障害者相談でよくあるQ&Aまとめ

障害者相談でよくあるQ&Aまとめ
障害者支援に関する制度やサービスは多岐にわたり、複雑に絡み合っています。そのため、「何から手をつければいいのかわからない」「この困り事はどこに相談すべきなのか」といった疑問や不安を抱える方は非常に多いです。実際に、相談窓口には日々、ご本人やご家族、支援者から、制度の利用から生活上の悩みまで、幅広い質問が寄せられています。
この情報があふれる現代において、正しい情報を手に入れ、適切な支援に繋がることは、より良い生活を送るための第一歩です。特に、「手帳がない場合の支援」「親亡き後の不安」「サービス利用計画の立て方」などは、共通して多くの人が悩むテーマです。
この記事では、障害者支援の現場で特によく聞かれる質問(Q&A)を、カテゴリー別に分かりやすくまとめました。それぞれの質問に対し、どの制度や窓口に繋がるのか、具体的なアクションと共に解説します。このQ&Aを、あなたが必要な支援を見つけるための辞書としてご活用ください。
【制度の基礎編】手帳・等級・給付に関するQ&A
障害者手帳の取得や、サービス利用の根幹に関わる制度の仕組みは、常に疑問の中心となります。ここでは、手帳の基本や、サービス利用の可否に関するよくある質問に答えます。
Q1:障害者手帳がなくてもサービスは受けられるか?
A:はい、受けられるサービスはあります。障害者総合支援法に基づく一部のサービスや、自治体が独自に実施する地域生活支援事業は、必ずしも手帳の保有を要件としていません。特に精神障害や難病の方で、手帳の申請に抵抗がある場合や、申請中の期間などに重要です。
具体的には、医師の診断書や意見書があれば、市区町村の判断でサービスの支給決定を受けられる場合があります。例えば、精神科への通院医療費が1割負担になる「自立支援医療(精神通院医療)」は、精神障害者保健福祉手帳がなくても、医師の診断があれば申請が可能です。
💡 ポイント
まずは市区町村の福祉担当窓口に、手帳がない場合の利用要件を確認しましょう。多くの自治体では、手帳取得を前提としない相談支援や情報提供は常に行われています。
Q2:障害者手帳の等級が重くなる(級変更)とメリットは?
A:等級が重くなる(例:身体障害者手帳4級から2級へ)と、受けられるサービスや経済的優遇措置が大きく拡大します。重度化に伴う主なメリットは以下の通りです。
- 医療費助成:重度の障害者を対象とした自治体独自の医療費助成(マル障など)の対象となる可能性が高まります。
- 税制優遇:控除額が一般障害者よりも高い「特別障害者控除」の対象となります。
- 福祉サービス:障害支援区分が高くなり、居宅介護や短期入所などのサービス利用時間が増加する可能性があります。
等級変更の申請は、状態が悪化したと感じたら再認定時期を待たずに可能です。申請には、主治医に等級変更を促す詳細な診断書を作成してもらう必要があります。
Q3:手帳の種類によって利用できるサービスは違うか?
A:はい、サービスの種類によっては明確に区別されています。例えば、自立支援医療は、身体障害者手帳を持つ方は「更生医療」、精神障害者保健福祉手帳を持つ方は「精神通院医療」と、対象となる医療が異なります。
また、雇用支援や職業訓練の分野でも、精神障害、身体障害、知的障害それぞれに特化した支援機関が存在します。しかし、居宅介護や短期入所などの多くの生活介護サービスは、障害種別に関係なく、障害支援区分(または児童の場合は障害の程度)に基づいて提供されます。
ご自身の障害種別で利用可能なサービスについては、相談支援専門員に確認し、漏れがないようにしましょう。
【生活支援編】日々の暮らしと介助に関するQ&A
日常生活で発生する具体的な困り事や、家族の介護負担に関する質問も多く寄せられます。ここでは、日々の生活を支える福祉サービスの活用に関する疑問に答えます。
Q4:ショートステイ(短期入所)はどんな時に利用できるか?
