親として見た発達障害の成長と悩み

こんにちは。発達障害のお子さんを持つ親として、日々奮闘されている皆さま、本当にお疲れ様です。
このコラムを開いてくださったあなたは、きっと今、お子さんの成長の喜びを感じながらも、一方で、誰にも言えないような深い悩みを抱えていらっしゃるのではないでしょうか。
私たち家族も、自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠陥・多動症(ADHD)を併せ持つ息子との生活の中で、数えきれないほどの壁にぶつかり、涙してきました。
この記事では、当事者である親としての視点から、息子の幼少期から思春期にかけての「成長の光」と「葛藤の影」、そしてその中で私たちがどのように悩み、支え合ってきたのかを、包み隠さずお話ししたいと思います。
皆さんが、この記事を読み終えた時、「ああ、自分だけじゃないんだ」と、少しでも心が軽くなり、明日への新たな一歩を踏み出すヒントが見つかることを心から願っています。
初めて気づいた違和感と診断までの道のり
他の子との違いに戸惑った幼少期
息子がまだ赤ちゃんだった頃、私たちは他の親と同じように、ただただその成長を喜び、幸せな日々を送っていました。しかし、1歳半を過ぎた頃から、周りの子との間に少しずつ「あれ?」と感じる違いが現れ始めました。
具体的には、言葉の遅れが目立ち、こちらが呼びかけても目を合わせないことが多いこと、そして、特定の物(特に電車やミニカー)に対する異常なまでの執着です。
公園では、他の子が砂場で遊んでいるのに、息子はただひたすら同じ場所をくるくる回っていたり、突然、激しいかんしゃくを起こして手がつけられなくなることも頻繁にありました。
当時はまだ発達障害という言葉に対する知識が少なく、「個性」「男の子だから」と自分に言い聞かせようとしていましたが、心の奥底には拭いきれない不安が常にありました。
専門機関の受診を決意するまで
2歳を過ぎ、幼稚園の入園を考える時期になったとき、私たち夫婦は専門機関を受診することを決意しました。決定打となったのは、児童館の職員の方から「一度、発達相談に行かれてはいかがですか?」と、やんわりと勧められたことです。
正直、その言葉を聞いた瞬間はショックで、涙が止まりませんでした。「うちの子は障害があるって言われているんだ」という事実に直面するのが怖かったのです。
しかし、このまま不安を抱え続けるよりも、早く専門的なサポートを受けて息子の「生きづらさ」を軽減してあげたい、という親としての強い思いが勝りました。そして、数ヶ月の予約待ちを経て、3歳の時に、自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠陥・多動症(ADHD)の併存という診断を受けました。
💡 ポイント
診断は「終わり」ではなく「始まり」です。お子さんの特性を理解し、適切な支援へ繋げるための重要なスタートラインと捉えましょう。
小学校での壁と親の孤立感
集団生活での困難と特別支援教育
診断後、私たちはすぐに療育(発達支援)を開始し、小学校入学時には、普通学級に在籍しながら、週に数回、通級指導教室に通うことになりました。
しかし、小学校という集団生活の場は、息子にとって想像以上に厳しいものでした。授業中に席を立ってしまう、友達とのトラブルが頻発する、給食の時間が苦痛で食べられないなど、毎日学校からの電話に悩まされました。
ある日、担任の先生から「〇〇君が、お友達を叩いてしまいました」と連絡を受けた時、私は家に帰ってから一人で声を上げて泣きました。「どうして、うちの子だけこんなに大変なんだろう」と、深い孤立感に襲われたのです。
理解されない苦しみと親の会
一番辛かったのは、周囲からの無理解な視線でした。スーパーで息子がパニックを起こした時、通りすがりの人から「親のしつけがなってない」とささやかれたこともあります。私たち親は、ただただ一生懸命に子育てをしているだけなのに、世間からはそうは見られないのか、と心を痛めました。
そんな時、私を救ってくれたのが、同じ悩みを持つ親たちが集まる「親の会」でした。そこでは、専門的な知識はもちろんのこと、「うちの子もそうよ!」という共感の言葉が、何よりの支えになりました。
