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「治らない病気」と言われたときに支えてくれた言葉

📖 約58✍️ 鈴木 美咲
「治らない病気」と言われたときに支えてくれた言葉
わが子が難病や知的障害で「完治しない」と告げられた際、絶望の淵にいた著者を救った言葉や体験を紹介する記事です。看護師や理学療法士、先輩保護者、相談員といった支援者からの言葉が、いかにして親の自責の念や将来への不安を解きほぐしたかを詳しく綴っています。また、日々の感情の整理法やスモールステップの考え方、具体的な支援機関の活用例など、障害児育児を継続するための実践的なアドバイスも網羅。同じ境遇にある読者が「一人ではない」と感じ、前向きな一歩を踏み出すための指針を提示しています。

「治らない」という告知からの再出発

大切なわが子が「治らない病気」や「生涯続く障害」であると告げられたとき、親の心には言いようのない深い悲しみと、出口の見えない不安が押し寄せます。昨日まで描いていた未来の図が、一瞬にして真っ白になってしまうような感覚を、今まさに抱えている方もいらっしゃるかもしれません。

私自身も数年前、難病と知的障害を併せ持つ息子の告知を受けた際、絶望という言葉では足りないほどの衝撃を受けました。しかし、そんな暗闇の中にいた私を救い出し、再び前を向かせてくれたのは、周囲の支援者や家族がかけてくれた温かな「言葉」でした。

この記事では、告知を受けた後の葛藤や、私の心を支えてくれた珠玉の言葉たちを振り返りながら、今同じ悩みを持つあなたに寄り添うメッセージを届けたいと思います。この記事を読み終える頃、あなたの心に小さな灯がともることを願っています。


告知を受けた日の記憶と絶望

医師からの宣告と静寂

息子が3歳になろうとする頃、言葉の遅れと頻繁な痙攣をきっかけに精密検査を受けました。大きな病院の白い診察室で、医師が静かに告げたのは、一生涯完治することのない難病と、重度の知的障害という事実でした。

医師の言葉が耳を通り抜けていく中で、私は診察室の時計の音だけが異常に大きく聞こえたのを覚えています。「治らない」という響きは、当時の私にとって「この子の人生に幸せはない」と宣告されたのと同じ意味に感じられました。

帰り道の車内、チャイルドシートで無邪気に笑う息子の姿を見て、涙が溢れて止まりませんでした。これから始まる長い戦いを前に、私はただただ自分を責め、「なぜこの子だったのか」という問いを自分に投げかけ続けました。

「頑張らなきゃ」という重圧

告知を受けてから数週間、私は寝る間を惜しんでインターネットで情報を検索しました。少しでも改善する方法はないか、奇跡の治療法はないか。必死になればなるほど、現実は冷酷に立ちはだかります。

親族や知人からは「お母さんが頑張らないと」「あなたがしっかりしなきゃダメよ」といった言葉をかけられました。彼らに悪気がないことは分かっていても、その「頑張れ」という言葉は、既に限界まで張り詰めていた私の心を、さらに鋭く切り裂いていきました。

孤独な闘いの中で、私は次第に社会から孤立していきました。誰にも会いたくない、誰とも話したくない。そんな閉ざされた世界の中で、最初の一歩を踏み出すきっかけとなったのは、あるベテラン看護師さんの一言でした。

孤独を溶かした看護師の言葉

検査入院中、夜中に病室の片隅で泣いていた私に、担当の看護師さんがそっと背中に手を置いてくれました。彼女は専門的なアドバイスをする代わりに、ただ一言、こう言いました。

「お母さん、今は無理に前を向かなくていいんですよ。この子のために泣けるのは、あなたがそれだけ深く愛している証拠ですから。」

— 病院のベテラン看護師

それまでの私は、泣くことを「弱さ」だと思い込み、封印しようとしていました。しかし、彼女の言葉によって、自分の悲しみが息子への愛情の一部として肯定されたのです。その瞬間、心の奥底で凍りついていた何かが、ゆっくりと溶け出すのを感じました。


