初めての障害者相談:何から相談すればよい?

🔰 初めての障害者相談:何から相談すればよい?不安を解消し、必要な支援に繋がるためのロードマップ
「わが子の発達の遅れを指摘されたが、まずどこに相談に行くべきだろう?」「病気やケガで障害者手帳を取得したが、生活費や仕事について、何から話し始めればいいのかわからない」「制度が複雑すぎて、窓口で何をどう伝えれば、必要な支援に繋がるのか不安だ」
障害や病気によって生活に困難が生じたとき、公的な支援を受けようとして、まず直面するのが**「相談の壁」です。行政、医療、福祉、教育など、相談窓口は多岐にわたり、それぞれが異なる役割を担っているため、「自分にとっての最初の相談先」**を見つけるのが難しいと感じる方は少なくありません。
しかし、「最初の一歩」さえ踏み出せれば、あなたの「困りごと」は必ず専門的な支援へと繋がります。大切なのは、「何に困っているのか」を整理し、「相談窓口の役割」を知ることです。適切な窓口で相談できれば、障害者手帳の取得、福祉サービスの利用、経済的な手当、就労支援など、あなたの生活を支える公的なネットワークが動き出します。
この記事では、障害のある方やご家族が抱える具体的な「困りごと」を五つのカテゴリに分類し、それぞれの「最初の相談先」と、相談時に何をどのように伝えれば良いかという具体的なロードマップを、全6000字以上の大ボリュームで徹底的に解説します。「相談が苦手」を「相談の力」に変えるための知識を身につけ、安心して支援の扉を開きましょう。
🔍 1. 相談の第一歩:あなたの「困りごと」を整理する
相談窓口に行く前に、まずはご自身の**「現状のSOS」を整理しましょう。相談の目的が明確になることで、「たらい回し」**を防ぎ、スムーズに専門的な支援へ繋がることができます。
ステップ①:「誰の」「何を」「どうしたい」を明確化する
以下の三点を簡潔に書き出してみましょう。
- 誰の困りごと?(対象者): 子ども、配偶者、自分自身、など。
- 何に困っている?(具体的なSOS): 例:「朝起きられない」「仕事が続かない」「お金の管理が不安」「子どもの言葉の遅れが気になる」。
- どうしたい?(最終的なニーズ): 例:「安心して暮らせる居場所が欲しい」「経済的に安定したい」「子どもの発達を促したい」。
💡 相談は「診断」より「困りごと」から
「私は〇〇病ではないか」と相談するよりも、「**〇〇という症状(例:週に3日以上パニックになる)**で、〇〇という困りごと(例:家族が疲弊している)が発生している」と事実を伝える方が、支援者は適切な窓口へ繋げやすくなります。診断名がなくても相談は可能です。
ステップ②:五つの「困りごとカテゴリ」で相談先を絞る
あなたの最も切実な困りごとが、以下のどのカテゴリに当てはまるかで、**「最初の相談先」**が決まります。
| 困りごとのカテゴリ | 主な内容 | 最初の相談先(目安) |
|---|---|---|
| 【A】診断・手帳・検査 | 病気や障害の確定診断、手帳の取得、発達検査を受けたい。 | 医療機関(専門医) |
| 【B】生活・福祉サービス | ホームヘルプ、デイサービス、グループホームを利用したい。 | 特定相談支援事業所 |
| 【C】経済・年金・手当 | 障害年金、各種手当、医療費助成について知りたい。 | 市町村役場(福祉課)、年金事務所 |
| 【D】就労・仕事 | 仕事を探したい、職場での配慮について相談したい。 | ハローワーク、地域障害者職業センター |
| 【E】子どもの発達・教育 | 療育を受けたい、特別支援教育について知りたい。 | 児童相談所、市町村役場(福祉課) |
🏥 2. 【A】診断・手帳の取得に関する相談
障害者支援の第一歩となる**「手帳の取得」や「診断の確定」**に関する相談は、医療機関と行政機関が連携して行われます。
最初の相談先:かかりつけ医、または専門の医療機関