「あそこで話したから、また一週間頑張れた。親の会は私にとって、ガソリンスタンドみたいな場所でした。」
— ある保護者の声
✅ 成功のコツ
親の孤立を防ぐためには、情報を共有し共感し合えるコミュニティを見つけることが重要です。地域の福祉センターや病院で紹介してもらえることが多いです。
成長の中で見つけた「得意」と「可能性」
驚くべきこだわりと専門的な才能
息子の特性である「こだわり」は、集団生活では困難の原因となることが多かったのですが、一方で、それは特定の分野での驚くべき才能へと姿を変えていきました。
特に、電車やバスの車種、路線図に対する記憶力は群を抜いており、一度見たものは絶対に忘れません。私たちは、このこだわりを無理に止めようとするのではなく、「この子の得意なこと」として受け入れ、伸ばすことに注力しました。
小学校高学年になると、彼は鉄道模型のジオラマ作りに熱中し始め、その精巧さと知識の深さに、私たち親だけでなく、学校の先生も驚くほどでした。彼は、自分の得意なことを通して、初めて他人から認められる喜びを知ったようでした。
支援計画の目標を「特性を活かす」にシフト
私たちが支援計画を立てる際、以前は「社会性を身につける」「トラブルをなくす」といった「苦手なことの克服」に焦点を当てがちでした。しかし、この時期から、目標を大きくシフトさせました。
- 特性を活かせる進路や趣味を見つけること
- 成功体験を積み重ね、自己肯定感を高めること
- 自分の苦手なことを、他者にヘルプを求められる力を育むこと
この変化により、息子自身も「自分はダメじゃない」という感覚を持ち始め、学校生活や家庭での表情も明るくなっていきました。親として、息子の「弱点」ばかりに目を向けていた過去を反省しました。
⚠️ 注意
苦手克服だけでなく、お子さんの「強み」や「興味」を最大限に引き出す視点を忘れずに支援計画を立てましょう。特性は強みにもなり得ます。
思春期・青年期の新たな課題と親の役目
二次障害と向き合う中学校時代
中学校に入学し、人間関係が複雑になると思春期特有のホルモンバランスの変化も相まって、息子は大きな壁にぶつかりました。友達からの些細なからかいや、自分の特性が理解されないことへのストレスから、不登校や不安障害といった二次障害(障害特性が原因で生じる精神的な不調)を発症してしまったのです。
朝になるとお腹が痛いと訴え、学校に行くことができなくなりました。私たちは、再び専門医に相談し、投薬治療も視野に入れながら、まずは「休む」ことを最優先する決断をしました。
この時、私たち夫婦が話し合ったのは、「学校に行くこと」よりも「心が壊れないこと」が何よりも重要だということでした。親として、息子の「逃げ場」となり、無条件で受け入れることが、この時期の最大の役目だと考えました。
将来への不安と就労支援
高校卒業が近づくにつれて、親として最も大きな悩みとなったのが、「息子の将来、仕事はどうなるのだろうか」という不安です。一般的な就職活動は、息子にはハードルが高いと感じていました。
そこで私たちは、ハローワークの障害者専門窓口や、就労移行支援事業所を見学し始めました。
就労移行支援では、社会人としてのマナーや、職場で求められる具体的なスキルを身につける訓練を受けることができます。息子は、そこで同じような特性を持つ仲間と出会い、安心して働ける場所があることを知り、少しずつ前向きになっていきました。
| 支援の種類 | 主な目的 |
|---|---|
| 児童発達支援/放課後等デイサービス | 日常生活の能力向上、集団適応 |
| 就労移行支援 | 一般企業への就職を目指す訓練 |
| 就労継続支援(A型/B型) | 雇用契約を結んだり、軽作業を通じて働く機会を提供する |
息子は現在、得意な特性を活かせる専門職種の企業への就職を目指し、職業訓練を受けています。親として、彼が自分のペースで、自分らしく生きていく道を応援し続ける決意を新たにしました。
よくある質問と親としてのアドバイス
Q1: 診断を受け入れるまでに時間がかかっています。どうすればいいですか?
