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障害があっても起業はできる?はじめの一歩ガイド

📖 約30✍️ 菅原 聡
障害があっても起業はできる?はじめの一歩ガイド
障害のある方にとって、起業やフリーランスは、体調や特性に合わせて柔軟に働ける魅力的な選択肢です。最大のメリットは、自己管理のもとで働き方を完全にカスタマイズでき、自分の強みや当事者としての経験をビジネスに活かせる点です。しかし、収入の不安定さや社会保障の欠如、自己管理の負担増加といったデメリットもあります。起業の成功には、自分の強みとニーズの分析、体調を考慮した無理のない事業計画、そして商工会議所や就労移行支援など外部の専門機関との連携が不可欠です。日本政策金融公庫の融資や各種助成金制度を積極的に活用し、体調管理を最優先にしながら、主体的なキャリアを築きましょう。

「自分のペースで働きたい」「自分の強みやアイデアを活かして、社会に貢献したい」

障害のある方の中には、企業の雇用枠で働くこととは別に、「起業」や「フリーランス」という形で、自分らしく働く道を探している方が増えています。体調の波や障害特性を考慮しながら、自らが働き方や仕事の内容をデザインできる起業は、非常に魅力的な選択肢です。

しかし、「障害があっても、本当に起業なんてできるのだろうか?」「特別な制度や支援があるのだろうか?」といった不安や疑問を感じる方も少なくないでしょう。特に、資金調達や法的な手続きなど、未知の領域が多いと感じるかもしれません。

この記事では、障害のある方が起業・フリーランスとして働くことの可能性、そしてそのメリットとデメリットを解説します。さらに、起業を成功させるためのはじめの一歩となる具体的な手順、活用できる支援制度や助成金について、わかりやすくガイドします。

あなたの「やりたい」という思いを、実現可能な計画に変えるためのヒントとして、ぜひご活用ください。


障害があっても起業は可能?新しい働き方の可能性

結論から言えば、障害があっても起業することは十分に可能です。近年は、インターネットやIT技術の発展により、在宅で完結できる仕事が増え、障害特性による物理的な制約が少なくなり、起業のハードルは格段に下がっています。

起業の最大のメリットは、自分の障害特性を「強み」に変え、働き方を柔軟にデザインできる点にあります。例えば、午前中は体調が良いという方は午前中に集中して働き、午後は休憩を多めに取るなど、体調に合わせた働き方を自分で決定できます。

起業・フリーランスが持つ魅力

障害のある方にとって、起業やフリーランスという働き方は、従来の雇用形態にはない特別な魅力があります。

  • 柔軟な勤務体系:出勤時間や場所、作業量を自分で決められるため、通院や体調管理を最優先できます。
  • 能力を最大限に発揮:企業に合わせた業務ではなく、自分の得意なスキルや専門性を活かした仕事を選べるため、モチベーションが維持しやすくなります。
  • 合理的配慮の自己決定:企業に配慮を求めるのではなく、自ら環境を整備し、必要なサポートを外部に依頼するなど、自己責任で働きやすい環境を構築できます。

これらの自由度の高さが、結果として安定した継続的な就労につながるケースも少なくありません。

起業とフリーランスの違い

起業とフリーランスは混同されがちですが、厳密には異なります。どちらも企業に属さずに働く形態ですが、事業の規模や形態が異なります。

項目 起業(会社設立・個人事業主) フリーランス(個人事業主)
定義 新しい事業を立ち上げること(法人化も含む) 特定のスキルや経験を活かし、契約ベースで働く個人
組織形態 法人(株式会社、合同会社)または個人事業主 個人事業主(基本的には一人)
目的 事業の拡大、社会的信用の確立、雇用創出など スキルを活かした収入の確保、自由な働き方

多くの障害のある方が最初の一歩として選ぶのは、「個人事業主」としてのフリーランスです。手続きが簡単で、リスクを抑えて事業を始められるためです。

起業・フリーランスのメリットとデメリット

自由度の高い働き方である反面、起業にはリスクやデメリットも伴います。メリットだけでなく、デメリットもしっかりと理解した上で、準備を進めることが重要です。

起業のメリット:障害を「才能」として活かす

起業における最大のメリットは、障害特性を活かした独自の価値を生み出せる点です。

  • 独自の視点:障害や病気の経験を通じて得た深い洞察力や共感力は、福祉、教育、コンサルティングなど、特定の分野で非常に大きな強みになります。
  • 環境の完全なカスタマイズ:静かな環境、特定の時間帯の集中作業、頻繁な休憩など、自分のパフォーマンスが最大化する環境を、誰に遠慮することなく自分で作ることができます。
  • 収入の上限がない:雇用労働とは異なり、成功すれば収入に上限はありません。自分の努力やアイデアが、直接収入に反映されます。

