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移動支援とは?対象者・使い方・上手な活用方法

📖 約44✍️ 高橋 健一
移動支援とは?対象者・使い方・上手な活用方法
移動支援は、障害のある方の外出をサポートし、社会参加や地域での自立を促すための地域生活支援事業です。身体・知的・精神障害者や難病患者が対象で、通院などの必須な用務に加え、趣味やレジャーといった幅広い外出に利用できる点が特徴です。利用するには、お住まいの市区町村へ申請し、支給決定を受ける必要があります。サービスはヘルパーによる付き添いや送迎の形態で提供され、費用は原則1割負担ですが、所得に応じた上限額があります。地域によってサービス内容や支給量に差があるため、事前の自治体確認が重要です。

障害のある方にとって、外出は社会参加や生活の質(QOL)を高める上で非常に重要ですが、移動の困難さや、外出先での危険回避など、多くの障壁が存在します。 「一人で安全に外出したい」「家族の負担を減らして、もっと趣味や用事で出かけたい」と願っている方も多いのではないでしょうか。

そんな外出の悩みを解決してくれるのが、障害福祉サービスの一つである「移動支援」です。 移動支援は、障害のある方の外出をサポートし、社会生活への参加や地域での自立を促進するための地域生活支援事業です。 このガイドでは、移動支援の対象者、利用できる具体的な活動範囲、他のサービスとの違い、そして制度を最大限に活用するコツを詳しく解説します。 移動支援を理解し、生活の幅を広げるための第一歩を踏み出しましょう。


移動支援とは?制度の目的と位置づけ

移動支援は、障害者総合支援法に基づく「地域生活支援事業」として実施されています。 これは、全国一律の「障害福祉サービス」とは異なり、市町村が地域の特性や利用者のニーズに応じて柔軟に実施できるサービスであることが大きな特徴です。

移動支援の目的と重要性

移動支援の最大の目的は、単なる移動手段の提供ではなく、社会参加や地域生活を円滑にすることにあります。

  • 社会性の向上:

    外出を通じて、社会との交流を深め、孤立を防ぎ、生活を豊かにする機会を提供します。

  • 自立の促進:

    移動の介助や見守りを行うことで、障害のある方が自らの意思で行動し、自己決定に基づいた生活を送ることを支援します。

  • 介護者の負担軽減(レスパイト):

    家族が外出に付き添う負担を軽減し、介護者の休息や自由な時間(レスパイト)を確保する役割も担っています。

他の移動に関するサービスとの違い

移動に関する支援には、移動支援の他に「居宅介護の通院等介助」や「同行援護」「行動援護」といった全国一律のサービスがあります。

  • 居宅介護の通院等介助:

    通院や官公庁への手続きなど、社会生活上必要な用務に限定されます。 移動支援は、これに加えて趣味やレジャーなど、より幅広い外出が対象となります。

  • 同行援護・行動援護:

    同行援護(視覚障害)と行動援護(知的・精神障害による行動困難)は、障害者総合支援法に基づく「訓練等給付」であり、全国一律の基準で提供されます。 移動支援は、市町村独自の判断基準で提供されるため、利用要件やサービス内容が地域によって異なる点に注意が必要です。

💡 ポイント

移動支援は、法律上「必須ではない外出(趣味、レジャーなど)」をサポートできるという点で、他の訪問系サービスと一線を画します。 この点が、生活の質を向上させる上で非常に重要です。


移動支援の対象者と利用できる外出の範囲

移動支援の対象者や、どのような外出が認められるか(支援の範囲)は、市町村ごとに定められた要綱(ルール)によって決まります。 そのため、必ずお住まいの自治体の窓口で確認が必要です。

主な対象となる障害と年齢

移動支援の主な対象者は、身体障害者、知的障害者、精神障害者、難病患者です。

  • 全ての障害種別が対象:

    身体障害、知的障害、精神障害、難病など、外出時に移動や安全確保に支援が必要な方が広く対象となります。 障害支援区分の認定は必須ではない場合もありますが、市町村独自の審査があります。

  • 年齢制限:

    主に障害のある児童から高齢者まで、幅広い年齢層が利用できます。 ただし、介護保険の対象となる65歳以上の方は、介護保険のサービスが優先されるため、移動支援の対象外となるケースが多いです。

移動支援で利用できる具体的な活動

移動支援で利用できる外出の範囲は、市町村の判断に委ねられていますが、主に以下の活動が想定されています。

  • 社会生活上必要な活動:

