外出がつらい・動けないときの対処法

外出がつらい・動けないときの対処法
「外出の予定が近づくと、体調が悪くなる」「朝、体が重すぎて布団から出られない」「電車や人混みが怖くて、一歩も外に出る気が起きない」—精神障害や発達障害、身体障害など、様々な要因で、外出や活動を始めることに対して強い困難を感じていませんか。
この「動けない」「つらい」という感覚は、単なる気持ちの問題ではなく、心身の疲労の限界、強い不安、または体調の悪化サインが絡み合って現れていることが多いです。自分を責める必要は全くありません。
この記事では、外出や活動への意欲が低下するメカニズムを解明し、今すぐ実践できる「動けない時の緊急対処法」と、動ける日を増やすための「段階的なステップ」をご紹介します。
ご自身の「つらさ」の理由を理解し、無理なく活動を再開するためのヒントを見つけて、安定した日常生活を取り戻すための道筋を一緒に探していきましょう。
外出がつらい・動けないと感じる理由
心と体が動かない状態には、主に精神的、身体的、そして環境的な複数の要因が複雑に絡み合っています。
心身のエネルギー切れ(燃え尽き)
特に発達障害を持つ方に多く見られますが、社会的な適応(カモフラージュ)や感覚刺激の過剰な処理によって、脳のエネルギーが枯渇している状態(燃え尽き症候群)にある可能性があります。
この状態では、基本的な活動を行うための意欲や気力が底をついており、物理的に体が動かない(無気力、倦怠感)状態となります。
これは、車でいえばガソリンがゼロの状態であり、休息なしに無理に動こうとすると、心身の深刻な二次障害につながります。
不安障害やパニック障害の身体化
精神障害(うつ病、不安障害など)を持つ方は、強い不安が身体症状として現れやすいです。
- 広場恐怖:電車、人混み、広い場所など、助けを求めにくい場所や、逃げ場がない状況への強い恐怖心。
- パニック発作の予期不安:発作が起きるのではないかという強い不安から、外出そのものを避けるようになる。
これらの不安は、動悸、吐き気、めまい、過呼吸といった具体的な身体症状を伴うため、外出が「危険な行為」として脳にインプットされてしまいます。
実行機能障害とタスクの「フリーズ」
ADHDやうつ病などでは、目標を設定し、計画を実行する実行機能に困難が生じやすいです。
外出という行動は、「起きる→着替える→準備する→戸締りをする→移動する」といった多くのステップに分かれますが、これらの手順を頭の中で処理しきれず、どのステップから始めれば良いか分からなくなり、結果的に行動が停止してしまう(フリーズ)ことがあります。
「動けない時」の緊急対処法と心の切り替え
今、まさに動けないと感じている瞬間に、心身の不調を悪化させずに、まずは落ち着きを取り戻すための具体的な対処法です。
「動かない」ことを自分に許可する
体が動かない時、まずすべきことは、自分を責めるのをやめ、「今日は動かなくていい」と心の中で許可を与えることです。
動こうと焦るほど、交感神経が刺激され、心身の緊張が高まり、余計に動けなくなります。まずは、体勢を変えずに、深呼吸を繰り返すなどして、心拍数を落ち着かせることに集中しましょう。
「動けない時、『やらなきゃ』と思うと体が固まる。諦めて天井を見ていると、少しずつ力が抜けてくる感覚があります。」
— 当事者の声(20代・精神障害)
五感を「鎮める」感覚休憩
動けない原因が感覚情報のオーバーロードにある場合、五感への刺激を意図的に最小限に抑える感覚休憩を取りましょう。
💡 ポイント
静かな暗い部屋で、ノイズキャンセリングイヤホンやアイマスクを使用し、視覚・聴覚からの情報を遮断します。体には加重ブランケットや重い布団をかけるなど、深い圧覚刺激を与えると、安心感につながります。
「最小単位の行動」から始める
「外出」という大きな目標ではなく、「今、5秒でできること」だけを目標にします。
- 手をグー・パーする
- 水を一口飲む
- 布団を少しめくる
目標を極限まで小さくすることで、実行機能の負担を減らし、「何とかなるかも」という小さな成功体験を積み重ね、次の行動へのエネルギーを生み出します。
活動再開のための「段階的暴露法」と計画
動ける日を増やし、活動範囲を広げるためには、少しずつ不安な状況に慣れていく段階的暴露法(グラデーション)の考え方を取り入れた計画が必要です。
「不安階層」に基づく活動のステップ化
外出に伴う不安を解消するため、最も不安の少ない活動から順に、活動をステップ化しましょう。
| 不安レベル | 活動内容 |
|---|---|
| レベル1(低) | 玄関のドアを開ける、郵便受けを見る、ゴミを出す。 |
| レベル3(中) | 自宅の周りを5分間散歩する、人の少ない時間帯にコンビニに行く。 |
| レベル5(高) | 電車に乗って一駅先の駅に行く、人が多いスーパーで買い物をする。 |
前のステップで不安を感じなくなってから、次のステップに進むことを徹底します。
「セーフティプラン」の事前準備
外出先で不安が高まったり、動けなくなったりした場合に備え、セーフティプラン(安全計画)を必ず事前に準備しましょう。
⚠️ 注意
セーフティプランには、「不安を感じたらすぐに使える対処法」「避難場所(トイレ、休憩スペース)」「緊急連絡先(誰に、何と伝えるか)」を具体的に書き出し、携帯しておきましょう。
「逃げ道がある」という確信が、外出時の不安を大きく軽減してくれます。
無理のない「時間制限」の設定
活動を開始する際、時間的な負担を減らすための「時間制限」を設けましょう。
- 「買い物は10分で終わらせる」
- 「外出は午前中の2時間だけ」
時間制限を設けることで、エネルギーを使い果たす前に活動を終えることができ、翌日の活動へのエネルギーを残しやすくなります(ペーシングの考え方)。
