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障害者手帳で受けられる医療・健康サポート一覧

📖 約77✍️ 高橋 健一
障害者手帳で受けられる医療・健康サポート一覧
障害者手帳を所持することで受けられる医療・健康面のサポートを網羅的に解説した記事です。高額になりがちな医療費を軽減する「重度障害者医療費助成(マル障)」や「自立支援医療」の仕組み、併用のコツから、専門的なケアが受けられる障害者歯科、補装具の支給、リハビリの優遇策まで紹介。さらに、病気の早期発見に役立つ健診・予防接種の減免措置や、運動施設の手帳割引についても触れています。緊急時や災害時における手帳の役割や、心の健康を守るメンタルヘルス支援についても解説し、手帳を「健康を守るためのマスターキー」として活用するための実践的な知識を提供します。

心と体の健康を守る武器:障害者手帳で使える医療・健康サポート活用術

障害者手帳を取得した際、多くの方がまず思い浮かべるのは「交通機関の割引」や「公共施設の入場料無料」といったサービスかもしれません。しかし、実は手帳の真の価値は、私たちの日常生活に欠かせない医療と健康を支える手厚いサポートにこそあります。「通院費が家計を圧迫している」「将来の体調不良に備えてどんな支援があるか知っておきたい」といった不安を抱えてはいませんか。

障害があることで必要となる医療的ケアや健康維持のコストは、決して小さなものではありません。国や自治体は、手帳を持つ方々が経済的な理由で治療を諦めることがないよう、また健康的な生活を継続できるよう、多様な助成制度やサービスを用意しています。これらを正しく知り、活用することは、あなたとご家族の生活を守るための大切な権利です。

この記事では、障害者手帳を提示することで受けられる医療費の助成から、歯科、リハビリ、さらには健康診断や予防接種に至るまで、健康に関するサポートを網羅して解説します。少し複雑に感じる制度も、一つひとつ丁寧に紐解いていきます。読み終わる頃には、手帳という一枚のカードが、あなたの健やかな毎日を支える頼もしい味方に見えてくるはずです。


医療費の負担を劇的に減らす公的助成制度

重度障害者医療費助成制度の仕組み

手帳をお持ちの方にとって、最も恩恵が大きい制度の一つが重度障害者医療費助成制度です。多くの自治体では「マル障(まるしょう)」と呼ばれており、健康保険が適用される医療費の自己負担分を、自治体が全額または一部肩代わりしてくれる仕組みです。これにより、窓口での支払いが無料になったり、1回数百円程度の少額で済んだりします。

対象となるのは、一般的に「身体障害者手帳1級・2級」「療育手帳A判定」「精神障害者保健福祉手帳1級」などをお持ちの方です。自治体によっては独自の判断で、身体3級や精神2級の方まで対象を広げているケースもあります。この制度の素晴らしい点は、障害に関する治療だけでなく、風邪や怪我、定期的な健康管理のための受診など、保険診療であれば幅広く適用されることです。

実例として、身体障害2級のAさんのケースを見てみましょう。Aさんは月に数回の通院が必要で、以前は毎月15,000円ほどの医療費を支払っていました。しかし、マル障を申請してからは、窓口負担が1医療機関あたり1日200円(月の上限1,000円)まで抑えられました。年間で計算すると、約17万円もの出費が軽減されたことになります。この浮いた資金を健康に配慮した食事やリハビリ用具に充てることができるのです。

自立支援医療との併用で賢く節約

自立支援医療とは、障害を除去・軽減するための特定の医療(精神通院、更生医療、育成医療)について、自己負担額を原則1割に軽減する制度です。障害者手帳とセットで申請されることが多いですが、手帳がなくても一定の診断があれば受けられます。ここで大切なのは、先ほどの「重度障害者医療費助成(マル障)」と併用が可能であるという点です。

例えば、精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方が、うつ病の通院治療を受ける場合、まず自立支援医療によって負担が3割から1割に減ります。さらに、自治体の医療費助成が適用されれば、その1割分も助成対象となり、最終的な支払いがゼロになるケースも少なくありません。制度を組み合わせて使うことで、長期にわたる治療も安心して続けることができます。

自立支援医療には世帯の所得に応じた「月額自己負担上限額」が設定されているのも特徴です。たとえ入院や手術で多額の費用がかかったとしても、1ヶ月の支払額には天井があるため、家計が破綻するリスクを避けられます。以下の表に、主要な医療費助成の比較をまとめました。

