兄弟・姉妹に理解されない…その理由と向き合い方

兄弟・姉妹に理解されない…その理由と向き合い方
「どうして自分の苦しさを兄弟はわかってくれないんだろう」「親はいつも障害のあるきょうだいばかり気にかけて、自分は無視されていると感じる」「特性を理解してもらえず、余計に孤独を感じる」
兄弟・姉妹(きょうだい)の関係は、家族の中でも特別なものです。同じ屋根の下で育ったにもかかわらず、障害特性を持つご本人と、そうでないきょうだいの間で、理解や立場の大きな隔たりを感じることは少なくありません。このすれ違いは、ご本人にとって深い孤立感につながり、きょうだいにとっても大きなストレスとなります。
この記事では、兄弟・姉妹がお互いを理解できないと感じる構造的な理由を、それぞれの立場から深く掘り下げます。そして、この難しい関係性を見つめ直し、お互いを尊重し合える関係を築くための具体的な向き合い方、そして外部支援の活用方法を詳しく解説します。この記事を通じて、きょうだい間に新たな理解の光が差し込むきっかけを見つけてください。
1.兄弟・姉妹間の「理解の隔たり」を生む構造的要因
ご本人ときょうだいの間に生じる理解の隔たりは、感情論ではなく、家族内の役割や情報の非対称性といった構造的な要因によって生み出されています。この構造を理解することが、円滑なコミュニケーションへの第一歩です。
要因1:親からの「情報の非対称性」と過剰な期待
多くの場合、親は障害のある子の特性や必要な配慮について、そうでないきょうだいに対して十分な情報提供をしていないことがあります。「難しい話をしてもわからないだろう」「余計な心配をかけたくない」といった親心から、特性に関する情報を共有しないことで、きょうだいはご本人の行動の理由を理解できません。
情報がないため、きょうだいはご本人の特性による行動を「わがまま」「努力不足」と誤解しがちです。また、親から「あなたがお手本になりなさい」「将来的にはあなたが見てあげてね」といった過剰な期待や責任を負わされ、その重圧がご本人への反発心につながることもあります。
要因2:きょうだい特有の「差別意識」と「自己犠牲」
障害のある子のきょうだい(シブリング)は、幼い頃から親の関心がご本人の支援に集中する環境で育つため、以下のような特有の心理的負担を抱えることがあります。
- 差別意識: 親に負担をかけまいと、自分の要望や悩みを我慢する「良い子」を演じ、自分を犠牲にすることが習慣化します。
- 孤独感: 自分の悩みは誰にもわかってもらえないと感じ、強い孤独感を抱く。
- きょうだい児としての役割: 幼少期から「小児介護者」のような役割を求められ、自分の人生よりも家族の支援を優先すべきという無意識のプレッシャーを感じる。
これらの負担は、ご本人への「羨望」や「反感」として現れ、理解の妨げとなります。これはきょうだいの性格ではなく、家族システムが生んだ構造的なストレスなのです。
要因3:ご本人からの「コミュニケーションの伝達ミス」
障害特性を持つご本人側にも、きょうだいとのコミュニケーションにおける困難さがあります。特に、特性による感情表現や要望の伝達ミスは、理解の隔たりを大きくします。
- 感情表現の困難: 辛い気持ちや助けを求める気持ちを、適切な言葉で伝えられず、代わりに不適切な行動(例:暴言、自傷行為)として表現してしまい、きょうだいを遠ざけてしまう。
- 論理的な説明の困難: なぜその行動が必要なのか、なぜ親の配慮が必要なのかを、論理的に説明できず、「わかってくれない」と諦めてしまう。
きょうだいは、ご本人の行動の裏にある特性や苦しさを理解できず、「またわがままを言っている」と解釈し、距離を取ってしまうことにつながります。
2.ご本人ができる「理解への橋渡し」のための工夫
きょうだいに理解を求める上で、ご本人ができる「橋渡し」の工夫があります。それは、感情的な訴えではなく、論理的で客観的な事実に基づいたコミュニケーションを心がけることです。
工夫1:特性を「客観的な事実」として言語化する
きょうだいに特性を説明する際は、「私は病気だから」「私はこれが苦手だから」といった感情的な言葉ではなく、客観的な事実や専門家の言葉を用いて説明する習慣をつけましょう。
| 感情的な訴え(NG) | 客観的な事実(OK) |
|---|---|
