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詐欺・悪質商法から身を守るための注意ポイント

📖 約35✍️ 鈴木 美咲
詐欺・悪質商法から身を守るための注意ポイント
障害を持つ方は、断りにくさや複雑な契約内容の理解困難といった特性から、詐欺や悪質商法の被害に遭うリスクが高いです。本記事では、被害を防ぐための具体的な対策を解説します。もうけ話や訪問販売、架空請求などの手口を理解し、防御策として「即答を避ける」ルールを徹底しましょう。また、通帳やクレジットカードの情報を支援者が管理するなど、財産を物理的に保護する仕組みを構築することが不可欠です。万が一被害に遭った場合は、消費者ホットライン(188番)や法テラスにすぐに相談してください。被害の深刻化を防ぐため、成年後見制度による法的な保護も視野に入れましょう。

詐欺・悪質商法から身を守るための注意ポイント

「だまされてしまう」不安を安心に変える

障害を持つ方、特に知的障害や発達障害、精神障害を持つ方は、詐欺や悪質な商法による被害に遭うリスクが高いと言われています。これは、断ることが苦手な特性、複雑な契約内容の理解が難しい特性、あるいは孤独感や承認欲求につけ込まれやすいといった様々な要因が重なるためです。

大切なお金や個人情報を守ることは、安心した生活を送るための基盤です。ご本人だけでなく、ご家族や支援者にとっても、どのような手口があるのか、どう対処すべきかを知っておくことは非常に重要です。

この記事では、障害を持つ方が狙われやすい具体的な詐欺・悪質商法の手口を紹介し、被害を未然に防ぐための具体的な防御策(断り方、仕組みづくり)を解説します。万が一被害に遭ってしまった場合の相談窓口や対処法についても触れますので、不安を抱えることなく、一緒に安全な生活環境を整えていきましょう。


なぜ狙われやすい?被害の背景にある特性

認知の特性と判断の難しさ

詐欺や悪質商法は、人の心理を巧みに操りますが、特に障害特性を持つ方は、その手口を見抜くことが難しい場合があります。

  • 情報処理の困難さ:知的障害を持つ方や、発達障害の一部の方は、話が長く複雑になると、重要な情報とそうでない情報の区別が難しくなり、相手の言うことを鵜呑みにしてしまいやすい傾向があります。
  • 抽象的な概念の理解困難:「契約」「元本保証」「クーリング・オフ」など、法的な抽象概念の理解が難しいため、自分が不利な契約を結ばされていることに気づきにくいです。
  • 見通しを立てる力の弱さ:ADHDの特性などにより、その場限りの甘い話に飛びついてしまい、将来的に大きな損害が出るというリスクを予測することが困難です。

「やさしさ」や「承認欲求」につけ込まれる

詐欺師は、人の心理的な弱みにつけ込んできます。特に、以下のような心理が利用されやすいです。

  • 断れない特性:対人関係に不慣れで「ノー」と言えず、相手の要求をすべて受け入れてしまう。
  • 孤独感・承認欲求:「あなただけ特別」「これで儲かる」といった言葉に、「自分は認められている」と感じ、信頼してしまいやすい

💡 ポイント

詐欺や悪質商法は、ご本人の認知能力や判断能力の弱点を的確に突いてきます。これはご本人の責任ではなく、社会的な支援が必要な問題であると理解することが、対策の第一歩です。


障害を持つ方が狙われやすい詐欺・悪質商法

1.「もうけ話」による投資詐欺・マルチ商法

「簡単に稼げる」「絶対にもうかる」といった言葉で誘い込む詐欺や商法は、特に経済的な不安を抱える方や、お金を増やすことに強い関心を持つ方を狙います。

  • マルチ商法(連鎖販売取引):商品を買うだけでなく、友人や知人を勧誘して組織に加入させることで報酬を得る仕組みです。勧誘を断り切れない特性につけ込まれ、友人関係を壊したり、在庫を抱えたりする被害が多発します。
  • 未公開株・暗号資産詐欺:「今買っておけば必ず値上がりする」と持ちかけ、実際には価値のないものを高値で売りつけます。

勧誘の手口:「親切な友人」や「先輩」を装う

勧誘者は、親切な友人や信頼できる先輩を装い、最初は悩みを聞くなどして人間関係を築くところから始めることが多く、ご本人は「まさかこの人がだますはずがない」と思い込んでしまいがちです。

2.訪問販売・点検商法

自宅を訪問し、高額な商品やサービスを売りつける手口です。自宅にいる時間が長い方や、一人暮らしの方、断ることに苦手意識を持つ方がターゲットになりやすいです。

  • 高額な不用品買取:「無料で不用品を査定します」と訪問し、安価なものしか買い取らないどころか、貴金属や現金を無理やり売らせる
  • 住宅リフォーム・点検商法:「屋根が壊れている」「床下が腐っている」などと不安を煽り、実際には不要または相場よりも極めて高額な工事契約を結ばせる。