心を支えた魔法の言葉たち

「今のこの子を、そのまま見守る」

リハビリテーションセンターで出会った理学療法士の先生は、いつも焦っている私に大切な視点を教えてくれました。私は「いつ歩けるようになるか」「いつ喋れるようになるか」という未来の目標ばかりを追いかけていました。

先生は私の目を見て、「未来のこの子を追いかけすぎて、今目の前にいるこの子の輝きを見逃さないでください」と優しく諭してくれました。その言葉に、私はハッとさせられました。将来の不安に怯えるあまり、今この瞬間、一生懸命に手を動かそうとしている息子の努力を、私は正しく見ていなかったのです。

「歩けるかどうか」ではなく、「今、何を楽しんでいるか」に目を向ける。そう意識を変えただけで、息子との時間が少しずつ豊かなものに変わっていきました。できないことを数えるのではなく、今この子が存在している奇跡を噛み締める力が、私の中に芽生え始めました。

「幸せの形は、一つじゃない」

同じ難病を持つ子供の親御さんが集まるコミュニティで、ある先輩ママがかけてくれた言葉も忘れられません。彼女は、重度の障害を持つ15歳の娘さんと共に、太陽のような笑顔で過ごしていました。

「普通の生活、普通の進学、普通への執着を捨てたとき、私たちの家には本当の幸せがやってきたの」と彼女は語りました。世間一般が決めた「幸せのテンプレート」に当てはまらなくても、私たちは独自の幸せを築いていけるのだという確信をもらいました。

彼女の言葉は、私に「自由」をくれました。大学に行けなくても、結婚ができなくても、今日一日を心地よく過ごし、誰かに愛されていると感じられれば、それは立派な成功した人生なのです。そのシンプルな真理に気づくことができました。

「あなたは伴走者、主役はこの子」

障害福祉の相談員さんは、私が「親の責任」で押しつぶされそうになっていたとき、次のようにアドバイスをくれました。私は、息子の人生を全て自分の肩に背負い、失敗させてはいけないと必死でした。

「お母さん、あなたは人生の演出家ではなく、あくまで伴走者なんです。この子が自分のペースで歩くのを横で支えるだけでいい。転んだら一緒に座って休めばいいんです」という言葉です。このアドバイスにより、私は肩の荷を降ろすことができました。

完璧な親である必要はない。ただ、息子が困ったときに一番近くにいる味方であればいい。そう思えるようになってから、息子への接し方に余裕が生まれ、家庭内の空気も驚くほど穏やかになりました。


日々の暮らしで実践していること

感情のデトックスを習慣にする

難病児育児は、24時間365日の緊張感が伴います。自分の感情を押し殺し続けると、いつか限界が来てしまいます。私は意識的に、自分の心の内を書き出す「ジャーナリング」を取り入れています。

💡 ポイント

ノートに誰にも見せない本音を書くだけで、脳内のストレスが軽減されます。「辛い」「逃げたい」といったネガティブな感情も、否定せずにそのまま紙に吐き出しましょう。

感情を言葉にすることで、客観的に自分を見つめることができます。また、専門のカウンセリングや親の会を利用することも、立派な自己管理の一つです。「助けて」と言うことは、子供を守ることに直結します。

スモールステップをさらに小さく

療育の現場ではよく「スモールステップ」という言葉が使われますが、わが家ではそれをさらに細分化した「マイクロステップ」で考えるようにしています。例えば「自分で着替える」を目標にするのではなく、以下のように分けます。

  • 袖に腕を通そうという意欲を見せる
  • ボタンを一箇所触ってみる
  • 脱いだ服をカゴの方向に置く

このように細かく分ければ、毎日何かしらの「できた!」に出会えます。親子の成功体験を増やすことが、治らない病気と共に生きる日常に彩りを与えてくれます。小さな喜びを祝う天才になることが、この育児のコツかもしれません。