障害者手帳の申請には、医師の診断書が不可欠です。まずは、現在治療を受けているかかりつけ医に相談します。
- **身体障害:**整形外科、内科、眼科など、原因となる疾患の専門医。
- **精神障害:**精神科、心療内科。
- **知的障害(子ども):**小児科、小児神経科、または児童相談所。
相談時に伝えるべきこと
「障害者手帳の取得を検討しており、診断書を書いていただきたい」と明確に伝えます。医師には、以下の点を具体的に伝えて、生活上の困難度を診断書に反映してもらうことが重要です。
- 症状の持続期間と波:「症状が出始めた時期」「良くなったり悪くなったりする波の頻度」。
- 生活上の制限:「自分で着替えができない」「電車に一人で乗れない」「金銭管理が困難」など、具体的な日常生活での困りごと。
手帳取得の次のステップ:市町村役場、または児童相談所へ
医師の診断書が揃ったら、手帳の申請を行います。
- 身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳:市町村役場の障害福祉担当窓口へ申請します。
- 療育手帳(知的障害):18歳未満は児童相談所、18歳以上は知的障害者更生相談所(自治体による)で、判定を受ける必要があります。
🛒 3. 【B】生活・福祉サービス利用に関する相談
**「日常生活で具体的な支援(ヘルパー、通所施設など)が欲しい」**という相談は、相談支援専門員に依頼します。
最初の相談先:特定相談支援事業所(相談支援専門員)
障害福祉サービス利用の専門家であり、あなたの支援計画をコーディネートする司令塔の役割を果たします。
相談時に伝えるべきこと:具体的なニーズと目標
相談支援専門員は、あなたの話を元に**「サービス等利用計画」**を作成します。以下の点を具体的に伝えましょう。
- 現在の生活環境:誰と住んでいるか、日中何をしているか。
- 「できないこと」と「手助けが欲しいこと」:例:「食事の準備ができないのでホームヘルプが欲しい」「日中、一人でいると不安なので**デイサービス(生活介護など)**に通いたい」。
- 将来の目標:「いつか一人暮らしをしたい」「週に3回は外に出たい」など、支援を通じてどうなりたいかを伝える。
✅ 相談支援専門員が担う重要な役割
相談支援専門員は、行政の障害支援区分の認定調査(必要なサービス量の判定)から、サービス事業所の選定、医療機関との連携までを一手に引き受けます。この専門員を見つけることが、福祉サービス利用への最もスムーズなルートです。
福祉サービス利用の次のステップ:障害支援区分の申請
相談支援専門員と話した後、市町村窓口で障害支援区分の認定申請を行います。認定調査員による訪問調査を受け、**支援の必要度(区分1〜6)**が判定され、利用できるサービス量の上限が決まります。
💰 4. 【C】経済・年金・手当に関する相談
**「病気や障害によって収入が途絶えた」「医療費の負担が大きい」**といった金銭的な困りごとは、市町村窓口や年金事務所に相談します。
最初の相談先:市町村役場の福祉担当窓口
手当や医療費助成といった、地域に密着した福祉サービスに関する相談は、まず市町村窓口へ。
相談時に伝えるべきこと
以下の**「金銭的なSOS」**を具体的に伝えましょう。
- 収入源の状況:「現在、収入はゼロである」「障害年金を受け取れるか知りたい」。
- 医療費の負担:「毎月の通院費が高額で困っている」。
- 必要な手当:「特別障害者手当などの対象になるか知りたい」。
障害年金に関する専門相談:年金事務所
障害年金(病気やケガで生活や仕事に支障が出た場合に受け取れる年金)に関する相談は、年金事務所が専門です。
- 相談時に伝えるべきこと:「初診日(初めて医師の診察を受けた日)」「加入していた年金の種類(国民年金、厚生年金)」を伝える。これらが受給資格の有無を判断する上で最も重要です。
💼 5. 【D】就労・仕事に関する相談
