医療・健康情報を整理して安心できる生活を作る方法

📋 医療・健康情報を整理して安心できる生活を作る方法:障害のある方のための情報管理マニュアル
「病院ごとに情報がバラバラで、必要なときにすぐに探せない…」「急な体調変化で救急搬送されたとき、過去の病歴や薬の情報がすぐに伝えられるか不安だ…」
障害のある方の健康管理は、複数の医療機関(内科、精神科、歯科、リハビリテーション科など)にまたがり、多数の薬を服用し、福祉サービスと連携しながら行われることが一般的です。そのため、医療・健康情報が散逸しやすく、必要なときに必要な情報を取り出せないという課題が常に存在します。
情報の整理ができていない状態は、誤診や重複投薬のリスクを高めるだけでなく、緊急時の対応の遅れにつながり、ご本人やご家族、支援者に常に大きな不安を与えます。
この記事では、障害のある方やご家族、支援者が、医療・健康情報を体系的に整理し、一元管理する具体的な方法を徹底的に解説します。「健康ファイル」の作成方法から、デジタルツールを活用した情報共有、そして多職種連携を円滑にする情報サマリーの作り方まで、全ステップを網羅的にご紹介します。このマニュアルを参考に、「情報が見える化された、安心で安全な生活」を構築しましょう。
📂 1. 健康情報整理の基本:なぜ一元管理が必要なのか
医療・健康情報を整理することは、単なる事務作業ではなく、命を守るセーフティネットを構築する行為です。
情報の散逸が引き起こすリスク
情報が整理されていない状態は、以下のような重大なリスクをはらんでいます。
- **診断の遅れ・誤診:**過去の検査結果や服薬履歴が不明確なため、現在の症状の原因特定に時間がかかったり、誤った診断を下されたりするリスクが高まります。
- **重複投薬(ポリファーマシー):**複数の病院にかかっている場合、同じ効果の薬が重複して処方されたり、**飲み合わせの悪い薬(相互作用)**が処方されたりする危険性があります。
- **緊急時の対応遅延:**意識不明やパニック状態で、ご本人が情報提供できない状況で救急搬送された場合、アレルギー情報、常用薬、基礎疾患の情報がすぐに伝わらず、救命処置が遅れる可能性があります。
- **支援の質の低下:**福祉サービスの支援員が、ご本人の健康状態や注意点を正確に把握できず、ケアの質のムラが生じます。
「健康ファイル(マイ・カルテ)」作成の推奨
これらのリスクを避けるため、ご本人や介助者が常に携帯できる**「健康ファイル」を作成し、全ての医療・健康情報を一元的に集約することが強く推奨されます。これは、ご本人専用の「ポータブルなカルテ」**として機能します。
📑 2. 健康ファイルに集約すべき必須情報
健康ファイルには、緊急時や日常の受診時に、医師や看護師が必要とするコアな情報を分かりやすくまとめておく必要があります。
緊急情報サマリー(A4一枚にまとめる)
ファイルの一番最初に、緊急時に必要な情報をA4一枚にまとめます。
- **基本情報:**氏名、生年月日、血液型、連絡先(キーパーソン)。
- **緊急連絡先:**かかりつけ医、かかりつけ歯科、かかりつけ薬剤師の名称と電話番号。
- **アレルギー情報:**薬(特にペニシリン系など)、食物、その他(ラテックスなど)のアレルギーの有無と内容。
- 現在の常用薬リスト:薬の名称、用量、服用目的(精神安定、てんかんなど)、**OD(口腔内崩壊錠)**などの剤形情報を一覧で記載します。
- **基礎疾患と手術歴:**診断名(ICD-10コードがあればなお良い)、診断年、主要な手術歴。
- **特記事項:**てんかん発作の種類や対応方法、パニック時の対応(特定の声かけ、触らないなど)、嚥下機能のレベル。
🚨 重要なポイント
薬のリストは、お薬手帳のコピーではなく、日付が最新の、医師の指示に基づく正式なリストを薬剤師に作成してもらい、定期的に更新しましょう。
分類別ファイルへの整理
緊急情報サマリーの後ろには、情報を分類したバインダー形式のファイルを作成します。
- 医療機関別フォルダ:各病院の診察券、予約票、領収書をまとめて収納します。
- 検査結果フォルダ:過去3年分程度の血液検査データ、画像診断レポート(X線、CT、MRI)、健康診断の結果を日付順に整理します。
- **服薬情報フォルダ:**お薬手帳のコピー、薬剤情報提供書(薬局でもらう薬の説明書)を最新から順に収納します。
- 障害・福祉情報フォルダ:****障害者手帳のコピー、自立支援医療受給者証、サービス等利用計画書など、福祉サービスの根拠となる書類を収納します。
ファイルをA4サイズのバインダーで作成し、各項目をインデックスで分けることで、必要な情報にすぐにアクセスできるようになります。
