洗濯・掃除が負担に感じるときの便利アイテム&サービス

洗濯・掃除の負担を「ゼロ」に近づける:便利アイテムと支援サービスの活用法
毎日繰り返される洗濯と掃除は、暮らしを清潔に保つために欠かせない家事ですが、特に障害のある方にとっては、大きな体力的な負担や精神的なハードルとなることがあります。
「重い洗濯物を運ぶのがつらい」「掃除を始めても途中で挫折してしまう」「疲れすぎて週末にまとめてやるしかない」といった悩みを抱えているかもしれません。しかし、これらの家事の負担は、あなたの努力や根性の問題ではありません。適切な便利アイテムと支援サービスを組み合わせることで、劇的に軽減できます。
この記事では、洗濯と掃除の各工程を楽にするための具体的なアイテムや、公的な福祉サービスの活用方法、そして専門家からの具体的なアドバイスをご紹介します。あなたの生活が、より快適で負担の少ないものになるための具体的なヒントを見つけていきましょう。
なぜ洗濯・掃除が困難になるのか?原因別アプローチ
洗濯や掃除が困難になる理由は、身体的な制約、認知機能の特性、環境の不備など様々です。原因を理解し、それぞれに合ったアプローチを選ぶことが、効果的な負担軽減の鍵です。
身体的な制約:動作の負担軽減と代償
肢体不自由や慢性的な痛みがある場合、洗濯や掃除は以下のような動作で困難が生じます。
- 重い物の運搬: 濡れた洗濯物を持ち上げたり、洗濯機から取り出したり、掃除道具を運んだりする動作。
- 長時間の姿勢維持: 掃除機をかけ続ける、洗濯物を干すために中腰や背伸びをする、床を拭くなどの動作。
- 細かい作業: 洗濯物を畳む、小さなゴミを拾う、狭い場所を掃除するといった、細かくて集中力を要する作業。
このタイプの困難には、自助具や電動機器の導入、そして福祉サービスによる「代行」が最も効果的です。
認知機能・感覚特性による課題:手順の構造化と環境調整
発達障害(ASD、ADHDなど)や精神障害のある方の場合、家事の困難さは動作よりも、計画性や集中力、感覚的な問題に起因することがあります。
- 実行機能の欠如: 掃除の「どこから手をつけるか」「手順はどうするか」といった計画を立てるのが苦手で、すぐに途方に暮れてしまう。
- 注意・集中力の維持: 掃除中に別の作業に気が散り、一つの作業を完了できない(例:棚を整理し始めたら、掃除を忘れてしまう)。
- 感覚過敏: 掃除機の音、洗剤やカビの匂い、埃の視覚的な刺激などが強すぎて、家事自体が苦痛になる。
この場合のアプローチは、手順の「見える化」、タイマー活用による集中管理、そして感覚的な刺激を減らすための環境整備が中心となります。
洗濯工程の負担を劇的に減らすアイテムと工夫
洗濯は、洗う、干す、取り込む、畳む、しまうという一連の工程があり、それぞれに負担軽減のポイントがあります。便利アイテムを活用して、各工程を自動化、または簡略化しましょう。
洗う・乾かす工程:全自動化と環境整備
最も体力を使う水回りでの作業は、機械の力に頼るのが賢明です。
- ドラム式洗濯乾燥機の導入: これが最も効果的な投資と言えます。洗濯物を入れてスタートボタンを押せば、乾燥まで全て自動で行ってくれるため、重い洗濯物を取り出して干すという工程が丸ごと不要になります。特に、腰痛や関節の痛みがある方にとって、屈む動作が減るドラム式は非常にメリットが大きいです。
- 洗濯かごの工夫: 洗濯機の下に台を設けてかごの高さを上げることで、屈んで重い洗濯物を取り出す際の腰への負担を軽減できます。キャスター付きの洗濯かごも、運搬時の負担を減らします。
- 洗剤の自動投入機能: 最近の洗濯機には、洗剤や柔軟剤を自動で計量し、投入してくれる機能が付いたモデルがあります。計量の手間と、洗剤を注ぐ際の細かい動作が不要になるため、手の細かい動作が苦手な方に適しています。
洗濯物を干す・畳む作業の簡略化
洗濯物を干す・畳む動作は、手の細かい動きや長時間の中腰姿勢を強いられます。これらの負担を最小限にする工夫を取り入れましょう。
