発達障害の私が語る、日常の小さな工夫

発達障害と向き合う毎日
私は30代半ばで発達障害(ADHD・注意欠如多動症)の診断を受けました。子どもの頃から「なんで自分だけこんなに忘れ物が多いんだろう」「どうして時間通りに行動できないんだろう」と悩んできましたが、診断を受けてようやく理由がわかり、少しずつ自分に合った対処法を見つけてきました。
この記事では、発達障害の当事者である私が日常生活で実践している小さな工夫をご紹介します。特別なことではなく、誰でも今日から試せる方法ばかりです。同じように困っている方の参考になれば嬉しいです。
朝の支度を楽にする工夫
前日の夜にすべて準備する
発達障害の特性として、朝の時間管理が苦手という方は多いのではないでしょうか。私も以前は毎朝バタバタして、忘れ物や遅刻の連続でした。今では、前日の夜に翌日の準備をすべて済ませることで、朝の混乱が大幅に減りました。
具体的には、以下のことを夜のうちに行います:
- 翌日着る服を一式ハンガーにかけて玄関近くに置く
- カバンの中身をチェックし、必要なものをすべて入れる
- スマートフォンの充電を確認する
- 朝食の準備(食器を出しておく、パンを冷蔵庫から出すなど)
最初は面倒に感じましたが、朝の10分の余裕が心の余裕につながることを実感してからは、習慣として定着しました。夜の準備は、寝る前のルーティンとしてスマートフォンのリマインダーに設定しています。
視覚的なチェックリストを活用
「やることリスト」を頭の中だけで管理するのは、私にとって不可能でした。そこで、玄関のドアに「出かける前チェックリスト」を貼るという方法を取り入れました。
チェックリストには以下の項目があります:
- 財布・スマートフォン・鍵を持ったか
- エアコン・照明を消したか
- 窓の鍵を閉めたか
- ガスの元栓を閉めたか(料理をした日のみ)
毎朝このリストを声に出して確認することで、「鍵を閉めたっけ?」と不安になって引き返すことがなくなりました。最初は恥ずかしい気持ちもありましたが、自分に合った方法を見つけることの方が大切だと思えるようになりました。
💡 ポイント
チェックリストは、文字だけでなくイラストやアイコンを使うとより効果的です。私は100円ショップで買ったシールを使って、視覚的にわかりやすくしています。色分けすると、さらに見やすくなりますよ。
仕事や家事でのタスク管理
タイマーとアラームを味方につける
発達障害の特性の一つに時間感覚の弱さがあります。私の場合、何かに集中すると時間を忘れてしまい、気づいたら3時間経っていた、ということがよくありました。逆に、やりたくないことは5分でも長く感じます。
この問題を解決するために、タイマーを積極的に使うようになりました。仕事では「25分集中して5分休憩」というポモドーロテクニックを実践しています。家事では「洗濯物を干す時間:15分」「掃除機をかける時間:10分」と決めて、タイマーをセットします。
タイマーが鳴ったら一旦手を止めて、次に何をするか考える時間を作ります。これにより、一つのことに没頭しすぎて他のことを忘れるという失敗が減りました。
タスクを小さく分解する
「部屋を片付ける」という大きなタスクは、私にとって圧倒的すぎて、どこから手をつけていいかわからなくなります。そこで、タスクを小さく分解することを心がけています。
例えば、「部屋を片付ける」を以下のように分解します:
- テーブルの上の物を元の場所に戻す(5分)
- 床に落ちているものを拾う(5分)
- 洗濯物をたたむ(10分)
- 掃除機をかける(10分)
一度にすべてやろうとせず、「今日はテーブルだけ」「明日は床だけ」と分けて取り組むことで、達成感を感じやすくなりました。小さな成功体験を積み重ねることで、自己肯定感も少しずつ上がってきた気がします。
✅ 成功のコツ
タスク管理アプリを使うのもおすすめです。私は「Todoist」というアプリを使っていますが、タスクを完了するとチェックマークがつくのが気持ちよくて、モチベーションになっています。自分に合ったツールを見つけてみてください。
人間関係を円滑にする工夫
メモを取る習慣をつける
