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良い就労継続支援事業所の見分け方|チェック項目10選

📖 約36✍️ 菅原 聡
良い就労継続支援事業所の見分け方|チェック項目10選
良い就労継続支援事業所(A型・B型)を見分けるための10のチェック項目を解説します。重要なのは、単なる給与・工賃の額ではなく「支援の質」と「事業所の安定性」です。チェック項目には、サービス管理責任者の定着率、個別支援計画の丁寧さ、一般就労への移行実績、工賃向上の具体的な計画などが含まれます。また、利用者の表情や雰囲気、第三者評価の公開状況、苦情解決体制なども、安心して長く通える事業所を見極めるための重要なポイントです。複数の事業所を体験し、専門家と相談の上で決定しましょう。

就労継続支援A型・B型は、障害のある方が働く機会を得るための大切な場所です。しかし、事業所の数が増えるにつれて、「どの事業所を選べば良いのだろう?」「良い事業所とそうでない事業所の違いはどこにあるのだろうか?」と、選択に悩む声も多く聞かれます。

事業所選びは、今後の生活の安定、働くモチベーション、そして将来の目標達成に直結する非常に重要な決断です。特に、見た目の作業内容や工賃(給与)の額だけでは判断できない、「支援の質」や「事業所の安定性」を見極める視点が不可欠です。

この記事では、就労継続支援事業所(A型・B型)を検討する際に、絶対に見逃してはいけない「良い事業所」を見分けるための10のチェック項目を具体的に解説します。このチェックリストを活用することで、ご自身や大切なご家族にとって、安心して長く通える最適な事業所を見つけることができるはずです。


チェック項目①:就労継続支援の「支援の質」と専門性

職員の配置基準と専門資格の有無

良い事業所を見分ける最初のポイントは、職員の体制、つまり「支援の質」です。障害者総合支援法では、職員の配置基準が定められていますが、基準以上に手厚い職員を配置している事業所は、利用者一人ひとりへのきめ細やかな支援が可能となります。

  • サービス管理責任者(サビ管)の定着率:サビ管は、個別の支援計画作成の中心となる専門職です。この職員が頻繁に入れ替わっている事業所は、支援方針が定まらない可能性があります。
  • 専門職の配置:職業指導員や生活支援員の他に、社会福祉士、精神保健福祉士、公認心理師などの専門資格を持つ職員が配置されているか確認しましょう。

職員の専門性が高いほど、障害特性に応じた合理的配慮や、複雑な課題に対する解決能力が高い傾向にあります。

個別支援計画の作成と利用者への説明

障害福祉サービスでは、利用者一人ひとりのニーズや目標に基づいた「個別支援計画」を作成することが義務付けられています。質の高い事業所では、この計画作成プロセスが非常に丁寧です。

  • 支援計画が、職員主導ではなく、利用者本人の意見や目標を最大限に尊重したものになっているか。
  • 計画の内容について、利用者や家族に対してわかりやすく丁寧に説明

    し、同意を得ているか。

  • 計画が一度作って終わりではなく、定期的に見直し(モニタリング)が行われ、目標達成度に応じて柔軟に修正されているか。

「計画についてきちんと説明を受けた記憶がない」という場合は、支援の質が低い可能性があります。

💡 ポイント

支援の質が高い事業所では、利用者と職員が対等な立場で目標を共有し、共に支援を進めていくという姿勢が徹底されています。

実例:利用者の「声」を反映しているか

形式的な計画作成だけでなく、実際に利用者の声が支援内容に反映されているかどうかも重要です。例えば、「この作業は疲れるので、休憩時間を長くしてほしい」といった要望に対して、事業所が柔軟に対応した実績があるかを聞いてみましょう。