「親だけの時間」を戦略的に作る

子供が障害を持っていても、親には自分の人生を楽しむ権利があります。私は、レスパイト(休息)サービスを積極的に利用するようにしています。「親が休むのは贅沢だ」という罪悪感を抱く必要はありません。

✅ 成功のコツ

あらかじめ、月に一度はショートステイや一時預かりを予約してしまいましょう。疲れてから探すのではなく、あらかじめ「休み」をスケジュールに組み込むことが、長期戦を乗り切る秘訣です。

私がリフレッシュして帰宅すると、息子も私の明るい表情を察して笑顔になります。親が自分を大切にすることは、結果として子供に質の高い愛情を注ぐことへの最短距離なのです。


地域と社会に助けを求める技術

支援のネットワークを構築する

難病児を育てるには、一家族の力だけでは不十分です。私たちは、医療、福祉、教育、そして近隣住民を含めた「チーム」を作ることを意識してきました。まずは、信頼できる相談支援専門員を見つけることから始めました。

以下の表は、私たちが主に利用している支援機関とその役割をまとめたものです。これらを適切に組み合わせることで、家庭の負担は大幅に軽減されます。

支援機関名 主な役割・サポート内容
相談支援事業所 サービス等利用計画の作成、情報提供
訪問看護ステーション 医療的ケアの実施、健康管理のアドバイス
放課後等デイサービス 療育プログラムの提供、居場所づくり
自治体の福祉窓口 各種手当の手続き、福祉サービスの申請

これらの機関と良好な関係を築くためには、こちらの「困りごと」を具体的に伝えることが大切です。「なんとなく大変」ではなく、「この時間のここが辛い」と具体化することで、実効性のあるサポートを引き出せます。

専門用語や制度を味方につける

難病児育児には、多くの専門用語や複雑な制度がつきまといます。最初は戸惑いますが、これらを理解することは自分たちの権利を守ることに繋がります。例えば、以下のような制度を正しく知ることから始めました。

  • 指定難病医療費助成制度:治療費の自己負担額を軽減する
  • 特別児童扶養手当:生活の安定と福祉の増進を図るための手当
  • 障害児相談支援:適切なサービス利用を総合的にサポートする

これらの制度は、待っているだけではなかなか届きません。自分から情報を取っていく姿勢が必要ですが、それも一人でやる必要はありません。相談員さんや、地域の保健師さんに「活用できる制度は他にありませんか?」と定期的に確認することをお勧めします。

「伝える」ことで広がる理解の輪

以前の私は、息子の障害を隠すように生活していました。しかし、思い切って周囲に公表し、必要な助けを口にするようになってから、世界は驚くほど優しくなりました。スーパーの店員さんや公園のママ友に、「この子は音が苦手なので、急に耳を塞ぐことがあります」と伝えておくのです。

正しく伝えることで、周囲の「どう接していいか分からない」という不安が解消されます。理解者は、自分の発信から生まれます。完璧な理解を求めるのではなく、「ちょっとした配慮のポイント」を共有するだけで、外出のハードルはぐっと下がります。


よくある質問(FAQ)

Q1. 告知直後で、何から手を付ければいいか分かりません。

まずは、心身を休めることを最優先にしてください。具体的な手続きは、自治体の福祉窓口や病院のソーシャルワーカーに相談すれば、一つずつ教えてくれます。今のあなたは、大きなショックを受けている状態です。無理に動こうとせず、まずは信頼できる誰かに話を聞いてもらうことから始めてください。

Q2. 「治らない」という事実に、どうしても希望が持てません。

希望を持てないのは、今のあなたが「病気」だけを見ているからです。時間が経つにつれ、病気というフィルターを通さない「お子さん自身の可愛さ」や「個性」が必ず見えてきます。その小さな変化が、いつかあなたの新しい希望に変わります。「今は希望がなくて当たり前」と、自分を許してあげてください。

