初めての障害者福祉サービス申請ガイド

安心して一歩を踏み出すために!初めての障害者福祉サービス申請ガイド
障害のある方やそのご家族が、「もっと楽に生活したい」「自分らしい活動の場を見つけたい」と考えたとき、最初に直面するのが行政への申請という高い壁です。制度が複雑で、どこから手をつければいいのか戸惑うことも多いのではないでしょうか。
この記事では、障害者総合支援法に基づく福祉サービスの申請から利用開始までの流れを、専門用語を噛み砕いて丁寧に解説します。読み終える頃には、申請の全体像が分かり、自信を持って窓口へ相談に行けるようになるはずです。
福祉サービスは、あなたの「権利」として用意されている大切なサポートです。一人で抱え込まず、社会の力を上手に借りるためのヒントを一緒に見ていきましょう。
障害者福祉サービスとは?制度の基本を知る
自分に合った支えを見つける第一歩
障害者福祉サービスとは、障害のある方が日常生活や社会生活をスムーズに送れるよう、国や自治体が提供する公的な支援のことです。大きく分けて、食事や入浴などの介助を行う「介護給付」と、リハビリや就労訓練を行う「訓練等給付」の2種類があります。
これらのサービスは「障害者総合支援法」という法律に基づいています。この法律の大きな特徴は、障害の種別(身体・知的・精神・難病)にかかわらず、共通の仕組みでサービスを受けられる点にあります。自分にどのような支援が必要なのかを考えることが、理想の生活への第一歩となります。
どんなサービスが利用できるのか
具体的なサービスは多岐にわたります。例えば、自宅にヘルパーさんが来てくれる「居宅介護」、日中に施設で活動する「生活介護」、就職を目指すための「就労移行支援」などがあります。また、グループホームなどの住まいの支援も含まれます。
どのサービスをどれくらい利用するかは、本人の状況や希望に合わせて決定されます。「毎日お風呂に入るのが大変」「将来は一般企業で働きたい」といった、日々の小さな悩みや将来の夢が、利用するサービスを選ぶ基準になります。まずは自分の「困りごと」を整理してみるのが良いでしょう。
対象となる方と年齢のルール
基本的に、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方が対象です。また、手帳を持っていなくても、特定の難病がある方や、医師の診断によって支援が必要と認められた方も対象となる場合があります。年齢については、18歳以上が主な対象となりますが、児童向けのサービスも別途用意されています。
ただし、介護保険制度の対象となる65歳以上の方や、特定の特定疾患がある40歳から64歳の方の場合は、介護保険サービスが優先されます。どちらの制度を使うべきか迷ったときは、自治体の窓口で現在の年齢と状況を伝えて相談してみることをおすすめします。
💡 ポイント
サービスは「与えられるもの」ではなく、あなたの生活を豊かにするために「選んで使うもの」です。まずは情報収集から始めてみましょう。
申請の前に準備しておきたい3つのこと
現在の困りごとをメモにまとめる
窓口に行くと、現在の生活状況について詳しく聞かれます。いざ担当者を前にすると緊張してしまい、「一番伝えたかったことを言い忘れた」ということがよくあります。そうならないために、「何に困っているか」「どんな生活をしたいか」を事前にメモしておきましょう。
「朝起きるのが辛くて通所に間に合わない」「一人で外出するのが怖くて買い物に行けない」といった具体的なエピソードがあると、相談員も状況を把握しやすくなります。完璧な文章である必要はありません。箇条書きやキーワードだけでも、立派な準備資料になります。
障害者手帳や診断書を確認する
サービスを申請する際、障害の状態を証明する書類が必要になります。最も一般的なのは障害者手帳ですが、手帳を持っていない場合は、医師による診断書や意見書を用意することになります。手帳の更新時期が近い場合は、併せて確認しておくと二度手間になりません。
精神障害や発達障害、難病などの場合は、定期的な通院状況や処方されているお薬の情報も大切です。お薬手帳も一緒に持っていくと、医療的な配慮が必要な場合に役立ちます。情報の正確さが、適切な支援の決定に繋がります。
身近な相談相手を一人見つける
一人で全てを抱えて申請に臨むのは大変です。ご家族や友人はもちろん、すでに病院に通っているならソーシャルワーカーさん、地域にある相談支援事業所など、専門の知識を持った人に声をかけておきましょう。申請の付き添いをお願いできる場合もあります。