障害を持つ当事者としての経験を商品やサービスに昇華させれば、それは他の人には真似できない、強力なビジネスの核となり得ます。

起業のデメリット:自己管理と責任の重さ

起業はすべての決定と責任を自分で負うことになるため、精神的・体力的な負担も大きくなります。

  • 収入の不安定さ:特に事業の初期は、収入が不安定になりがちです。体調を崩して仕事ができない期間があると、その分収入が途絶えるリスクがあります。
  • 自己管理の必要性:働く時間や休憩、体調管理、納税手続きなど、全てを自分で管理しなければなりません。これが負担となり、かえって体調を崩す原因になる可能性もあります。
  • 社会保障・福利厚生の欠如:会社員と違い、雇用保険や厚生年金などの社会保障や福利厚生はありません。国民年金や国民健康保険は自己負担となり、万が一のリスクに備えた準備が必要です。

⚠️ 注意

特に精神障害や発達障害を持つ方は、自己管理やスケジュール管理が苦手な場合があります。起業する場合は、外部の支援者(税理士、就労支援員など)と連携し、自己管理のサポート体制を構築することが非常に重要です。

起業へのはじめの一歩:具体的な準備ステップ

起業・フリーランスとしての一歩を踏み出すために、まずは自分の強みを整理し、リスクを最小限に抑えながらスタートするための具体的なステップを踏みましょう。

ステップ1:強みとビジネスアイデアの明確化

まずは、自分にはどのようなスキルや経験があり、それを活かして「誰の、どのような困りごと」を解決できるかを考えます。

  • スキル棚卸し:過去の職歴や趣味、学習経験、さらには障害当事者としての経験まで含め、他者に提供できる価値を洗い出します。
  • 市場調査:そのアイデアやスキルに、ニーズ(需要)があるかを調査します。まずは、SNSやクラウドソーシングサイトなどで、類似の仕事を探してみましょう。
  • スモールスタート:最初から大きな投資をするのではなく、まずは「無料で、または最小限の費用で」試せるスモールビジネスから始めることをお勧めします。例:ブログ運営、趣味の作品販売、簡単なWebライティングなど。

ステップ2:事業計画と収支計画の策定

小さなスタートであっても、事業として成立させるためには計画が必要です。特に、体調の波を考慮した収支計画が重要になります。

  • 体調と仕事量の予測:体調不良で月に何日休む可能性があるか、週に何時間作業できるかを現実的に予測し、無理のない仕事量を設定します。
  • 資金調達計画:初期費用(パソコン、ソフト、ウェブサイトなど)と、事業が軌道に乗るまでの生活費(運転資金)を計算します。公的支援や助成金を活用する計画も立てます。
  • 法的・税務上の準備:個人事業主として開業する場合は、税務署に「開業届」を提出します。これにより、青色申告などの税制上のメリットを受けられるようになります。

ステップ3:専門機関との連携とサポート体制の構築

起業は孤独な作業になりがちです。障害のある方こそ、外部の専門家や支援機関と連携してサポート体制を整えるべきです。

連携すべき機関の例

  • ハローワーク・障害者就業・生活支援センター:就労に関する相談や、利用できる福祉サービスに関する情報提供。
  • 商工会議所・よろず支援拠点:事業計画の作成、経営に関する専門的なアドバイス。
  • 税理士:複雑な会計処理や確定申告のサポート。
  • 就労移行支援事業所:起業準備のためのPCスキル習得や、ビジネススキル研修。

特に、体調管理や生活リズムの安定については、障害者就業・生活支援センターなどの福祉機関と連携し、支援を受け続けることが重要です。


障害者が活用できる資金調達と支援制度

起業には資金が必要です。障害のある方が起業・フリーランスを始めるにあたり、特に活用しやすい資金調達や支援制度があります。

日本政策金融公庫の融資制度

公的な金融機関である日本政策金融公庫には、新たに事業を始める方や、起業して間もない方を対象とした融資制度があります。

  • 新創業融資制度:担保・保証人なしで、新規開業に必要な資金を借り入れられる制度です。事業計画の実現可能性や、自己資金の状況などが審査されます。
  • マル経融資(小規模事業者経営改善資金):商工会議所などの経営指導を受けている小規模事業者が利用できる融資制度です。

民間銀行よりも融資のハードルが低い傾向にありますが、融資を受けるためには説得力のある事業計画を提示することが不可欠です。商工会議所などでアドバイスを受けながら作成しましょう。

各種助成金・補助金の活用

返済不要の助成金や補助金は、初期投資の負担を大きく軽減してくれます。ただし、いずれも後払い(立替払い)が原則である点に注意が必要です。

  • 創業助成金(自治体):各自治体が独自に、地域での創業を支援するために設けている助成金です。補助率や上限額は自治体によって大きく異なります。
  • IT導入補助金:PCソフトやハードウェア、クラウドサービスなどのITツール導入費用の一部を補助する制度です。在宅での作業環境整備に活用できます。
  • 持続化補助金(小規模事業者持続化補助金):販路開拓や生産性向上のための費用を補助する制度です。ホームページ制作、チラシ作成などに活用できます。

