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「波はあるけど前に進める」私のペースでの回復

📖 約23✍️ 鈴木 美咲
「波はあるけど前に進める」私のペースでの回復
「良くなったのに、また落ちた」——双極性障害Ⅱ型の激しい気分の波。調子が良い日と悪い日の繰り返しに絶望。でも気分記録で気づいた「確実に前進している」事実。波を受け入れ、パターンを知り、予防的休息を取る。8割の力で生きる。3年で波は小さくなり、働けるように。波はあるけど前に進める。波に苦しむ全ての人へ。

良い日と悪い日の繰り返し——それが回復

「もう良くなったと思ったのに、また落ちてしまった」——治療を始めて数ヶ月、私は何度もこの絶望を味わいました。昨日は調子が良かったのに、今日は起き上がれない。先週はできたことが、今週はできない。この「波」に、私は何度も心が折れそうになりました。

でも今なら言えます。この波は、回復の自然なプロセスだったのだと。「一直線に良くなる」のではなく、「波を描きながら前進する」——それが、精神疾患からの回復なのだと理解できました。

この記事では、双極性障害Ⅱ型と診断された私が、3年間かけて「波」と向き合いながら、自分のペースで回復してきた道のりをお話しします。同じように波に苦しんでいる方の参考になれば幸いです。

診断された頃——「波」の意味がわからなかった

激しい気分の変動

双極性障害Ⅱ型と診断されたのは、3年前のことでした。それまで私は、自分の激しい気分の変動を「性格」だと思っていました。

数週間は異常に元気で、睡眠時間が短くても活動的。でもその後、突然深い落ち込みに襲われ、何もできなくなる——この繰り返しでした。

主治医から「双極性障害」と告げられた時、私は戸惑いました。「うつ病」なら知っていたけれど、「双極性障害」は聞いたことがありませんでした。

主治医は説明してくれました——「気分が高揚する軽躁状態と、落ち込むうつ状態を繰り返す病気です。波があるのが特徴で、治療しながらこの波と付き合っていくことになります」。

⚠️ 注意

双極性障害は、躁状態(またはその軽い状態である軽躁状態)とうつ状態を繰り返す気分障害です。気分の波は病気の特徴であり、適切な治療と生活管理で、波を小さくコントロールすることが可能です。

「治らない」という絶望

主治医は続けて言いました——「双極性障害は、完全に治すのは難しい病気です。でも、適切な治療で症状をコントロールし、充実した生活を送ることは十分可能です」。

この言葉を聞いた時、私は絶望しました。「治らない」——その言葉が、重くのしかかりました。

「一生、この波と付き合わなければならないのか」「一生、薬を飲み続けるのか」「普通の人生は送れないのか」——そんな思いで、涙が止まりませんでした。

最初の治療——気分安定薬

治療は、気分安定薬の服用から始まりました。躁状態とうつ状態の両方を抑える薬です。

服薬を始めて数週間、確かに激しい波は小さくなりました。異常な高揚もなくなったし、深い落ち込みも以前ほどではなくなりました。

でも、波は完全にはなくなりませんでした。良い日と悪い日が、まだ繰り返されました。

私はまた絶望しました——「薬を飲んでいるのに、なぜ良くならないのか」と。

「双極性障害の治療の目標は、『波をゼロにすること』ではありません。『波を小さくし、コントロール可能にすること』です。ある程度の波は残りますが、それと上手く付き合えるようになることが大切なんです」

— 後に主治医が教えてくれた言葉

波との闘い——「なぜ戻るのか」

調子が良い日の罠

治療を続けるうちに、私は「調子が良い日」の罠にハマりました。

調子が良い日が続くと、「もう治ったかもしれない」と思ってしまうのです。そして、薬を飲むのを忘れたり、無理なスケジュールを入れたり、夜更かししたり——自己管理が緩くなりました。

その結果、数日後には必ず調子が崩れました。深い落ち込みに襲われ、何もできなくなる——この繰り返しでした。

パターン 行動 結果
調子が良い日が続く 「治った」と思い込む 自己管理が緩む
服薬が不規則になる 生活リズムが乱れる 波が大きくなる
無理なスケジュール 疲労が蓄積 うつ状態に転じる
深い落ち込み 何もできなくなる 「また失敗した」と絶望