    選挙の投票、銀行や郵便局での手続き、理髪店での散髪、冠婚葬祭への参加など。

  • 余暇活動(レジャー):

    映画鑑賞、ショッピング、旅行、ドライブ、コンサートやスポーツ観戦など、趣味や楽しみのための外出。 これが、移動支援の大きなメリットです。

  • 通学・通勤:

    学校や就労継続支援事業所などへの送迎や付き添いを、移動支援でまかなえる場合があります。 ただし、自治体によっては対象外となる場合もあるため確認が必要です。

⚠️ 注意

移動支援は、原則として、付き添い者がいれば外出できる範囲に限定されます。 危険な場所への外出や、ヘルパーの業務範囲を超えるような活動は支援の対象外となるため、事前に支援事業者と活動内容を詳細に確認する必要があります。


移動支援の利用方法とサービス提供の形態

移動支援を利用するためには、まずお住まいの市町村に申請し、支給決定を受ける必要があります。 その後のサービス提供の形態や費用負担についても理解しておきましょう。

利用開始までの4つのステップ

  1. 相談・申請:

    お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口に、移動支援を利用したい旨を相談し、申請書を提出します。

  2. 聞き取り調査:

    市町村の担当者や相談支援専門員が、外出時の状況や必要な支援の内容について聞き取り調査を行います。 これにより、支給の必要性や支給量(時間数)が判断されます。

  3. 支給決定・受給者証交付:

    審査を経て、利用が認められると、利用できる時間数や有効期間が記載された「受給者証」が交付されます。

  4. 事業者との契約・利用開始:

    受給者証に記載された支給量の範囲内で、移動支援のサービス提供事業所を選び、契約を結びます。 サービス提供事業所は、移動支援の研修を受けたヘルパーを派遣します。

サービス提供の形態(付き添いと運転)

移動支援のサービス提供形態は、主に「付き添い」「運転(送迎)」に分かれます。

  • 付き添い支援:

    ヘルパーが公共交通機関や徒歩での移動に同行し、移動時の介助、安全確認、緊急時の対応、外出先でのコミュニケーション支援などを行います。 これが最も一般的な利用形態です。

  • 運転(送迎)支援:

    事業所の車やヘルパーの自家用車(事前に許可が必要)を利用して、目的地までの送迎を行います。 リフト付き車両の利用や、車椅子からの乗降介助なども含まれます。 運転支援を行う事業所は限られているため、事前に確認が必要です。

費用負担と上限額

移動支援も、他の障害福祉サービスと同様に原則として1割が自己負担となります。

ただし、世帯の所得に応じて月額の上限額が設定されているため、上限額を超えて費用を負担することはありません。 低所得世帯や生活保護受給世帯は、上限額が0円となり、無料で利用できます。


移動支援を上手に活用する具体的な方法

移動支援の支給量は、月あたりの時間数で決まることが多く、時間を有効に使い、生活の質を向上させることが活用成功の鍵となります。

ヘルパーとの連携を深める

移動支援は、ヘルパーとマンツーマンで行動することが多いため、信頼関係と事前の情報共有が非常に重要です。

  • 事前の計画共有:

    目的地や移動ルート、外出先での活動内容、特に注意してほしい介助ポイントや声かけの仕方などを、ヘルパーに具体的に伝えておきましょう。

  • 「行動計画」の重要性:

    知的障害や精神障害があり、不測の行動(パニックなど)が予想される場合は、事前に「行動マニュアル」や「行動計画」を共有し、ヘルパーが冷静に対応できるように準備しておくことが大切です。

他のサービスとの組み合わせ戦略

移動支援を、他の障害福祉サービスと組み合わせて利用することで、支援効果を最大化できます。

  • 居宅介護との連携:

    自宅での身体介護は「居宅介護」、趣味やレジャーのための外出は「移動支援」と使い分けることで、それぞれのサービスを効率的に利用できます。

  • 通学・通所支援の活用:

    就労継続支援B型などの事業所に通所している場合、通所のための送迎を移動支援でまかない、日中の訓練は事業所で受けるといった組み合わせが可能です。 これにより、家族の送迎負担が軽減されます。

「移動支援があるおかげで、週末に趣味の美術館巡りができるようになりました。家族に頼る頻度が減り、気兼ねなく自分の時間を持てるようになったことが何より嬉しいです。」

— 精神障害のある利用者の声

✅ 成功のコツ

移動支援の支給時間数は、多くの場合、月ごとに限度があります。 特に重要な外出や、レジャーでの利用頻度を事前に計画し、短時間の用事は家族で協力するなど、メリハリをつけて利用することで、支給量を最大限に活用できます。


よくある質問と移動支援に関する注意点

移動支援は地域事業であるため、全国一律のサービスとは異なる特有のルールや注意点があります。 ここでは、利用者が抱きやすい疑問と、制度利用上の注意点をまとめます。

Q&A:制度利用のギモン解消

Q1. 移動支援でヘルパーの交通費は利用者負担ですか?