A:短期入所は、ご家族の休息(レスパイト)を主な目的としており、ご家族が体調を崩した時だけでなく、「ご家族が疲れたから休みたい」「自分の時間や趣味に充てたい」という理由でも利用できます。遠慮は不要です。
⚠️ 注意
短期入所は、障害支援区分(区分1以上)の認定を受けている方が対象です。利用日数には上限(自治体による)がありますが、ご家族の状況に応じて柔軟に対応してもらえる場合があります。まずは相談支援専門員に、ご家族の疲労度を正直に伝え、利用計画に組み込んでもらいましょう。
Q5:居宅介護(ヘルパー)の利用時間を増やしたいがどうすれば?
A:居宅介護の利用時間は、市区町村が決定する「障害支援区分」と、相談支援専門員が作成する「サービス等利用計画」に基づいて決定されます。利用時間を増やしたい場合は、以下のステップを踏みます。
- 相談支援専門員へ相談:現在の利用時間で足りていない理由(ご家族の負担増、本人の状態変化など)を具体的に伝えます。
- 障害支援区分の変更申請:ご本人の障害の状態が悪化している場合、市区町村に区分の変更申請を行います。区分が上がれば、サービス量が増える可能性があります。
- 計画の見直し:専門員が、現在の状況に合わせた新たな利用計画を作成し、市区町村に提出します。
Q6:親が年老いてきた。将来の住まいについて相談したい。
A:これは「親亡き後」の問題として、最も深刻な相談の一つです。相談の第一歩は、地域にある「相談支援事業所」に連絡し、ご本人の将来の生活設計に関する相談支援(計画相談)を開始することです。
検討すべき選択肢は複数あります。
- グループホーム・ケアホーム:地域で共同生活を送る選択肢。
- 親元近居:親の家の近くで、ご本人が一人暮らしまたは支援付きの暮らしをする選択肢。
- 入所施設:重度の介助が必要な場合の選択肢。
相談支援専門員は、親御さんの年齢や健康状態、ご本人の生活能力を総合的に考慮し、長期的な計画を立てるサポートをしてくれます。早ければ早いほど、選択肢は多くなります。
【仕事・社会参加編】就労と外出に関するQ&A
障害のある方が社会と繋がり、働くことは、経済的自立だけでなく、生きがいにも繋がります。ここでは、就労支援や外出に関するサービス利用の疑問に答えます。
Q7:自分に合う就労支援サービスはどれか?
A:障害者向けの就労支援サービスは、主に「就労移行支援」「就労継続支援A型」「就労継続支援B型」の三種類があり、ご本人の状態や目指す目標によって適切なサービスが異なります。
| サービスの種類 | 対象者と目標 | 賃金の有無 |
|---|---|---|
| 就労移行支援 | 一般企業への就職を目指す方(原則2年以内) | 原則なし(訓練費) |
| 就労継続支援A型 | 雇用契約を結び、働く意欲と能力がある方 | あり(最低賃金以上) |
| 就労継続支援B型 | 雇用契約を結ぶのが難しい方、自分のペースで働きたい方 | なし(工賃) |
まずはハローワークの専門援助部門や、地域の就労移行支援事業所に見学に行き、ご自身の希望や能力に合うかどうかを体験することが重要です。
Q8:移動支援(ガイドヘルプ)で旅行や趣味の外出は可能か?
A:はい、可能です。移動支援(ガイドヘルプ)は、社会生活上必要不可欠な外出だけでなく、趣味や娯楽、社会参加のための外出にも利用できるサービスです。
ただし、利用できる時間数の上限や、事業所が対応可能な外出範囲は、自治体や事業所によって異なります。例えば、遠方への旅行は、事業所の規定により受け付けていない場合もあります。
✅ 成功のコツ
旅行や長期の外出の計画を立てる際は、早めに相談支援専門員に相談し、利用計画に盛り込めるか、あるいは別の支援方法(ボランティアなど)を組み合わせる必要があるかを検討してもらいましょう。
Q9:職場での人間関係の悩みをどこに相談すべきか?