支援者・家族のための「寄り添う」サポート方法
動けない当事者に対し、家族や支援者が「良かれと思って」行う行動が、かえってプレッシャーになることがあります。適切な関わり方を学びましょう。
「努力の強要」を避ける
「頑張れば動けるはず」「気合いが足りない」といった、精神論による励ましや努力の強要は、当事者の自己肯定感を低下させます。
動けないのは、努力不足ではなく、脳や自律神経が休息を求めている状態であることを理解しましょう。支援者は、ただ「休んでいいよ」というメッセージを伝え、安心感を与える役割に徹することが大切です。
「一緒にいる」安心感の提供
不安による外出困難の場合、誰か信頼できる人が「一緒にいる」という事実は、大きな安心感となります。
ただし、常に「監視されている」と感じさせないよう、付かず離れずの距離感を保ち、本人のペースを尊重しましょう。外出を促す時も、「一緒に行こうか?」と提案する形をとり、決定権は本人にあることを示しましょう。
「成功」の定義を低く設定する
支援者は、当事者の活動の成功体験を積み重ねるための「成功の定義」を、意識的に低く設定しましょう。
「外出して目的地に着くことが成功ではない。『玄関のドアを開けて外の空気を吸う』だけで今日は100点満点だね、と声をかけました。」
— 支援員の事例
小さな達成感の積み重ねが、自己肯定感の回復と、次の行動への意欲につながります。
よくある質問(FAQ)と相談窓口リスト
外出の困難や活動意欲の低下に関する、当事者の方やご家族からの疑問にお答えします。
Q. 動けない日が続くと、生活リズムが崩れてしまいます。
A. 生活リズムの崩れは、動けない状態を悪化させる最大の要因です。
完全に動けない日でも、「決まった時間にカーテンを開ける」「服を着替える」「歯を磨く」といった、布団から出なくてもできる最小限のルーティンだけでも守るように意識しましょう。これらの行動が、体内時計をリセットし、リズム崩壊を防ぎます。
Q. 病院に行くのもつらいのですが、どうすればいいですか?
A. 病院受診自体が大きなストレスである場合、以下の選択肢を検討しましょう。
- 訪問看護・往診: 自宅まで看護師や医師が来てくれるサービスを利用する。
- 電話・オンライン診療: 症状が安定している場合は、オンラインでの相談に切り替える。
- 支援者の同行: 信頼できる支援者や家族に付き添ってもらう。
公的な支援制度を活用することで、自宅でのサポートを受けられる場合があります。
Q. どの専門機関に相談するのが良いですか?
A. 動けない原因によって相談先が異なります。
| 困りごとの種類 | 主な相談先 |
|---|---|
| 強い不安・パニック | 心療内科、精神科(診断、薬物療法、CBT) |
| 意欲低下、生活リズムの乱れ | 就労移行支援事業所、自立訓練事業所 |
| 活動への抵抗感、感覚の困りごと | 作業療法士(OT)、発達障害者支援センター |
まとめ
- 「動けない」状態は、心身のエネルギー切れ(燃え尽き)や不安の身体化が原因であり、努力不足ではありません。
- 緊急時には、「動かない許可」を自分に与え、最小単位の行動から再開しましょう。
- 活動再開のためには、不安を克服するための段階的暴露法と、予期せぬ事態に備える「セーフティプラン」が不可欠です。
焦らず、自分の心と体の声に耳を傾けることが、活動を再開し、動ける日を増やしていくための最も確かな方法です。
まずは、今日、「玄関のドアを5秒だけ開けて、外の空気を吸う」という、あなたにとっての「レベル1の成功」から始めてみませんか。
主な相談窓口・参考情報
- 地域活動支援センター: 安心して過ごせる居場所と活動の提供。
- 精神保健福祉センター: 専門的な相談と公的支援の情報提供。
- 訪問看護ステーション: 自宅での体調管理と服薬サポート。

金子 匠
(かねこ たくみ)55歳📜 保有資格:
社会福祉士、精神保健福祉士
障害者支援施設で30年間勤務し、施設長を経験。現在はすぐサポ編集長として、障害のある方とご家族が必要な情報にアクセスできる環境づくりに取り組んでいます。「制度は複雑だけど、使えば生活が楽になる」という信念のもと、分かりやすい情報発信を心がけています。
大学卒業後、障害者支援施設に就職し、30年間にわたり現場で支援に携わってきました。生活支援員として10年、サービス管理責任者として15年、そして施設長として5年の経験があります。特に印象に残っているのは、重度の知的障害があり、施設入所が当然と思われていた方が、適切な支援と環境調整により地域での一人暮らしを実現したケースです。「できない」と決めつけず、その人に合った支援を考えることの大切さを学びました。現在は現場を離れ、すぐサポの編集長として、これまでの経験を記事という形で多くの方に届けることをミッションとしています。制度や法律の解説記事では、「専門用語を使わず、中学生でも分かる言葉で」を心がけています。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学で社会福祉を学び、実習で出会った利用者の方々の笑顔に感動したことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
重度の知的障害のある方が、適切な支援により地域での一人暮らしを実現したこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
専門用語を使わず、中学生でも分かる言葉で伝えることを大切にしています。
🎨 趣味・特技
読書、散歩
🔍 最近気になっているテーマ
障害者総合支援法の改正動向、ICTを活用した新しい支援の形





