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起業に向いている性格、向いていない性格

📖 約42✍️ 伊藤 真由美
起業に向いている性格、向いていない性格
障害を持つ方が起業やフリーランスを検討する際、自身の性格や特性をどのように捉え、活用すべきかを解説したガイド記事です。一般的に弱点とされる「こだわりの強さ」や「内向性」を、ビジネスにおける「専門性」や「独自性」という強みに変える視点を提案。一方で、マルチタスクや突発的な変更への弱さといった課題については、ITツールの活用や仕組み化による具体的な克服方法を紹介しています。具体的な成功実例を交えながら、無理な拡大を目指さない「持続可能な起業スタイル」を提示し、当事者が自分らしい働き方を実現するための第一歩を後押しします。

障害を強みに変える!起業に向いている性格・向いていない性格

「会社に勤めるのがしんどい」「自分のペースで働きたい」と考えたとき、選択肢として浮かんでくるのが起業やフリーランスという道です。特に障害をお持ちの方にとって、既存の組織に自分を合わせるのではなく、自分に合った環境を自ら作り出す起業は、非常に魅力的な選択肢といえます。

しかし、起業には自由がある一方で、すべての責任を自分で負うという厳しさも併せ持っています。「自分には起業なんて無理だ」と諦めてしまう前に、まずはどのような性格や資質が起業において武器になり、逆にどのような点が課題になるのかを整理してみましょう。この記事では、起業の適性について多角的に分析し、障害特性をどのように事業に活かしていくべきかを詳しく解説します。

起業において「武器」になる性格とは

強いこだわりを専門性に変える力

特定の分野に対して並外れた集中力を発揮したり、徹底的に調べ上げたりする「こだわり」は、起業において最大の強みになります。組織の中では「融通が利かない」と評価されがちな特性も、ひとたび事業の世界に入れば「他社には真似できない専門性」や「圧倒的な品質」へと昇華されます。

例えば、プログラミングやデザイン、あるいは特定の嗜好品に関する深い知識など、自分が「これだけは誰にも負けない」と思えるものがある人は、起業に向いています。ニッチな市場であればあるほど、そのこだわりは顧客からの信頼に直結します。自分の特性を負の側面として捉えるのではなく、唯一無二の価値として再定義することが起業の第一歩です。

リスクを客観的に評価し慎重に進める力

起業家というと「大胆不敵なギャンブラー」のようなイメージを持たれがちですが、実際に長く事業を続けている人の多くは非常に慎重です。特に、不安を感じやすいという性格は、リスクを事前に察知し、対策を練るための防衛本能として機能します。

「もし体調を崩したらどうするか」「売上が止まったらどうするか」と、最悪の事態を想定して動くことは、事業の継続性を高めます。勢いだけで飛び出すのではなく、石橋を叩いて渡るような性格の人は、実は起業における失敗が少ない傾向にあります。自分の慎重さを「決断力のなさ」と卑下する必要はありません。それは事業を守るための大切なセンサーなのです。

一人の時間を楽しみ没頭できる性格

起業の初期段階やフリーランスとしての活動は、孤独との戦いでもあります。大勢の中で調和を保つよりも、一人で黙々と作業に没頭することを好む性格は、クリエイティブな仕事や事務的な基盤作りにおいて大きなアドバンテージとなります。周囲の雑音に惑わされず、自分の世界を深めていける力は、独創的なサービスを生み出す源泉です。

また、対人関係に疲れやすいという特性がある場合、ITを活用して非対面で完結するビジネスモデルを構築するなど、自分の性格を前提とした戦略を立てることができます。「社交的でないから起業は無理」というのは大きな誤解です。現代は、内向的な性格を活かしたまま成功できる仕組みが数多く存在しています。

💡 ポイント

自分の障害特性が、ビジネスの現場では「専門性」「リスク管理能力」「集中力」というポジティブな言葉に変換できないか考えてみましょう。

注意が必要な性格と乗り越えるための工夫

予定の変更に対して強いストレスを感じる

起業の世界は、予期せぬトラブルや急なスケジュール変更が日常茶飯事です。ルーチンワークを好み、突発的な出来事にパニックを起こしやすい性格の人は、最初は苦労するかもしれません。クライアントからの急な修正依頼や、システムトラブルなどに直面した際、フリーズしてしまう可能性があるからです。

これを克服するためには、あらかじめ「トラブル対応マニュアル」を自分で作っておくことが有効です。「こういう時はこうする」という手順を可視化しておくことで、脳の負担を減らすことができます。また、あえて「納期に余裕を持たせる」「急ぎの案件は受けない」といった自分ルールを徹底することで、性格的な弱点を仕組みでカバーすることが可能です。

