障害者相談の際に準備しておきたい情報リスト

相談をスムーズに進めるために!障害福祉相談で準備しておきたい情報リスト
障害のある方やそのご家族にとって、自治体の窓口や相談支援事業所へ行くことは、新しい一歩を踏み出す大切な機会です。しかし、「何を話せばいいのかわからない」「自分の困りごとをうまく伝えられるか不安」と感じて、つい足が遠のいてしまうこともあるのではないでしょうか。
相談の場は、あなたの生活をより良くするための作戦会議のようなものです。あらかじめ情報を整理しておくことで、相談員さんもあなたの状況を正確に把握でき、より適切なサービスや支援の提案を受けやすくなります。
この記事では、相談に行く前に準備しておきたい情報をチェックリスト形式で詳しく解説します。この記事を読み終える頃には、どんな準備をすれば安心して相談に臨めるのかが明確になり、前向きな気持ちで窓口へ向かえるようになるはずです。
相談前に知っておきたい!事前準備の大切さ
なぜ事前準備が必要なの?
障害福祉の相談窓口では、生活のあらゆる側面について尋ねられます。特に初めての相談では、緊張してしまって「一番困っていること」を言い忘れてしまったり、過去の経歴を思い出せなかったりすることがよくあります。
相談時間は限られています。あらかじめ情報をまとめておけば、説明時間を短縮し、その分を具体的な解決策の話し合いに充てることができます。これは相談者であるあなたにとっても、体力的・精神的な負担を減らすことにつながります。
また、相談員は受け取った情報を元に、受給できる手当や利用可能な福祉サービスを検討します。情報が正確であればあるほど、「こんなはずじゃなかった」というミスマッチを防ぐことができるのです。
「完璧」を目指さなくても大丈夫
準備が必要だと言うと、「すべて正確に書かなければならない」と身構えてしまうかもしれません。しかし、すべての項目を完璧に埋める必要はありません。わからないことは「わからない」と伝えても全く問題ないのです。
相談員さんはあなたの味方です。箇条書きのメモや、手元にある書類を持っていくだけでも、立派な準備になります。まずは、「これだけは伝えたい」というポイントを絞ることから始めてみましょう。
💡 ポイント
すべてを一度に解決しようとせず、今回は「現状を知ってもらうこと」を目標にするなど、スモールステップで考えるのがコツです。
相談メモを活用しよう
頭の中だけで整理するのは大変ですので、ぜひ紙のノートやスマートフォンのメモ機能を活用してください。思いついた時に少しずつ書き留めておくスタイルがおすすめです。
特に、日常生活の中で「あ、これは困っているな」と感じた瞬間をメモしておくと、相談の際に具体的で伝わりやすいエピソードになります。リアルな困りごとこそが、支援を組み立てる際の最も重要なヒントになります。
【基本編】自分や家族を伝えるための情報整理
本人と家族の基本プロフィール
まずは、誰についての相談なのかを明確にします。氏名、生年月日、住所、電話番号といった基本情報に加え、現在の居住形態(一人暮らし、家族同居、グループホームなど)も伝えます。
同居家族がいる場合は、その方の年齢や健康状態も重要です。例えば、「同居している親が高齢になり、介護が必要になってきた」といった背景は、今後の支援の緊急性を判断する材料になります。
準備しておきたい基本項目
- 氏名・生年月日・年齢
- 現住所・連絡先(電話番号・メールアドレス)
- 家族構成(同居・別居問わず主な親族)
- 現在の住居の種類(戸建て、アパート、市営住宅など)
障害者手帳などの所持状況
福祉サービスを利用する際、障害者手帳の種類や等級は非常に重要な情報です。手帳があることで受けられる免除制度や割引サービス、そして利用可能な福祉サービスの種類が大きく変わります。
身体障害者手帳、療育手帳(愛の手帳など)、精神障害者保健福祉手帳のいずれを持っているか、あるいは申請中なのかを整理しましょう。手帳を持っていない場合でも、医師の診断書や意見書があれば相談は可能です。
| 書類・カード名 | 確認ポイント |
|---|---|
| 障害者手帳 | 種別、等級、再判定の時期 |
| 自立支援医療受給者証 | 有効期限、指定医療機関名 |
