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障害者が起業するときに知っておきたい制度・支援一覧

📖 約57✍️ 菅原 聡
障害者が起業するときに知っておきたい制度・支援一覧
「自分のペースで働きたい」「持っているスキルを活かして起業したい」と考えている障害のある方が知っておくべき、国や自治体による手厚い支援制度を徹底解説します。この記事では、起業の準備段階から資金調達、事業運営、そして税制優遇まで、フェーズごとに利用できる公的支援を網羅的にご紹介。特に、事業計画の策定をサポートする就労移行支援事業所の活用方法や、初期費用を抑えるための補助金・融資制度に焦点を当てます。これらの支援を賢く活用することで、起業に伴うリスクや不安を大幅に軽減し、成功への道を力強く歩み出すことが可能になります。自分らしい働き方を実現するための一歩として、ぜひご活用ください。

障害者が起業するときに知っておきたい制度・支援一覧

「誰にも気を遣わず、自分のペースで働きたい」「障害特性を強みにして、社会に役立つ事業を始めたい」— 起業や独立は、障害のある方にとって、働き方の自由を大きく広げる魅力的な選択肢です。しかし、安定した会社員生活とは異なり、資金面や事業運営に関する不安がつきまとうことも事実です。

ご安心ください。日本では、障害のある方の起業を積極的に支援するための様々な公的制度が整備されています。これらの制度を正しく理解し、活用することで、起業のリスクを最小限に抑え、成功への確度を高めることができます。この記事では、起業の準備段階から事業の成長フェーズまで、障害のある方が知っておきたい支援制度や相談窓口を詳しくご紹介します。制度の知識を力に変えて、夢の実現に向けて一歩を踏み出しましょう。


準備段階の強い味方:スキルと計画のサポート制度

起業を成功させるためには、確固たるスキルと、実現可能な事業計画が不可欠です。障害のある方の起業準備を支援する制度は、主に福祉分野と職業訓練分野にあります。これらは、無料で専門的なサポートを受けられるため、まず最初に検討すべき重要な制度です。

就労移行支援事業所の起業家育成コース

「就労移行支援事業所」は、一般企業への就職を目指す障害のある方をサポートする福祉サービスですが、近年では起業やフリーランスを目指す方向けの特別なコースを提供している事業所が増えています。

これらのコースでは、起業に必要なビジネススキルの習得はもちろんのこと、事業計画書の作成支援、マーケティングの基礎、会計・税務の知識、そして自己管理能力の向上など、多岐にわたる訓練を受けられます。体調の波や障害特性に合わせた事業モデルの構築について、専門のスタッフが相談に乗ってくれる点も大きなメリットです。

  • 事業計画の具体的なアドバイスを受けられる。
  • 起業に必要なスキル(ITスキル、簿記など)を無料で学べる。
  • 訓練期間中も、障害福祉サービスとして利用できる。

💡 ポイント

就労移行支援は原則2年間利用可能です。この期間を最大限に活用し、リスクゼロで起業の準備を完了させることが成功の鍵です。

障害者職業能力開発校と訓練支援

より専門的なスキルを集中して身につけたい場合は、「障害者職業能力開発校」が提供する職業訓練の利用を検討しましょう。ここでは、プログラミング、Webデザイン、DTPなどのIT・クリエイティブ系の専門知識を無料で、または低額で習得できます。

起業の基盤となるスキルを身につけることは、事業の競争力を高めるために不可欠です。訓練期間や内容はコースによって異なりますが、訓練を通じて得たスキルは、個人事業主としてすぐに活かせるものがほとんどです。

「私は能力開発校でWebデザインを学び、卒業後にフリーランスとして独立しました。初期のスキル不足を解消できたことが、クライアントからの信頼を得る第一歩となりました。」

— 起業経験者 Dさんの声


資金調達をサポートする公的融資と補助金

起業には、設備投資、仕入れ、運転資金など、初期費用がかかります。特に障害のある方は、体調の理由から十分な自己資金を用意できていないケースもあるでしょう。国や自治体は、このような初期費用を支援するための融資制度や、返済不要の補助金・助成金を提供しています。

日本政策金融公庫の「新創業融資制度」

「日本政策金融公庫」は、国の政策に基づき、民間の金融機関では融資を受けにくい創業期の企業を支援する金融機関です。特に、障害のある方や女性、若者を対象とした優遇された融資制度が用意されています。

例えば、担保や保証人なしで融資を受けられる「新創業融資制度」や、通常の金利よりも低く設定された「生活衛生資金」などがあります。融資を受けるためには、実現性の高い事業計画書が必要になりますが、前述の就労移行支援などで作成サポートを受けるとスムーズです。

⚠️ 注意

融資は借金です。利子をつけて返済する必要があります。返済計画をしっかり立て、無理のない範囲で借り入れましょう。

地域の創業補助金・助成金の活用

国や地方自治体は、新しい事業を始める起業家を対象とした補助金や助成金を公募しています。これらは、採択されれば返済が不要な資金であり、起業の大きな助けとなります。

  • 持続化補助金(一般型・低感染リスク型):販路開拓や生産性向上にかかる経費の一部を補助。
  • IT導入補助金:会計ソフトや受発注システムなどのITツール導入費用を補助。
  • 各自治体の創業支援補助金:地域によって、事業所開設費用や設備費を補助する制度があります。