具体的なエピソードや、利用者懇談会などの意見表明の機会が設けられているかを確認することは、その事業所が本当に利用者に寄り添っているかを見極めるヒントになります。


チェック項目②:報酬・工賃の実績と安定性

A型事業所:給与と経営の安定性

就労継続支援A型を選ぶ場合、最も重視すべきは「給与の安定性」です。給与の原資は事業所の売上であるため、経営が安定している事業所を選ぶことが、安心して働き続けるための絶対条件となります。

  • 平均給与額の実績:その事業所の過去3年間の平均給与額が、地域の最低賃金よりも十分に高い水準で推移しているかを確認しましょう。
  • 情報開示の透明性:ウェブサイトなどで、財務情報や活動計算書の一部を公開しているかを確認しましょう。透明性が高い事業所は、信頼性が高いと言えます。

「高額な給与」を謳っていても、経営基盤が脆い事業所はリスクが高いため、安定性を最優先にチェックしてください。

B型事業所:工賃の適正水準と向上計画

B型事業所を選ぶ場合、工賃の額そのものよりも、その工賃が適正な水準にあるかどうか、そして工賃向上への取り組みがあるかをチェックしましょう。

  • 平均工賃額の実績:その事業所の平均工賃が、地域のB型事業所の平均(月額約1.6万円程度)と比較して、極端に低くないかを確認しましょう。
  • 工賃向上の計画:事業所が、工賃を上げるために新しい作業の導入や販路拡大などの具体的な「工賃向上計画」を持っているかを確認しましょう。

工賃が高い事業所は、作業の負荷が高い場合もあるため、工賃の高さと作業内容のバランスを見極めることが大切です。

⚠️ 注意

A型事業所の中には、高額な給与を約束しつつも、利用者に過度な労働やサービス外の活動を強いる悪質なケースも過去に存在しました。契約内容と実態が合っているか、慎重に確認しましょう。

チェック項目③:一般就労への移行実績と支援体制

将来的に一般企業への就職を目指している方は、事業所の「移行実績」を必ずチェックしてください。これはA型・B型問わず、事業所が訓練の場として機能しているかを示す重要な指標です。

  • 一般就労への移行人数と定着率:過去3年間で何人が一般就労へ移行し、そのうち何人が6ヶ月以上定着しているかという具体的な数字を確認しましょう。
  • 移行支援の具体的な内容:履歴書作成指導や面接練習だけでなく、職場実習の調整、企業とのネットワークを持っているかなど、具体的な支援内容を聞きましょう。

移行実績が多い事業所は、それだけ就労支援のノウハウが豊富であり、あなたの目標達成を力強くサポートしてくれる可能性が高いです。


チェック項目④:作業内容と環境の適合性

作業内容の多様性と利用者への配慮

良い事業所は、一つの作業に固執せず、利用者の適性やスキルアップのために多様な作業を提供しています。作業の多様性は、利用者が飽きずに長く継続し、様々なスキルを身につけるために不可欠です。

  • 作業内容の幅:軽作業、事務作業、IT関連、農作業、販売など、複数の種類の作業があるか確認しましょう。
  • 適性配置:利用者の障害特性や体力、興味に合わせて、作業内容を柔軟に変更できる体制が整っているか確認しましょう。

もし一つの作業しかない場合でも、その作業が「本当にやりたいこと」であれば問題ありませんが、選択肢があることは、利用者にとって大きなメリットとなります。

施設環境と安全管理の徹底

毎日通う場所だからこそ、施設の環境と安全性が確保されているかは極めて重要です。

  • 清潔感と整理整頓:作業場や休憩スペース、トイレなどが清潔に保たれているか、整理整頓されているかを、見学時に自分の目で確認しましょう。
  • バリアフリー対応:身体障害のある方の場合、車椅子での移動がスムーズか、手すりやエレベーターなどのバリアフリー設備が整っているかを確認しましょう。
  • 安全教育とマニュアル:作業に伴う危険性について、安全教育が定期的に行われているか、緊急時の対応マニュアルが整備されているかを確認しましょう。