| 障害福祉サービス受給者証 | 現在利用中のサービス内容、支給量 |
現在の通学・就労状況
現在、日中をどのように過ごしているかも伝えてください。学校に通っているのか、仕事をしているのか、あるいはデイケアや作業所に通っているのかなど、一日の大まかな流れを説明できるようにします。
仕事をしている場合は、雇用形態(一般雇用、障害者雇用、就労継続支援A型・B型など)や勤務日数、仕事内容、職場で受けている配慮などについても触れると、今後のキャリア形成の相談がスムーズになります。
✅ 成功のコツ
手帳の原本を持っていくのはもちろん、コピーを一部取っておくと、窓口で提示したり預けたりする際にとてもスムーズです。
【健康・医療編】これまでの経緯を振り返る
診断名と現在の症状
医師から告げられている正確な診断名を伝えましょう。複数の疾患がある場合は、それらも併せて伝えます。また、現在どのような症状に最も悩まされているのか、具体的に説明できると良いでしょう。
例えば、「幻聴があって外出が怖い」「パニック発作が週に数回起きる」「手足に麻痺があり、握力が低下している」など、身体的・精神的な症状をありのままに話すことが大切です。
通院歴と現在の服薬状況
これまでにどの病院に通い、どのような治療を受けてきたかの経緯(病歴)は、支援の方向性を決める上で欠かせません。初めて症状が出た時期や、入院の経験がある場合はその期間もメモしておきましょう。
特にお薬の情報は重要です。お薬手帳を持参するのが一番確実ですが、副作用の有無や、飲み忘れが多いかどうかといった実情も伝えられると、生活支援の必要性が判断しやすくなります。
医療に関するチェックリスト
- 現在の主治医と通院頻度
- 服用中のお薬(お薬手帳の持参を推奨)
- 過去の大きな怪我や病気、手術の経験
- アレルギーの有無(特に食べ物や薬品)
成育歴やこれまでの経緯
知的障害や発達障害の相談の場合は、幼少期からの様子(成育歴)が重要な意味を持ちます。首のすわりや歩き出しの時期、言葉の出始め、学校生活での様子などを振り返っておくと良いでしょう。
学校での特別支援学級への在籍や、通級指導教室の利用歴、不登校の経験など、これまでどのようなサポートを受けてきたかというプロセスは、現在の困難さを裏付ける貴重な情報となります。
「昔のことを思い出すのは辛い作業かもしれませんが、これまでの頑張りを相談員さんと共有することで、新しい解決策が見えてくることもあります。」
— 相談支援専門員の声
⚠️ 注意
複数の病院にかかっている場合、それぞれの情報の整合性を確認しておくことが大切です。可能であれば、紹介状や検査結果の控えを用意しておきましょう。
【生活状況編】「困りごと」を具体化するヒント
日常生活動作(ADL)の把握
「普通に生活できています」という言葉の定義は人それぞれです。相談員は、より具体的な生活動作(ADL)について知りたがっています。食事、入浴、着替え、排泄などの身の回りのことが、一人でできるのか、見守りが必要なのか、全介助なのかを整理します。
例えば、「食事は自分で食べられるけれど、調理や片付けは全くできない」といった細かな違いが、訪問介護などのサービス量に直結します。できることと、できないことの境界線をはっきりさせておきましょう。
家事や社会生活での困りごと
身の回りのこと以外でも、生活を維持するために必要な動作があります。掃除、洗濯、買い物、金銭管理、公共交通機関の利用、役所の手続きなどです。これらの中で、誰かの手助けが必要な項目を書き出してみてください。
「セルフレジの使い方がわからない」「バスの路線図が理解できない」「公共料金の支払いを忘れてしまう」といった、具体的な困りごとが支援の根拠になります。恥ずかしがらずに、リアルな現状を伝えましょう。
生活状況の比較表(例)
| 項目 | できること | サポートが必要なこと |
|---|---|---|
| 買い物 | 近所のコンビニでパンを買う | スーパーで数日分の食材を選ぶ |
| 移動 | 決まったルートの徒歩移動 | 初めて行く場所への電車移動 |
| 金銭管理 | その日の小遣いを使う | 家賃や光熱費などの口座管理 |
コミュニケーションと人間関係