訪問販売は、契約を断る際に「怖い」「強引だ」と感じることが多いため、すぐに第三者に介入を求めることが重要です。

3.デジタル系の詐欺(フィッシング・架空請求)

インターネットやスマートフォンを通じて行われる詐欺です。複雑な仕組みやデジタル技術への苦手意識につけ込まれます。

  • 架空請求:「有料サイトの未払い金がある」「利用料金が期限切れ」などと通知し、すぐに支払いを求めます。焦って指示に従ってしまうと、個人情報や金銭をだまし取られます。
  • フィッシング詐欺:銀行や大手通販サイトを装ったメールを送り、偽サイトに誘導してパスワードやクレジットカード情報を入力させます。

「障害を持つ方からの相談事例では、特にマルチ商法や投資詐欺に関する相談が増加傾向にあります。これは、SNSなどでの情報接触が増えたことと、人間関係の希薄さにつけ込まれるケースが多いことが背景にあります。」

— 国民生活センター 年次報告書


被害を未然に防ぐための具体的な防御策

即答を避ける「鉄のルール」

詐欺や悪質商法は、「今すぐ決めないと損をする」「これは秘密」などと焦らせて、冷静な判断をさせないように仕向けてきます。ご本人と支援者が共有すべき、最も重要な防御策は「即答を避ける」ルールです。

  • 「検討します」と答える:「結構です」「いりません」と断るのが苦手な場合は、「家族(支援者)と相談してから決めます」「検討します」とだけ答える練習をしましょう。
  • その場での支払いを拒否:「現金で今払ってほしい」「カード情報をすぐに教えて」という要求には、理由を問わず「できない」と拒否します。
  • 玄関を開けない勇気:知らない人が訪問してきたら、インターホン越しに対応し、安易に玄関を開けない習慣をつけましょう。

断るための具体的なセリフ集

断るのが苦手な方のために、具体的なセリフを準備しておきましょう。

セールスの場合:

「うちは家族がすべて管理しているので、私一人では決められません。帰ってください。」

電話・メールの場合:

「私から電話することは禁止されています。切ります。」

金銭・契約に関する「情報の物理的制限」

詐欺や悪質商法の被害を物理的に防ぐため、家族や支援者が金銭や契約に関する情報を管理する仕組みを作りましょう。

  • 通帳・印鑑の管理:高額の預金が入っている通帳、銀行印、キャッシュカードなどは、ご本人が安易に持ち出せないよう、支援者や成年後見人が厳重に保管します。
  • クレジットカードの解約・制限:高額な決済が可能なクレジットカードは、浪費リスクだけでなく、詐欺被害に遭った際の被害額を抑えるためにも、原則として解約するか、デビットカードに切り替えましょう。
  • PC・スマホのフィルタリング:インターネットからの悪質な情報や、架空請求のメールを防ぐため、PCやスマートフォンにフィルタリング機能や迷惑メール対策を設定します。

✅ 成功のコツ

詐欺対策は、ご本人に「自己責任」として任せるのではなく、環境設定と支援者による継続的な見守りが不可欠です。日常生活自立支援事業や、成年後見制度の利用も視野に入れ、公的なサポートで防御体制を強化しましょう。


万が一被害に遭ってしまった場合の対処法

初期対応:「クーリング・オフ」と契約の解除

悪質な商法で契約書にサインをしてしまったり、代金を支払ってしまったりした場合でも、すぐに諦める必要はありません。

  • クーリング・オフ制度の活用:訪問販売など、特定の取引で契約してしまった場合、法律で定められた期間内(通常8日間または20日間)であれば、無条件で契約を解除(クーリング・オフ)できます。
  • 契約解除の連絡:クーリング・オフは、証拠を残すために内容証明郵便で行うのが確実です。支援者や相談窓口に助けを求め、すぐに手続きを行いましょう。
  • 支払いの停止:クレジットカードや銀行振り込みで支払いをした場合は、すぐにカード会社や銀行に連絡し、支払いの停止手続きを依頼します。

クーリング・オフが間に合わない場合

クーリング・オフ期間が過ぎてしまった場合や、クーリング・オフが適用されない取引の場合は、消費者契約法などに基づき、契約の取り消し無効を主張できる可能性があります。法律の専門家や消費者センターに相談し、適切な対応を検討します。

すぐに相談すべき専門窓口

被害に遭った、あるいは遭いそうになった際は、一人で抱え込まず、すぐに以下の専門窓口に相談しましょう。

  • 消費者ホットライン(188番):全国どこからでもつながる消費者行政の窓口です。具体的な被害状況を伝えれば、地元の消費生活センターに引き継がれ、対処法やクーリング・オフの手続きについて具体的なアドバイスを受けられます。
  • 警察相談専用電話(#9110):詐欺や悪質な被害に遭い、身の危険を感じる場合や、犯人を特定する必要がある場合は、警察に相談しましょう。
  • 法テラス(日本司法支援センター):法的手段(契約の無効化、損害賠償請求など)が必要な場合、無料で法律相談を受けられ、弁護士・司法書士への橋渡しをしてくれます。

