ホーム/記事一覧/困りごとガイド/人間関係の困りごと/誤解されやすい話し方とその直し方

誤解されやすい話し方とその直し方

📖 約77✍️ 金子 匠
誤解されやすい話し方とその直し方
発達障害による誤解されやすい話し方(結論が最後、話の脱線、論理偏重、一方的)を改善するため、話し方を戦略的に調整します。まず、どんな会話でも「結論→理由→詳細」の3ステップ構成を徹底し、話が脱線しそうになったら「キーワード復唱」で軌道修正します。次に、話す前に「相手が今聞く必要があるか?」という目的確認フィルターをかけ、情報量を抑制し、「1トピック・1発言」ルールで衝動性を制御します。相手の感情的な訴えには「共感のサンドイッチ話法」で対応し、話が終わったら必ず「発言権のトス」で沈黙(考える時間)を与えます。SSTでのロールプレイングやジョブコーチを通じたサポートで、これらのスキルを定着させ、誤解を防ぎます。

「自分では一生懸命説明しているのに、『結局、何が言いたいの?』と聞かれてしまう」「話が一方的だと誤解され、相手が途中で聞くのをやめてしまう」「論理的な話をしているつもりでも、『冷たい人だ』と誤解されてしまう」

発達障害(ASD:自閉スペクトラム症、ADHD:注意欠陥・多動性障害)を持つ方々にとって、「話し方」は人間関係の誤解を生む大きな要因の一つです。ASDの特性による過度な論理重視や情報の取捨選択の困難、あるいはADHDの特性による衝動的な発言や話の脱線は、定型発達者とのコミュニケーションの「作法」と大きく異なり、結果として「協調性がない」「無遠慮だ」「理解力がない」といった誤解を生んでしまいます。これらの誤解は、職場での評価の低下、友人関係の断絶、そして自己肯定感の低下につながりかねません。

この記事では、発達障害の特性に起因する4つの誤解されやすい話し方を具体的に分析します。そして、これらの話し方を「直す」、すなわち**「相手の認知特性に合わせて調整する」ための実践的な4つの戦略**(1. 構成の調整、2. 情報量の制御、3. 感情への配慮、4. 外部支援の活用)を提案します。あなたの伝えたい意図が正確に相手に届き、建設的で安心できる対話を実現するための具体的なスキルと、段階的なトレーニング方法を見つけましょう。


1.誤解されやすい4つの話し方とその特性的な原因

あなたの話し方が誤解されるのは、相手とあなたの「会話の目的」や「情報の処理方法」が根本的に異なっていることに原因があります。原因を特定し、無意識の行動を意識的に変える準備をしましょう。

話し方1:結論が最後にくる「背景情報過多型」

ASD特性を持つ方に多く見られる話し方で、正確性を重視するあまり、結論や重要な情報にたどり着く前に、すべての経緯や背景、詳細な補足情報を網羅しようとします。

  • 誤解される原因: 聞き手は、結論がいつ出てくるかわからないため、途中で情報処理がパンクし、「話が長すぎる」「何が言いたいのかわからない」と感じる。
  • 特性的な原因: 情報の取捨選択(フィルタリング)が苦手で、すべての情報は重要であるという認知バイアスが働くため、話し始める際に**「結論」を先に置く**というコミュニケーションの作法を適用できない。
  • 結果: 重要な情報や質問が埋もれてしまい、コミュニケーションの効率が極端に低下する。

話し方2:話の脈絡がない「脱線・飛躍型」

ADHD特性を持つ方に多く見られる話し方で、ワーキングメモリ(作業記憶)の容量不足や衝動性により、会話中に思いついた別の話題や関連情報に注意が逸れてしまい、元の話に戻れなくなります。

  • 誤解される原因: 聞き手は、話のつながりを理解できず、「話が飛んでいる」「この人は集中力がない」と感じる。特に、突然、プライベートな話題や不適切な情報を挿入してしまうことで、無遠慮だと誤解される。
  • 特性的な原因: 思考が次々と新しいアイデアや情報に飛んでしまう注意の転導性が原因。また、発言の衝動を抑制する機能が弱いため、フィルタリングなしに頭の中の情報を口に出してしまう。
  • 結果: 重要な話が最後まで伝わらず、信頼性を損なう