A: 診断を受け入れるには、時間がかかるのは当然です。まずは、「頑張っている自分自身」を褒めてあげてください。情報収集を急ぐ必要はありません。焦らず、少しずつで良いので、専門家からの話を聞き、お子さんの特性を深く理解していくことから始めましょう。
私たちも、診断直後は「育て方が悪かったのか」と自分を責めましたが、専門家から「これは親のせいではない、脳機能の特性です」と言われて、ようやく肩の荷が下りました。
Q2: 兄弟児(きょうだい児)へのサポートはどうすればいいですか?
A: 障害のある子のケアに追われ、他の兄弟姉妹に寂しい思いをさせてしまうことは、発達障害を持つ家庭でよくある悩みです。大切なのは、兄弟児にも隠さずに特性について説明することです。
そして、「あなたはあなたのままで素晴らしい」という個別の愛情を示す時間を意識的に作ることです。地域のきょうだい児支援の会に参加してみるのも良いでしょう。他のきょうだい児と話すことで、気持ちが楽になることがあります。
Q3: 学校や支援者との連携で気をつけることは?
A: 学校や支援事業所との連携では、親が遠慮せずに希望を伝えることが大切です。特に、お子さんの「得意なこと」や「苦手なこと」を具体的に、数字やエピソードを交えて伝えることで、より質の高い支援に繋がります。
例えば、「算数はいつも80点以上ですが、漢字は集中力が続かずすぐに飽きてしまう傾向があります」といった具体的な情報です。また、感謝の気持ちを伝えることも、良好な関係を続ける上での潤滑油になります。
💡 ポイント
支援者との連携では、親が「専門家」ではなく「わが子の専門家」として、日々の具体的な情報を提供することが最も重要です。
まとめ
この記事では、親として見た発達障害の成長と悩みについて、私たち家族の体験談を中心にお話しさせていただきました。
発達障害の子どもを育てることは、山あり谷ありの、非常にチャレンジングな旅路です。しかし、その過程で、私たちは小さな成長の喜びや、普通では気づけないような新しい発見にたくさん出会うことができました。
一番大切なのは、完璧な親になろうとしないことです。親自身が笑顔でいることが、お子さんにとって最大の支援になります。
- お子さんの「苦手」ではなく「得意」に焦点を当てること
- 親自身が孤立せず、支援者や仲間に頼ること
- 特性は必ずしも「障害」ではなく、「才能」の原石であると信じること

鈴木 美咲
(すずき みさき)42歳📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員
相談支援専門員として15年、障害のある方とそのご家族の「困った」に寄り添ってきました。実際の相談事例をもとに、当事者やご家族のリアルな声、具体的な解決策をお届けします。「一人で悩まないで」がモットーです。
社会福祉士として障害者相談支援事業所に勤務し15年。年間約100件の相談に対応し、サービス等利用計画の作成や、関係機関との調整を行っています。この仕事の魅力は、「困っている」状態から「解決した!」という笑顔に変わる瞬間に立ち会えること。ただし、制度が複雑で「どこに相談すればいいか分からない」という声を本当によく聞きます。特に印象深いのは、お子さんの障害を受け入れられず孤立していたお母さんが、同じ境遇の親の会に繋がり、「一人じゃないと分かって救われた」と涙ながらに話してくださったこと。情報と繋がりの大切さを実感しました。記事では、実際の相談事例(もちろん個人情報は特定できないよう配慮)をベースに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えていきます。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学のボランティアで障害のある方と出会い、「困っている」を「解決した!」に変える仕事がしたいと思ったことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
孤立していたお母さんが、親の会に繋がり「一人じゃないと分かって救われた」と話してくださったこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
実際の相談事例をもとに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えることを大切にしています。
🎨 趣味・特技
ヨガ、カフェ巡り
🔍 最近気になっているテーマ
ヤングケアラー支援、家族のレスパイトケア