補助金には募集期間があり、申請手続きが複雑な場合が多いため、商工会議所や行政書士などの専門家に相談しながら進めるのが確実です。また、多くの補助金は事業開始前に申請が必要であり、事後の申請は認められない点に注意が必要です。


事業運営を安定させるための相談と継続支援

起業はスタートダッシュだけでなく、事業を継続していくことが最も重要です。体調管理や事業の壁にぶつかったとき、一人で抱え込まずに相談できる継続的なサポート体制を知っておきましょう。

商工会議所・商工会による経営相談

地域にある「商工会議所」や「商工会」は、小規模事業者や個人事業主を支援するための公的な機関です。会員になることで、専門家による経営相談を無料で受けることができます。

たとえば、「売上が伸び悩んでいる」「新しい顧客を見つけたい」「税務について知りたい」といった経営上の具体的な悩みを、中小企業診断士や税理士などの専門家に相談できます。これらの相談体制は、特に初めて起業する方にとって、孤独になりがちな事業運営を支える心強い味方となります。

  1. 経営の専門家(中小企業診断士など)に無料で相談できる。
  2. 地域の事業者とのネットワークを構築できる機会がある。
  3. セミナーや研修を通じて、常に新しい知識を学べる。

地域障害者職業センターによるジョブコーチ支援

起業したばかりの頃は、生活リズムや仕事の進め方に慣れず、体調を崩しやすいことがあります。そのような場合、「地域障害者職業センター」のジョブコーチ支援が役立つ可能性があります。

ジョブコーチは、障害特性に基づいた仕事の進め方やスケジュール管理の方法をアドバイスし、職場(この場合は起業した事業所や自宅)への定着を支援する専門家です。フリーランスとして自宅で働く場合でも、体調管理の方法や効率的な作業環境の構築について、具体的なサポートを受けられます。

「ジョブコーチに相談したことで、無理のない作業量と休息のバランスを見つけられました。一人では気づけなかった体調の波を客観的に指摘してもらえたのが良かったです。」

— 精神障害のあるフリーランス Eさんの声


知っておきたい税制優遇と社会保障の知識

起業して個人事業主になると、税金や社会保障の手続きもすべて自分で管理する必要があります。障害のある方が利用できる税制優遇や、社会保障制度が収入によってどう変化するのかを知っておくことは、安心して事業を続けるために不可欠です。

確定申告と控除制度の活用

個人事業主は、年に一度「確定申告」を行い、一年間の所得(収入から経費を差し引いた額)を計算し、税金を納めます。この際、障害のある方は、「障害者控除」やその他の控除制度を利用することで、支払う税金を軽減することができます。

控除の種類 概要
障害者控除 納税者本人または扶養親族が障害者である場合に受けられる所得控除です。
青色申告特別控除 事前に「青色申告承認申請書」を提出することで、最大65万円の控除を受けられます。(複式簿記での記帳が必要)
医療費控除 年間一定額以上の医療費を支払った場合に受けられます。

青色申告を行うことで、控除以外にも様々な税制優遇を受けられるため、起業したらなるべく早く税務署に開業届と青色申告承認申請書を提出することをお勧めします。

障害年金と所得制限の影響

多くの方が不安に思うのが、「起業して収入を得ると、障害年金が打ち切られるのではないか」という点です。原則として、働くこと自体が年金支給停止の直接的な理由にはなりません。しかし、年金の種類や所得額によっては注意が必要です。

特に、「20歳前傷病による障害基礎年金」を受給している場合、年間の所得額が一定額を超えると、年金の一部または全額が支給停止になる「所得制限」が設けられています。

事業所得が増加しそうな場合は、事前に年金事務所や社会保険労務士に相談し、自身の年金受給への影響を正確に把握しておくことが重要です。起業による所得が安定するまでは、年金が重要な生活基盤となるため、慎重な計画が求められます。


支援制度を最大限に活用するためのロードマップ

多数の支援制度があるため、どこから手をつけるべきか迷うかもしれません。ここでは、障害のある方が起業を目指す際に、支援制度を効率よく活用するための段階的なロードマップをご紹介します。

ステップ1:相談と適性評価

起業のアイデアが固まっていなくても、まずは地域の就労移行支援事業所やハローワークの専門援助部門に相談に行くことから始めましょう。ここでは、ご自身のスキルや障害特性、そして起業への適性を客観的に評価してもらえます。

特に就労移行支援事業所では、起業家育成プログラムの有無を確認し、可能であれば利用登録を検討します。この段階で、無料で専門的な知識の習得や、事業計画の基礎を学ぶための準備が整います。