A. 原則として、ヘルパーの自宅からサービス提供場所までの往復にかかる交通費(移動時間を含む)は、利用者の負担とはなりません。 しかし、サービス提供中のヘルパーの移動にかかる費用(公共交通機関の運賃など)は、原則として利用者の実費負担となる場合が多いため、事前に確認が必要です。

Q2. 家族の外出にヘルパーも同行することはできますか?

A. 原則として、家族のための外出や、家族への援助は、移動支援の対象外です。 ただし、利用者の外出が主目的であり、家族の同行が利用者の安全確保や介護上不可欠であると認められる場合に限り、例外的に家族の同行が許可されることがあります。

Q3. ヘルパーによる送迎を利用する場合、ガソリン代はかかりますか?

A. ヘルパーの自家用車を利用して送迎を行う場合、ガソリン代などの「車両運行経費」は、サービスの単価には含まれていません。 そのため、事業所が定めた規定に基づき、実費として利用者が支払うことが一般的です。 金額は事業所によって異なるため、契約前に必ず確認しましょう。

地域性によるルールの違い

移動支援は地域生活支援事業であるため、市町村の財源や判断によって、サービス内容や支給基準に大きな差が出ます。

  • 支給量の違い:

    支給される時間数が、月10時間と定める自治体もあれば、30時間まで認める自治体もあります。 同じ市町村内でも、障害種別や年齢によって時間数の上限が異なることもあります。

  • 対象外となる活動:

    「通勤・通学」は移動支援の対象外と明確に定めている自治体もあれば、「就労移行支援事業所への通所は可」とする自治体もあります。 利用前に必ずお住まいの自治体のホームページなどで詳細な要綱を確認してください。


まとめ

  • 移動支援は、障害のある方の外出をサポートし、社会参加や地域生活を円滑にするための地域生活支援事業です。
  • 最大のメリットは、通院や公的手続きだけでなく、趣味やレジャーといった「必須ではない外出」も支援対象となる点です。
  • 利用には市区町村への申請と支給決定が必要で、支給量(時間数)は市町村独自のルールによって決定されます。
  • サービスは付き添いまたは運転(送迎)の形で提供され、費用は原則1割負担ですが、所得に応じた月額上限額が設定されています。

高橋 健一

高橋 健一

たかはし けんいち50
担当📚 実務経験 25
🎯 制度・法律🎯 医療・福祉制度

📜 保有資格:
社会福祉士

市役所の障害福祉課で20年間勤務し、制度の運用や窓口対応を担当してきました。「制度は難しい」と言われますが、知れば使える便利なツールです。行政の内側から見た制度のポイントを、分かりやすくお伝えします。

大学卒業後、地方自治体に入庁し、障害福祉課に配属されて20年。障害者手帳の交付、障害福祉サービスの支給決定、各種手当の申請受付など、幅広い業務を経験しました。行政職員として心がけていたのは、「制度を正確に伝えつつ、温かく対応する」こと。窓口に来られる方は不安を抱えています。制度の説明だけでなく、その方の状況に合わせた情報提供を大切にしてきました。退職後、民間の相談支援事業所に転職し、今度は「申請する側」の視点も理解できました。行政と民間、両方の経験を活かして、制度の仕組みだけでなく、「実際にどう使うか」まで伝えられるのが強みです。記事では、障害者総合支援法、障害者雇用促進法、各種手当など、制度の正確な情報を「難しい言葉を使わず」解説します。

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💭 福祉の道を選んだ理由

公務員として地域に貢献したいと思い、障害福祉課に配属されたことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

窓口対応で、制度を活用して生活が楽になったと感謝されたこと。行政と民間両方の視点を得られたこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

制度の正確な情報を「難しい言葉を使わず」伝えることを大切にしています。

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将棋、歴史小説

🔍 最近気になっているテーマ

マイナンバーと福祉制度の連携、自治体DXの進展

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