マルチタスクが苦手でパニックになりやすい

経営者は、営業、実務、経理、事務など、複数のタスクを同時にこなさなければならない場面が多くあります。一つのことに集中しすぎると他を忘れてしまう、あるいは複数の情報が入ってくると混乱してしまう性格の場合、一人ですべてを抱え込むのは危険です。

対策として、ITツールを徹底的に活用して、自分の「外部脳」を作ることが挙げられます。タスク管理ツールでリマインダーを設定したり、経理を自動化したりすることで、自分が集中すべき仕事以外を「自動で動く仕組み」に委ねてしまいましょう。すべてを完璧にやろうとせず、「自分の苦手は外注するかツールに任せる」という割り切りが、起業を継続させるコツです。

自己評価が極端に低く価格設定ができない

自分に自信が持てず、「自分なんかがお金をもらっていいのだろうか」と考えてしまう性格の人は、ビジネスにおいて利益を出すことが難しくなります。不当に安い価格で仕事を受けてしまい、労働時間だけが増えて体調を崩すという悪循環に陥りやすいのです。

この場合、価格設定を「自分の感情」で決めるのではなく、「市場の相場」や「経費からの逆算」という客観的なデータで機械的に決めるようにしましょう。また、支援者や信頼できる第三者に、自分のサービスの価値を評価してもらうことも有効です。ビジネスは慈善事業ではなく、対等な価値交換であることを自分に言い聞かせる訓練が必要です。

⚠️ 注意

「向いていない性格」とは、起業をしてはいけないということではありません。その性格によって起こり得る問題を、どうやって「仕組み」で予防するかを考えることが大切です。

障害特性を活かした起業のスタイル

スモールビジネスとマイクロ法人

障害を持つ方が起業する際、最初から大きな規模を目指すのではなく、自分一人、あるいは少人数で運営する「スモールビジネス」から始めるのが理想的です。年商数百万から一千万程度の規模であっても、自分が無理なく働き続けられ、生活を維持できるだけの利益が出れば、それは立派な成功といえます。

法人化して「マイクロ法人」にすることで、社会的な信用を得つつ、自分の体調に合わせて仕事量を調整する自由を確保できます。無理な拡大を目指さない「持続可能な起業」は、ストレスを最小限に抑えたい性格の方に非常に向いています。自分のペースを第一に考えた事業設計こそが、障害特性を活かす最大の戦略です。

特化型・ニッチ戦略の重要性

何でも屋になるのではなく、「これだけは誰にも負けない」という狭い領域に特化する戦略は、多くのことに気を配るのが苦手な性格の方に最適です。例えば「障害者向けのバリアフリー旅行専門の相談」や「ADHDの方のための整理整頓サポート」など、自分の当事者性を活かしたビジネスです。

対象を絞り込むことで、マーケティングもシンプルになり、深い専門知識だけで勝負できるようになります。顧客側も「この分野ならあなたにお願いしたい」と指名してくれるようになり、無理な営業活動の必要がなくなります。自分の個性をエッジ(鋭さ)として磨き上げ、特定の層に刺さるサービスを作り上げましょう。

オンライン完結型のビジネスモデル

対面でのコミュニケーションや移動に負担を感じる性格であれば、最初からオンラインで完結するビジネスモデルを選択しましょう。Webデザイン、ライティング、オンライン秘書、カウンセリングなど、自宅から一歩も出ずに全国の顧客とつながることができます。

オンラインであれば、自分の体調や精神状態に合わせて、働く環境を自由にカスタマイズできます。照明の明るさや椅子の座り心地、周囲の音など、自分が最もリラックスできる状態で仕事ができることは、パフォーマンスを最大限に引き出すために不可欠です。「場所と時間の自由」を戦略的に取り入れることで、性格的なハンディキャップは解消されます。

起業スタイル 向いている性格・特性 メリット
フリーランス(受託型) 実務能力が高く、指示に忠実 初期費用がほぼゼロ、即金性が高い
特化型コンサル・講師 言語化が得意、深い知識がある 高い単価設定が可能、やりがいが大きい
コンテンツ販売・物販 自分の世界観がある、コツコツ型 働けない時間も収益が発生する可能性がある

起業前に準備しておくべき「心のインフラ」

レジリエンス(回復力)を高める習慣

起業をすると、自分の提案が断られたり、売上が予測を下回ったりすることが必ずあります。そのたびに「自分はダメだ」と深く落ち込んでしまうと、事業が止まってしまいます。失敗を「人格の否定」ではなく、単なる「データの蓄積」として捉え直す訓練が必要です。

日常的にマインドフルネスを取り入れたり、自分の感情を紙に書き出す「ジャーナリング」を行ったりして、感情を客観視する習慣をつけましょう。心が折れそうになった時に立ち戻れる場所や、自分を肯定してくれる言葉をストックしておくことは、技術的なスキル以上に起業家にとって重要な「心のインフラ」となります。