このパターンを、私は何度も繰り返しました。

「また戻った」という絶望

調子が崩れるたびに、私は深く絶望しました。

「せっかく良くなったのに、また戻ってしまった」「やっぱり治らないんだ」「もう希望はないのかもしれない」——そんな思いに支配されました。

カウンセラーに相談すると、こう言われました——「それは『戻った』のではなく、『揺らいだ』だけです。長い目で見れば、確実に前進しています」。

でも当時の私には、その言葉の意味が理解できませんでした。

💡 ポイント

回復は一直線ではなく、波を描きながら進みます。調子が悪い日があっても、それは「後退」ではなく「揺らぎ」です。トータルで見れば前進しているという視点を持つことが大切です。

周囲の無理解

波があることは、周囲にも理解されませんでした。

「この前は元気だったじゃない」「気分次第で変わるの?」「甘えているんじゃない?」——こうした言葉に、何度も傷つきました。

特に辛かったのは、家族からの言葉でした。「いつになったら治るの?」「薬を飲んでいるのに、なぜ良くならないの?」——心配からの言葉だとわかっていても、責められているように感じました

転機——「波」を受け入れる

記録をつけ始めた

治療を始めて1年ほど経った頃、カウンセラーから「気分の記録」をつけることを勧められました。

毎日、気分を10段階で評価する。睡眠時間、活動内容、出来事なども記録する——最初は面倒に思いましたが、続けてみました。

3ヶ月ほど記録を続け、それを見返した時、私は重要なことに気づきました——確実に、波は小さくなっているということに。

治療前は気分が「10(最高)」と「1(最低)」を行き来していました。でも今は「7」と「4」くらいの間で揺れている。波の幅が、明らかに小さくなっていたのです。

「揺らぎ」と「後退」の違い

記録を見ながら、カウンセラーは説明してくれました。

「今週は調子が悪かったですね。でも3ヶ月前の悪い時と比べてどうですか? 当時ほど悪くはないでしょう? これは『後退』ではなく、『揺らぎ』なんです」

確かにそうでした。今週は辛かったけれど、3ヶ月前ほどではない。起き上がれない日もあったけれど、以前のように1週間続くことはなかった。

この気づきが、私の見方を変えました

✅ 成功のコツ

気分や体調を記録することで、客観的に回復を確認できます。悪い日があっても、過去と比較することで「確実に前進している」ことを実感できます。スマホアプリや手帳など、自分に合った方法で記録を続けましょう。

「波があるのが普通」という受容

さらにカウンセラーは言いました——「波があるのが、この病気の特徴です。波をゼロにしようとするのではなく、波があることを前提に生活を組み立てることが大切なんです」。

この言葉が、私の心に深く響きました。

私はずっと、「波をなくそう」としていました。でもそれは、この病気と闘うことでした。そうではなく、「波があることを受け入れて、その中で生活する」——その発想の転換が必要だったのです。

自分のペースを見つける

波のパターンを知る

記録を続けるうちに、私は自分の波のパターンを理解できるようになりました。

私の場合、以下のようなパターンがありました。

  • 季節の変わり目(特に春と秋)に調子を崩しやすい
  • 睡眠時間が6時間以下になると、翌日調子が悪い
  • 連続して予定を入れると、3日目頃から疲れが出る
  • 生理前に気分が落ち込みやすい
  • 天気が悪い日は気分も沈みがち
  • 週末に夜更かしすると、月曜に響く

こうした自分のパターンを知ることで、予防策を取れるようになりました。

「予防的休息」という考え方

パターンがわかったら、次は「予防的休息」を取り入れました。

以前の私は、「調子が悪くなってから休む」でした。でも今は、「調子が悪くなる前に休む」ようにしています。

例えば:

  • 連続して予定がある週は、合間に必ず休息日を入れる
  • 季節の変わり目は、無理なスケジュールを避ける
  • 睡眠時間は最低7時間確保する
  • 疲れのサインが出たら、早めに休む
  • 「頑張りすぎない」を意識する