特に「特定相談支援事業所」は、サービス利用のための計画案を作成してくれる心強い味方です。申請の前段階から相談に乗ってくれるところも多いため、自治体の窓口で「近くの相談支援事業所を教えてほしい」と尋ねてみるのも良い方法です。
✅ 成功のコツ
「自分一人で何とかしなきゃ」と思わなくて大丈夫です。専門家を頼ることも、自立した生活に向けた大切なスキルの一つですよ。
申請から利用開始までの7つのステップ
ステップ1:市区町村の窓口へ相談
まずは、お住まいの市区町村にある「障害福祉課」などの窓口へ行きましょう。ここでは、どのようなサービスを利用したいのか、現在の状況はどうなのかを伝えます。これを「利用相談」と呼びます。この時、先ほど準備したメモが活躍します。
窓口では、サービスの全体的な説明や、今後のスケジュールの案内があります。また、申請に必要な書類一式を受け取ります。混雑していることもあるため、事前に電話で予約をしておくと、落ち着いて相談できるでしょう。
ステップ2:サービス利用の申請
窓口で書類を提出し、正式に申請を行います。この時に必要なものは、申請書のほか、障害者手帳や印鑑(スタンプ印以外)、マイナンバーがわかる書類などです。自治体によっては郵送での受け付けを行っている場合もありますが、初回は対面での手続きが安心です。
申請が受理されると、次のステップである「調査」の日程調整が行われます。この日はあくまで手続きの日ですので、すべてを完璧に話そうとしなくても大丈夫です。まずは「支援を受けたい」という意思表示をすることが大切です。
ステップ3:認定調査(ヒアリング)
自治体の調査員が自宅を訪問したり、窓口で面談したりして、日常生活の状況について詳しくヒアリングを行います。これを「認定調査」と言います。食事、入浴、着替えといった動作から、外出時の様子、金銭管理、コミュニケーションの状況まで、80項目程度の質問が行われます。これを元に、どの程度の支援が必要かを数値化します。
この調査では、つい「いつもは頑張ればできること」を「できる」と答えてしまいがちですが、ありのままを伝えることが重要です。毎日ではなく時々できることは、「できない」または「支援が必要」と伝えましょう。「一番大変な日の状況」を基準に話すのが、適切な判定を受けるためのコツです。
認定調査でのチェックポイント
- 食事、入浴、排泄、着替えなどの身の回りの動作
- 歩行や移乗(乗り換え)などの移動能力
- 買い物、掃除、調理などの家事能力
- 金銭管理や通院、手続きなどの社会生活能力
- パニックや自傷、こだわりなどの行動特性(必要な場合)
ステップ4:障害支援区分の決定
認定調査の結果と、医師の意見書を元に、審査会を経て「障害支援区分」が決定されます。区分は「区分1」から「区分6」まであり、数字が大きいほど支援の必要性が高いと判断されます。訓練等給付のみを希望する場合は、区分認定が不要なケースもあります。
この区分によって、利用できるサービスの量(時間数など)の上限が決まります。もし決定された区分に納得がいかない場合は、不服申し立ての制度もありますが、まずは決定の根拠を担当者に確認してみましょう。自分の状態が公的にどのように判断されたかを知る機会にもなります。
ステップ5:サービス等利用計画案の作成
区分が決定したら、実際にどのようなスケジュールでサービスを使うかという計画を立てます。これを「サービス等利用計画案」と言います。自分で作成することも可能ですが(セルフプラン)、多くの場合は相談支援専門員というプロにお願いします。
専門員は、あなたの希望を聞き取りながら、どの事業所のサービスを何曜日に使うかなどを一緒に考えてくれます。この計画案が、その後の生活の設計図になります。自分の「わがまま」と思えるような要望も、ここでは大切な材料になりますので、どんどん伝えましょう。
ステップ6:支給決定と受給者証の交付
計画案を自治体に提出すると、内容が審査され、正式に「支給決定」が下ります。その後、自宅に「障害福祉サービス受給者証」が届きます。これは、サービスを利用するためのパスポートのようなものです。ピンク色や水色の手帳型やカード型の厚紙であることが多いです。
受給者証には、利用できるサービスの種類、量、期間、そして負担する費用の月額上限額が記載されています。この書類は、事業所と契約する際やサービスを受ける際に必ず必要になるため、大切に保管してください。
ステップ7:事業所との契約・利用開始
受給者証が届いたら、いよいよ実際にサービスを提供してくれる事業所(ヘルパー派遣会社や通所施設など)と契約を結びます。事業所探しも、相談支援専門員が手伝ってくれます。複数の事業所を見学して、雰囲気が自分に合っているか確認することをおすすめします。
