しさ」や「柔軟性」という点でも違いが生じます。特に体調の波がある方にとっては、この柔軟性が非常に重要です。

  1. 体調不良時の対応当日欠勤や遅刻への対応が柔軟か、休んだ後に復帰するためのフォローアップ体制が整っているかを確認しましょう。
  2. ルールの厳格さ:作業時間や休憩時間の管理、服装規定、コミュニケーションのルールなどが、一般企業に近い厳格さであるか、ある程度緩やかであるかを確認しましょう。
  3. 個別化の程度個別支援計画に基づいて、作業量や作業工程を、利用者の状態に合わせてきめ細かく調整してくれるかを確認しましょう。

厳格な環境で自己管理能力を高めたいのか、それとも柔軟な環境でリラックスして働きたいのか、ご自身の性格と照らし合わせて判断しましょう。

「私は最初は訓練重視のA型に行きましたが、プレッシャーで体調を崩しました。居場所重視のB型に移ったら、ゆっくり休める安心感から、むしろ作業に集中できるようになりました。」

— 20代・精神障害のある利用者

福祉サービスとしての「手厚さ」を測る指標

福祉サービスとして、事業所がどれだけ手厚い支援を提供しているかを測る指標の一つに、加算の取得状況があります。事業所がどのような加算を取得しているかを確認することで、その事業所の「強み」が見えてきます。

  • 福祉専門職員配置等加算:社会福祉士や精神保健福祉士などの専門資格を持った職員を多く配置していることを示す加算です。
  • 送迎加算送迎サービスを提供していることを示します。
  • 目標達成加算(就労移行支援):A型・B型ではありませんが、就労移行支援への移行実績が多い事業所が取得している加算です。

これらの加算は、事業所のパンフレットや「重要事項説明書」に記載されています。積極的に確認しましょう。


事業所を見極めるための具体的なチェックリスト

チェック①:工賃(給与)の実態と経営状況

工賃や給与は、事業所の生産活動の安定性を示す最も重要な指標です。

  1. 工賃・給与の変動リスク:A型では経営悪化時の給与の変動リスク、B型では工賃の増減について、過去の事例を交えて確認しましょう。
  2. 工賃計算の透明性:特にB型では、工賃がどのように計算され、利用者に配分されているか(時給制、歩合制など)を明確に説明できるかを確認しましょう。
  3. 情報公開の積極性:A型・B型問わず、事業所の財務状況やサービス評価結果をウェブサイトなどで公開しているかを確認しましょう。

高い工賃(給与)は魅力的ですが、その工賃が安定して支払われるかどうか、という「持続可能性」を見極めることが重要です。

チェック②:職員の質と雰囲気

事業所の「顔」とも言える職員は、支援の質を直接左右します。見学時の職員の様子を注意深く観察しましょう。

  1. コミュニケーションの様子:職員が利用者に対して、丁寧で、対等な立場で、温かい言葉遣いをしているかを観察しましょう。
  2. 多職種連携の様子:職業指導員と生活支援員、サビ管などの職員同士の連携がスムーズで、情報共有が行き届いているかを観察しましょう。
  3. 職員の定着率:もし可能であれば、職員の平均勤続年数を聞いてみましょう。職員の定着率が高い事業所は、運営が安定し、支援ノウハウが蓄積されやすい傾向にあります。

職員の質が高い事業所は、利用者の安心感と定着率にも直結します。

✅ 成功のコツ

見学時に、「この事業所の良いところと、改善したいところはどこですか?」と職員に直接聞いてみましょう。正直に答えられる職員がいる事業所は、自己評価能力が高く、信頼できます。

チェック③:事業所の専門分野と実績

その事業所が「何に強いのか」という専門分野と、それを裏付ける実績は、選択の重要な基準となります。

  1. 特化している障害種別現在、最も利用者が多い障害種別と、その障害に合わせた支援でどのような実績があるかを確認しましょう。
  2. 得意な作業分野:その事業所のメインとなる生産活動と、その分野でどれくらいの期間、安定して受注があるかを確認しましょう。
  3. 一般就労移行実績の内訳:移行した利用者が、どのような業種や職種に就職しているか、その具体的な内訳を聞きましょう。

特にA型を選ぶ場合は、自分の目指す職種に近い作業分野を得意としている事業所を選ぶことで、効率的な訓練が期待できます。


事業所の特徴別:成功事例と選択のヒント

事例1:IT特化型A型事業所(訓練重視)

東京都内にあるIT関連のA型事業所は、精神障害や発達障害を持つ若者を主な対象としています。給与は地域の最低賃金より高めに設定されており、主にデータ入力、ウェブサイトの簡易更新、DTP作業などを行っています。