発達障害のある人の中には、聞いたことをすぐ忘れてしまうという特性を持つ人が多くいます。私も会話の内容や約束事を忘れてしまい、相手を困らせたり、信頼を失いかけたりした経験があります。
今では、大切な話をするときは必ずメモを取るようにしています。スマートフォンのメモアプリを常に開いておき、会議中や友人との会話中でも、重要なことはその場で記録します。最初は「失礼かな」と思いましたが、「忘れないようにメモしていいですか?」と一言断れば、むしろ「真剣に聞いてくれている」と好印象を持たれることもあります。
メモには日付と相手の名前も必ず書きます。後から見返したときに、「いつ誰に何を言われたか」がわかるようにするためです。
自分の特性を伝える勇気
以前は、発達障害のことを誰にも言えずにいました。「理解されないかもしれない」「変な目で見られるかもしれない」という不安が強かったからです。でも、信頼できる人に少しずつ打ち明けてみたら、思っていたよりずっと理解してもらえました。
職場では、上司に「聴覚情報の処理が苦手なので、重要な指示はメールやチャットでいただけると助かります」と伝えました。友人には「約束を忘れがちなので、前日にリマインドしてくれると嬉しい」とお願いしています。
すべての人に理解してもらえるわけではありませんが、自分の特性を知ってもらうことで、お互いに楽になる関係を築けることもあります。伝え方としては、「発達障害があって〜が苦手です。〜してもらえると助かります」と、具体的な困りごとと解決策をセットで伝えるのがポイントです。
⚠️ 注意
自分の特性を伝えることは、信頼できる相手に限定することをおすすめします。残念ながら、理解のない人もいます。無理に全員に打ち明ける必要はなく、自分が安心できる範囲で選択しましょう。
感覚過敏への対処法
音や光への対策グッズ
私には聴覚過敏があり、電車の中や人混みの中にいると、すべての音が等しく耳に入ってきて疲れてしまいます。特定の音(食器がぶつかる音、子どもの甲高い声など)に強い不快感を感じることもあります。
外出時には、以下のグッズを持ち歩くようにしています:
- ノイズキャンセリングイヤホン:電車や喫茶店で使用。周囲の雑音が軽減されます
- 耳栓:完全に音を遮断したいときに。柔らかいシリコン製のものが快適です
- サングラス:光に敏感な日は、室内でも薄めのサングラスをかけることがあります
最初は「周りからどう思われるか」が気になりましたが、今では自分の体調を守ることの方が大切だと考えられるようになりました。体調が悪くなって迷惑をかけるより、事前に対策する方がずっと良いですよね。
安心できる環境を作る
自宅では、できるだけ感覚に優しい環境を作るようにしています。照明は調光できるものに変え、明るすぎない光の中で過ごします。香りの強い芳香剤や柔軟剤は使わず、無香料のものを選びます。
寝室には特にこだわりがあります。遮光カーテンで光を完全に遮断し、静かな環境を作ります。肌触りの良いシーツや枕カバーを使い、触覚的にも快適に感じられるよう工夫しています。睡眠の質が上がると、日中の疲れ方も変わってきました。
よくある質問と私の経験
Q1. 工夫を続けるモチベーションはどこから?
正直に言うと、すべての工夫を毎日完璧にできているわけではありません。調子の悪い日は、チェックリストを見るのも面倒に感じます。でも、工夫をしたときとしなかったときの違いを実感できることが、続けるモチベーションになっています。
「今日は朝の準備がスムーズだったな」「タイマーを使ったら作業が進んだな」という小さな成功体験が、次も試してみようという気持ちにつながります。完璧を目指さず、できる範囲でやることが大切だと思います。
Q2. 周りの人に理解されないときは?
残念ながら、理解されないこともあります。「甘えている」「努力が足りない」と言われたこともありました。そんなときは、無理に理解してもらおうとせず、距離を置くことも必要だと学びました。
同じ当事者のコミュニティや、発達障害に理解のある支援者とつながることで、心の支えができます。私は月に一度、当事者会に参加して、同じような悩みを持つ人たちと話をしています。
Q3. 診断を受けたほうがいいですか?