契約が完了すれば、ようやくサービス利用開始です!最初は緊張するかもしれませんが、合わないと感じたら後で変更することも可能です。まずは「試してみる」という軽い気持ちでスタートしてみましょう。
💡 ポイント
申請から受給者証が届くまでは、通常1〜2ヶ月程度かかります。早めに準備を始めましょう。
利用にかかる費用と負担上限額の仕組み
原則1割負担と「月額上限」のルール
福祉サービスの利用料金は、原則として費用の1割を自己負担することになっています。しかし、際限なく負担が増えるわけではありません。世帯の所得状況に応じて、1ヶ月に支払う金額の「上限額」が決まっています。これを超えた分は、支払う必要がありません。
例えば、生活保護受給世帯や市町村民税非課税世帯の方は、月額上限額が「0円」です。つまり、サービスの自己負担は一切かかりません。一般の世帯でも、所得に応じて上限額が設定されており、多額の負担にならないよう配慮されています。
世帯所得による月額上限額の一覧
| 世帯の区分 | 年収の目安 | 負担上限月額 |
|---|---|---|
| 生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
| 低所得 | 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
| 一般1 | 市町村民税課税世帯(所得割16万円未満) | 9,300円 |
| 一般2 | 上記以外の世帯 | 37,200円 |
⚠️ 注意
食費や光熱費、創作活動の材料費などは、上記の負担上限額とは別に実費としてかかります。契約時に事業所に確認しましょう。
その他の軽減制度について
負担をさらに軽くするための制度もあります。例えば、同じ世帯の中で複数の人がサービスを利用している場合に合算して負担を減らす「高額障害福祉サービス等給付金」や、施設入所者の食費・光熱費を減免する「補足給付」などがあります。
また、自治体独自に負担を助成しているケースもあります。お金の心配があるとサービスの利用をためらってしまいますが、経済状況に応じたセーフティネットがしっかり用意されています。予算に不安がある場合は、申請時に「月々の支払いが心配です」と正直に相談してみるのが一番の解決策です。
【実例】サービス申請で生活が変わったAさんの話
申請前:外出ができず引きこもりがちな日々
30代のAさんは、精神的な障害があり、数年間自宅で過ごしていました。買い物に行かなければなりませんが、人混みが怖くてパニックになりやすく、食事はコンビニ弁当ばかり。家族も高齢になり、今後の生活に強い不安を感じていました。行政の窓口に行くことすら、大きな勇気が必要な状態でした。
ある日、勇気を出して市役所の窓口へ電話をしました。そこで紹介された相談支援事業所の専門員さんが自宅に来てくれることになり、Aさんの話を聞いてくれました。「一人で買い物に行くのが怖いなら、同行援護や移動支援というサービスがありますよ」という提案が、Aさんの希望の光となりました。
申請中:認定調査で伝えた「本当のこと」
Aさんは当初、「自分はまだ若いし、歩けるんだから、支援を受けるのは申し訳ない」と考えていました。しかし、相談支援専門員さんの助言で、認定調査では「身体は動くけれど、精神的な不安から足がすくんで動けなくなる」という「見えない辛さ」をありのままに伝えました。
その結果、適切な支援区分が認められ、週に2回の「移動支援(ガイドヘルパー)」と、週に3回の「就労継続支援B型」の利用が決まりました。受給者証が届いたとき、Aさんは「やっと社会と繋がれる切符を手に入れた」と感じたそうです。
利用開始後:新しい居場所と自信
サービス利用開始から半年。Aさんは今、ガイドヘルパーさんと一緒に少し遠くのスーパーへ買い物に行けるようになりました。また、B型事業所では軽作業を通じて仲間ができ、少しずつ笑顔が増えています。何より、家族が「Aさんの表情が明るくなった」と喜んでいます。
「もっと早く相談すればよかったです。サービスは自立を妨げるものではなく、自立するための階段なんだと気づきました」とAさんは語ります。最初は不安だった申請も、伴走してくれる支援者がいたからこそ乗り越えられました。最初の一歩が、その後の景色を大きく変えたのです。
「福祉サービスを使うことは、自分の人生を諦めることではなく、自分の人生をより良くするための投資です。」
— ある相談支援専門員の言葉
よくある質問(FAQ)