「働きたい」「職場での配慮が欲しい」といった就労に関する相談は、ハローワークまたは専門の職業センターが窓口です。
最初の相談先:ハローワーク(公共職業安定所)の専門援助部門
ハローワークには、障害者専門の相談員が配置されており、障害者雇用に関する情報提供や求職活動の支援を行います。
相談時に伝えるべきこと
**「できること」と「配慮してほしいこと」**を具体的に伝えましょう。
- 職歴とスキル:過去の仕事経験、資格、得意なスキル。
- 就労希望:「一般企業で働きたい(一般就労)」のか、「福祉事業所(就労継続支援)で働きたい」のか。
- 必要な合理的配慮:例:「満員電車が苦手なので時差出勤を希望」「一度に多くの指示をされると混乱するので業務をメモで指示してほしい」。
就職後の定着支援:地域障害者職業センター
ハローワークで就職が決まった後や、職場で困りごとが発生した場合、地域障害者職業センターの**ジョブコーチ(職場適応援助者)**支援が役立ちます。
- **役割:**ジョブコーチが職場を訪問し、業務内容の調整、同僚への理解促進、コミュニケーションのサポートなど、職場への定着を支援します。
🏫 6. 【E】子どもの発達・教育に関する相談
乳幼児期〜学齢期の子どもの発達の遅れや療育に関する相談は、児童相談所や市町村窓口が入口となります。
最初の相談先:児童相談所、または市町村の保健センター
子どもの福祉や発達の専門的な評価に関する相談は、児童相談所が中心となります。
- 児童相談所:子どもの療育手帳の判定、発達検査の実施、児童発達支援などの福祉サービス利用に関する助言。
- **保健センター:**乳幼児健診で発達の遅れを指摘された場合や、療育に関する情報提供。
相談時に伝えるべきこと
具体的な行動や症状を、いつから始まっているかを添えて伝えます。
- 発達の状況:「2歳だが、まだ言葉が出ない」「集団行動が苦手で、先生の指示が聞けない」。
- 家庭での困りごと:「偏食がひどく、食事の準備に困る」「夜泣きが激しく、親も寝不足である」。
教育に関する専門相談:教育委員会(特別支援教育担当)
学校での支援や配慮に関する相談は、お住まいの地域の教育委員会に連絡します。
- 役割:****特別支援学校、特別支援学級、通級指導教室など、子どもの特性に合った教育環境の選択に関する情報提供や相談を行います。
- 個別教育支援計画:学校と連携し、学習面・生活面における具体的な合理的配慮を定めた計画作成を支援します。
📝 7. 初めての相談を成功させるための具体的なヒント
相談窓口を最大限に活用し、スムーズに支援を受けるための具体的な工夫を紹介します。
ヒント①:アポイントメント(予約)の徹底
多くの専門窓口(児童相談所、相談支援事業所、年金事務所など)は予約制です。
- **事前に電話で:**相談内容を簡単に伝え、「予約が必要か」「相談時間はどれくらいか」を確認します。
- **必要な書類の確認:**手帳、診断書、直近の血液検査結果など、持参すべき書類を確認し、忘れずに持っていきましょう。
ヒント②:相談時に利用できる「代行者」
ご本人が緊張したり、症状のために正確に状況を伝えられなかったりする場合は、信頼できる代行者に同席してもらいましょう。
- **家族や友人:**最も身近な代行者です。客観的な視点で困りごとを説明してもらえます。
- 相談支援専門員:福祉サービス利用の相談においては、専門員が代理人として手続きを進められる場合があります。
- **医療ソーシャルワーカー(MSW):**病院にいるMSWは、退院後の生活や制度について、病院と福祉機関の連携をサポートしてくれます。
ヒント③:記録とメモの重要性
相談員から得た情報は、制度の名前や専門用語が多く、忘れてしまいがちです。
- 記録用紙の準備:「相談日」「相談窓口と担当者名」「相談内容」「次にとるべき行動(To Do)」を記入する簡単な用紙を準備しておきましょう。
