ホーム/記事一覧/困りごとガイド/心と体の困りごと/パニック・不安発作の症状と落ち着くための方法

パニック・不安発作の症状と落ち着くための方法

📖 約33✍️ 金子 匠
パニック・不安発作の症状と落ち着くための方法
パニック・不安発作に悩む障害当事者向けに、症状と対処法を解説します。パニック発作は突発的な死の恐怖と身体症状、不安発作は特定のトリガーによる持続的な緊張が特徴です。発作時の緊急対処法として、自律神経を整える「4-7-8呼吸法」や、現実に戻る「グラウンディング(5-4-3-2-1ルール)」を紹介。予防策として、発作日記によるトリガー特定と、支援者との「安心行動計画」の共有を推奨します。また、認知行動療法(CBT)や薬物療法など、専門的な治療の重要性を強調し、発作を乗り越えるための具体的なスキルを提供します。

パニック・不安発作の症状と落ち着くための方法

「急に心臓がドキドキして息ができない」「このまま死んでしまうのではないかと思った」「予期せぬ強い不安に襲われ、その場から逃げ出したくなった」—パニック発作や強い不安発作に襲われ、恐ろしい思いをした経験はありませんか。

これらの発作は、脳と体が誤作動を起こし、生命の危機がないにもかかわらず、極度の恐怖を感じてしまう現象です。特に、障害特性を持つ方は、感覚過敏や特性によるストレスの蓄積から、発作を経験しやすい傾向にあります。

この記事では、パニック発作と不安発作の具体的な症状の違いを理解し、発作が起きたその場で心身を落ち着かせるための具体的な対処法(クーリングダウン・テクニック)を詳しくご紹介します。

発作は必ず治まります。その一時的な苦しみを乗り越え、安心を取り戻すための具体的なスキルを一緒に身につけていきましょう。


パニック発作と不安発作の違いと原因

パニック発作と不安発作は似ていますが、その出現の仕方や症状には違いがあります。これらの違いを理解することで、より適切な対処法を選ぶことができます。

パニック発作の特徴:予期せぬ「極度の恐怖」

パニック発作は、特定のきっかけや危険がないにもかかわらず、突如として襲ってくる、激しい身体症状と極度の恐怖感を伴う発作です。

主な症状は、以下の身体的な「カタストロフィ(破局的)」な感覚です。

  • 心臓の動悸・頻脈:心臓がバクバクする、飛び出しそうに感じる。
  • 息苦しさ・過呼吸:息を吸えない、窒息してしまうような感覚。
  • めまい・ふらつき:立っていられないほどのめまい、失神するのではないかという感覚。

発作は通常、10分以内にピークに達し、長くても30分以内には治まりますが、その間に「死んでしまう」「気が狂ってしまう」といった強い恐怖(死の恐怖)を感じるのが特徴です。

不安発作の特徴:トリガーのある「過度な心配」

不安発作は、特定の状況や出来事(トリガー)に反応して起こる、過度な心配や緊張感を伴う発作です。

パニック発作ほど突発的で激しい身体症状は伴いませんが、持続時間が長く、以下のような症状が見られます。

  • 持続的な緊張:筋肉のこわばり、頭痛、肩こり。
  • 集中力の低下:物事に集中できない、思考がまとまらない。
  • 過度な心配:漠然とした不安、ネガティブな結果を想像し続ける。

不安発作は、人前でのスピーチ、満員電車、期限の迫った仕事など、特定のストレス要因が明確にある場合に起こりやすいです。

発作の根本原因:自律神経の誤作動

どちらの発作も、根本的には自律神経(交感神経と副交感神経)の誤作動によって引き起こされます。

脳が「危険だ」と誤認識することで、交感神経が一気に優位になり、体は生命を守るための防御反応(心拍数を上げて逃げる準備、呼吸を早めて酸素を取り込むなど)を起こしますが、実際の危険がないため、この反応が過剰になり、身体的な苦痛として現れてしまうのです。


発作が起きた際の「緊急クールダウン」テクニック

発作の真っ只中にいるときは、「とにかくこの苦しみから逃れたい」という気持ちが強くなります。

ここでは、その場で心身の過剰な反応を落ち着かせ、自律神経の誤作動を停止させるための緊急的なテクニックをご紹介します。

「4-7-8呼吸法」で体をリセットする

過呼吸や息苦しさを感じている時、最も効果的なのは、意識的に呼吸をコントロールすることです。

4-7-8呼吸法は、副交感神経を活性化させ、緊張状態にある体をリセットするのに非常に有効です。

  1. 息をすべて吐ききります。
  2. 鼻から息を4秒かけてゆっくり吸い込みます。
  3. 息を7秒間止めます。
  4. 口から息を8秒かけてゆっくりと吐き出します。

