発達障害の子どもとの毎日:リアルな声

日々、発達障害のお子さんとの生活に向き合っていらっしゃる皆さま、お疲れ様です。
「わが子のことは誰よりも理解しているつもりなのに、どうしてこんなにもうまくいかないのだろう?」そう感じて、胸が締め付けられる瞬間は、私たち親なら誰しも経験があるのではないでしょうか。
私には、広汎性発達障害(PDD)と診断された小学生の息子がいます。毎日の暮らしは、喜びや発見に満ちている一方で、予想外の出来事や試練の連続です。
この記事では、私たちのリアルな日常の「光と影」を、具体的なエピソードを交えながら、率直にお話しします。完璧な育児法ではなく、「こんな家族もいるんだ」という安心感を皆さんと共有できれば嬉しいです。
この記事が、皆さんの日々の生活における「ちょっとした気づき」や「一息つくきっかけ」になれば幸いです。
予期せぬパニックと感覚過敏との闘い
予期せぬパニックのトリガー
発達障害、特に自閉スペクトラム症(ASD)の子どもを持つ親にとって、パニックへの対応は日常の一部です。息子の場合、大きな音や予期せぬ計画の変更、そして特定の場所の匂いが、パニックの引き金になることがよくあります。
ある日、楽しみにしていた遊園地に行った時のことです。アトラクションの順番を待っている最中に、隣の列で赤ちゃんが突然大声で泣き始めました。息子は一瞬で顔色を変え、耳を塞ぎ、地面に座り込んで激しく泣き叫び始めました。周りの視線が突き刺さり、私はその場から逃げ出したい気持ちでいっぱいでした。
この経験から、私たち親は、パニックは「わがまま」ではなく、「脳の特性によるSOS」であることを改めて肝に銘じました。そして、外出時には必ずイヤーマフを持ち歩くなど、予防策を講じるようになりました。
感覚過敏への具体的な配慮
息子の大きな特性の一つが、感覚過敏です。特に衣服のタグや縫い目、そして特定の食材の食感に対する過敏さが強く、衣替えや給食の時間は、私たち家族にとって小さな戦いです。
例えば、ズボンの縫い目が少しでも肌に当たると、その日は一日中不機嫌になってしまいます。そのため、衣類はすべてタグを外し、縫い目が外側になるような工夫をしています。
食事に関しても、食べられるものが非常に限られているため、栄養バランスの偏りが心配で悩みました。管理栄養士さんに相談した結果、無理に新しい食材を試すよりも、食べられるものを工夫して出すという方針に切り替え、精神的な負担を減らすことができました。
💡 ポイント
感覚過敏への対応は、お子さんの「不快」を一つでも減らすことが目標です。些細な工夫でも、日々のストレスを大きく軽減できます。
コミュニケーションの壁と伝わる喜び
言葉の裏側にある真意を探る
発達障害を持つ子どものコミュニケーションは、しばしば文字通りに受け取ってしまいがちです。息子は、抽象的な表現や比喩が理解できず、また、自分の気持ちを言葉で表現することが苦手です。
小学校低学年の頃、「学校で嫌なことがあったの?」と聞いても、「別に」としか答えません。しかし、後で彼の描いた絵を見ると、自分と友達が喧嘩している様子が描かれていました。彼は「言葉」ではなく「行動や作品」で気持ちを表現していたのです。
「この子は、言葉で伝えられない分、体全体で、そして絵で、私に必死に訴えかけているんだと感じました。」
— ある母親の記録
私たちは、問い詰めるのをやめ、「何があったか教えてくれてありがとう」と、まず受け止めることから始めました。そして、彼が最もリラックスできる時間を選んで、絵を見ながらゆっくりと会話するようにしています。
視覚支援の絶大な効果
息子にとって、言葉だけの指示は、すぐに頭から抜けてしまい、混乱を招きます。そこで取り入れたのが視覚支援です。特に効果的だったのが、「今日の予定」や「手順」をイラストや写真で示すスケジュールボードです。
朝起きてから家を出るまでの手順(着替え、朝食、歯磨きなど)をマグネット式のカードにし、終わったら「できた!」ボックスに入れるというルールにしました。これにより、彼は次に何をすべきか一目で理解でき、私たち親が何度も指示を出す必要がなくなりました。