Q. 障害者手帳がないと、絶対に申請できませんか?
A. いいえ、そんなことはありません。障害者手帳を持っていなくても、医師の診断書や意見書があり、自治体が「支援が必要」と認めればサービスを利用できます。特に発達障害や難病などの場合、手帳を持たずにサービスを利用している方も多くいらっしゃいます。まずは窓口で「手帳はないが、困りごとがある」と伝えてみてください。
Q. 申請したことは、職場や近所に知られてしまいますか?
A. 勝手に知られることはありません。行政や事業所には厳格な守秘義務があります。本人の同意なしに職場や近隣住民に連絡が行くことはありませんので安心してください。ただし、自宅にヘルパーさんの車が来たり、送迎車が止まったりすることで、近所の方に利用を知られる可能性はあります。気になる場合は、目立たない場所での待ち合わせなどを事業所に相談できます。
Q. サービスが合わないと思ったら、すぐにやめられますか?
A. はい、可能です。サービスは契約に基づいて利用するものなので、解約や変更は本人の自由です。「担当のヘルパーさんと相性が合わない」「通所してみたけれど雰囲気が合わない」といった場合は、相談支援専門員に伝えて、別の事業所を探したりサービスの種類を変えたりすることができます。無理して続ける必要はありません。
Q. 途中で障害の状態が変わったらどうなりますか?
A. 区分や内容を見直すことができます。状態が悪化したときだけでなく、回復して支援が少なくて済むようになったときも、再度「区分変更申請」を行うことができます。定期的なモニタリング(状況確認)も行われますので、その都度、相談支援専門員に今の状態を伝えましょう。
⚠️ 注意
解約の際は、契約書に記載された期限(例:1週間前までに連絡)を守る必要があります。トラブルを避けるため、契約時の説明はしっかり聞いておきましょう。
まとめ
初めての障害者福祉サービス申請は、誰にとっても不安なものです。しかし、一歩を踏み出すことで、今抱えている困難が少しずつ解消され、新しい生活の可能性が広がっていきます。大切なのは、一人で完璧を目指さないことです。
- まずは現状の困りごとをメモに書き出してみる。
- 市区町村の窓口へ行き、専門家に相談することから始める。
- 認定調査ではありのままの、一番大変な時の状況を伝える。
- 相談支援専門員というパートナーを味方につけて計画を立てる。
- 費用の負担上限を知り、経済的な不安を解消する。
- 「とりあえず試してみる」という気持ちで、スモールステップから開始する。
福祉サービスは、あなたがあなたらしく生きるための強力なサポーターです。この記事が、あなたの第一歩を後押しする力になれば幸いです。もし今、迷っているなら、まずは役所の電話番号を調べてみることから始めてみませんか?
あなたの毎日が、少しでも穏やかで充実したものになることを心から願っています。

阿部 菜摘
(あべ なつみ)36歳📜 保有資格:
社会保険労務士、精神保健福祉士
社会保険労務士として障害年金の申請支援を専門に12年。「難しい」と言われる障害年金を、分かりやすく解説します。医療費助成、各種手当など、お金に関する制度情報をお届けします。
大学卒業後、社会保険労務士事務所に就職し、障害年金の申請支援を専門に担当してきました。これまで500件以上の申請をサポートし、多くの方の生活を支えるお手伝いをしてきました。障害年金は「難しい」「通らない」と諦めている方が多いですが、適切な書類準備と申請を行えば、受給できる可能性は十分あります。実際、初診日の証明が難しいケースでも工夫して認定を受けた例もあります。特に心に残っているのは、精神障害で長年苦しんでいた方が障害年金を受給できたことで、「経済的な不安が減り、治療に専念できるようになった」と感謝されたこと。制度を知ることの大切さを実感しました。記事では、障害年金の申請方法、特別障害者手当、医療費助成など、「知らないと損する」お金の制度を、専門家として正確かつ分かりやすく解説します。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
社会保険労務士として、障害年金の申請支援を通じて多くの方の生活を支えたいと思ったことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
精神障害のある方が障害年金を受給でき、「経済的な不安が減り、治療に専念できるようになった」と感謝されたこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
「知らないと損する」お金の制度を、専門家として正確かつ分かりやすく解説します。
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