- 長い柄の洗濯バサミ・ピンチ: 洗濯バサミをつまむ動作が苦手な方のために、テコの原理で少ない力で開閉できるものや、グリップが太い自助具のような洗濯バサミが販売されています。
- ハンガー収納の徹底: 畳む作業が苦手な場合は、可能な限り「畳まない収納」を徹底します。トップスは全てハンガーにかけ、洗濯終了後にそのままクローゼットにしまうようにしましょう。ハンガーも、軽量で片手でもかけやすいタイプを選ぶと良いでしょう。
- 乾燥機能付きハンガー: 衣類乾燥機がない場合でも、送風や温風で衣類を乾かせる「乾燥機能付きハンガー」を活用することで、部屋干しでの生乾きの問題を解消しつつ、干す作業の負担を減らせます。
💡 ポイント
洗濯においては、「作業を減らす」という視点が重要です。全てを完璧に行おうとせず、衣類乾燥機やハンガー収納を駆使して、「干す」と「畳む」工程を思い切ってカットしましょう。この二つが、体力と時間の大半を奪う原因となるからです。
掃除工程の負担を劇的に減らすアイテムと工夫
掃除は移動、屈む、拭く、掃くといった多様な動作を要求されます。最新の便利家電や自助具を活用し、「いかに楽をしてキレイを維持するか」を追求しましょう。
床掃除の全自動化:ロボット掃除機と軽量クリーナー
床掃除は、家事の中でも最も移動範囲が広く、体力を使う作業です。全自動化は必須の対策と言えます。
- ロボット掃除機(ルンバなど)の導入: 障害福祉サービスではありませんが、QOLを劇的に向上させる最強の時短・負担軽減アイテムです。特に、部屋を移動するのが困難な方や、体力が続かない方にとって、タイマー設定や遠隔操作で毎日自動的に掃除をしてくれるロボット掃除機は、掃除の負担をほぼゼロにしてくれます。
- 軽量コードレス掃除機: ロボット掃除機が入れない場所や、ちょっとしたゴミを処理するために、軽量で吸引力が強いコードレスタイプの掃除機を導入しましょう。重い掃除機をコンセントの抜き差しをしながら引きずり回す負担から解放されます。
- 長い柄のフロアワイパー: 屈まずに床の拭き掃除ができるフロアワイパーは、腰痛がある方や膝関節に負担をかけたくない方に非常に有効です。ウェットシートを使えば、水拭きや洗剤の準備も不要で、手軽に床を清潔に保てます。
水回り・高い場所の掃除の工夫
浴室、トイレ、窓、換気扇などの水回りや高い場所の掃除は、危険も伴い、特に負担が大きくなります。この部分は、道具で「届く」ようにするか、プロの力を借りることを検討しましょう。
- 柄の長いブラシ・モップ: 屈む動作を避けるため、トイレブラシや浴室ブラシは、立ったまま使用できる柄の長いものを選びます。窓掃除や高い場所のホコリ取りも、伸縮式のモップを活用します。
- 電動バスクリーナー: 浴槽や床をゴシゴシ擦る力仕事から解放される、充電式の電動ブラシです。力を使わずに、頑固な汚れも落とすことができます。
- 使い捨てアイテムの活用: トイレ掃除の際、ブラシではなく、流せるシートや使い捨て手袋を活用することで、掃除後の片付けや衛生管理の手間を大幅に削減できます。
⚠️ 注意
掃除は動作だけでなく、洗剤の匂いや音が苦痛になる方もいます。感覚過敏がある場合は、無臭の洗剤を選んだり、タイマー設定でロボット掃除機を外出中に作動させたりするなど、感覚特性に配慮した環境調整を行いましょう。
公的支援の活用:居宅介護サービスで負担を軽減
どんなに便利なアイテムを使っても、全ての家事を一人で行うのは困難な場合があります。その際、公的な福祉サービスである居宅介護の「生活援助」を積極的に利用することを検討しましょう。
生活援助:ヘルパーによる掃除・洗濯の代行
居宅介護サービスに含まれる生活援助は、ホームヘルパーが自宅を訪問し、日常生活を送るために必要な家事を代行してくれるサービスです。洗濯と掃除は、その主要なサービス内容に含まれます。
- 掃除の代行: 居室、トイレ、浴室など、ご本人が利用する場所の掃除を行います。日常的な掃除の範囲内(大掃除や庭の手入れなどは不可)で、ヘルパーが責任を持って清掃してくれます。