完璧主義を手放す勇気

障害を持つ方に多く見られるのが「完璧にできないならやらない方がいい」という完璧主義です。しかし、起業において完璧を求めすぎると、いつまでもサービスをリリースできなかったり、細部にこだわりすぎて納期を遅らせたりする原因になります。ビジネスの世界では、「60点の出来でいいから期限内に出す」ことが評価される場面が多いのです。

「まずはやってみて、後から修正すればいい」という柔軟な思考を持つことが、精神的な健康を守る鍵となります。完璧主義は、自分を追い詰める刃にもなります。起業という航海は長く続くものです。常に100点満点を目指すのではなく、平均して70点くらいで走り続けられる「しなやかさ」を大切にしましょう。

「助けて」と言える関係性作り

一人で起業するとしても、完全に一人で生きていくわけではありません。むしろ、自分の弱点を知り、それを補ってくれる人や制度に頼る力(受援力)こそが、障害者の起業成功を左右します。税理士、行政書士、相談支援専門員、あるいは起業仲間など、困ったときにすぐに相談できるネットワークを構築しておきましょう。

「自分ですべてやらなければならない」という思い込みは、早めに捨ててください。得意なことは自分でやり、苦手なことは人に頼む。このギブ・アンド・テイクがうまく回るようになると、起業は非常に楽になります。周囲の助けを借りることは、決して恥ずかしいことではなく、経営者としての重要な判断能力の一つなのです。

✅ 成功のコツ

起業前に、自分の「強み」と「弱み」を書き出し、弱みをカバーするための相談先リストを作っておきましょう。

実例:障害特性を活かして起業した人たち

ASD特性を活かした「徹底調査型」マーケター

あるASD(自閉スペクトラム症)の男性は、企業のマーケティングリサーチを行う事業で起業しました。彼は一度調べ始めると、何百ページものデータや海外の論文まで読み漁り、徹底的に分析しなければ気が済まない性格でした。会社員時代は「作業が遅い」「細かいことばかり気にしすぎる」と叱られていた特性です。

しかし、起業後はその「徹底した分析」が圧倒的な差別化要因となりました。顧客からは「ここまで深く調べてくれる人は他にいない」と高く評価され、高単価な案件を次々と受注しています。彼は、自分のこだわりを「徹底したリサーチ力」というサービスとしてパッケージ化することで、かつての欠点を最大の武器に変えたのです。

ADHD特性を活かした「多角的」クリエイター

ADHD(注意欠如・多動症)の女性は、興味が次々と移り変わり、一つの場所にじっとしていられない性格でした。彼女はあえて特定の職種に絞らず、動画編集、イラスト、ライティングなどを組み合わせた「マルチクリエイター」として活動を始めました。一つのプロジェクトに飽きたら別のプロジェクトを進めるというスタイルをとったのです。

複数のスキルを持っているため、顧客の要望にワンストップで応えることができ、非常に重宝されています。彼女は、移り気な性格を「多才さとスピード感」として捉え直し、複数の収入源を持つことでリスク分散も果たしています。定型的な働き方では評価されなかった「多動性」が、変化の激しいWeb業界では強みとして機能しています。

身体障害を活かした「当事者目線」のコンサルタント

車椅子ユーザーの女性は、店舗や公共施設のバリアフリーチェックを行うコンサルタントとして起業しました。彼女は自分の移動の困難さを単なる不便として終わらせず、「どうすれば改善できるか」という視点で記録し続けました。行政や企業にとって、当事者のリアルな声は非常に貴重なデータです。

彼女の仕事は、単に段差を指摘するだけでなく、障害者の購買行動や心理まで含めたアドバイスを行うため、非常に満足度が高いのが特徴です。自分の身体状況を「市場価値のある情報」として再定義したことで、彼女は自分にしかできない仕事を作り出しました。障害そのものが、彼女にとって最高の営業資材となっているのです。

「会社員時代は、自分の欠点ばかりが目について辛かったんです。でも起業してみたら、その欠点が『こだわり』や『専門性』としてお客様に喜ばれるようになりました。性格を変えるのではなく、使い道を変えるだけで人生は変わるんだと実感しています。」

— 独立3年目のフリーランス、Kさん


よくある質問と具体的な対処法

Q1. 精神的に不安定な時期があるのですが、起業できますか?

起業は可能です。むしろ、波があるからこそ、調子の良い時に集中して働き、悪い時には休める環境を自分で作れる起業は、精神障害の方に向いている面もあります。ただし、クライアントワーク(受託)ばかりだと納期に追われて悪化する可能性があるため、少しずつ「自分が動かなくても収益が出る仕組み(ストック型ビジネス)」を混ぜていくのが、安定して続けるためのコツです。

Q2. 資金が全くないのですが、何から始めればいいですか?