話し方3:感情への配慮がない「論理・正論型」

ASD特性を持つ方に多く見られる話し方で、会話の目的を**「論理的な解決策の提示」に置きすぎ、相手の感情的な側面を無視してしまいます。

  • 誤解される原因: 相手が共感や慰めを求めているときに、冷徹な正論や論理的な反論を提示してしまうため、「冷たい」「共感性がない」「こちらの気持ちを理解してくれない」と感じ、人間関係が断絶する。
  • 特性的な原因: 心の理論(他者の感情の推測)の困難さから、相手の非言語的な感情サインを読み取れず、会話の「感情的な目的」**を理解できない。自分の論理的な考えを客観的事実として提示することに価値を置きすぎる。
  • 結果: 関係性の構築が困難になり、孤立を招く。

話し方4:一方的で間がない「畳み込み型」

緊張や不安、または自分の関心のある話題に集中しすぎることで、会話のペースを自分だけが握り、相手に発言の機会を与えない話し方です。

  • 誤解される原因: 相手は、質問する時間、考える時間、発言する時間を与えられず、「一方的に押し付けられている」「聞くのが疲れる」と感じ、会話への参加意欲を失う
  • 特性的な原因: 自分の話を聞いてもらいたいという欲求が強い、または会話の沈黙を過度に恐れる(不安の高さ)ために、間を埋めようと話し続けてしまう。また、相手の発言を待つ抑制機能が弱い場合もある。
  • 結果: 相手を疲弊させ、コミュニケーションの機会そのものが減少する。

2.戦略1:「結論先出し」と「要約」による構成の調整

「話が長い」「何が言いたいかわからない」という誤解を解消するために、情報の優先順位を変え、相手が最も必要とする情報を先に伝える技術を習得します。

技術1:「3ステップ会話構成」の徹底

どんな会話でも、「結論→理由→詳細」という構造化された3ステップで話すことを徹底します。

  • ステップ1:結論(10秒以内)最も伝えたいこと、聞きたいこと、要求したいことを最初に明言する。
    • 例:「今日の打ち合わせの目的は、A案の採用可否を決定することです。」
  • ステップ2:理由・概要(30秒以内)なぜその結論に至ったか3点程度の短いフレーズで説明する。
    • 例:「理由は、コスト削減納期短縮、そして顧客満足度の向上の3点です。」
  • ステップ3:詳細(相手の反応を見てから) → 相手が**「コスト削減について詳しく聞きたい」**などと求めてきたら、初めて詳細な情報を提供する。

技術2:「キーワード復唱」による脱線防止と要約

話が脱線しそうになったとき、あるいは話が長くなったと感じたときに、会話の軸を戻すための技術を使います。

  • 脱線防止の復唱: 話が脱線しそうになったら、**直前に話していた「キーワード」を心の中で復唱し、元の話題に無理やり戻す。
    • 例:(脱線しそうになったら)「そういえば、コスト削減の話でしたね。元に戻します。」
  • 定期的な要約: 5分以上話が続いた場合、「ここまでの話を要約すると、〇〇ということですね」**と、自分で会話を区切り、要約してから次に進む。これにより、相手の理解度を確認できる。


3.戦略2:情報量をコントロールする「フィルタリング」技術

「情報過多」や「話が飛ぶ」という誤解を減らすために、**話す前に情報の取捨選択(フィルタリング)**を行う具体的なプロセスを導入します。

技術1:「なぜ話すのか」の目的確認フィルター

話したい情報が頭に浮かんだとき、衝動的に発言する前に、以下の3つの質問を自分自身に問いかけます。

  • フィルター1: この情報は、今の結論に直接関係しているか?
  • フィルター2: この情報は、相手が今聞く必要があるか?
  • フィルター3: この情報は、口頭でなく、メールや資料で伝えるべきか?