A:職場での人間関係や業務に関する悩みは、以下の専門機関に相談できます。
- 職場の上司・産業医:まずは職場の相談窓口を活用しましょう。
- 地域障害者職業センター:専門的な職業リハビリテーションサービスを提供しており、職場定着支援の一環として、職場やご本人への助言・支援を行ってくれます。
- 相談支援事業所:就労移行支援などを利用している場合、その事業所の支援員が相談に乗ってくれます。
ハローワークも情報提供を行っていますが、より専門的な相談を求める場合は、地域障害者職業センターが適しています。
【経済・住居編】金銭と生活基盤に関するQ&A
安定した生活を送るためには、経済的な基盤と安心して暮らせる住居の確保が不可欠です。ここでは、生活保護、年金、住居に関する疑問に答えます。
Q10:障害年金と生活保護は両方もらえるか?
A:はい、両方の制度を同時に受給することは可能です。ただし、障害年金は公的な収入と見なされるため、生活保護費を算定する際に収入として認定され、その分だけ生活保護費から差し引かれます。
障害年金を受給している方が生活保護を申請する場合、生活保護費は「生活保護基準額」から「障害年金の額」を差し引いた額が支給されます。両方を受給することで、結果的に生活保護基準額を下回らない生活が保証されます。
💡 ポイント
障害年金の申請をこれから行う方は、年金事務所へ、生活保護に関する相談はお住まいの地域の福祉事務所へ連絡してください。どちらも専門的な手続きが必要なので、社会保険労務士や相談支援専門員に助言を求めるのが賢明です。
Q11:グループホームに入居したいが、費用が心配。
A:グループホームは、家賃や水道光熱費などの「実費負担分」と、サービス利用料である「自己負担額(原則1割)」が発生します。費用負担を軽減するための公的制度を活用しましょう。
- 家賃補助:多くの自治体では、グループホーム入居者に対し、家賃補助(補足給付)を行っています(月額1万円程度が一般的)。
- サービス利用料の軽減:低所得世帯の場合、サービス利用料の自己負担上限額が0円や低い金額に設定されています。
- 生活保護:収入が生活保護基準を下回る場合は、生活保護を申請することで費用が賄われます。
グループホームへの入居を検討する際は、サービス提供事業所の職員に、利用できる費用軽減策を詳しく尋ねてみましょう。
Q12:自宅のバリアフリー改修はどこに助成を申請するか?
A:自宅のバリアフリー改修費の助成制度は、主に以下の二つがあります。
- 障害者総合支援法に基づく「日常生活用具給付等事業」:一部の改修費用(例:手すりの設置、段差解消)が対象となりますが、限度額が設けられています。
- 自治体独自の住宅改修費助成:国制度の上限を超える費用や、独自の改修項目について、自治体が独自に上乗せして助成を行っている場合があります。
申請の際は、改修工事を行う前に、お住まいの市区町村の福祉担当窓口に相談し、どの制度が適用可能か、また申請の順番について確認することが重要です。
【緊急・法務編】困った時の駆け込み寺Q&A
予期せぬトラブルや、家族の将来に関する法務的な不安は、迅速な対処が必要です。ここでは、緊急時や法務に関する重要な相談先をまとめます。
Q13:虐待や権利侵害に遭ったと感じたら?