| 「うるさいから静かにしてよ!」 | 「私には聴覚過敏の特性があって、この音量だとパニックになるから、イヤホンを使ってもらえると助かる」 |
| 「わかってもらえない!」 | 「私には非言語コミュニケーションの読み取りが難しいから、曖昧な言い方ではなく、具体的に話してほしい」 |
特性を「自分の困りごと」として言語化することで、きょうだいはそれを「わがまま」ではなく、「具体的な対処が必要な問題」として受け取りやすくなります。
工夫2:親との「二者関係」から「三者関係」への移行を促す
ご本人と親との間で、きょうだいの知らない秘密や暗黙のルールが多いほど、きょうだいは疎外感を覚えます。可能な範囲で、親との関係を、きょうだいを含めた「三者関係」へと移行させる工夫が必要です。
- 親との話し合いや支援計画に、きょうだいも同席してもらう時間を作る。
- 親に頼っているタスクの一部を、きょうだいにも協力を仰ぐ(簡単なこと、得意なことに限る)。
- 親との会話の内容を、ご本人からきょうだいに簡潔に報告する。
この移行により、きょうだいは「自分も家族の一員として頼られている」「情報から締め出されていない」という意識を持てるようになります。
工夫3:「感謝」と「リスペクト」を言葉で伝える習慣
きょうだいは、親からの期待や責任の重さから、無意識に「頑張りすぎている」ことが多いです。ご本人が、きょうだいの存在や協力に対して定期的に「感謝」と「リスペクト(尊敬)」を言葉で伝えることは、きょうだいの心の負担を和らげます。
✅ 成功のコツ
「いつもありがとう」だけでなく、「あなたが〇〇してくれたおかげで、私は助かったよ」というように、具体的な行動に対する感謝を伝えましょう。きょうだいの努力が報われていると感じられます。
言葉での感謝は、きょうだいが持つ「自己犠牲」の感情を癒し、ご本人への理解を深めるための土台となります。
3.親が担うべき「きょうだい児」のストレス軽減と支援
きょうだい間の理解を深める上で、親御さんの役割は極めて重要です。親が、きょうだい特有のストレスを理解し、その負担を軽減するための工夫を行う必要があります。
工夫1:きょうだいの「個別の時間」を確保する
親は、障害のある子だけでなく、きょうだい一人ひとりの個性や興味にも意識的に関心を持つ習慣をつけましょう。週に一度でも構いませんので、「きょうだいときょうだいのための時間」を確保します。
- 親と一対一の時間: きょうだいの興味のある活動(スポーツ、映画、買い物など)に付き合い、障害特性とは全く関係のない会話をする時間を作る。
- きょうだいの休息時間: 療育や支援中に、きょうだいが自由に過ごせる時間(ゲーム、趣味など)を確保する。
親からの関心と承認を得ることで、きょうだいは「自分は無視されていない」と感じ、ご本人への反発心を軽減できます。
工夫2:「感情の吐き出し口」ときょうだい支援の活用
きょうだいが抱えるストレスや不満は、親に話すことでさえ「負担をかける」と遠慮し、蓄積されがちです。親は、きょうだいが第三者に感情を吐き出せる機会を積極的に提供しましょう。
具体的には、地域の「きょうだい児支援プログラム」やピアサポートグループへの参加を促します。そこでは、同じ悩みを抱える仲間と共感し合い、専門的な支援を受けることができます。親が「あなたの気持ちは大切だよ」というメッセージを伝えることが重要です。
⚠️ 注意
きょうだいを「介護者」や「支援者」として訓練することは避けましょう。彼らは家族であり、支援は福祉サービスなど外部資源に頼るべきであることを明確に伝えましょう。
工夫3:責任の「境界線(バウンダリー)」を明確にする
親は、きょうだいに対して、「あなたの責任はどこまでか」という境界線を明確に伝える習慣をつけましょう。「あなたの将来は、きょうだいの面倒を見ることではない」と明確に伝えることで、将来への不安を大きく軽減できます。
責任の切り分けの例:
- 親の責任: 経済的な支援、福祉サービスの契約・管理、介護の計画。
- きょうだいの責任: 精神的なサポート、一緒に楽しむ時間、連絡を取り合うこと(強制ではない)。
この明確な境界線が、きょうだいの人生を自分のものとして歩むための「許可」となります。
4.外部支援を活用した「関係性の再構築」