安心・安全な環境は、利用者の集中力と継続的な通所を支える土台となります。

チェック項目⑤:他の支援機関との連携体制

障害福祉サービスは、事業所単独で完結するものではありません。利用者の生活全体を支えるためには、他の機関との連携体制が不可欠です。

  • 医療機関との連携:特に精神障害や難病の方の場合、主治医や訪問看護ステーションとの情報共有がスムーズに行われているかを確認しましょう。
  • 相談支援事業所との連携:利用計画を作成する相談支援専門員と、密に連携を取り、支援内容の調整を行っているかを確認しましょう。
  • 地域社会との連携:事業所が地域の企業や団体、学校などと交流を持ち、利用者の社会参加の機会を積極的に作っているかを確認しましょう。

連携体制がしっかりしている事業所は、利用者の変化に迅速に対応し、多角的なサポートを提供することができます。


チェック項目⑥:利用者の意見と満足度

利用者の表情と雰囲気を観察する

事業所の「質」は、利用者の表情や雰囲気から最もよく伝わってきます。見学や体験利用に訪れた際は、以下の点を注意深く観察してください。

  • 利用者の表情:利用者が作業中に笑顔であったり、活発にコミュニケーションをとっていたりするかを確認しましょう。無理に我慢しているような雰囲気がないか。
  • 休憩時間の様子:休憩時間に、利用者同士や職員とリラックスして会話を楽しんでいるか、孤立している人がいないかを確認しましょう。
  • 職員の態度:職員が、常に温かく、利用者一人ひとりに丁寧な声かけをしているか、上から目線になっていないかを確認しましょう。

事業所の風通しの良さや居心地の良さは、数字には表れない重要な要素です。

第三者評価の結果と情報公開

障害福祉サービスには、第三者機関による事業評価制度があります。これは、事業所の運営状況や支援の質を客観的に評価するものです。良い事業所は、この第三者評価を積極的に受け、結果を公開しています。

  • 評価の実施状況:事業所のウェブサイトや、福祉保健局のサイトなどで、直近の評価結果が公開されているかを確認しましょう。
  • 評価項目の内訳:評価結果の中でも、特に「利用者の満足度」や「個別支援計画の質」といった項目がどのように評価されているかを詳しくチェックしましょう。

第三者評価の結果は、公的な視点から事業所の質を判断するための非常に信頼できる情報源となります。

第三者評価情報公開サイトで確認してみましょう。

チェック項目⑦:通所支援と送迎サービスの状況

毎日継続して通所できるかという「アクセス」は、利用継続の可否に直結する重要な要素です。

  • アクセス利便性:自宅から事業所までの公共交通機関の利便性、事業所が駅から近いか、またはバス停から近いかを確認しましょう。
  • 送迎サービスの有無:自力での通所が難しい方のために、送迎サービスが提供されているか、その費用や対応エリアを確認しましょう。
  • 通所時間の配慮:特に精神障害などで朝が苦手な方のために、通所時間を柔軟に調整できる配慮があるかを確認しましょう。

通所に関する細かな配慮は、利用者の負担を軽減し、安定した利用を支えることになります。


チェック項目⑧~⑩:その他見逃せない重要項目

チェック項目⑧:昼食の提供と費用の負担

日中の活動を支える「食」に関するサポートも重要です。

  • 昼食の提供方法:事業所内で調理された温かい昼食が提供されるか、お弁当形式かを確認しましょう。
  • 費用と負担:昼食代は利用者負担となる場合がほとんどですが、その費用が適正な価格であるか、工賃(給与)とのバランスを考慮して無理がないかを確認しましょう。
  • 食事への配慮:アレルギーや宗教上の理由、治療上の食事制限などがある場合、個別の食事対応が可能かどうかを必ず確認しましょう。