まずは「在庫を持たない」「オフィスを借りない」「自分一人のスキルだけでできる」サービスから始めましょう。パソコン一台あれば始められる仕事はたくさんあります。また、障害者向けの起業支援金や助成金を設けている自治体もありますので、地元の商工会議所や障害福祉窓口に相談してみてください。最初は副業から始めて、手応えを感じてから本格的に独立する「低リスクな起業」をお勧めします。

Q3. 営業が苦手なのですが、仕事は取れますか?

今は、自分からガツガツ営業しなくても仕事を得る方法はたくさんあります。SNSやブログで自分の専門知識を発信し、興味を持ってくれた人から問い合わせをもらう「インバウンド営業」の仕組みを作りましょう。また、クラウドソーシングサイトを活用すれば、提示されている案件に応募する形で仕事を得られます。直接の対話が苦手なら、テキストベースのやり取りだけで完結するルートを構築すれば問題ありません。

Q4. 失敗したらどうしよう、という恐怖に勝てません

失敗しても、命まで取られることはありません。日本にはセーフティネットがあります。最悪の場合、生活保護や障害年金という支えがあることを知っておくことは、挑戦するための「心の安全装置」になります。「失敗しても元の場所(または別の道)に戻れる」という確信があれば、恐怖心は和らぎます。まずは、失っても痛くない程度の小さな金額と時間からテストしてみるのが、恐怖をコントロールする最善の方法です。

💡 ポイント

起業は「成功か失敗か」の二択ではありません。試行錯誤を繰り返し、自分だけの「心地よい働き方」を微調整していくプロセスそのものが起業です。


まとめ

起業に向いている性格とは、決して「完璧な超人」のそれではありません。自分の凹凸を理解し、凹んだ部分を仕組みで埋め、出っ張った部分を尖らせて価値に変えられる人こそが、真の起業家といえます。障害特性によって社会生活に困難を感じているのであれば、それは裏を返せば「既存の枠組みには収まらない強力な個性」を持っているということです。

性格は無理に変える必要はありません。それよりも、その性格を活かせる土俵はどこか、その性格を補ってくれるツールや人はどこにいるかを探すことにエネルギーを使いましょう。自分を環境に合わせるのではなく、環境を自分に合わせる。起業という選択肢は、あなたにその力を与えてくれます。まずは、自分の「好き」や「こだわり」を、小さな一歩として形にしてみることから始めてみませんか。

まとめ

  • 「こだわり」や「内向性」は、起業において「専門性」や「深い集中力」という強力な武器に変わります。
  • マルチタスクや変化への弱さは、ITツールの活用や事前のマニュアル化といった「仕組み」で徹底的にカバーしましょう。
  • 最初はスモールビジネスから始め、自分の体調やペースを第一に考えた「持続可能な事業設計」を目指すことが成功の鍵です。
  • 一人の力で完結させようとせず、支援者や専門家、起業仲間など「助けてと言えるネットワーク」を事前に構築しておきましょう。

伊藤 真由美

伊藤 真由美

いとう まゆみ33
担当📚 実務経験 10
🎯 就労支援🎯 進路支援

📜 保有資格:
特別支援学校教諭免許、社会福祉士

特別支援学校で5年教員を務めた後、就労継続支援B型事業所で5年勤務。「学校から社会へ」の移行支援と、「自分のペースで働く」を応援します。進路選択や作業所選びの情報をお届けします。

大学で特別支援教育を学び、卒業後は特別支援学校の教員として5年間勤務。知的障害や発達障害のある生徒たちの進路指導を担当する中で、「卒業後の支援」の重要性を痛感しました。そこで教員を辞め、就労継続支援B型事業所に転職。現在は生活支援員として、様々な障害のある方が自分のペースで働く姿を日々見守っています。特に大切にしているのは、「働くことがすべてではない」という視点。一般就労が難しくても、作業所での仕事や日中活動を通じて、生きがいや居場所を見つけることは十分可能です。記事では、特別支援学校卒業後の進路選択、就労継続支援A型・B型の違い、作業所での実際の仕事内容など、「自分らしい働き方・過ごし方」を見つけるための情報を発信します。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

特別支援教育を学び、「卒業後の支援」の重要性を感じたことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

作業所での仕事や日中活動を通じて、生きがいや居場所を見つけた方々を見守ってきたこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

「働くことがすべてではない」という視点を大切に、自分らしい過ごし方を見つける情報を発信します。

🎨 趣味・特技

ハンドメイド、音楽鑑賞

🔍 最近気になっているテーマ

発達障害のある方の就労支援、工賃向上の取り組み

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