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障害者と家族が知っておくべき福祉相談の流れ

📖 約32✍️ 金子 匠
障害者と家族が知っておくべき福祉相談の流れ
障害者と家族が知っておくべき福祉相談は、まず悩みを整理し、基幹相談支援センターや特定相談支援事業所といった総合窓口を選ぶことから始まります。サービス利用には、利用量を決める障害支援区分の認定と、相談支援専門員によるサービス等利用計画の作成が不可欠です。その後、支給決定を経てサービスが開始されますが、専門員による定期的なモニタリングで計画を見直します。相談員との相性が重要であるため、合わない場合は変更が可能です。福祉相談の流れ全体を理解し、必要な支援にスムーズに繋げましょう。

障害者と家族が知っておくべき福祉相談の流れ

障害福祉サービスを利用したい、あるいは将来の生活について漠然とした不安を抱えているとき、まずどこに相談すればいいのか分からず、立ち止まってしまう方は少なくありません。福祉の相談窓口は多岐にわたり、それぞれが専門的な役割を持っているため、「役所に聞けば全て解決する」わけではないのが実情です。

「この悩みは誰に相談すべき?」「相談したらすぐにサービスが使えるの?」といった疑問は、支援へのアクセスを妨げる大きな壁となります。しかし、福祉相談の全体的な流れ各相談窓口の役割を事前に理解しておけば、無駄な手間や心理的な負担を減らし、スムーズに必要な支援に繋がることができます。

この記事では、相談の準備からサービスの利用開始、そして継続的な支援に至るまで、障害者とご家族が知っておくべき福祉相談の「一連の流れ」を、具体的なステップと注意点を交えて詳細に解説します。このロードマップを参考に、安心して支援活用の第一歩を踏み出しましょう。


ステップ1:相談前の「悩み」の整理と準備

福祉相談を始める前に、ご自身やご家族が抱えている「悩み」や「希望」を整理することが、その後の相談を効果的に進めるための土台となります。適切な窓口に辿り着き、スムーズな支援を受けるために、この準備は欠かせません。

悩みの種類と優先順位を明確にする

漠然とした不安を具体的にすることで、どの支援が必要かが見えてきます。相談を始める前に、以下の質問に答える形でメモを作成してみましょう。

  • 現在の困り事(最優先):「日中の見守りが必要」「入浴介助が欠かせない」「親の介護疲れが限界に近い」。
  • 希望する未来:「将来自立して暮らしたい」「週に3日働きたい」「家族に休息の時間を作りたい」。
  • 関連する情報:手帳の種類と等級、病名や診断名、現在の通院状況。

福祉の専門家は、これらの情報を基に、「どの制度が適用可能か」「緊急性が高いか」を判断します。特に、家族の身体的・精神的な負担が限界にきている場合は、その旨を正直に伝えることが大切です。

最初の一歩:総合相談窓口を選定する

「この悩みはどこに相談すべきか分からない」という状態であれば、幅広い分野の相談を受け付ける総合相談窓口から始めるのが最も確実です。

  • 基幹相談支援センター:市区町村が設置する中核的な相談機関で、地域の複雑な事例や複数のサービス連携を必要とする相談を得意としています。
  • 特定相談支援事業所:後述する「サービス等利用計画」の作成を担う専門機関で、日々の生活や福祉サービスに関する総合的な相談を受け付けています。

💡 ポイント

ほとんどのケースで、最終的に特定相談支援事業所の相談支援専門員が支援の要となります。迷ったら、まずお住まいの市区町村の福祉担当課に電話し、「相談支援事業所のリストが欲しい」と伝えるのが最も早い方法です。

相談時に必要な書類を準備する

相談をスムーズに進めるために、初回の相談時に持参すべき書類を事前に準備しておきましょう。コピーで構いません。

  • 障害者手帳:身体、療育、精神障害者保健福祉手帳のいずれか。
  • 医師の診断書・意見書:病名や現在の症状、通院状況がわかるもの。
  • 直近の収入・所得証明:サービス利用料の自己負担上限額を判断するために必要。

これらの情報があることで、相談員は「この手帳の等級ならこのサービスが使える」と、制度の適用可能性をすぐに判断できます。


ステップ2:サービス利用に向けた「認定」と「計画」

福祉サービスの利用が相談の方針として固まった場合、サービスの量や種類を決定するための公的な手続きが必要になります。これが「認定」と、専門家による「計画作成」のプロセスです。

障害支援区分の認定申請(重要)

居宅介護や短期入所などの「介護給付」サービスを利用する場合、まず「障害支援区分」の認定を市区町村に申請する必要があります。この区分によって、利用できるサービスの時間数や種類が決定されます。

  1. 申請:市区町村の福祉担当課へ申請書を提出します。
  2. 訪問調査:認定調査員がご自宅を訪問し、ご本人の心身の状態や、日中の活動、介護の手間などを約1時間かけて聞き取り調査します。
  3. 審査会:調査結果と主治医の意見書に基づき、審査会で区分が決定されます(区分1〜6、非該当)。