💻 3. デジタル化と情報共有の仕組み
紙のファイルだけでなく、情報をデジタル化し、必要な関係者間で安全に共有できる仕組みを構築することで、支援の質は飛躍的に向上します。
「お薬手帳アプリ」と服薬履歴の電子化
従来の紙のお薬手帳に加え、スマートフォンやタブレットで管理できるお薬手帳アプリを活用しましょう。
- **服薬履歴の自動記録:**薬局でQRコードを読み込むだけで、服用中の薬や過去の履歴が自動で記録されます。
- **アラート機能:**服薬時間になると通知やアラームで知らせてくれるため、飲み忘れ防止に役立ちます。
- **複数人の管理:**ご家族や支援員が、複数の利用者さんの薬の情報を一括で管理できるアプリもあります。
ただし、ご本人がスマホ操作を苦手とする場合は、介助者が管理するデジタルツールとして活用することが前提となります。
クラウドサービスやアプリを使った情報共有
医療情報や生活状況の記録を、家族や支援者、訪問看護師とリアルタイムで共有するために、クラウド型の情報共有ツールを活用します。
- 活用する情報:****毎日のバイタルサイン(体温、血圧)、食事量、排泄の状況、行動の変化、日々の服薬記録などをアプリに入力します。
- **メリット:**支援員が記録した情報を、離れて暮らす家族や訪問看護師がすぐに確認でき、異常の早期発見につながります。また、訪問看護指示書や医師への情報提供にも活用できます。
- **注意点:**個人情報保護のため、セキュリティ対策が施された専用のアプリやサービスを利用し、アクセス権限を適切に設定することが重要です。
「以前は毎日電話で体調報告をしていましたが、専用の記録アプリを導入したことで、看護師、支援員、家族がリアルタイムで情報共有できるようになりました。おかげで、急な発熱時も過去の傾向をすぐに確認でき、迅速な対応ができています。」
— 施設管理者と家族の連携事例
🤝 4. 連携のための情報活用:多職種への提供方法
整理した情報を単に保管するだけでなく、多職種連携(医療、福祉、教育)の場で活用することで、支援の質は大きく向上します。
医師・看護師への情報提供
外来受診時や急変時には、以下の形で情報を提供します。
- 健康ファイルの提示:受診時、「緊急情報サマリー」をまず提示し、医師に短時間でご本人の状況を把握してもらいます。
- **「受診時情報提供シート」の活用:**受診直前の症状変化を記録したシートを用意し、端的な文章で伝えることで、診察時間を効率的に使ってもらえます。
- 薬剤師との連携:薬の調整が必要な場合、かかりつけ薬剤師から医師に薬の重複や副作用に関する情報を提供してもらうルートを構築します。
相談支援専門員とサービス等利用計画
相談支援専門員は、医療情報と生活情報を統合し、福祉サービスに反映させるための重要な役割を担います。
- **情報提供:**健康ファイルや検査結果のコピーを相談支援専門員に提供し、ご本人の健康状態や体力のレベルを理解してもらいます。
- **計画への反映:得られた医療情報に基づき、「服薬支援の具体的な方法」「食事制限の必要性」「リハビリテーションの目標」**などをサービス等利用計画に組み込んでもらいます。
💡 介護保険との連携
40歳以上で介護保険も利用している方は、ケアマネジャーにも全ての医療情報を共有しましょう。介護保険サービス(デイサービスや訪問リハビリなど)の計画に、医療的な視点を反映させることができます。
🔄 5. 情報管理の継続と更新の仕組み
医療情報は時間とともに変化します。健康ファイルを一度作ったら終わりではなく、定期的な見直しと更新の仕組みを作ることが、安心を継続させる鍵です。
「更新ルール」の設定
以下のタイミングで、健康ファイル内の情報を更新するルールを決めましょう。
- **定期的更新:年に一度、健康診断や特定健診を受けた後、またはサービス等利用計画の見直し(モニタリング)**の際に、ファイル全体を見直す。
- 随時更新(イベント発生時):
- 新しい薬が追加・変更されたとき(すぐに薬剤師に最新のリストを作成してもらう)。
- 入院・手術が行われたとき(退院時に退院時サマリーのコピーを必ず追加する)。
- アレルギーや副作用が新しく判明したとき(緊急情報サマリーを即座に更新する)。
情報提供者としての責任
健康ファイルの作成や管理は、介助者やご家族にとって大きな負担となることがあります。しかし、このファイルは**ご本人の命を守るための「情報インフラ」**です。
支援事業所や施設を利用している場合は、支援員や看護師と協力し、役割分担を決めて更新作業を継続しましょう。特に、最終チェックは必ずご家族や長期間関わっている支援員が行い、情報の正確性を担保することが重要です。