A:ご本人やご家族が、虐待や権利侵害を受けていると感じたら、すぐに以下の機関へ相談・通報してください。これらの機関には守秘義務があり、匿名での相談も可能です。
- 市町村障害者虐待防止センター:各市区町村の福祉担当課に設置されており、障害者虐待防止法に基づき、通報や相談を受け付けます。
- 警察:生命の危険があるなど、緊急性が高い場合は迷わず110番に通報してください。
- 地域包括支援センター(高齢者の場合):特に高齢の親から子への虐待が疑われる場合など、複雑なケースに対応します。
虐待の定義は広範です。経済的な虐待やネグレクト(介護放棄)も含まれるため、少しでもおかしいと感じたら、相談することが大切です。
Q14:親亡き後の「財産管理」をどうすべきか?
A:親亡き後の財産管理や法的な契約行為について不安がある場合、「成年後見制度」の利用を検討すべきです。ご本人の判断能力が不十分な場合、家庭裁判所に申し立てを行い、財産を管理する後見人を選任します。
相談先は以下の通りです。
- 社会福祉協議会:法人後見や、成年後見制度の利用に関する相談を無料で受け付けています。
- 司法書士・弁護士:制度の申し立て手続きや、具体的な財産管理の相談が可能です。
成年後見制度は、ご家族が高齢化する前に検討を始めることが、将来の安心に繋がります。
Q15:相談支援専門員と合わない場合は変更できるか?
A:はい、相談支援専門員(事業所)は、ご本人の意思で自由に選んだり、変更したりすることができます。専門員は、あなたの生活をサポートする重要なパートナーですので、合わないと感じたら遠慮なく変更を申し出ましょう。
変更したい場合は、以下の機関に連絡してください。
- 現在の相談支援事業所の管理者:変更したい旨と、その理由を伝えます。
- 市区町村の福祉担当窓口:新たな相談支援事業所のリストをもらい、変更手続きについて相談します。
変更の理由は、必ずしも詳細に伝える必要はありません。「より自分に合った支援を受けたい」という形で問題ありません。
まとめ
- 障害者支援の相談で多いのは、手帳がない場合のサービス利用(自立支援医療など)や、親亡き後の生活設計(グループホーム、成年後見)に関する疑問です。
- 生活の負担を軽減するためには、障害支援区分の見直しや短期入所の積極的な利用、そして自治体独自の経済的助成制度を組み合わせて活用することが重要です。
- 困った時は、迷わず相談支援専門員、市区町村の福祉担当窓口、または基幹相談支援センターといった専門機関に連絡しましょう。正しい知識と適切な支援で、より安定した生活基盤を築くことができます。

阿部 菜摘
(あべ なつみ)36歳📜 保有資格:
社会保険労務士、精神保健福祉士
社会保険労務士として障害年金の申請支援を専門に12年。「難しい」と言われる障害年金を、分かりやすく解説します。医療費助成、各種手当など、お金に関する制度情報をお届けします。
大学卒業後、社会保険労務士事務所に就職し、障害年金の申請支援を専門に担当してきました。これまで500件以上の申請をサポートし、多くの方の生活を支えるお手伝いをしてきました。障害年金は「難しい」「通らない」と諦めている方が多いですが、適切な書類準備と申請を行えば、受給できる可能性は十分あります。実際、初診日の証明が難しいケースでも工夫して認定を受けた例もあります。特に心に残っているのは、精神障害で長年苦しんでいた方が障害年金を受給できたことで、「経済的な不安が減り、治療に専念できるようになった」と感謝されたこと。制度を知ることの大切さを実感しました。記事では、障害年金の申請方法、特別障害者手当、医療費助成など、「知らないと損する」お金の制度を、専門家として正確かつ分かりやすく解説します。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
社会保険労務士として、障害年金の申請支援を通じて多くの方の生活を支えたいと思ったことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
精神障害のある方が障害年金を受給でき、「経済的な不安が減り、治療に専念できるようになった」と感謝されたこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
「知らないと損する」お金の制度を、専門家として正確かつ分かりやすく解説します。
🎨 趣味・特技
資格勉強、温泉巡り
🔍 最近気になっているテーマ
障害年金のオンライン申請、制度の周知不足問題