このサイクルを数回繰り返すことで、過剰に取り込みすぎた酸素のバランスが整い、体は自然とリラックスモードに切り替わります

「グラウンディング(五感集中)」で現実に戻る

発作中は、思考が暴走し、現実感がない「離人感」を伴うことがあります。

グラウンディング(接地)は、五感を意識的に使い、「今、自分が安全な場所にいる」という現実(今、ここ)に意識を引き戻すためのテクニックです。

✅ 成功のコツ

「5-4-3-2-1ルール」を実践しましょう。

  • 5:目で見えるものを5つ数える(例:時計、机、ペン、窓、本)。
  • 4:触れるものを4つ感じる(例:椅子の感触、服の生地、手のひらの冷たさ)。
  • 3:聞こえる音を3つ認識する(例:時計の音、車の音、自分の呼吸の音)。
  • 2:嗅げる匂いを2つ認識する(例:コーヒーの匂い、自分の服の匂い)。
  • 1:味わえるものを1つ認識する(例:水を一口飲む、口の中の味)。

これにより、脳の注意が恐怖から現実へと物理的に逸らされます

「アイスキューブ法」による強力な注意そらし

特に激しいパニック発作の際、思考の暴走を即座に止めるために、強い物理的な刺激を利用する「アイスキューブ法(ダイバー反応)」が有効です。

これは、冷たい水に顔をつけたり、氷を手に握ったりすることで、脳に「冷たい」という強い信号を送り、一時的に自律神経の活動をリセットする方法です。

ハンカチに包んだ氷を首の後ろや手首に当てるだけでも、心拍数の低下や鎮静効果が期待できます。


発作を予防するための「安心システム」の構築

発作の回数を減らし、その強度を弱めるためには、日々の生活の中で安心感を高め、ストレス耐性を築く「安心システム」の構築が不可欠です。

「発作日記」によるトリガーの特定

発作が起きた日時だけでなく、その直前に何があったか(トリガー)を詳細に記録する「発作日記」をつけましょう。

  • トリガーの例:睡眠不足、特定の人物との会話、満員電車、カフェインの過剰摂取、大きな音。

記録を続けることで、ご自身の発作が特定の環境や行動パターンによって誘発されていることが見えてきます。トリガーを特定できれば、それを避ける、あるいは事前に準備をするという具体的な予防策を立てることができます。

「安全な場所(セーフティ・スポット)」の確保

発作が起こった時にすぐに逃げ込める、精神的・物理的な「安全な場所(セーフティ・スポット)」を事前に決めておきましょう。

  • 物理的な場所:自宅の静かな部屋、職場の空き会議室、人目につかない階段、トイレの個室。
  • 精神的な場所:頭の中で想像するお気に入りの場所(例:静かなビーチ、幼少期の家)。

発作が始まったら、無理せずこれらの場所に移動し、「ここは安全だ」という認識を脳に与えることで、パニックがさらに強まるのを防ぎます。

支援者・家族との「安心行動計画」の共有

信頼できる支援者やご家族に対し、発作が起きた時のための「安心行動計画(クライシス・プラン)」を事前に共有しておきましょう。

この計画には、以下の具体的な項目を記載します。

項目 内容(支援者・家族の行動)
発作のサイン 手が震え始めたら、過呼吸が始まったら
対応方法 静かに寄り添い、深呼吸を促す、声をかけずに水を渡す
避けるべき行動 大声を出さない、理由を問い詰めない、励まさない


専門的な治療とセルフケアの継続

パニック発作や不安発作が頻繁に起こる、または日常生活に支障をきたしている場合は、必ず専門的な治療が必要です。

認知行動療法(CBT)による思考の修正

パニック発作は、「動悸がする→死んでしまうかもしれない」という「破局的な思考の連鎖」が原因で激化します。

認知行動療法(CBT)は、このネガティブで非現実的な思考パターンを修正するのに最も有効な治療法の一つです。

  • 実践内容:身体症状が起きても「それはただの動悸であり、死には至らない」という現実的な解釈を訓練します。
  • 暴露療法:医師の指導のもと、不安を感じる状況に段階的に身をさらし、不安を乗り越える体験を積み重ねます。