視覚支援は、指示待ちの状況を減らし、自立を促す効果がありました。最初は大変な作業でしたが、今では息子自身がカードを見て行動できるようになったことで、親子共にストレスが激減しました。
✅ 成功のコツ
コミュニケーションの成功には、「伝え方」の工夫が不可欠です。視覚支援は、予定の伝達だけでなく、気持ちの表現やルールの理解にも応用できます。
学校との連携と支援計画の継続的な見直し
普通学級と支援学級の狭間で
息子は、普通学級に在籍し、週に数回、通級指導教室に通う形態を取っています。この「インクルーシブ教育」は理想的ですが、現実には、普通学級の先生方には一人のお子さんに時間をかける限界があります。
私たちは、学期に一度の三者面談に加え、連絡帳での情報共有を密に行うことを心がけています。家庭での成功事例や、特定の行動のトリガーとなった出来事を具体的に記録し、先生方に伝えるようにしています。
重要なのは、学校側を「敵」として見るのではなく、「チームの一員」として協力体制を築くことです。親が学校に対して「いつもありがとうございます」という感謝の姿勢を持つことで、先生方も積極的に息子のことを考えてくださるようになりました。
個別支援計画の見直しと親の要望
個別支援計画(個別のニーズに応じた具体的な支援目標と内容を定める計画)は、年に一度の見直しが一般的です。私たちはこの計画策定の会議に積極的に参加し、親としての意見を必ず伝えるようにしています。
- 親が考える子どもの長期的な目標(例:将来は一人暮らしをしてみたい、など)を伝える。
- 過去一年間の支援効果を、具体的な数字やエピソードで評価する。
- 現在の環境調整で改善してほしい点(例:席を窓際に変えてほしい、休憩時間を増やしてほしいなど)を明確に要望する。
この計画会議は、親が専門家と対等に話せる貴重な場です。遠慮せず、わが子の「今」と「未来」にとって最善の支援を要求することが、親の最も重要な役割だと考えています。
⚠️ 注意
支援計画の見直しは、お子さんの成長に合わせて柔軟に行うことが重要です。一度決めたからと固執せず、目標達成度や新たな課題に応じて修正しましょう。
親のメンタルヘルスと支援者への頼り方
尽きない自己否定との向き合い方
子育ての困難が続くと、「私の育て方が悪いからだ」「もっと早く気づいてあげられていれば」と、自己否定の感情に陥りがちです。特に、他の子と比べてしまう時に、この感情は強くなります。
私たち夫婦も、何度もこの波に飲まれました。ある時、療育の先生から言われたのは、「お母さんが倒れたら、誰もこの子を守れませんよ」という言葉です。この言葉で、私は自分自身を大切にすることの重要性を痛感しました。
そこで始めたのが、月に一度、夫と交代で「何もしない時間」を持つことです。その時間は、何をしても良く、子どものことを考える義務から解放される時間です。たった数時間でも、親の心には大きな充電ができます。
使える社会資源と専門家へのアクセス
発達障害の子どもを育てる上で、親が知っておくべきは、使える社会資源(ソーシャルリソース)の存在です。私たちは、様々なサービスを積極的に利用することで、負担を軽減しました。
| 社会資源 | 利用目的 |
|---|---|
| 放課後等デイサービス | 学校後の居場所、専門的な療育、親のリフレッシュ時間 |
| ペアレント・トレーニング | 特性理解、具体的な関わり方を学ぶ |
| 障害児福祉手当 | 経済的な支援 |
また、かかりつけの相談支援専門員を持つことは非常に重要です。彼らは、様々な福祉サービスと私たち家族を繋いでくれる、いわば「ナビゲーター」のような存在です。
専門家や支援者に頼ることは、「親としての敗北」ではありません。それは、わが子をより良く支えるための「賢い選択」なのです。
💡 ポイント
親の健康と心の安定は、お子さんの支援の土台です。「完璧な親」より「幸せな親」を目指しましょう。
子どもから教わった大切なこと
「あるがまま」を受け入れる強さ
息子と向き合う日々の中で、私たちは多くのことを学びました。その一つが、「あるがまま」を受け入れる強さです。息子の特性は、一般的な社会の枠組みからはみ出すことが多いですが、彼自身の個性であり、魅力でもあります。
