起業までのステップをわかりやすく解説|アイデアづくりから開業まで

起業までのステップをわかりやすく解説|アイデアづくりから開業まで
「自分の特性に合わせて働きたい」「満員電車や人間関係のストレスなく、自宅で能力を発揮したい」—。こうした願いを叶える「起業」という選択肢に、関心を持つ障害のある方は増えています。しかし、いざ「起業しよう」と思っても、「まず何から手をつけたらいいのかわからない」と立ち止まってしまうケースは少なくありません。
起業は、突発的なアイデアで始めるものではなく、計画的かつ段階的に進めていく必要があります。この記事では、特に低リスクで始められる「スモール起業」を目指す障害のある方のために、最初のアイデアづくりから、税務署に提出する「開業届」までの具体的なステップを、初心者にもわかりやすく解説します。このロードマップに沿って一つずつ課題をクリアすることで、不安を自信に変え、着実にあなたらしい働き方を実現していきましょう。
ステップ1:アイデアづくりと自己分析
起業の成功は、良いアイデアから始まります。しかし、それは「世界を変える」ような壮大なアイデアである必要はありません。大切なのは、あなたの「強み」と「市場のニーズ」が交差する点を見つけることです。
障害特性を強みに変えるアイデア発想法
まずは、ご自身の障害特性や、これまで「苦手」と感じてきた事柄を、ポジティブな「強み」として捉え直す自己分析から始めましょう。これが、他社には真似できない独自のビジネスアイデアの源泉となります。
- 没頭できること:時間を忘れて熱中できる趣味や特定の知識は、その分野の専門家としてのサービス提供に繋がります。
- 人から頼られること:「整理が得意」「文章作成が早い」など、他者から褒められたり、依頼されたりした経験をリストアップします。
- 特性が活きる仕事:聴覚過敏で細かい音に気づく特性を、高品質な文字起こしや音声データのチェック業務に活かすなど、特性を強みとして逆転させます。
この段階で、就労移行支援事業所などの専門家に相談し、客観的な適性診断(アセスメント)を受けることは、アイデアの方向性を定める上で非常に有効です。
ターゲットと市場のニーズを明確化
あなたのアイデアが「商品」として成立するためには、「誰のどんな悩みを解決できるか」を明確にする必要があります。これが「市場のニーズ」です。
例えば、「障害のある当事者ならではの視点を活かした情報提供」というアイデアであれば、ターゲットは「同じ障害を持つ方やその家族」であり、解決できる悩みは「当事者だからこそ知りたい、生きた情報へのアクセス」となります。このターゲットが、お金を払ってでもその情報を得たいと思うか、という視点が重要です。
💡 ポイント
アイデアの市場調査は、クラウドソーシングサイトで「どんな仕事が募集されているか」をリサーチしたり、SNSでターゲット層の「どんな悩み」が話題になっているかをチェックしたりすることで行えます。
ステップ2:事業計画と資金準備
良いアイデアが見つかったら、それを具体的な行動計画に落とし込む作業に移ります。「事業計画書」の作成と、「資金調達」の準備です。
現実的な事業計画書の作成
事業計画書は、外部へのアピールだけでなく、「本当に事業として成り立つのか」を自分自身が確認するための重要なツールです。特に、障害のある方は体調の波を考慮した現実的な計画が求められます。
事業計画書には、以下の項目を盛り込みます。
- 目標設定:月間売上目標、年間目標(体調を考慮した無理のない金額)
- 事業内容:提供するサービス、ターゲット顧客、料金設定
- 収支計画:初期費用、毎月の経費(通信費、ソフト代など)、売上見込み
- 自己管理計画:体調不良時の対応策、週に確保する休息時間
収支計画では、「最低限、生活できるライン」を明確にし、その金額を達成するために必要な作業量やクライアント数を具体的に計算しましょう。
低リスクな資金調達戦略
スモール起業は低リスクで始めることが原則ですが、PCやソフト代、スキル習得のための費用など、初期投資は必要です。この段階で、公的な支援制度を積極的に活用します。
| 資金調達方法 | 特徴 |
|---|---|
| 自己資金 | 最もリスクが低い。まずは生活費6ヶ月分を目安に貯蓄する。 |
| 補助金・助成金 | 返済不要。創業支援系の補助金などを検討する。 |
| 公的融資 | 日本政策金融公庫の優遇融資(低金利)。返済計画が必須。 |
補助金や融資の手続きは複雑なため、地域の商工会議所や、就労移行支援事業所の専門家に相談しながら進めるのがスムーズです。
ステップ3:スキルアップと環境整備
アイデアと計画ができても、それを提供するスキルがなければ仕事は獲得できません。また、働きづらさを解消するために、自分にとって最適な作業環境を整えることも重要です。
必須スキルの習得とポートフォリオ作成
フリーランスとして働くためには、専門スキルだけでなく、クライアントと信頼関係を築くためのビジネススキルも不可欠です。
- 専門スキル:Webライティング、デザイン、プログラミングなどの技術を習得します。就労移行支援事業所などでの体系的な訓練が効果的です。
- ビジネススキル:契約、請求書作成、経理の基礎、そしてクライアントを安心させるための報連相(報告・連絡・相談)能力を磨きます。
- ポートフォリオ:スキル習得の過程で、クライアントに見せられる具体的な実績集(Webサイトやサンプル作品)を作成します。
実績のない初期段階では、ポートフォリオがあなたの能力を証明する唯一の材料となります。質の高いポートフォリオを作成することが、最初の仕事獲得に繋がります。
特性を考慮した作業環境の構築
在宅での起業は、働く環境を自由に設計できるのが最大のメリットです。ご自身の障害特性に合わせた環境を整えましょう。
- 感覚刺激の調整:聴覚過敏がある場合はノイズキャンセリング機能、視覚過敏がある場合は調光可能な照明やブルーライト対策を施します。