3つの質問すべてに**「Yes」と答えられる情報のみを発言し、「No」の場合は、「メモに残す」「後で伝える」**といった代替行動を選択します。

技術2:「1トピック・1発言」の抑制ルール

一度の発言で複数のトピックや情報を詰め込むことを禁止し、発言を最小単位に分割します。

  • 発言の分割: 「AとBとCについて話したい」と思ったとき、Aについて話し終えるまでBとCの発言は抑制する。Aについて話し終えたら、「Aについては以上です。次にBに移ります」と明確に区切る
  • 「3秒待機」の徹底: 会話中に言いたいことが思い浮かんだら、衝動的に発言せず、心の中で3秒数える。この間に、情報量フィルターを通過させる訓練を行う(ADHD特性を持つ方に特に有効)。

技術3:「補足情報は外部委託」

どうしても伝えたい詳細な情報や、脱線しそうな情報を、口頭ではなく他の媒体に委託します。

  • メモでの補足: 話の途中で、「この話には〇〇という背景情報がありますが、詳細はこのメモに記載します」と伝え、口頭での説明を省略する。
  • 資料への委託: 「〇〇の詳細は長くなるので、後ほどメールで資料をお送りしてもよろしいでしょうか?」と、情報の提供方法を提案する。

4.戦略3:「共感」と「間」による関係性の調整

「論理・正論型」や「一方的」な話し方を修正し、相手の感情や会話のペースに配慮することで、関係性の誤解を減らします。

技術1:「共感のサンドイッチ話法」の定型化

相手の感情的な訴えに対し、いきなり論理的な解決策を提示することを避け、「共感」を会話の定型句として組み込みます。

  • ステップ1:共感(感情の反復) → 相手:「仕事が多くて大変だ」→自分:「それは大変でしたね」「お疲れ様です」と、労いや感情を受け止める定型文を必ず最初に発する。
  • ステップ2:論理(解決策の提示) → その後、「もしよろしければ、スケジュールを見直すという方法もありますが、どう思いますか?」と、提案の形で論理的な解決策を提示する。
  • ステップ3:共感(結び) → 最後に、「でも、本当に頑張っていると思います」と、再び感情的なサポートで会話を終える。

技術2:「発言権のトス」と沈黙の活用

一方的な話し方を防ぎ、相手に発言と情報処理のための間を与える技術を習得します。

  • 発言権のトス: 自分が話し終えたら、必ず相手に質問を投げかける(発言権をトスする)。
    • 例:「以上が〇〇についての説明ですが、〇〇さんのご意見はいかがでしょうか?
  • 沈黙の耐性: 相手がすぐに答えない場合、焦ってすぐに話し始めるのではなく3〜5秒の沈黙を許容する訓練を行う。沈黙は**「考える時間」であり、「会話の失敗」ではないという認知に修正する。
  • 非言語の配慮: 発言権をトスした後は、相手の目を見て頷くという「聞く準備ができています」**という非言語的なサインを送ることに集中する。

5.戦略4:外部支援と客観的なフィードバックの活用

話し方の癖は、自分一人で気づき、修正することが非常に困難です。専門家による客観的な評価と、実践的なトレーニングが不可欠です。

技術1:SST(ソーシャルスキルトレーニング)での「話し方矯正」

SSTは、誤解されやすい話し方を客観的なフィードバックに基づき、体系的に修正するための最適な場です。

  • ロールプレイングと録画: 支援員を相手に**「長い説明」「脱線しやすいトピック」を話し、その様子をビデオ録画する。録画後、「結論までの時間」「脱線の回数」「相手が発言した回数」**といった具体的な指標に基づき、フィードバックを受ける。
  • 構成テンプレートの定着: **「3ステップ会話構成」「共感のサンドイッチ話法」を、どんなテーマでも反射的に使えるようになるまで、繰り返し練習する。
  • 即興応答の訓練: 予期せぬ質問に対し、「3秒待機」「クッション言葉(例:なるほど、良い質問ですね)」**を挟んでから応答する訓練を行い、フリーズと衝動的な発言を防ぐ。