この「予防的休息」が、波を小さく保つ鍵になりました。

「8割の力」で生きる

もう一つ大切にしているのは、「8割の力」で生きるということです。

以前の私は、常に100%の力を出そうとしていました。でもそれでは、すぐに疲弊してしまいます。

今は、意識的に80%の力で過ごすようにしています。完璧を目指さず、「十分良い」を目指す。この20%の余裕が、波を乗り切るバッファーになっています。

波の中での生活——具体的な工夫

調子が良い日にすること

調子が良い日は、準備の日として活用するようにしました。

以前は調子が良い日に予定を詰め込んでいましたが、今は違います。調子が良い日には、調子が悪い日に備えた準備をします。

  • 作り置きの料理を準備する
  • 部屋を片付けておく
  • 必要な買い物を済ませる
  • 書類関係を処理しておく
  • リラックスできる環境を整える

こうすることで、調子が悪い日も困らないようにしています。

調子が悪い日の過ごし方

調子が悪い日は、「何もしない日」として受け入れるようにしました。

以前は、調子が悪くても「何かしなければ」と焦っていました。でも今は、「今日は休む日」と割り切ります。

調子が悪い日の私のルール:

  1. 無理に起きなくていい(寝たい時に寝る)
  2. 最低限のこと(服薬、水分補給)だけする
  3. 自分を責めない
  4. 「これも回復の一部」と受け入れる
  5. 好きなことだけする(できれば)

この「何もしない許可」を自分に出すことで、罪悪感が減りました。

家族との約束事

家族とも、波についての約束事を作りました。

調子が良い時に、家族と話し合って決めたことです。

  • 調子が悪い日は、何も言わないでそっとしておく
  • 「頑張れ」「気合いで」などの言葉は使わない
  • 必要な時は助けを求めていいし、求められたら手伝う
  • 調子が悪い日が続いても、必ず良くなる日が来ると信じる

この約束事があることで、家族も私も、波に振り回されなくなりました。

3年経った今——波はあるけど前に進める

波は小さくなった

診断から3年が経った今、波は確実に小さくなりました。

以前のような激しい高揚や深い落ち込みは、ほとんどありません。あっても、短期間で収まります。

記録を見返すと、この変化は明らかです。波の幅が狭くなり、頻度も減り、持続期間も短くなっています。

時期 気分の振れ幅 悪い期間の長さ 頻度
診断時 1-10(非常に大きい) 1-2週間 月2-3回
1年後 3-8(やや大きい) 3-5日 月1-2回
2年後 4-7(中程度) 1-3日 月0-1回
3年後(現在) 5-7(小さい) 1日程度 2-3ヶ月に1回

働けるようになった

2年前から、パートタイムで働き始めました。週3日、1日5時間から。

最初は不安でした。「波があるのに、働けるだろうか」と。でも職場に状況を説明し、理解してもらえました。

調子が悪い日は休ませてもらう。予定は柔軟に調整してもらう——こうした配慮のおかげで、無理なく働き続けられています

今では週4日、1日6時間まで増やせました。自分のペースで、少しずつステップアップしています。

人生を楽しめるようになった

何より大きな変化は、人生を楽しめるようになったことです。

以前は、波に振り回されて何も楽しめませんでした。でも今は、調子が良い日を大切に楽しめます。

友人と会う、好きな本を読む、散歩をする、美味しいものを食べる——こうした小さな幸せを、味わえるようになりました。

波はまだあります。でも、波があっても人生は楽しめる——そう実感しています。

波と向き合っている人へ

「一直線」を期待しないで

もし今、調子の波に苦しんでいるなら、まず知ってほしいことがあります——回復は一直線ではないということです。

良くなったり、また悪くなったり——それは「失敗」ではなく、回復の自然なプロセスです。

大切なのは、長い目で見ること。1日1日ではなく、1ヶ月、3ヶ月、1年単位で見れば、確実に前進しているはずです。

記録をつけてみて

ぜひ、気分や体調の記録をつけてみてください。

その日は辛くても、記録を見返すことで「前進している」ことを確認できます。この客観的な証拠が、希望を与えてくれます。

記録方法は何でもいいです。アプリでも、手帳でも、カレンダーでも。自分が続けやすい方法で、始めてみてください。

「波がある自分」を受け入れる

最後に、これだけは伝えたいです——「波がある自分」を受け入れてください

波をなくそうと闘うのではなく、波があることを前提に生活を組み立てる。その発想の転換が、楽に生きる鍵です。

波はあるけど、前に進めます。波はあるけど、幸せになれます。波はあるけど、人生を楽しめます。

あなたのペースで、焦らず、一歩ずつ進んでください。

「回復は、山登りに似ています。一歩進んで半歩下がる。でもトータルでは確実に登っている。頂上を目指すより、今いる場所から景色を楽しむ余裕を持ちましょう」

— カウンセラーの言葉

よくある質問

Q1: 波は完全になくなりますか?