- 身体的な配慮:腰痛や疲労を軽減するため、エルゴノミクス(人間工学)に基づいた椅子やキーボード、マウスなどを導入します。
- 集中スペースの確保:仕事専用のスペースを設け、家族の理解を得て、その空間では集中して作業できる環境を維持します。
✅ 成功のコツ
スキルアップの費用(専門ソフトや訓練費用)は、補助金の対象となる場合もあります。事前に支援機関に相談し、活用できる制度がないか確認しましょう。
ステップ4:開業手続きと事業のスタート
準備が整ったら、いよいよ事業を正式にスタートさせるための行政手続きに入ります。個人事業主として働くために、最低限必要な手続きは「開業届」の提出です。
税務署への開業届提出
事業を始めてから1ヶ月以内に、税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」(開業届)を提出します。この届出を提出することで、あなたは正式に「個人事業主」として認められます。
開業届と同時に、「青色申告承認申請書」も提出しましょう。青色申告は、税金面で大きな優遇(最大65万円の特別控除など)を受けられる制度であり、特に収入が不安定な起業初期に、経済的な負担を大きく軽減してくれます。手続きは国税庁のWebサイトから簡単に書類をダウンロードでき、オンラインでの提出も可能です。
社会保険・年金の手続き
会社員を退職し、個人事業主になると、社会保険と年金の手続きが必要です。
| 項目 | 会社員(厚生年金・健保) | 個人事業主 |
|---|---|---|
| 健康保険 | 健康保険組合 | 国民健康保険 |
| 年金 | 厚生年金 | 国民年金 |
これらの手続きは、お住まいの市区町村役場の窓口で行います。特に、障害年金を受給している方は、事業所得と年金の関係について、年金事務所や社会保険労務士に事前に相談し、所得制限のボーダーラインを確認しておくことが重要です。
最初の仕事獲得と実績づくり
開業届を提出したら、いよいよ仕事の獲得に動きます。
- クラウドソーシングサイトに登録し、プロフィールとポートフォリオを公開する。
- 最初は低単価でも、まずは「実績と評価」を得ることを最優先に簡単な案件に応募する。
- 仕事が獲得できたら、納期を厳守し、クライアントが求める以上の品質で納品する。
最初の数件で良い評価を得ることが、次の仕事と単価アップに繋がる、最も重要なステップです。
よくある質問(Q&A)と専門家への相談
起業を目指す方が特に不安に思う点と、今後のアクションについてまとめました。
障害年金をもらいながら起業できますか?
はい、原則として可能です。障害年金は、働くこと自体を理由として支給停止されるものではありません。
ただし、20歳前傷病による障害基礎年金など、一部の年金には「所得制限」が設けられています。この所得は、起業による「収入」から「経費」や「控除」を引いた後の金額です。そのため、経費や青色申告控除をうまく活用することで、所得を調整することが可能です。必ず、事前に専門家(社会保険労務士など)に相談しましょう。
苦手な経理は誰に頼めますか?
起業家がすべての業務を自分でこなす必要はありません。特に経理や税務は、専門知識が必要で負担が大きい業務です。
日々の記帳は会計ソフトを使えば効率化できますが、確定申告や複雑な税務相談は、税理士に依頼することをおすすめします。費用はかかりますが、本業に集中でき、節税面でのアドバイスも受けられるため、結果的に事業の成長に繋がります。
まとめ
- 起業は、自己分析を通じて障害特性を「強み」に変えるアイデアづくりから計画的にスタートしましょう。
- 事業計画書には、体調の波を考慮した現実的な収支計画と、生活予備費の確保を盛り込むことが重要です。
- スキルアップには就労移行支援事業所を積極的に活用し、開業時には青色申告承認申請書を忘れずに提出しましょう。

菅原 聡
(すがわら さとし)38歳📜 保有資格:
職業指導員、キャリアコンサルタント、精神保健福祉士
就労移行支援事業所で10年以上、障害のある方の「働く」を支援してきました。一般就労への移行支援から就労継続支援まで、幅広い経験をもとに、「自分に合った働き方」を見つけるための情報をお届けします。
大学で社会福祉を学び、卒業後すぐに就労移行支援事業所に就職。当初は「障害があっても一般企業で働けるんだ」という驚きと感動の連続でした。これまで150名以上の方の就労支援に携わり、その8割が一般企業への就職を実現。ただし、「就職がゴール」ではなく、「長く働き続けられること」が本当のゴールだと考えています。印象的だったのは、精神障害のある方が、障害をオープンにして自分のペースで働ける職場を見つけ、「初めて仕事が楽しいと思えた」と言ってくださったこと。その笑顔が忘れられません。記事では、就労移行支援と就労継続支援の違い、企業選びのポイント、障害者雇用の現実など、実際の支援経験に基づいた実践的な情報をお伝えします。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学で社会福祉を学び、「障害があっても一般企業で働ける」という可能性に感動したことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
精神障害のある方が、自分のペースで働ける職場を見つけ、「初めて仕事が楽しいと思えた」と言ってくださったこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
「就職がゴール」ではなく、「長く働き続けられること」を大切に、実践的な情報を発信します。
🎨 趣味・特技
ランニング、ビジネス書を読むこと
🔍 最近気になっているテーマ
リモートワークと障害者雇用、週20時間未満の短時間雇用