食費が安すぎたり、高すぎたりしないか、給食の質も含めて見学時に確認することが望ましいです。

チェック項目⑨:苦情解決体制とハラスメント防止

どれほど良い事業所でも、人間関係のトラブルや不満が生じる可能性はあります。良い事業所は、苦情を隠さずに、迅速かつ適切に解決する体制を持っています。

  • 苦情受付窓口の明確化:苦情を申し立てる窓口(内部・外部)が明確に文書化され、利用者全員に周知されているかを確認しましょう。
  • ハラスメント対策:利用者間、または職員から利用者へのハラスメント(いじめ、差別、暴力など)を防止するための具体的なマニュアルや研修が行われているかを確認しましょう。

苦情を言いにくい雰囲気がないか、第三者機関への相談ルートが用意されているかどうかも、チェックすべき点です。

チェック項目⑩:情報公開とパンフレットの信頼性

事業所が公開している情報が、正確で最新であるかを確認しましょう。

  • 重要事項説明書の確認:利用契約前に渡される「重要事項説明書」の内容が、パンフレットやウェブサイトの情報と一致しているか、不明点がないかを隅々まで確認しましょう。
  • 利用者の声の信頼性:事業所のPRに使われている「利用者の声」が、誇張されておらず、具体性を持っているかを確認しましょう。

もし、公開情報に古いデータや虚偽の疑いがある場合は、その事業所の信頼性が低いと判断せざるを得ません。


まとめ

良い就労継続支援事業所を見分けるためには、給与・工賃といった表面的な情報だけでなく、「支援の質」「事業所の安定性」「将来への展望」という三つの側面から、多角的にチェックすることが不可欠です。この記事で紹介した10のチェック項目を参考に、ご自身やご家族のニーズに最も合致し、安心して長く通える場所を選んでください。

サービス選びに迷う場合は、決して一人で抱え込まず、相談支援専門員や市区町村の窓口に相談し、複数の事業所を体験利用してから決定しましょう。あなたの就労生活が、実り豊かで安定したものになるよう願っています。

まとめ

  • 支援の質:職員の専門性、個別支援計画の丁寧さ、利用者の声の反映を確認しましょう。
  • 実績と安定性:A型は経営安定性、B型は工賃向上計画、両方とも一般就労移行実績をチェックしましょう。
  • 環境と配慮:施設の安全性、通所サポート、苦情解決体制など、利用者の安心と継続を支える項目を必ず確認しましょう。

菅原 聡

菅原 聡

すがわら さとし38
デスク📚 実務経験 12
🎯 就労支援🎯 進路支援

📜 保有資格:
職業指導員、キャリアコンサルタント、精神保健福祉士

就労移行支援事業所で10年以上、障害のある方の「働く」を支援してきました。一般就労への移行支援から就労継続支援まで、幅広い経験をもとに、「自分に合った働き方」を見つけるための情報をお届けします。

大学で社会福祉を学び、卒業後すぐに就労移行支援事業所に就職。当初は「障害があっても一般企業で働けるんだ」という驚きと感動の連続でした。これまで150名以上の方の就労支援に携わり、その8割が一般企業への就職を実現。ただし、「就職がゴール」ではなく、「長く働き続けられること」が本当のゴールだと考えています。印象的だったのは、精神障害のある方が、障害をオープンにして自分のペースで働ける職場を見つけ、「初めて仕事が楽しいと思えた」と言ってくださったこと。その笑顔が忘れられません。記事では、就労移行支援と就労継続支援の違い、企業選びのポイント、障害者雇用の現実など、実際の支援経験に基づいた実践的な情報をお伝えします。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学で社会福祉を学び、「障害があっても一般企業で働ける」という可能性に感動したことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

精神障害のある方が、自分のペースで働ける職場を見つけ、「初めて仕事が楽しいと思えた」と言ってくださったこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

「就職がゴール」ではなく、「長く働き続けられること」を大切に、実践的な情報を発信します。

🎨 趣味・特技

ランニング、ビジネス書を読むこと

🔍 最近気になっているテーマ

リモートワークと障害者雇用、週20時間未満の短時間雇用

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