- 洗濯の代行: 衣類やシーツなどの洗濯、乾燥、取り込み、収納といった一連の作業を代行します。これにより、重い濡れた洗濯物を扱う負担や、手間のかかる畳む作業から解放されます。
生活援助の最大のメリットは、家事の労力や時間をプロに任せることで、ご本人がリハビリや趣味、休養など、他の活動に集中できるようになる点です。サービス利用の可否や頻度は、お住まいの市町村の支給決定と、特定相談支援事業所が作成するサービス等利用計画に基づいて決定されます。
自立訓練(生活訓練):家事スキルを身につける
自分で掃除や洗濯ができるようになりたい、手順を覚えたいという明確な目標がある方には、自立訓練(生活訓練)が有効です。
- 手順の構造化と訓練: 掃除や洗濯の工程を細かく分解し、チェックリストやタイマー、写真などを活用しながら、一つずつ段階的に進める方法を学び、反復練習します。
- ツールの使い方指導: 便利な自助具や掃除道具の効果的な使い方を、専門の支援員から指導を受けられます。
例えば、ADHDのあるCさんは、掃除を始めても途中で何から手をつけたら良いかわからなくなってしまうのが悩みでした。生活訓練を利用することで、「まず床の物を全て片付けてから、掃除機をかける」というシンプルなルールと、15分のタイマーを使った作業を習慣化することができ、自分で掃除を完了できるようになりました。
専門職による個別アセスメントとアドバイス
家事の負担を減らすための工夫は、万人に共通するものではありません。個々の身体能力や認知特性に合わせた最適な解決策を見つけるためには、専門職の力が必要です。
作業療法士(OT)による動作指導と環境評価
作業療法士(OT)は、日常生活の動作を専門とするリハビリテーションの専門職です。OTは、あなたの洗濯や掃除の動作を直接観察し、負担となっている原因を詳細に分析(アセスメント)してくれます。
- 動作分析: 屈む、手を伸ばす、ひねるといった動作が、どこに負担をかけているのかを評価し、最も楽で安全な体の使い方(効率的な動作)を指導します。
- 用具選定のアドバイス: OTは、市販されている便利な自助具や福祉用具に詳しいため、カタログやインターネットの情報だけではわからない、あなたに最適なアイテムを選んでくれます。
- 動線の改善: 洗濯機から干し場、収納場所までの移動ルート(動線)を評価し、家具の配置変更や収納場所の工夫など、環境整備のアドバイスを行います。
例えば、OTは、車いす利用者が手の届かない場所にある窓を掃除するために、長さ調節可能なモップや、椅子に座ったまま操作できるアーム付きの掃除道具を紹介するなど、具体的な解決策を提案します。
相談支援専門員:サービス連携と調整
特定相談支援事業所に所属する相談支援専門員(相談員)は、福祉サービス利用の専門家です。彼らは、あなたの困りごとを聞き、必要なサービスを組み合わせた総合的な支援計画を立ててくれます。
- ニーズの整理: 洗濯はヘルパーに任せて、掃除は自立訓練で訓練を受けたい、など、多様なニーズを整理し、福祉サービスの利用量を市町村に申請します。
- 事業所との連携: 居宅介護事業所や自立訓練事業所と連携を取り、サービスが計画通りに実行されているかを定期的に確認し、必要に応じて内容を調整してくれます。
相談員は、家事だけでなく、他の生活全般の困りごと(例えば、金銭管理や通院など)も含めて、トータルで支援をコーディネートしてくれるため、まずはこの窓口に連絡することが、負担軽減への第一歩となります。
よくある質問(FAQ):洗濯・掃除の支援
洗濯・掃除に関する支援やサービスについて、よくある疑問にお答えします。
Q1: ロボット掃除機は、福祉用具の助成対象になりますか?
A1: 原則として、ロボット掃除機やドラム式洗濯乾燥機といった一般家電は、福祉用具給付の対象外です。しかし、一部の自治体では、障害特性や生活状況に鑑み、独自の支援制度を設けている場合があります。高額な家電を導入する前に、必ずお住まいの市町村の障害福祉担当課に相談してみましょう。
Q2: 居宅介護の生活援助で、家族の洗濯物もやってもらえますか?