「だまされてしまったことに気づいた時、『恥ずかしい』『責められる』と思って相談をためらう方が多いです。しかし、詐欺師の手口は巧妙であり、誰もが被害に遭う可能性があります。大切なのは、気づいた時点ですぐに専門家に頼ることです。私たち支援員も全力でサポートします。」

— 相談支援専門員 M氏


家族・支援者が行うべき継続的なサポート

日々の「見守り」と情報共有

詐欺被害の多くは、ご本人の生活状況や金銭の動きに変化があった際に起こります。家族や支援者は、日々の生活の中で以下の点に注意して見守りましょう。

  • 不審な来訪者や電話の確認:訪問者や着信履歴を確認し、不審な業者との接触がないかチェックします。
  • 郵便物・請求書の確認:見慣れない郵便物や、高額な請求書が届いていないか、定期的に確認します。
  • 急な金銭の動き:口座から不自然に高額の引き出しや、クレジットカードの利用履歴がないか、定期的にチェックします。

特に一人暮らしの方の場合、居宅介護や地域移行・定着支援のサービス利用計画に「郵便物のチェック」や「金銭管理の確認」を組み込んでもらうことが、継続的な防御策となります。

成年後見制度による法的な保護

ご本人の判断能力が不十分で、詐欺や悪質商法による被害に繰り返し遭ってしまう、またはその危険性が極めて高いと判断される場合は、「成年後見制度」の利用を検討すべきです。

後見人が選任されると、後見人がご本人に代わって契約行為の取り消しや、財産の管理を行うため、法的に詐欺被害を無効化し、財産を守ることが可能になります。これは、ご本人の生活の安全を確保するための、最も強力なセーフティネットです。

⚠️ 注意

成年後見制度は、ご本人の意思決定の自由を大きく制限するため、手続きの前に必ず、地域の相談支援専門員や、社会福祉協議会に相談し、制度のメリット・デメリットを十分に理解することが必要です。


まとめ

詐欺・悪質商法から身を守るためには、ご本人の特性を理解した上で、「断るための具体的なルール」と「財産を物理的に保護する仕組み」を家族や支援者が連携して構築することが不可欠です。知らない人からの誘いや儲け話には絶対に即答せず、「家族・支援者に相談する」という鉄のルールを守りましょう。

万が一被害に遭った場合は、一人で悩まず、すぐに消費者ホットライン(188番)や法テラスなどの専門窓口に助けを求めてください。適切な支援と防御策によって、私たちは皆さんの大切な生活と財産を守り続けることができます。

まとめ

  • 詐欺の手口は障害特性の弱み(断りにくさ、認知の困難さ)につけ込まれることを理解する。
  • セールスや勧誘には即答を避け、「家族/支援者に相談する」というルールを徹底する。
  • 通帳、印鑑、クレジットカードなどの金銭情報を支援者が厳重に管理する。
  • 被害に遭ったら、すぐに消費者ホットライン(188番)や法テラスに相談する。
  • 被害が繰り返される場合は、成年後見制度による法的な保護を検討する。

鈴木 美咲

鈴木 美咲

すずき みさき42
担当📚 実務経験 15
🎯 相談支援🎯 当事者・家族支援

📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員

相談支援専門員として15年、障害のある方とそのご家族の「困った」に寄り添ってきました。実際の相談事例をもとに、当事者やご家族のリアルな声、具体的な解決策をお届けします。「一人で悩まないで」がモットーです。

社会福祉士として障害者相談支援事業所に勤務し15年。年間約100件の相談に対応し、サービス等利用計画の作成や、関係機関との調整を行っています。この仕事の魅力は、「困っている」状態から「解決した!」という笑顔に変わる瞬間に立ち会えること。ただし、制度が複雑で「どこに相談すればいいか分からない」という声を本当によく聞きます。特に印象深いのは、お子さんの障害を受け入れられず孤立していたお母さんが、同じ境遇の親の会に繋がり、「一人じゃないと分かって救われた」と涙ながらに話してくださったこと。情報と繋がりの大切さを実感しました。記事では、実際の相談事例(もちろん個人情報は特定できないよう配慮)をベースに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えていきます。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学のボランティアで障害のある方と出会い、「困っている」を「解決した!」に変える仕事がしたいと思ったことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

孤立していたお母さんが、親の会に繋がり「一人じゃないと分かって救われた」と話してくださったこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

実際の相談事例をもとに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えることを大切にしています。

🎨 趣味・特技

ヨガ、カフェ巡り

🔍 最近気になっているテーマ

ヤングケアラー支援、家族のレスパイトケア

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