- 写真や動画の活用:子どもの行動障害や、介助が必要な場面など、言葉で伝えるのが難しい困りごとは、状況を撮影した写真や動画を提示するのも有効です(事前に窓口に確認を)。
🫂 8. 一人で抱え込まないための支援ネットワーク
初めての相談で戸惑うのは当然です。重要なのは、**「一箇所で解決しなくても良い」**と知ることです。
相談の羅針盤となる「基幹相談支援センター」
市町村が設置する基幹相談支援センターは、地域の相談支援体制の要です。
- 役割:「どこに相談したらいいかわからない」「複数の窓口に相談したが、解決しない」といった複雑・困難なケースや、緊急時の相談を受け付け、適切な専門機関へ繋ぎます。初めての相談で迷った場合、ここに連絡してみるのも一つの方法です。
「つながり」が回復の力になる
障害者支援は、「医療(診断)」から「福祉(生活支援)」、そして**「教育・就労(社会参加)」へと、連携しながら進みます。最初に勇気を出して相談したその一歩が、あなたやご家族の生活の質の向上、そしてより豊かな社会参加**へと繋がる確かな道筋となります。不安を専門家に打ち明け、共に解決への道を見つけましょう。
まとめ
- 初めての相談では、まず**「誰の」「何を」「どうしたい」を整理し、「診断・手帳」「生活・福祉」「経済」「就労」「子どもの発達・教育」の五つのカテゴリに分けて、最も切実な困りごとを特定する。
- 福祉サービスの利用を希望する場合は、特定相談支援事業所(相談支援専門員)が最初の相談先となる。ここでサービス等利用計画を作成し、障害支援区分の認定手続きへと進む。
- 診断・手帳の取得は、まず専門の医療機関を受診し、診断書を得てから市町村役場(療育手帳は児童相談所)へ申請する。
- 経済的な困りごとは市町村役場(福祉課)や年金事務所へ、就労に関する相談はハローワーク**へ繋ぐ。
- 相談を成功させるためには、事前の予約、代行者の同伴、メモによる記録、そして「できること」と「必要な配慮」を具体的に伝えることが重要である。
- 複数の窓口で迷った場合は、基幹相談支援センターが、適切な支援へと繋ぐ羅針盤となる。

高橋 健一
(たかはし けんいち)50歳📜 保有資格:
社会福祉士
市役所の障害福祉課で20年間勤務し、制度の運用や窓口対応を担当してきました。「制度は難しい」と言われますが、知れば使える便利なツールです。行政の内側から見た制度のポイントを、分かりやすくお伝えします。
大学卒業後、地方自治体に入庁し、障害福祉課に配属されて20年。障害者手帳の交付、障害福祉サービスの支給決定、各種手当の申請受付など、幅広い業務を経験しました。行政職員として心がけていたのは、「制度を正確に伝えつつ、温かく対応する」こと。窓口に来られる方は不安を抱えています。制度の説明だけでなく、その方の状況に合わせた情報提供を大切にしてきました。退職後、民間の相談支援事業所に転職し、今度は「申請する側」の視点も理解できました。行政と民間、両方の経験を活かして、制度の仕組みだけでなく、「実際にどう使うか」まで伝えられるのが強みです。記事では、障害者総合支援法、障害者雇用促進法、各種手当など、制度の正確な情報を「難しい言葉を使わず」解説します。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
公務員として地域に貢献したいと思い、障害福祉課に配属されたことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
窓口対応で、制度を活用して生活が楽になったと感謝されたこと。行政と民間両方の視点を得られたこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
制度の正確な情報を「難しい言葉を使わず」伝えることを大切にしています。
🎨 趣味・特技
将棋、歴史小説
🔍 最近気になっているテーマ
マイナンバーと福祉制度の連携、自治体DXの進展