✅ 成功のコツ

起業の相談をする際は、必ず「自分の特性を活かしたい」「自分のペースで働きたい」という前向きな意思を伝えましょう。支援者も熱意に応えてくれます。

ステップ2:知識習得と資金計画の策定

就労移行支援や職業能力開発校で、事業に直結する専門スキル(Web、IT、経理など)の習得に励みます。並行して、事業に必要な初期費用と運転資金を詳細に洗い出し、資金調達計画を立てます。

この計画に基づき、日本政策金融公庫への融資相談や、募集されている補助金・助成金の情報収集と申請準備を進めます。資金調達は時間がかかるため、スキル習得と並行して早めに動き出すことが重要です。

ステップ3:開業と継続的なサポートの利用

事業計画が整い、資金調達の目処が立ったら、税務署に開業届を提出し、個人事業主としての活動をスタートさせます。事業開始後も、地域の商工会議所や、必要に応じて地域障害者職業センターのジョブコーチ支援を活用し、事業と体調の安定化を図ります。

また、起業後も定期的に経営者向けのセミナーや交流会に参加し、情報交換やネットワーク作りを意識的に行うことで、事業の継続性を高めることができます。


よくある質問(Q&A)

障害のある方の起業に関する、よくある質問とその回答をまとめました。

障害者手帳がないと支援制度は利用できませんか?

障害者手帳がなくても利用できる制度は多数あります。例えば、日本政策金融公庫の融資制度や、一般的な創業補助金・助成金は、手帳の有無を問いません。

ただし、就労移行支援事業所や地域障害者職業センターなどの「障害福祉サービス」の利用には、自治体の判断による障害支援区分の認定(手帳の有無にかかわらず)が必要になる場合があります。まずは窓口で相談し、ご自身の状態と利用可能な制度を確認しましょう。

融資の審査で障害は不利になりませんか?

日本政策金融公庫などの公的な融資制度では、障害があること自体が審査で不利になることはありません。むしろ、障害のある方を対象とした優遇措置が設けられている場合があります。

重要なのは、事業の実現可能性と、返済能力を具体的に示す事業計画書です。体調管理も含め、どのように事業を継続していくかを明確に説明できれば、融資を受けられる可能性は十分にあります。

仲間を集めるにはどうすれば良いですか?

起業後、一人での業務に限界を感じたり、協力者が必要になったりすることがあります。仲間やパートナーを見つける方法としては、以下のようなものがあります。

  • 地域の商工会議所が開催する異業種交流会
  • 特定のテーマ(IT、デザインなど)の起業家コミュニティ
  • 就労移行支援の卒業生や訓練生との連携

特に、同じように障害を持ちながら起業した仲間とのネットワークは、情報交換や精神的な支えとなるため、積極的に探してみることをお勧めします。


まとめ

  • 起業の準備段階では、就労移行支援事業所の起業家コースや職業能力開発校で、スキルと事業計画のサポートを無料で受けましょう。
  • 資金調達には、日本政策金融公庫の優遇融資制度や、返済不要の国の補助金・助成金を積極的に活用し、リスクを軽減することが重要です。
  • 事業運営においては、商工会議所での経営相談や、地域障害者職業センターのジョブコーチ支援を活用し、継続的なサポート体制を構築しましょう。
  • 起業は、自分らしい働き方を実現する大きな一歩です。一人で悩まず、各種公的支援を賢く活用することで、安心して挑戦を続けてください。

菅原 聡

菅原 聡

すがわら さとし38
デスク📚 実務経験 12
🎯 就労支援🎯 進路支援

📜 保有資格:
職業指導員、キャリアコンサルタント、精神保健福祉士

就労移行支援事業所で10年以上、障害のある方の「働く」を支援してきました。一般就労への移行支援から就労継続支援まで、幅広い経験をもとに、「自分に合った働き方」を見つけるための情報をお届けします。

大学で社会福祉を学び、卒業後すぐに就労移行支援事業所に就職。当初は「障害があっても一般企業で働けるんだ」という驚きと感動の連続でした。これまで150名以上の方の就労支援に携わり、その8割が一般企業への就職を実現。ただし、「就職がゴール」ではなく、「長く働き続けられること」が本当のゴールだと考えています。印象的だったのは、精神障害のある方が、障害をオープンにして自分のペースで働ける職場を見つけ、「初めて仕事が楽しいと思えた」と言ってくださったこと。その笑顔が忘れられません。記事では、就労移行支援と就労継続支援の違い、企業選びのポイント、障害者雇用の現実など、実際の支援経験に基づいた実践的な情報をお伝えします。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学で社会福祉を学び、「障害があっても一般企業で働ける」という可能性に感動したことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

精神障害のある方が、自分のペースで働ける職場を見つけ、「初めて仕事が楽しいと思えた」と言ってくださったこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

「就職がゴール」ではなく、「長く働き続けられること」を大切に、実践的な情報を発信します。

🎨 趣味・特技

ランニング、ビジネス書を読むこと

🔍 最近気になっているテーマ

リモートワークと障害者雇用、週20時間未満の短時間雇用

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