情報管理は手間がかかりますが、**「整理された情報=安心な生活」**という意識を持ち、継続的に取り組んでいきましょう。
🤝 6. 相談窓口と情報管理のためのアクションプラン
医療情報の整理は専門的な知識が必要な場合もあります。一人で悩まず、専門家のサポートを得て、確実な情報管理体制を築きましょう。
医療情報管理に関する主な相談窓口
情報整理や活用方法について困ったときの相談先は以下の通りです。
| 窓口 | 主な相談内容 |
|---|---|
| かかりつけ薬剤師 | 常用薬リストの作成、薬の飲み合わせチェック、お薬手帳アプリの活用指導。 |
| 訪問看護ステーションの看護師 | 健康ファイル作成のアドバイス、バイタルサイン記録方法、緊急情報サマリーの内容チェック。 |
| 相談支援専門員 | 医療情報を福祉サービス計画に反映させる方法、多職種間の情報共有体制の調整。 |
| 医療ソーシャルワーカー(MSW) | 退院時サマリーの入手方法、高度な医療情報管理に関する相談。 |
特に、かかりつけ薬剤師は、医療情報の専門家でありながら最も身近な存在です。健康ファイル作成の際、まず相談し、最新の薬リストを正確に作成してもらうことから始めましょう。
安心できる情報管理のためのアクションプラン
医療・健康情報を整理し、安心できる生活を作るために、以下の具体的なステップを実行しましょう。
- **緊急情報サマリーの作成:まずA4一枚に、アレルギー、常用薬、基礎疾患をまとめた緊急情報サマリーを作成し、常に携帯できるようにする。
- 「健康ファイル」の作成と分類:**バインダーを用意し、医療機関別、検査結果別、服薬情報別にフォルダーを分け、過去の書類を集約・整理する。
- デジタル化と共有化:****お薬手帳アプリを導入し、服薬情報を電子化するとともに、支援者・家族間での情報共有アプリの利用を検討する。
- 更新ルールの設定:年に一度の健康診断後や、薬の変更時など、定期・随時の更新ルールを定め、情報が古くならないようにする。
情報整理は、障害のある方の生活を支える上で、最も重要な「見えない支援」です。確実な情報管理を通じて、安心と安全を守りましょう。
まとめ
- 医療・健康情報の一元管理は、誤診・重複投薬のリスク回避、および緊急時の迅速な対応に不可欠である。
- 情報整理の核となるのは、「健康ファイル(マイ・カルテ)」であり、特にアレルギー、常用薬、基礎疾患をまとめた緊急情報サマリー(A4一枚)をファイルの先頭に置く。
- ファイルは、医療機関別、検査結果別、服薬情報別などに分類し、過去の記録を整理する。
- お薬手帳アプリやクラウド型の情報共有ツールを活用し、支援者・家族間でバイタルサインや服薬記録をリアルタイムで共有する仕組みを構築する。
- 情報管理は継続が重要であり、薬剤師や看護師と連携し、薬の変更時や定期健診後に必ず情報を更新するルールを設ける。

金子 匠
(かねこ たくみ)55歳📜 保有資格:
社会福祉士、精神保健福祉士
障害者支援施設で30年間勤務し、施設長を経験。現在はすぐサポ編集長として、障害のある方とご家族が必要な情報にアクセスできる環境づくりに取り組んでいます。「制度は複雑だけど、使えば生活が楽になる」という信念のもと、分かりやすい情報発信を心がけています。
大学卒業後、障害者支援施設に就職し、30年間にわたり現場で支援に携わってきました。生活支援員として10年、サービス管理責任者として15年、そして施設長として5年の経験があります。特に印象に残っているのは、重度の知的障害があり、施設入所が当然と思われていた方が、適切な支援と環境調整により地域での一人暮らしを実現したケースです。「できない」と決めつけず、その人に合った支援を考えることの大切さを学びました。現在は現場を離れ、すぐサポの編集長として、これまでの経験を記事という形で多くの方に届けることをミッションとしています。制度や法律の解説記事では、「専門用語を使わず、中学生でも分かる言葉で」を心がけています。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学で社会福祉を学び、実習で出会った利用者の方々の笑顔に感動したことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
重度の知的障害のある方が、適切な支援により地域での一人暮らしを実現したこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
専門用語を使わず、中学生でも分かる言葉で伝えることを大切にしています。
🎨 趣味・特技
読書、散歩
🔍 最近気になっているテーマ
障害者総合支援法の改正動向、ICTを活用した新しい支援の形