  • 特徴PCスキル向上のための個別研修が充実しており、一般企業への移行実績が豊富です。静かな環境で、集中して作業できるような配慮が徹底されています。
  • 向いている人一般就労を目指し、PCスキルや事務スキルを身につけたい方。ある程度、規則正しい勤務が可能な方。

このタイプの事業所を選ぶ際は、使用するソフトウェアや、習得できるスキルの具体的内容を必ず確認しましょう。

事例2:農福連携型B型事業所(居場所重視)

地方の農村部にあるB型事業所は、地域の農家と連携し、農産物の栽培・加工・販売を行っています。主に知的障害や身体障害、体力維持を目的とする高齢の利用者が中心です。

  • 特徴:工賃は平均的ですが、屋外での活動を通じて心身のリフレッシュを重視しています。利用者間の交流が活発で、アットホームな雰囲気が魅力です。
  • 向いている人体力維持やリハビリを重視したい方。人間関係や居場所づくりを大切にしたい方。

農福連携型の事業所を選ぶ際は、作業負荷の程度や、天候に左右されない屋内の作業があるかどうかも確認しておきましょう。

選択のヒント:ミスマッチを防ぐために

事業所選びで最も避けたいのは、入所後の「ミスマッチ」です。ミスマッチを防ぐために、以下のヒントを参考にしてください。

  • 「強み」と「弱み」を尋ねる:事業所に対して、「うちの事業所の強みと、正直に言って弱み(課題)は何だと思いますか?」と尋ねてみましょう。客観的に自己評価できる事業所は信頼できます。
  • 体験利用を最大限活用:見学だけでなく、実際に数日間作業に参加できる「体験利用」を必ず利用し、職員や利用者のリアルな様子、作業の負荷を肌で感じましょう。
  • 相談支援専門員に意見を聞く:担当の相談支援専門員は、地域の複数の事業所の特徴や評判を把握しています。客観的な視点からアドバイスを求めましょう。

事業所選びは、情報収集と体験が全てです。時間をかけて、慎重に判断してください。


まとめ

就労継続支援事業所は、A型・B型という共通の枠組みがありながらも、経営母体、得意な障害種別、提供する作業内容によって、その支援内容は千差万別です。良い事業所を見つけるためには、単に工賃や給与の額を見るだけでなく、「訓練重視か、居場所重視か」という支援スタイルや、職員の質、事業所の安定性を深く見極めることが重要です。

あなたにとっての「良い事業所」は、他の人にとっての「良い事業所」とは限りません。この記事で紹介したチェックリストや事例を参考に、ご自身の目標、体力、そして性格に最もフィットする個性を持った事業所を見つけ出し、充実した就労生活をスタートさせてください。

まとめ

  • 事業所の個性は、経営母体や得意な障害種別、作業内容によって大きく異なります。
  • 訓練重視型は一般就労を目指す人に、居場所重視型は生活の安定を目指す人に適しています。
  • 工賃・給与の安定性や職員の定着率、移行実績など、表面的な情報だけでなく「持続可能性」を見極めましょう。

菅原 聡

菅原 聡

すがわら さとし38
デスク📚 実務経験 12
🎯 就労支援🎯 進路支援

📜 保有資格:
職業指導員、キャリアコンサルタント、精神保健福祉士

就労移行支援事業所で10年以上、障害のある方の「働く」を支援してきました。一般就労への移行支援から就労継続支援まで、幅広い経験をもとに、「自分に合った働き方」を見つけるための情報をお届けします。

大学で社会福祉を学び、卒業後すぐに就労移行支援事業所に就職。当初は「障害があっても一般企業で働けるんだ」という驚きと感動の連続でした。これまで150名以上の方の就労支援に携わり、その8割が一般企業への就職を実現。ただし、「就職がゴール」ではなく、「長く働き続けられること」が本当のゴールだと考えています。印象的だったのは、精神障害のある方が、障害をオープンにして自分のペースで働ける職場を見つけ、「初めて仕事が楽しいと思えた」と言ってくださったこと。その笑顔が忘れられません。記事では、就労移行支援と就労継続支援の違い、企業選びのポイント、障害者雇用の現実など、実際の支援経験に基づいた実践的な情報をお伝えします。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学で社会福祉を学び、「障害があっても一般企業で働ける」という可能性に感動したことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

精神障害のある方が、自分のペースで働ける職場を見つけ、「初めて仕事が楽しいと思えた」と言ってくださったこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

「就職がゴール」ではなく、「長く働き続けられること」を大切に、実践的な情報を発信します。

🎨 趣味・特技

ランニング、ビジネス書を読むこと

🔍 最近気になっているテーマ

リモートワークと障害者雇用、週20時間未満の短時間雇用

📢 この記事をシェア

関連記事