この訪問調査は、ご本人の日常的な困難な状況を正確に伝えるための重要な機会です。ご家族が調査に立ち会い、普段の介助の手間を具体的に説明することが成功の鍵です。

相談支援専門員によるサービス等利用計画の作成

障害支援区分が認定された後、サービスの利用を具体化するために、特定相談支援事業所の相談支援専門員が「サービス等利用計画」を作成します。

「相談支援専門員は、単にサービスを組み合わせるだけでなく、ご本人の『こう生きたい』という願いと、ご家族の『少し休みたい』というニーズをバランス良く計画に落とし込む役割があります。ご本人の意思が尊重されているか、家族の負担は本当に軽減されるかを常にチェックします。」

— 現役相談支援専門員

専門員は、ご本人・ご家族との面談(アセスメント)を通じてニーズを把握し、最適なサービス提供事業所を選定し、調整します。この計画こそが、福祉サービスの利用を支える設計図となります。

市区町村によるサービス支給決定

相談支援専門員が作成した利用計画案を基に、市区町村が内容を審査し、最終的なサービスの支給決定を行います。この決定を受けて、ご本人はサービスを利用できるようになります。

⚠️ 注意

支給決定の内容が、専門員の計画案通りにならないこともあります。もし、決定されたサービス量や内容が、生活に支障をきたすほど不十分だと感じた場合は、相談支援専門員を通じて市区町村に再度の調整(増量申請など)を求めることができます。


ステップ3:サービス開始と継続的な見直し

支給決定が出たら、実際にサービス提供事業所との契約に進みます。サービスが開始された後も、相談支援専門員との連携を通じて、計画の定期的な見直しが不可欠です。

サービス提供事業者との契約と利用開始

支給決定が出たら、利用計画に記載されているサービス提供事業者(ヘルパーステーション、グループホームなど)と個別に契約を結びます。契約の際には、以下の点を確認しましょう。

  • 重要事項説明:サービスの提供内容、料金、苦情窓口などについて、必ず説明を受けます。
  • 利用時間と回数:支給決定された範囲内で、具体的な利用日時を調整します。
  • 緊急時の対応:体調不良や災害時など、緊急時に事業所がどのような対応を取るかを確認します。

特に、ヘルパーや支援員のサービス内容や相性が合わないと感じた場合は、すぐに相談支援専門員に連絡してください。専門員が事業所との調整や、事業所の変更をサポートしてくれます。

モニタリング(利用状況の確認)の実施

サービスが開始された後も、相談支援専門員は定期的に「モニタリング」を行います。モニタリングとは、実際にサービスが計画通りに提供されているか、そしてそのサービスがご本人やご家族の生活改善に役立っているかを確認する作業です。

モニタリングでは、以下の点について専門員が聞き取りを行います。

  • サービスの利用頻度に不足はないか。
  • サービス提供事業者との間でトラブルはないか。
  • ご本人やご家族の心身の状態に変化はないか。

このモニタリングの結果に基づいて、利用計画の見直し(更新・変更)が必要かどうかが判断されます。この機会に、日頃のちょっとした不満や、新たに出てきたニーズを専門員に伝えましょう。

計画の更新と変更申請

サービス等利用計画は、原則として年に一度(最長2年)見直しのための更新が必要です。また、ご本人の状態が急変した場合や、家族の介護体制が大きく変わった場合など、緊急でサービス量を増やしたい場合は、計画の「変更申請」を行うことができます。

✅ 成功のコツ

ご家族の介護負担が増加し、「このままでは倒れてしまう」と感じたら、我慢せずにすぐに相談支援専門員に連絡しましょう。変更申請により、短期入所や居宅介護の時間を一時的に増やすなど、迅速な対応を検討してもらえます。


ステップ4:福祉サービスの枠を超えた相談連携

福祉の相談は、居宅介護やグループホームといった障害福祉サービスの利用だけに留まりません。時には、福祉の枠を超えて、医療、教育、法律、経済など、他の専門分野との連携が必要になります。

医療機関(MSW)との連携

入院や退院、あるいは病気の進行に伴う相談は、病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)と連携して進めることが重要です。特に、退院後の生活の場の確保や、医療費助成の申請にはMSWの専門的な支援が役立ちます。

相談支援専門員は、MSWと連携を取り、医療機関での治療と、退院後の地域生活がスムーズに繋がるよう、情報共有や調整を行います。この連携は、支援の「切れ目」をなくすために不可欠です。

法的な手続き(成年後見など)に関する相談

ご本人の財産管理契約行為について、将来的な不安がある場合は、福祉サービスとは別に成年後見制度の利用を検討する必要があります。

相談支援専門員や社会福祉協議会は、成年後見制度の概要や、司法書士・弁護士といった専門家への繋ぎ役となります。ご家族だけで抱え込まず、早めに専門家の意見を聞きましょう。