制度名 主な対象 軽減後の負担率
重度障害者医療費助成 重度の手帳所持者 無料 〜 1医療機関数百円程度
自立支援医療 特定の障害・疾患の通院 原則1割(所得に応じた上限あり)
特定医療費(指定難病) 国が指定する難病患者 原則2割(所得に応じた上限あり)

所得制限と申請時の注意点

医療費助成制度には、多くの場合所得制限が設けられています。本人や世帯主の所得が一定の基準を超えると、その年は助成が受けられない、あるいは自己負担額が増えることがあります。この「所得」の判定基準は、市町村民税の額などをもとに毎年更新されます。手帳を持っていても自動的に助成されるわけではなく、毎年の更新手続きが必須であることを忘れないようにしましょう。

また、助成を受けられる範囲は「保険適用内」に限られます。例えば、入院した際の差額ベッド代、診断書の作成料、予防接種、通常の歯科矯正などは全額自己負担となるのが一般的です。「医療費無料」という言葉を過信せず、何が対象外になるのかを事前に市役所の窓口で確認しておくことが、予期せぬ出費を防ぐコツです。

申請の際は、障害者手帳、健康保険証、所得証明書(マイナンバーで代用可能な場合が多い)が必要です。病院の窓口で「医療受給者証」を提示し忘れると、一時的に3割負担を求められ、後で役所で払い戻しの手続き(償還払い)が必要になります。手帳と一緒に、常に受給者証を携帯する習慣をつけましょう。

💡 ポイント

自治体によっては、県外の病院にかかった場合は窓口で一度支払いを行い、後日役所に領収書を持参して返金を受けるシステムになっていることがあります。領収書は捨てずに保管しておきましょう。


歯科診療とリハビリテーションの優遇策

障害者歯科診療所での専門的ケア

障害の種類によっては、一般的な歯科医院での受診が難しい場合があります。例えば、多動傾向があってじっとしていられない、麻痺があって口を大きく開けられない、知的障害により治療内容への理解が難しいといったケースです。こうした方々のために、多くの自治体では「障害者歯科診療所」を設置しています。ここでは、手帳を提示することで、専門的な配慮を受けた治療を受けることができます。

障害者歯科の大きな魅力は、歯科医師だけでなく、障害特性に詳しい歯科衛生士や看護師がチームで対応してくれる点です。笑気吸入鎮静法や全身麻酔を用いた治療、あるいは「トレーニング」と呼ばれる、器具に慣れるところから始める段階的なアプローチが可能です。手帳を持っていることで、こうした専門的な医療機関への紹介がスムーズになり、医療費助成の対象として治療を受けることができます。

お口の健康は全身の健康に直結します。特に嚥下(えんげ)障害がある方の誤嚥性肺炎予防には、プロによる口腔ケアが不可欠です。重度障害者医療費助成があれば、こうした専門的なケアも安価、もしくは無料で受けられます。「暴れるから歯医者は無理」と諦めていたご家族も、手帳を活用して専門外来の扉を叩いてみてください。

補装具費支給制度と更生医療

身体に障害がある方が日常生活を送るために必要な補装具(義足、車椅子、補聴器など)の購入や修理にかかる費用についても、手帳があれば大きな助成が受けられます。通常、これらの用具は非常に高価ですが、補装具費支給制度を利用すれば、原則1割の自己負担で手に入ります。世帯の所得によっては、月額上限額が設定され、実質負担がゼロになることもあります。

また、更生医療という仕組みを使えば、身体障害を軽減・除去するための手術(人工関節置換術や心臓手術など)や、その後のリハビリテーションも1割負担で受けられます。一般的な「リハビリテーション」には健康保険の適用日数制限がありますが、更生医療などの公費負担医療が適用されると、長期にわたり一貫したサポートを受けられる可能性が高まります。

実例として、脳卒中の後遺症で麻痺が残ったBさんの場合を紹介します。Bさんは身体障害者手帳を取得した後、更生医療を利用してリハビリテーション専門病院に入院しました。最新のリハビリ機器や言語聴覚士のサポートを、所得に応じた低い上限額内で受けられたことで、職場復帰への意欲を高めることができました。手帳は、失われた機能を取り戻そうとする方の心強いスポンサーなのです。