兄弟・姉妹間の理解や協力体制を築くためには、家族外の客観的な視点や専門的な介入が非常に有効です。遠慮せず、外部の資源を積極的に活用しましょう。
サポート1:家族カウンセリングによる「対話の仲介」
ご本人ときょうだいの間で感情的な対立が繰り返される場合、家族カウンセリングの活用をお勧めします。専門家(臨床心理士、公認心理師など)が仲介役となることで、感情のぶつけ合いを避け、お互いの本音を安全に伝えることができます。
カウンセラーは、きょうだい特有のストレスや、ご本人の特性によるコミュニケーションの困難を理解し、それを翻訳する役割を果たしてくれます。この場で、親子も含めた三者で、新しい家族のルールや役割分担を決めることも可能です。
サポート2:「レスパイト(休息)支援」による家族の冷却
親やきょうだいの疲労が限界に達している状況では、関係を改善しようと試みても、感情的な衝突にしかなりません。まずは、短期入所(ショートステイ)などのレスパイト支援を利用し、家族全員が物理的な距離を取り、心を休ませる時間を確保しましょう。
家族がリフレッシュすることで、ご本人への関わり方にも余裕が生まれ、負の連鎖を断ち切ることができます。支援者は、レスパイト支援の情報を積極的に提供し、利用を強く促しましょう。
サポート3:ピアサポートと当事者会の活用
きょうだい児支援の団体や、ご本人向けの当事者会は、共通の体験を持つ人たちが集まる貴重な場所です。
- ご本人: 当事者会で、同じ特性を持つ仲間と、きょうだいとの関わり方を話し合う。
- きょうだい: ピアサポートグループで、自分の悩みは自分だけではないという安心感と、具体的な対処法を学ぶ。
専門家による理論だけでなく、同じ立場の人の「生きた知恵」に触れることで、関係を乗り越えるための勇気を得ることができます。
まとめ
兄弟・姉妹間の「理解されない」という悩みは、決して特殊なものではありません。親からの情報の非対称性や、きょうだい特有のストレスといった構造的な問題が深く関わっています。お互いに歩み寄り、外部の支援を活用することで、より尊重し合える関係を築くことができます。
- ご本人は、特性や困りごとを客観的な「事実」として言語化し、きょうだいに伝える工夫をしましょう。
- 親は、きょうだいの「個別の時間」と「責任の境界線」を明確にし、彼らのストレスを軽減しましょう。
- 家族カウンセリングやきょうだい児支援、レスパイトといった外部支援を積極的に活用し、家族全員の心身の健康を優先しましょう。
最も大切なのは、お互いの存在を「重荷」としてではなく、「大切な家族」として尊重し合うことです。一歩ずつ、信頼関係を再構築していきましょう。

酒井 勝利
(さかい かつとし)38歳📜 保有資格:
作業療法士、福祉住環境コーディネーター
作業療法士として病院・施設で12年勤務。「できないこと」を「できる」に変える福祉用具や環境調整の専門家です。車椅子、杖、リフトなどの選び方から、住宅改修まで、実践的な情報をお届けします。
リハビリテーション専門学校を卒業後、総合病院で5年、障害者支援施設で7年、作業療法士として勤務してきました。特に力を入れているのは、福祉用具を活用した「できることを増やす」支援。例えば、片麻痺がある方が自助具を使って料理ができるようになったり、車椅子の選び方一つで外出の頻度が劇的に変わったりします。印象的だったのは、重度の身体障害がある方が、適切な電動車椅子と環境調整により、念願だった一人での買い物を実現したこと。「自分でできる」という自信が、その方の人生を大きく変えました。記事では、福祉用具の選び方、住宅改修のポイント、補助金の活用方法など、「生活をより便利に、より自立的に」するための情報を発信します。
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リハビリの仕事を通じて、「できないこと」を「できる」に変える喜びを知ったことがきっかけです。
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重度の身体障害がある方が、適切な電動車椅子で一人での買い物を実現したこと。
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