教育・就労支援機関との連携

学校を卒業し就労を目指す場合や、ブランクを経て再就職を目指す場合、相談支援専門員ハローワーク地域障害者職業センター(職セン)と連携を取ります。

  • 就労移行支援利用中:職センと相談支援事業所が連携し、職業訓練と生活支援を両立させます。
  • 特別支援学校在学中:学校の進路指導担当者と連携し、卒業後の生活(福祉サービス、住居など)の計画を立てます。

福祉相談は、生涯を通じてのサポートを見据えた、多岐にわたる連携の上に成り立っています。


よくある質問(FAQ)と次のアクション

福祉相談の流れの中で、ご本人やご家族が特に疑問に思う点についてお答えします。

Q1:相談員との相性が悪いと感じたら変更できるか?

A:はい、変更できます。相談支援専門員は、あなたの生活の設計図を作成する重要なパートナーです。相性が合わない、意見が対立する、あるいは頻繁に連絡が取れないといった問題があれば、遠慮せずに変更を申し出ましょう。

変更したい場合は、現在の相談支援事業所の管理者、または市区町村の福祉担当課に連絡し、他の事業所の紹介を依頼してください。ご本人の意思は最大限尊重されます。

Q2:福祉サービスは「誰が費用を負担」するのか?

A:障害福祉サービスの利用料は、原則として費用の1割をご本人が負担します。ただし、前年度の世帯所得に応じて、月ごとの自己負担額に上限(負担上限月額)が設定されています。

この負担上限月額は、0円(無料)4,600円9,300円などと定められており、多くの低所得世帯では自己負担額が0円または低く抑えられています。費用の詳細については、市区町村の福祉担当課に確認しましょう。

Q3:相談からサービス利用開始まで、どれくらいの期間がかかるか?

A:必要なサービスの種類によって大きく異なりますが、一般的には1ヶ月半から3ヶ月程度かかります。特に、障害支援区分の認定(調査と審査会)に時間がかかるためです。

  • 即時性:相談支援専門員による情報提供や、緊急性が高い短期入所の調整などは比較的早く対応可能です。
  • 時間を要するもの:障害支援区分の認定、グループホームなどの入居先の選定、新しい事業所の立ち上げ。

お急ぎの場合は、相談時にその旨を明確に伝え、迅速な対応を必要とする理由(例:親の入院予定など)を説明しましょう。

次のアクション:お住まいの地域の「相談支援窓口」を調べる

福祉相談を始める最初の具体的なアクションは、お住まいの市区町村のウェブサイト、または福祉担当課に電話し、特定相談支援事業所のリストを入手することです。

リストを手に入れたら、事業所に電話で「相談したい」と伝え、初回のアセスメント(面談)の予約を取りましょう。これが、あなたの生活に合った支援計画を作成する第一歩となります。


まとめ

  • 福祉相談は、「悩みの整理」から始まり、「障害支援区分の認定」「相談支援専門員による計画作成」、そして「サービス利用とモニタリング」という一連の流れで進みます。
  • サービス利用量(時間数)を決定する障害支援区分の訪問調査では、日常の困難な状況を正確に伝えることが極めて重要です。
  • 長期的な支援のパートナーとなる相談支援専門員と、ご家族のニーズや将来の希望について正直に話し合い、医療、法律、就労など、枠を超えた連携を依頼しましょう。

金子 匠

金子 匠

かねこ たくみ55
編集長📚 実務経験 30
🎯 生活サポート🎯 制度・法律

📜 保有資格:
社会福祉士、精神保健福祉士

障害者支援施設で30年間勤務し、施設長を経験。現在はすぐサポ編集長として、障害のある方とご家族が必要な情報にアクセスできる環境づくりに取り組んでいます。「制度は複雑だけど、使えば生活が楽になる」という信念のもと、分かりやすい情報発信を心がけています。

大学卒業後、障害者支援施設に就職し、30年間にわたり現場で支援に携わってきました。生活支援員として10年、サービス管理責任者として15年、そして施設長として5年の経験があります。特に印象に残っているのは、重度の知的障害があり、施設入所が当然と思われていた方が、適切な支援と環境調整により地域での一人暮らしを実現したケースです。「できない」と決めつけず、その人に合った支援を考えることの大切さを学びました。現在は現場を離れ、すぐサポの編集長として、これまでの経験を記事という形で多くの方に届けることをミッションとしています。制度や法律の解説記事では、「専門用語を使わず、中学生でも分かる言葉で」を心がけています。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

大学で社会福祉を学び、実習で出会った利用者の方々の笑顔に感動したことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

重度の知的障害のある方が、適切な支援により地域での一人暮らしを実現したこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

専門用語を使わず、中学生でも分かる言葉で伝えることを大切にしています。

🎨 趣味・特技

読書、散歩

🔍 最近気になっているテーマ

障害者総合支援法の改正動向、ICTを活用した新しい支援の形

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