訪問看護・リハビリの利用料助成

通院が困難な重度の障害をお持ちの方にとって、自宅で受けられる訪問看護や訪問リハビリは生命線です。これらは通常、介護保険や医療保険の自己負担が発生しますが、重度障害者医療費助成(マル障)の対象者であれば、この訪問サービスにかかる費用も助成の対象に含まれることが多いです。看護師さんによる体調チェックや、理学療法士さんによるストレッチが身近なものになります。

訪問サービスを利用するメリットは、住み慣れた環境でケアを受けられることだけではありません。専門家が生活の現場を見ることで、「ここの段差をなくせば移動が楽になる」「このクッションを使えば床ずれが防げる」といった、具体的な環境改善のアドバイスが受けられる点にあります。手帳があることで、こうした質の高いケアを経済的負担を抑えながら継続できるのです。

ただし、訪問サービスの種類(リハビリのみ、看護のみ等)や、担当する事業所が医療保険・介護保険のどちらで請求するかによって、助成の適用のされ方が異なる場合があります。担当のケアマネジャーや、自治体の障害福祉課のケースワーカーに「手帳を持っているのですが、訪問サービスの自己負担は安くなりますか?」と具体的に相談してみるのが、成功のコツです。

✅ 成功のコツ

補装具を申請する際は、必ず「購入前」に役所へ相談しましょう。先に購入してしまうと、助成の対象外となるルールがあるため注意が必要です。


予防医療と健康診査のサポート

各種健康診断の無料・減免措置

病気を未然に防ぐ「予防医療」においても、障害者手帳は威力を発揮します。多くの自治体では、手帳をお持ちの方を対象に、特定健診(メタボ健診)やがん検診(胃がん、肺がん、大腸がんなど)の自己負担金を免除または減額しています。通常、数百円から数千円かかる検診が、手帳を提示するだけで無料になる地域が多いです。

障害があると、日常的な不調を「障害のせいだから仕方ない」と考えてしまい、内科的な疾患の発見が遅れてしまうリスクがあります。しかし、定期的な健診を安価に受けられる仕組みがあれば、生活習慣病などの早期発見・早期治療につながります。自治体から届く健診のお知らせの中に「障害者手帳をお持ちの方は無料」といった一文がないか、よく確認してみてください。

さらに、一部の自治体では障害者専用の健康診査日を設けているところもあります。バリアフリー化された会場で、手話通訳者が常駐していたり、ゆっくりとしたペースで検査を進めてくれたりする配慮があります。こうした場を利用することで、検査への精神的なハードルも下げることができます。健やかな明日のために、手帳を活用して自分の体と向き合う時間を作りましょう。

予防接種の助成制度

インフルエンザや肺炎球菌といった感染症は、障害の種類や体力の状況によっては重症化しやすいリスクがあります。多くの自治体では、高齢者だけでなく、60歳から64歳で心臓、腎臓、呼吸器などに重度の障害(手帳1級相当)を持つ方などを対象に、定期予防接種の公費助成を行っています。

また、独自の施策として、手帳所持者であれば年齢にかかわらずインフルエンザワクチンの接種費用を一部助成している市町村もあります。実例として、呼吸器に障害があるCさんは、毎年冬になると肺炎のリスクに怯えていました。しかし、手帳を活用して肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンの助成を受け、安価に接種を済ませたことで、精神的な安心感も得られたと語っています。

予防接種の助成は、申し込み期間が限られていたり、指定のクリニックで受ける必要があったりします。市報や自治体のホームページで「予防接種 助成 障害者」と検索し、最新の情報をキャッチしておきましょう。自分を守るだけでなく、周囲への感染拡大を防ぐためにも、手帳という通行証を使って賢く予防に励みたいものです。

健康維持のための施設利用優遇

医療行為そのものではありませんが、健康を維持するための「運動」も大切な予防医療です。障害者手帳があれば、自治体が運営する温水プール、トレーニングジム、体育館などの利用料が無料、あるいは半額になります。介助者1名まで無料になるケースも多く、家族やヘルパーさんと一緒に安心して運動に取り組めます。

例えば、リハビリを兼ねてプールに通う場合、一般のフィットネスクラブなら月に1万円以上の会費がかかることもありますが、公営施設を手帳で利用すれば、月数百円程度の負担で済みます。また、一部の施設では「障害者スポーツ指導員」が常駐しており、障害特性に合わせた安全な運動メニューを提案してくれることもあります。