彼は、世間体や人の目を気にせず、自分の「好き」という気持ちに正直に生きています。電車が好きなら、何時間でも駅のホームで電車を眺める。そんな彼の姿を見ていると、「私たちは、いつからこんなに周りの目を気にするようになったのだろう」と、ハッとさせられます。
親の人生も大切にするという視点
以前は、子どもの特性を治すこと、周りに迷惑をかけないようにすることばかりに神経をすり減らしていました。しかし、今は、「この特性を持って生まれてきたこの子の人生を、どうしたら一番豊かにできるだろうか」という視点に変わりました。
そして、もう一つ大切なこととして、「親の人生も大切にする」という視点です。子どもが自立した後も、私たち親の人生は続いていきます。子どものために全てを犠牲にするのではなく、親自身が楽しむ姿を見せることが、子どもにとっての希望になると信じています。
発達障害の子どもとの毎日は、決して楽な道ではありませんが、そこには、普通の子育てでは得られない深くて温かい絆と、たくさんの気づきがあります。
✅ 成功のコツ
子どもの特性を「欠点」ではなく、「個性」として捉え直し、「この子にしかできないことは何だろう」というポジティブな視点を持つことです。
まとめ
この記事では、発達障害の子どもとのリアルな毎日について、私たち家族の体験談を通じてお伝えしました。
- パニックや感覚過敏は、脳の特性からのSOSであり、具体的な環境調整で軽減できること
- コミュニケーションでは、視覚支援が非常に有効であること
- 学校や支援者との連携では、親がチームの一員として積極的に関わることが重要であること
どうか、あなたは一人ではありません。同じように奮闘している仲間や、サポートしてくれる専門家が必ずいます。詳しい情報やご不明な点は、お住まいの市区町村の障害福祉課、または施設検索ページからお近くの相談支援事業所にお問い合わせください。
時には立ち止まっても大丈夫です。明日も、わが子との小さな喜びを見つけながら、共に歩んでいきましょう。

鈴木 美咲
(すずき みさき)42歳📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員
相談支援専門員として15年、障害のある方とそのご家族の「困った」に寄り添ってきました。実際の相談事例をもとに、当事者やご家族のリアルな声、具体的な解決策をお届けします。「一人で悩まないで」がモットーです。
社会福祉士として障害者相談支援事業所に勤務し15年。年間約100件の相談に対応し、サービス等利用計画の作成や、関係機関との調整を行っています。この仕事の魅力は、「困っている」状態から「解決した!」という笑顔に変わる瞬間に立ち会えること。ただし、制度が複雑で「どこに相談すればいいか分からない」という声を本当によく聞きます。特に印象深いのは、お子さんの障害を受け入れられず孤立していたお母さんが、同じ境遇の親の会に繋がり、「一人じゃないと分かって救われた」と涙ながらに話してくださったこと。情報と繋がりの大切さを実感しました。記事では、実際の相談事例(もちろん個人情報は特定できないよう配慮)をベースに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えていきます。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学のボランティアで障害のある方と出会い、「困っている」を「解決した!」に変える仕事がしたいと思ったことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
孤立していたお母さんが、親の会に繋がり「一人じゃないと分かって救われた」と話してくださったこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
実際の相談事例をもとに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えることを大切にしています。
🎨 趣味・特技
ヨガ、カフェ巡り
🔍 最近気になっているテーマ
ヤングケアラー支援、家族のレスパイトケア