多くの場合、波を完全にゼロにすることは難しいです。しかし、適切な治療と生活管理で、波を小さくコントロール可能にすることはできます。「波がないこと」ではなく、「波があっても生活できること」を目標にすることが現実的です。

Q2: 調子が良い日に薬をやめてもいいですか?

絶対にやめないでください。調子が良いのは、薬が効いているからです。自己判断で中止すると、症状が悪化したり、離脱症状が出たりする危険があります。減薬や中止は、必ず主治医と相談しながら段階的に行ってください。

Q3: 家族として、波がある人をどう支えればいいですか?

まず、波は病気の特徴であり、本人のせいではないと理解してください。調子が悪い日は無理強いせず、見守ってください。「頑張れ」より「大変だね」「何か手伝えることある?」という言葉が助けになります。また、家族自身も休息を取ることが大切です。

Q4: 波があっても働けますか?

はい、多くの人が働いています。ただし、自分のペースで働ける環境を見つけることが大切です。パートタイムから始める、フレックス制度を活用する、在宅勤務を選ぶなど、柔軟な働き方を検討しましょう。職場に状況を説明し、理解を得ることも重要です。

Q5: 波のパターンはどうやって見つけますか?

毎日の気分、睡眠時間、活動内容、出来事などを記録してください。3ヶ月ほど続けると、パターンが見えてきます。季節、天気、生理周期、睡眠時間、ストレス度などと気分の関係を観察しましょう。主治医やカウンセラーと一緒に記録を分析することも有効です。

まとめ

この記事では、双極性障害の「波」と向き合いながら、自分のペースで回復してきた3年間の道のりをお話ししました。

  • 回復は一直線ではなく、波を描きながら進みます
  • 波を記録することで、客観的に前進を確認できます
  • 「波をなくす」のではなく、「波と共に生きる」発想が大切です
  • 予防的休息と8割の力で、波を小さく保てます

もし今、波に苦しんでいるなら、焦らないでください。波はあるけど、前に進めます。長い目で見れば、確実に良くなっています。あなたのペースで、一歩ずつ進んでください。

鈴木 美咲

鈴木 美咲

すずき みさき42
担当📚 実務経験 15
🎯 相談支援🎯 当事者・家族支援

📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員

相談支援専門員として15年、障害のある方とそのご家族の「困った」に寄り添ってきました。実際の相談事例をもとに、当事者やご家族のリアルな声、具体的な解決策をお届けします。「一人で悩まないで」がモットーです。

社会福祉士として障害者相談支援事業所に勤務し15年。年間約100件の相談に対応し、サービス等利用計画の作成や、関係機関との調整を行っています。この仕事の魅力は、「困っている」状態から「解決した!」という笑顔に変わる瞬間に立ち会えること。ただし、制度が複雑で「どこに相談すればいいか分からない」という声を本当によく聞きます。特に印象深いのは、お子さんの障害を受け入れられず孤立していたお母さんが、同じ境遇の親の会に繋がり、「一人じゃないと分かって救われた」と涙ながらに話してくださったこと。情報と繋がりの大切さを実感しました。記事では、実際の相談事例(もちろん個人情報は特定できないよう配慮)をベースに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えていきます。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学のボランティアで障害のある方と出会い、「困っている」を「解決した!」に変える仕事がしたいと思ったことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

孤立していたお母さんが、親の会に繋がり「一人じゃないと分かって救われた」と話してくださったこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

実際の相談事例をもとに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えることを大切にしています。

🎨 趣味・特技

ヨガ、カフェ巡り

🔍 最近気になっているテーマ

ヤングケアラー支援、家族のレスパイトケア

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