💡 ポイント

助成金や補助金は、年度によって募集時期や要件が変わります。常に最新情報をチェックし、公募開始前に事業計画を完成させておくことが、採択の確率を高める秘訣です。

就労移行支援事業所の活用

起業を目指す障害のある方にとって、就労移行支援事業所は「起業の準備期間」として非常に有用です。

  • 研修:事業所によっては、ビジネススキルの習得や、起業の基礎知識、PCスキルなどを学ぶ「起業家養成コース」のようなプログラムを用意している場合があります。
  • 相談・計画策定:就労移行支援の専門員(職業指導員など)は、利用者の特性を理解した上で、無理のない事業計画や体調管理計画の策定をサポートしてくれます。

就労移行支援は、原則として2年間の利用期間がありますが、この期間を起業準備に充てることで、リスクを抑えながらスキルアップを図ることができます。


成功のための心得とフリーランスの注意点

起業・フリーランスとして成功を収めるためには、マインドセット(心構え)と、フリーランスならではの具体的な注意点を押さえておく必要があります。

成功するための3つの心得

  1. 体調管理を最優先にする:仕事の量や納期を詰込みすぎず、体調が安定していること、仕事と休養のバランスが取れていることを常に最優先にしましょう。これが、長く事業を続けるための土台です。
  2. 「価値提供」を意識する:自分ができることだけをやるのではなく、「顧客が求めている価値」は何かを常に意識しましょう。自分のスキルと顧客のニーズが交わる部分こそが、ビジネスとして成立する場所です。
  3. 学ぶ姿勢とネットワーク:起業の世界は常に変化しています。新しい技術や知識を学び続ける姿勢と、同業者や支援者とのネットワークを持つことが、事業の継続と発展には不可欠です。

「私は精神障害がありますが、フリーランスとして活動することで、体調が悪い時は仕事を断る自由を手に入れました。収入がゼロになるリスクはありますが、体調を崩して離職するリスクの方が怖いので、この働き方が合っています。」

— 発達障害を持つフリーランスの方の声

フリーランスとして働く上での具体的な注意点

個人事業主として活動する上で、特に注意すべき点をまとめます。

  • 確定申告:毎年2月~3月に行う確定申告は、フリーランスの義務です。収入と経費を日頃から記録し、青色申告(最大65万円の控除)を活用するために、会計ソフトの導入や税理士への相談を検討しましょう。
  • 契約書の確認:トラブルを防ぐため、業務委託契約を結ぶ際は、納期、報酬額、支払い条件、著作権の帰属などを必ず書面(契約書または発注書)で確認しましょう。
  • 収入と障害年金の関係:起業して収入が増えると、障害年金の支給額に影響が出る場合があります。特に精神障害の場合、就労状況が年金の審査に影響を及ぼすことがあるため、年金事務所や社労士に事前に相談することが必須です。

まとめ

この記事では、障害のある方が起業・フリーランスとして働くためのガイドを解説しました。

  • 障害があっても起業は可能であり、自分の体調や特性に合わせて柔軟に働くことができるという大きなメリットがあります。
  • 成功の鍵は、徹底した自己管理、明確な事業計画、そして外部の支援機関(商工会議所、就労移行支援など)との連携です。
  • 日本政策金融公庫の融資や、各種助成金・補助金など、起業を支援する制度を積極的に活用しましょう。

起業は決して簡単な道ではありませんが、自分の力を信じ、一歩ずつ進めば、必ずあなたらしい働き方を見つけることができます。あなたの持つ個性や経験は、社会にとって大きな価値となる可能性を秘めています。

✅ 次のアクション

まずは、ご自身の強みとビジネスアイデアを紙に書き出し、お近くの就労移行支援事業所または商工会議所に相談してみましょう。専門家との対話が、起業への具体的な道筋を明確にしてくれます。

菅原 聡

菅原 聡

すがわら さとし38
デスク📚 実務経験 12
🎯 就労支援🎯 進路支援

📜 保有資格:
職業指導員、キャリアコンサルタント、精神保健福祉士

就労移行支援事業所で10年以上、障害のある方の「働く」を支援してきました。一般就労への移行支援から就労継続支援まで、幅広い経験をもとに、「自分に合った働き方」を見つけるための情報をお届けします。

大学で社会福祉を学び、卒業後すぐに就労移行支援事業所に就職。当初は「障害があっても一般企業で働けるんだ」という驚きと感動の連続でした。これまで150名以上の方の就労支援に携わり、その8割が一般企業への就職を実現。ただし、「就職がゴール」ではなく、「長く働き続けられること」が本当のゴールだと考えています。印象的だったのは、精神障害のある方が、障害をオープンにして自分のペースで働ける職場を見つけ、「初めて仕事が楽しいと思えた」と言ってくださったこと。その笑顔が忘れられません。記事では、就労移行支援と就労継続支援の違い、企業選びのポイント、障害者雇用の現実など、実際の支援経験に基づいた実践的な情報をお伝えします。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学で社会福祉を学び、「障害があっても一般企業で働ける」という可能性に感動したことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

精神障害のある方が、自分のペースで働ける職場を見つけ、「初めて仕事が楽しいと思えた」と言ってくださったこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

「就職がゴール」ではなく、「長く働き続けられること」を大切に、実践的な情報を発信します。

🎨 趣味・特技

ランニング、ビジネス書を読むこと

🔍 最近気になっているテーマ

リモートワークと障害者雇用、週20時間未満の短時間雇用

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