CBTを通じて、発作に対する恐怖心そのものが軽減され、発作が起きても「対処できる」という自己効力感を高めることができます。

薬物療法と自立支援医療の活用

パニック障害と診断された場合、発作の頻度や強度を抑えるために、抗不安薬や抗うつ薬(SSRIなど)を用いた薬物療法が効果的です。

精神科での治療には費用がかかりますが、自立支援医療費制度を利用することで、医療費の自己負担額が原則1割に軽減されます。

⚠️ 注意

薬物療法を始めるかどうかの判断は、必ず専門医と相談してください。自己判断で服薬を中断すると、症状が急激に悪化する危険性があります。

マインドフルネスの日常的な実践

日々のセルフケアとして、マインドフルネス(今、この瞬間に意識を集中させる訓練)を実践しましょう。

不安やパニック発作は、過去の後悔や未来の不安に意識が囚われることで発生しやすくなります。

マインドフルネスは、呼吸や体感に意識を集中させることで、「今、ここ」の現実に意識を戻す練習となり、不安が膨らむのを日常的に予防する効果があります。


よくある質問(FAQ)と相談窓口

パニック・不安発作に関する、当事者の方やご家族からの疑問にお答えします。

Q. 発作中は、どうやって「大丈夫」だと自分に言い聞かせればいいですか?

A. 強い発作の最中に「大丈夫」と理性で言い聞かせても、感情が優位になっているため効果がないことが多いです。

むしろ、「これはパニック発作だ。必ず10分から30分で治まる」と、事実を機械的に認識する方が効果的です。

治まった後の自分を想像し、「発作が治まったら、温かいお茶を飲む」といった、ご褒美的な次の行動を考えることも、気持ちを未来に向ける助けになります。

Q. 家族(支援者)が発作を起こした時、どうすればいいですか?

A. 最も重要なのは、「静かに見守る」ことです。

過度に心配したり、騒いだりすると、かえって本人の不安を増大させます。「そばにいるよ」という安心感を伝えつつ、事前に決めておいた安心行動計画に従って、静かに水を差し出す、または安全な場所に誘導するなどのサポートに徹しましょう。

Q. 発作が怖くて、外出できません。どうしたらいいですか?

A. 発作が起こる場所を避ける「回避行動」は、不安をさらに強化してしまいます。

主治医やカウンセラーに相談し、暴露療法(段階的な不安に立ち向かう訓練)を始めることをお勧めします。最初は「家の玄関まで」といった、ごく小さな目標から始め、「発作が起きても対処できる」という成功体験を積み重ねることが、回避行動を克服する唯一の方法です。


まとめ

  • パニック発作と不安発作は、自律神経の誤作動による過剰な防御反応です。パニック発作は突発的な強い身体症状、不安発作はトリガーのある持続的な緊張が特徴です。
  • 発作が起きた際は、「4-7-8呼吸法」や「グラウンディング(5-4-3-2-1ルール)」で脳を現実に戻し、過剰な反応をクールダウンさせましょう。
  • 発作の予防には、「発作日記」でトリガーを特定し、支援者と「安心行動計画」を共有するなど、安心システムを構築することが不可欠です。

パニック発作や不安発作は、適切な治療と対処法を身につけることで、必ずコントロールできるようになります。

一人で悩まず、まずは主治医やカウンセラーに「クーリングダウン・テクニックの具体的な練習方法」を相談してみるという、次のアクションに進んでみましょう。

主な相談窓口・参考情報

  1. 精神科・心療内科: パニック障害、不安障害の専門的な診断と治療、薬物療法。
  2. 公認心理師・カウンセラー: 認知行動療法(CBT)や暴露療法などの心理療法。
  3. 精神保健福祉センター: 地域の専門職による無料の心理相談や支援情報。

金子 匠

金子 匠

かねこ たくみ55
編集長📚 実務経験 30
🎯 生活サポート🎯 制度・法律

📜 保有資格:
社会福祉士、精神保健福祉士

障害者支援施設で30年間勤務し、施設長を経験。現在はすぐサポ編集長として、障害のある方とご家族が必要な情報にアクセスできる環境づくりに取り組んでいます。「制度は複雑だけど、使えば生活が楽になる」という信念のもと、分かりやすい情報発信を心がけています。

大学卒業後、障害者支援施設に就職し、30年間にわたり現場で支援に携わってきました。生活支援員として10年、サービス管理責任者として15年、そして施設長として5年の経験があります。特に印象に残っているのは、重度の知的障害があり、施設入所が当然と思われていた方が、適切な支援と環境調整により地域での一人暮らしを実現したケースです。「できない」と決めつけず、その人に合った支援を考えることの大切さを学びました。現在は現場を離れ、すぐサポの編集長として、これまでの経験を記事という形で多くの方に届けることをミッションとしています。制度や法律の解説記事では、「専門用語を使わず、中学生でも分かる言葉で」を心がけています。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学で社会福祉を学び、実習で出会った利用者の方々の笑顔に感動したことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

重度の知的障害のある方が、適切な支援により地域での一人暮らしを実現したこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

専門用語を使わず、中学生でも分かる言葉で伝えることを大切にしています。

🎨 趣味・特技

読書、散歩

🔍 最近気になっているテーマ

障害者総合支援法の改正動向、ICTを活用した新しい支援の形

📢 この記事をシェア

関連記事