運動を習慣化することは、二次的な障害の予防や精神的なストレス解消に大きな効果があります。「手帳があるから安く通える」というきっかけが、新しい趣味や仲間づくり、そして健康な体づくりへと繋がっていくのです。まずは最寄りのスポーツセンターの受付で、手帳による割引があるか尋ねてみることから始めてみませんか。

⚠️ 注意

健診や予防接種の無料化は、自治体によって「前年度非課税世帯のみ」などの条件がつく場合があります。ご自身の世帯状況と照らし合わせて確認しましょう。


心の健康(メンタルヘルス)を支える支援

精神科通院の経済的負担を和らげる

精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方にとって、最も重要なのが自立支援医療(精神通院医療)との連携です。うつ病、統合失調症、発達障害などの治療は、数年、あるいは一生単位で続くことが珍しくありません。自立支援医療を適用すれば、診察代や処方されるお薬代の窓口負担が原則1割になります。

特筆すべきは、デイケアや訪問看護、カウンセリング(医師の指示によるもの)も1割負担の対象になるという点です。心の病の回復には、単なる投薬だけでなく、居場所づくりや生活の立て直しが不可欠です。経済的な負担が軽くなることで、「週に何回かデイケアに通ってみよう」「訪問看護を呼んで生活のリズムを整えよう」といった、多角的なアプローチに踏み出しやすくなります。

実例として、パニック障害を抱えるDさんの体験を紹介します。Dさんは経済的な不安から通院を休みがちでしたが、自立支援医療と手帳による医療費助成の存在を知り申請しました。お薬代の心配がなくなったことで、主治医とじっくり話し合い、自分に合った治療計画を立てられるようになりました。手帳は、心の安らぎを取り戻すための「安心の予約票」とも言えるでしょう。

ピアサポートや家族会への参加

手帳を持っていることは、同じ悩みを持つ仲間(ピア)と繋がるための切符にもなります。各自治体や精神保健福祉センターでは、手帳所持者やその家族を対象としたピアサポート活動や家族会を開催しています。これらに参加することは、心の健康を維持する上で非常に大きな役割を果たします。

こうした会では、制度の上手な活用方法、自分なりのセルフケアのコツ、再就職への道のりなど、実体験に基づいた情報交換が行われます。専門家のアドバイスも大切ですが、同じ境遇の人の「私もそうだったよ」という言葉は、何物にも代えがたい癒やしとなります。手帳を通じてコミュニティの一員になることは、孤立を防ぎ、メンタルを安定させる強力な手段です。

また、一部のカウンセリングルームやリラクゼーション施設では、障害者手帳の提示による割引メニューを用意していることもあります。民間のサービスも含め、自分がリラックスできる場所を安価に見つけることは、立派な健康管理術です。心のメンテナンスにかかるコストを、手帳を使って賢くコントロールしていきましょう。

休職・復職時のサポート体制

働く方の健康、特にメンタルヘルスの不調による休職や復職の場面でも、手帳は重要な役割を果たします。障害者手帳を持っていることで、ハローワークの「障害者専門窓口」や「地域障害者職業センター」の支援をフルに受けることができます。ここでは、職場復帰のためのリワークプログラムや、主治医との連携サポートが提供されます。

復職にあたって「短時間勤務から始めたい」「静かな環境で作業したい」といった合理的配慮を求める際、手帳があることで企業側との対話がスムーズになる場合があります。企業にとっても、手帳所持者を雇用・支援することは法定雇用率に関わるため、前向きな協力体制を築きやすくなるのです。健康を害して働くのではなく、健康を守りながら働くための「お守り」として手帳を活用してください。

精神的な健康を維持するためには、「いざという時に頼れる場所がある」という安心感が何より重要です。手帳を窓口として、医療、福祉、労働の各分野の専門家がチームとなってあなたを支えてくれる体制を整えることができます。一人で抱え込まず、手帳を提示して「助けて」のサインを出すことは、とても勇敢で賢明な行動です。

「自立支援医療のおかげで、毎月のお薬代の心配がなくなりました。お金の不安が減るだけで、夜の寝つきが良くなった気がします。手帳を申請して本当に良かったです。」

— 30代・うつ病で療養中の方のメッセージ


緊急時・災害時に役立つ手帳の健康サポート

救急搬送時の情報共有ツールとして

万が一、外出先で倒れたり事故に遭ったりした際、意識がない状態でも障害者手帳はあなたを助けてくれます。手帳には氏名、生年月日だけでなく、障害の種類や等級が記載されています。救急隊員や医師はそれを見ることで、「この方は麻痺があるため反応が鈍いのかもしれない」「内部障害があり特定の医療機器が体内にある可能性がある」といった重要な情報を瞬時に把握できます。