これは個人の選択だと思います。私の場合、診断を受けたことで「自分は怠けているわけではなかった」と理解でき、自己肯定感が上がりました。また、必要に応じて医療的なサポートや福祉サービスを受けられるようになったことも大きなメリットでした。
一方で、診断にこだわらず、自分に合った工夫を見つけていくことも一つの方法です。困りごとがあれば、まずは発達障害者支援センターなどに相談してみることをおすすめします。
最後に伝えたいこと
自分を責めないで
発達障害の特性があると、日常生活の中で「できないこと」に直面する機会が多く、自分を責めてしまいがちです。私も長い間、「なぜ自分はこんなこともできないんだろう」と自己嫌悪に陥っていました。
でも、今は考え方が変わりました。できないことがあるのは、努力が足りないからではなく、脳の特性によるものです。自分を責めるのではなく、「どうしたらできるようになるか」「どうしたら楽になるか」を考える方が建設的です。
工夫をしてもうまくいかない日もあります。それでもいいんです。少しずつ、自分に優しく、自分のペースで進んでいけば大丈夫です。
一人で抱え込まないで
困ったときは、一人で抱え込まず、誰かに相談してみてください。発達障害者支援センター、相談支援事業所、医療機関など、サポートしてくれる場所はたくさんあります。
私も定期的にカウンセリングを受けていますし、困ったときは支援者に相談しています。助けを求めることは弱さではなく、自分を大切にする行動だと思っています。
まとめ
この記事では、発達障害の当事者である私が実践している日常の小さな工夫について紹介しました。
- 朝の準備は前日の夜に済ませ、視覚的なチェックリストを活用する
- タイマーを使った時間管理と、タスクを小さく分解することで作業がしやすくなる
- メモを取る習慣と、信頼できる人に特性を伝えることで人間関係が円滑になる
- 感覚過敏への対策グッズを使い、安心できる環境を整える
- 完璧を目指さず、自分を責めず、困ったときは助けを求める
ここで紹介した工夫は、あくまで私個人に合った方法です。発達障害の特性は人それぞれ違うので、自分に合った方法を探してみてください。小さな工夫の積み重ねが、日々の暮らしを少しずつ楽にしてくれるはずです。
詳しい情報やご不明な点は、お住まいの市区町村の障害福祉課、または施設検索ページからお近くの相談支援事業所にお問い合わせください。発達障害者支援センターでも、当事者やご家族からの相談を受け付けています。

鈴木 美咲
(すずき みさき)42歳📜 保有資格:
社会福祉士、相談支援専門員
相談支援専門員として15年、障害のある方とそのご家族の「困った」に寄り添ってきました。実際の相談事例をもとに、当事者やご家族のリアルな声、具体的な解決策をお届けします。「一人で悩まないで」がモットーです。
社会福祉士として障害者相談支援事業所に勤務し15年。年間約100件の相談に対応し、サービス等利用計画の作成や、関係機関との調整を行っています。この仕事の魅力は、「困っている」状態から「解決した!」という笑顔に変わる瞬間に立ち会えること。ただし、制度が複雑で「どこに相談すればいいか分からない」という声を本当によく聞きます。特に印象深いのは、お子さんの障害を受け入れられず孤立していたお母さんが、同じ境遇の親の会に繋がり、「一人じゃないと分かって救われた」と涙ながらに話してくださったこと。情報と繋がりの大切さを実感しました。記事では、実際の相談事例(もちろん個人情報は特定できないよう配慮)をベースに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えていきます。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学のボランティアで障害のある方と出会い、「困っている」を「解決した!」に変える仕事がしたいと思ったことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
孤立していたお母さんが、親の会に繋がり「一人じゃないと分かって救われた」と話してくださったこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
実際の相談事例をもとに、「こんなとき、どうすればいい?」という疑問に答えることを大切にしています。
🎨 趣味・特技
ヨガ、カフェ巡り
🔍 最近気になっているテーマ
ヤングケアラー支援、家族のレスパイトケア