A2: 原則として、居宅介護の生活援助は、ご本人の日常生活に必要な家事のみが対象となります。家族の分の洗濯物をまとめて行うことはできません。ただし、ご本人の洗濯物と家族の洗濯物が分けられない場合など、例外的なケースについては、サービス提供前に事業所や相談支援専門員とよく話し合い、計画書に明記することが重要です。
Q3: 掃除や洗濯の訓練は、自立訓練(生活訓練)の他にどこで受けられますか?
A3: 自立訓練の他には、就労移行支援事業所や就労継続支援事業所といった就労系の福祉サービスでも、職場復帰や就職後の生活を安定させるためのプログラムの一環として、生活スキル(家事、金銭管理など)の訓練が行われることがあります。特に就職を目指している方は、これらの事業所の生活支援プログラムも確認してみましょう。
Q4: 身体障害と精神障害を併せ持つ場合、サービスはどのように組み合わせられますか?
A4: 身体的な負担に対しては、居宅介護の生活援助で「代行」を、認知機能の課題に対しては、自立訓練で「手順の訓練」を、というように、複数のサービスを組み合わせて利用することが可能です。この組み合わせは、相談支援専門員があなたのニーズに基づいてサービス等利用計画を作成することで実現します。一人で判断せず、相談員に全てを伝えましょう。
次の一歩:快適な生活のための行動計画
洗濯や掃除の負担から解放されることは、あなたの自由な時間と心身のゆとりを生み出します。まずは小さな一歩から、行動を起こしてみましょう。
負担軽減のためのチェックリスト
- 困りごとの特定: 洗濯・掃除のどの工程が一番負担になっているかを書き出しましたか?(例:濡れた洗濯物を干す、浴室の床を擦る)
- 専門家への相談: 特定相談支援事業所に連絡し、生活援助または自立訓練の利用について相談しましたか?
- アイテムの試行: 軽量コードレス掃除機や乾燥機付きハンガーなど、手軽に試せる便利アイテムを一つ導入する計画を立てましたか?
- OTの活用検討: 相談員を通じて、作業療法士による自宅の動作評価を依頼することを検討しましたか?
参考相談先とリンク
- 特定相談支援事業所: 障害福祉サービス利用の計画作成とコーディネート
- お住まいの市町村役場 障害福祉担当課: 制度や申請に関する情報提供
- 地域の病院・リハビリテーション科(OT): 動作指導、自助具の相談
- 厚生労働省 障害福祉サービスのページ:
まとめ
- 全自動化の推進: 洗濯はドラム式乾燥機、掃除はロボット掃除機の導入が、体力的な負担を最も劇的に軽減する最も有効な方法です。
- アイテムと工夫の活用: 軽量コードレス掃除機、長い柄の掃除道具、ハンガー収納の徹底など、手間や力を減らすための便利アイテムと自助具を積極的に活用しましょう。OTのアドバイスを受けることが重要です。
- 公的支援の併用: 居宅介護(生活援助)で家事の代行を依頼し、自立訓練(生活訓練)で家事スキルを身につけるという、二つの支援を組み合わせることで、自立と負担軽減の両立を目指せます。

酒井 勝利
(さかい かつとし)38歳📜 保有資格:
作業療法士、福祉住環境コーディネーター
作業療法士として病院・施設で12年勤務。「できないこと」を「できる」に変える福祉用具や環境調整の専門家です。車椅子、杖、リフトなどの選び方から、住宅改修まで、実践的な情報をお届けします。
リハビリテーション専門学校を卒業後、総合病院で5年、障害者支援施設で7年、作業療法士として勤務してきました。特に力を入れているのは、福祉用具を活用した「できることを増やす」支援。例えば、片麻痺がある方が自助具を使って料理ができるようになったり、車椅子の選び方一つで外出の頻度が劇的に変わったりします。印象的だったのは、重度の身体障害がある方が、適切な電動車椅子と環境調整により、念願だった一人での買い物を実現したこと。「自分でできる」という自信が、その方の人生を大きく変えました。記事では、福祉用具の選び方、住宅改修のポイント、補助金の活用方法など、「生活をより便利に、より自立的に」するための情報を発信します。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
リハビリの仕事を通じて、「できないこと」を「できる」に変える喜びを知ったことがきっかけです。
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重度の身体障害がある方が、適切な電動車椅子で一人での買い物を実現したこと。
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福祉用具を活用して「生活をより便利に、より自立的に」する情報を発信します。
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