さらに成功のコツとして、手帳のカバーの内側に「お薬手帳のコピー」「緊急連絡先」「主治医の連絡先」「アレルギーの有無」を書いたメモを挟んでおくことをおすすめします。これだけで、手帳は最強のパーソナル・ヘルス・レコード(個人健康記録)へと進化します。緊急時の的確な処置は、その後の後遺症の軽減や健康維持に大きく影響します。

最近では、多くの自治体が「ヘルプマーク」の配布も行っています。手帳を提示すれば、マークと一緒に緊急連絡先カードをもらえることも多いです。カバンにつけたヘルプマークと、財布の中の障害者手帳。この二つが揃うことで、周囲の人や医療関係者に対して、目に見えない障害や必要な配慮を迅速に伝えることが可能になります。

災害時の福祉避難所へのアクセス

大規模な災害が発生した際、通常の避難所での生活が健康上困難な方(人工呼吸器が必要、パニックになりやすい、重度の身体障害がある等)のために設置されるのが福祉避難所です。ここに受け入れてもらうための優先順位を判断する材料として、障害者手帳は極めて有力な証明書となります。

自治体によっては、事前に手帳所持者を「避難行動要支援者」の名簿に登録し、安否確認や優先的な支援の対象としていることがあります。災害時の劣悪な環境は、健常者以上に障害のある方の健康を損ないます。手帳を提示して適切なケアが受けられる場所にいち早く移動することは、命を守り、健康を守るための最優先事項です。

また、災害によって通院が途絶えたり、薬が切れたりした場合も、手帳があれば特別な配慮を受けられる可能性があります。激甚災害時には、手帳や健康保険証がなくても、氏名などを告げることで受診できるようになる特例が出ることがありますが、その際も手帳があればスムーズな本人確認と適切な医療提供に繋がります。まさに、もしもの時の「健康パスポート」なのです。

二次障害の防止と長期的な健康管理

障害を持って生きる中で、最も注意しなければならないのが「二次障害」です。車椅子生活による床ずれ、不自然な歩行による腰痛や膝痛、精神的な緊張による自律神経の乱れなど、元々の障害が原因で別の健康問題を抱えてしまうことです。障害者手帳による様々なサポート(リハビリ、マッサージ、運動施設利用など)は、この二次障害を防ぐための防波堤です。

手帳があることで、定期的に専門家の診察やケアを安価に受け続けることができます。「ちょっとおかしいな」と思ったときに、迷わず病院に行ける環境があること。それが、10年後、20年後の健康状態に大きな差を生みます。手帳は、現在の不自由を助けるだけでなく、未来のあなたを病気から守るための先行投資でもあるのです。

健康管理は一日にして成らず、です。手帳を使って日々の小さな不調を摘み取り、専門家の知恵を借りながら、自分の体をメンテナンスし続ける。その積み重ねが、障害があっても生き生きと社会に関わり続けるための土台となります。手帳を「隠したいもの」ではなく「健康を守るためのマスターキー」として、自信を持って活用してください。

💡 ポイント

災害に備えて、障害者手帳を写真に撮り、スマホのクラウド保存や家族の端末に共有しておきましょう。現物を紛失しても、写真があれば支援を受けやすくなります。


よくある質問(FAQ)

Q. 軽度の障害(手帳3級〜6級)でも、医療費の助成は受けられますか?

結論から申し上げますと、「お住まいの自治体による」というのが答えです。国の基準では重度(1・2級)が助成対象ですが、多くの自治体が独自に基準を広げています。例えば、身体障害者手帳3級の方や、精神障害者保健福祉手帳2級の方に対しても、所得制限付きで医療費を助成している地域は少なくありません。また、「自立支援医療」については級に関わらず申請可能です。「自分は軽度だから関係ない」と思わず、まずは役所の障害福祉課のホームページで「医療費助成 対象」をチェックしてみてください。