Q3. 親亡き後の生活が不安で、夜も眠れません。

非常に多くの方が抱える悩みです。現在、障害者グループホームや、成年後見制度、信託など、将来を支える仕組みは整備されつつあります。まずは今の生活を安定させ、その後に相談支援専門員と共に、長期的なライフプラン(将来の住まいや金銭管理)を立てていきましょう。一歩ずつ準備することで、不安は軽減されます。

⚠️ 注意

一人で将来を案じすぎると、現在の生活に支障をきたす恐れがあります。不安が強い場合は、一人で抱え込まず、早めに専門家や相談機関へ繋がってください。

Q4. きょうだい児への影響が心配です。

きょうだい児も、親の不安や忙しさを敏感に感じ取ります。「障害のある子にかかりきり」にならないよう、一日のうち短時間でもいいので、きょうだい児と一対一で向き合う「特別タイム」を作ってください。また、きょうだい児の集いなどに参加させることも、本人の孤立を防ぐ手助けになります。


まとめ:言葉を灯火に変えて

「治らない」という言葉は、最初は冷たい壁のように感じられるかもしれません。しかし、その壁の向こう側には、これまでとは違う、けれど確かに温かみのある新しい世界が広がっています。私を支えてくれた言葉たちがそうであったように、言葉には絶望を希望に変える力があります。

あなたは、今日まで本当によく頑張ってきました。わが子のために悩み、涙し、最善を尽くそうとしているその姿そのものが、最高に尊いものです。どうか自分を責めず、今夜は自分自身に「お疲れ様」と声をかけてあげてください。

明日からの景色が劇的に変わることはないかもしれません。けれど、誰かの温かな言葉や、地域の支援、そして何よりお子さんの小さな笑顔が、あなたの歩みを支える確かな力になるはずです。私たちは、決して一人ではありません。

✅ 成功のコツ

今日から、誰かに言われて嬉しかった言葉や、お子さんの可愛い仕草を「ポジティブ日記」として一言だけメモしてみてください。辛い時にそれを読み返すことが、あなたを支える強力なお守りになります。

まとめ

  • 悲しみを否定せず、愛情として受け入れる:泣くことは弱さではなく、深く愛している証拠です。
  • 「今」の輝きに目を向ける:未来の不安に囚われず、目の前のお子さんの小さな成長を祝福しましょう。
  • 支援のネットワークを積極的に活用する:親が一人で背負わず、チームで支える体制を作ることが、持続可能な育児の鍵です。

鈴木 美咲

鈴木 美咲

すずき みさき42
担当📚 実務経験 15
🎯 相談支援🎯 当事者・家族支援

📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員

相談支援専門員として15年、障害のある方とそのご家族の「困った」に寄り添ってきました。実際の相談事例をもとに、当事者やご家族のリアルな声、具体的な解決策をお届けします。「一人で悩まないで」がモットーです。

社会福祉士として障害者相談支援事業所に勤務し15年。年間約100件の相談に対応し、サービス等利用計画の作成や、関係機関との調整を行っています。この仕事の魅力は、「困っている」状態から「解決した!」という笑顔に変わる瞬間に立ち会えること。ただし、制度が複雑で「どこに相談すればいいか分からない」という声を本当によく聞きます。特に印象深いのは、お子さんの障害を受け入れられず孤立していたお母さんが、同じ境遇の親の会に繋がり、「一人じゃないと分かって救われた」と涙ながらに話してくださったこと。情報と繋がりの大切さを実感しました。記事では、実際の相談事例(もちろん個人情報は特定できないよう配慮)をベースに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えていきます。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学のボランティアで障害のある方と出会い、「困っている」を「解決した!」に変える仕事がしたいと思ったことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

孤立していたお母さんが、親の会に繋がり「一人じゃないと分かって救われた」と話してくださったこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

実際の相談事例をもとに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えることを大切にしています。

🎨 趣味・特技

ヨガ、カフェ巡り

🔍 最近気になっているテーマ

ヤングケアラー支援、家族のレスパイトケア

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