技術2:ジョブコーチ・ピアサポートの活用

職場や社会生活での話し方の誤解を減らすために、専門家や当事者の視点を取り入れます。

  • ジョブコーチによるモニタリング: 職場の会議や報告の場面にジョブコーチに立ち会ってもらい、話し方の客観的な評価と、職場への適切な「通訳」を依頼する。
  • ピアサポートでの練習: 当事者会など、特性への理解がある環境で、「話の脱線」や「長い説明」を許容されながら、**「自分で要約する」「話の途中で区切る」**といった練習を気兼ねなく行う。

技術3:「誤解されやすい」ことの予防的な開示

完全に話し方を修正することが困難な場合、予防的に自分の特性を開示し、周囲の理解を得ることで、誤解の発生率を減らします。

  • 開示の定型文: 「私は**(特性により)話が長くなったり、脱線したりする癖があります。もし話が飛んでいたら、『結論からお願いします』遠慮なく遮ってくださると助かります**」と、理由と具体的な協力依頼をセットで伝える。

話し方の調整は、あなたの個性を消すことではなく、あなたが伝えたい大切な情報を、相手が最も受け取りやすい形に「ラッピング」することです。正しい戦略と練習を重ねれば、あなたの話し方は必ず改善されます。


まとめ

誤解されやすい話し方(結論が最後、話の脱線、論理偏重、一方的)は、発達障害の特性による情報処理の困難や衝動性に起因します。誤解を減らすためには、話し方の構成と情報量を意図的に調整する戦略が必要です。

  • どんな会話でも「結論→理由→詳細」3ステップ構成を徹底し、話が脱線しそうになったら「キーワード復唱」で元の話題に戻りましょう。
  • 話す前に**「相手が今聞く必要があるか?」という目的確認フィルターをかけ、不必要な情報の発言を抑制し、「1トピック・1発言」のルールを徹底しましょう。
  • 相手の訴えには、まず「それは大変でしたね」共感の定型文から入り、自分の意見を言った後は「〇〇さんの意見は?」発言権をトスし、相手に考えるための間(沈黙)を与えましょう。
  • SST録画フィードバックを受け、構成や衝動性の抑制を集中的に練習し、ジョブコーチを通じ特性の「通訳」合理的配慮**を要請しましょう。

金子 匠

金子 匠

かねこ たくみ55
編集長📚 実務経験 30
🎯 生活サポート🎯 制度・法律

📜 保有資格:
社会福祉士、精神保健福祉士

障害者支援施設で30年間勤務し、施設長を経験。現在はすぐサポ編集長として、障害のある方とご家族が必要な情報にアクセスできる環境づくりに取り組んでいます。「制度は複雑だけど、使えば生活が楽になる」という信念のもと、分かりやすい情報発信を心がけています。

大学卒業後、障害者支援施設に就職し、30年間にわたり現場で支援に携わってきました。生活支援員として10年、サービス管理責任者として15年、そして施設長として5年の経験があります。特に印象に残っているのは、重度の知的障害があり、施設入所が当然と思われていた方が、適切な支援と環境調整により地域での一人暮らしを実現したケースです。「できない」と決めつけず、その人に合った支援を考えることの大切さを学びました。現在は現場を離れ、すぐサポの編集長として、これまでの経験を記事という形で多くの方に届けることをミッションとしています。制度や法律の解説記事では、「専門用語を使わず、中学生でも分かる言葉で」を心がけています。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学で社会福祉を学び、実習で出会った利用者の方々の笑顔に感動したことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

重度の知的障害のある方が、適切な支援により地域での一人暮らしを実現したこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

専門用語を使わず、中学生でも分かる言葉で伝えることを大切にしています。

🎨 趣味・特技

読書、散歩

🔍 最近気になっているテーマ

障害者総合支援法の改正動向、ICTを活用した新しい支援の形

📢 この記事をシェア

関連記事