Q. 手帳を取得すると、健康診断の結果や通院歴が職場に知られてしまいますか?

いいえ、そのようなことはありません。障害者手帳を取得した事実や、それを使ってどのような医療助成を受けたかという情報は、厳重な個人情報として管理されています。役所から職場へ連絡が行くことはありませんし、病院の領収書からバレることもありません。ただし、職場で「障害者雇用枠」で働いたり、合理的配慮を求めたりする場合は、自ら手帳を提示して説明する必要があります。あくまで「自分がどの範囲で開示するか」をコントロールできるものですので、プライバシーの心配で取得を躊躇する必要はありません。

Q. 手帳を持っていると、民間の医療保険や生命保険への加入に影響しますか?

ここは注意が必要な点です。手帳の有無そのものではなく、「手帳を取得する原因となった病気や状態」について、保険加入時の告知義務が発生します。すでに持病がある場合、新しい保険に入りにくくなったり、特定の部位が不担保(保障対象外)になったりすることはあります。しかし、最近では「引受基準緩和型」や「無選択型」といった、障害や持病がある方でも入りやすい保険も増えています。また、手帳を持っていることで受けられる公的助成があまりに手厚いため、「民間の保険に入る必要性が低くなった」と考える方もいます。公的支援をしっかり把握した上で、保険の必要性を再検討することをおすすめします。


まとめ

障害者手帳が提供してくれる医療・健康サポートの世界は、想像以上に広く、そして深いものです。最後に、本日の重要ポイントをおさらいしましょう。

  • 医療費助成は「命の綱」:重度障害者医療費助成(マル障)や自立支援医療を活用し、経済的不安を解消しましょう。
  • 専門ケアの活用:障害者歯科、リハビリ、補装具の助成など、手帳があれば質の高い専門医療に繋がれます。
  • 予防医療で未来を守る:無料の健診、予防接種、公共スポーツ施設の利用を通じて、二次障害を未然に防ぎましょう。
  • メンタルヘルスの安定:通院負担の軽減だけでなく、ピアサポートや職業支援を通じて、心の健康をトータルで支えます。
  • 緊急時の情報ツール:もしもの時の救急搬送や災害避難において、手帳はあなたの健康と命を守る確かな証明書になります。

手帳は決して、何かが「できない」ことを証明するためのものではありません。あなたが、あなたらしい健康な生活を、社会の中で「しなやかに続けていく」ためのパスポートです。制度は複雑で、一度にすべてを覚えるのは大変ですが、必要なときにこの記事を読み返し、一つひとつステップを踏んでみてください。

次のアクションとして、まずはお住まいの自治体の「障害者福祉のしおり(ガイドブック)」を手に入れてみませんか。役所の窓口で無料でもらえるほか、自治体のホームページからPDFでダウンロードできるはずです。そこには、あなたの街独自の、さらに手厚い健康サポートが隠れているかもしれません。健康な毎日は、正しい情報を手に入れることから始まります。あなたの歩みが、より健やかで安心なものになることを心から願っています。

高橋 健一

高橋 健一

たかはし けんいち50
担当📚 実務経験 25
🎯 制度・法律🎯 医療・福祉制度

📜 保有資格:
社会福祉士

市役所の障害福祉課で20年間勤務し、制度の運用や窓口対応を担当してきました。「制度は難しい」と言われますが、知れば使える便利なツールです。行政の内側から見た制度のポイントを、分かりやすくお伝えします。

大学卒業後、地方自治体に入庁し、障害福祉課に配属されて20年。障害者手帳の交付、障害福祉サービスの支給決定、各種手当の申請受付など、幅広い業務を経験しました。行政職員として心がけていたのは、「制度を正確に伝えつつ、温かく対応する」こと。窓口に来られる方は不安を抱えています。制度の説明だけでなく、その方の状況に合わせた情報提供を大切にしてきました。退職後、民間の相談支援事業所に転職し、今度は「申請する側」の視点も理解できました。行政と民間、両方の経験を活かして、制度の仕組みだけでなく、「実際にどう使うか」まで伝えられるのが強みです。記事では、障害者総合支援法、障害者雇用促進法、各種手当など、制度の正確な情報を「難しい言葉を使わず」解説します。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

公務員として地域に貢献したいと思い、障害福祉課に配属されたことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

窓口対応で、制度を活用して生活が楽になったと感謝されたこと。行政と民間両方の視点を得られたこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

制度の正確な情報を「難しい言葉を使わず」伝えることを大切にしています。

🎨 趣味・特技

将棋、歴史小説

🔍 最近気になっているテーマ

マイナンバーと福祉制度の連携、自治体DXの進展

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