他者との関わりの中で感じるストレスや難しさについても触れておきましょう。話し言葉でのやり取りがスムーズか、指示を理解するのに時間がかかるか、あるいは聴覚過敏や人混みへの苦手意識があるかといった情報です。
また、現在どのような人間関係の中にいるかも大切です。家族以外に話せる友達がいるか、地域のコミュニティとの接点があるかなど、あなたの「社会的孤立」を防ぐためのヒントを相談員と一緒に探していきます。
💡 ポイント
24時間のスケジュール表を書いてみると、どの時間帯に誰の助けが必要なのかが視覚的にわかりやすくなります。睡眠のリズムも併せて記入するとより効果的です。
【サービス・経済編】現在の支えを確認する
現在利用している支援サービス
すでに利用している福祉サービスや、民間企業のサービスがあればすべてリストアップしてください。ヘルパーさんの訪問、デイサービス、短期入所(ショートステイ)、福祉用具のレンタルなどが含まれます。
サービスを利用しての満足度や、「もう少しこうしてほしい」という不満点も伝えてください。現在のサービスを調整するのか、新しいサービスを追加するのかを判断するための重要な材料になります。
経済的な状況と公的制度
デリケートな問題ですが、お金の話は生活を支える基盤です。現在、どのような収入があるかを把握しておきましょう。給与、障害年金、生活保護、児童扶養手当、家族からの仕送りなどです。
特に障害年金については、受給している級数や更新時期を確認しておきます。経済的な不安がある場合は、家賃の支払いや医療費の負担についても相談員に伝えてください。必要に応じて、減免制度や貸付制度の案内を受けられる場合があります。
主な経済的支援の確認リスト
- 障害基礎年金・障害厚生年金の受給状況
- 特別障害者手当などの諸手当
- 医療費助成制度の利用有無
- 生活保護受給の有無
現在の住環境とバリアフリー
お住まいの環境についても共有しましょう。例えば、「アパートの2階で階段の上り下りが辛い」「トイレに手すりがない」「近隣との騒音トラブルがある」などです。住環境の改善が必要な場合、住宅改修の補助金や、より適した住まい(グループホームなど)への住み替え相談が可能になります。
また、災害時の避難についても不安があれば伝えておきましょう。自治体によっては、災害時避難行動要支援者名簿への登録などの案内をしてもらえることがあります。
✅ 成功のコツ
家計簿まで用意する必要はありませんが、月々のおおよその収入と、絶対に削れない支出(医療費など)の金額を把握しておくだけで、相談がぐっと具体的になります。
【希望・目標編】これからどんな生活を送りたいか
「どうなりたいか」という本音
これまでは「現状」の話でしたが、最も大切なのは「これからどうしたいか」というあなたの意思です。今は具体的に思い浮かばなくても、「一人でゆっくりお風呂に入りたい」「週に一度は外食を楽しみたい」といった小さな願いで構いません。
支援のゴールは、誰かが決めるものではなく、あなた自身が見つけるものです。相談員は、その願いを叶えるためのパズルのピースを一緒に探してくれるパートナーです。自分の心に正直になって、理想の生活をイメージしてみましょう。
中長期的な将来への不安と展望
今すぐの話だけでなく、数年後、数十年後のことも考えてみましょう。例えば、「親がいなくなった後の生活が心配」「いつかは一般企業で働きたい」「結婚して家庭を持ちたい」といった希望です。
将来の目標があることで、逆算して「今、何をすべきか」が見えてきます。大きな目標を立てるのが怖い時は、「今の生活を壊さずに維持したい」というのも立派な目標になります。
希望を具体化する質問例
- もし魔法が使えたら、今の生活の何を変えたいですか?
- 1年後、どんな自分になっていたら嬉しいですか?
- これだけは譲れない、大切にしたいことは何ですか?
- 新しく挑戦してみたい趣味や活動はありますか?
支援者に期待すること
相談員やヘルパーさんに対して、どのような関わり方を望むかも伝えておくと良いでしょう。「とにかく話を聞いてほしい」「具体的なアドバイスがほしい」「一緒に行動してリードしてほしい」など、好みのスタイルは人それぞれです。
また、「こういう言い方をされると傷つく」「過去にこういう対応をされて嫌だった」という経験もあれば、遠慮なく伝えてください。相性の良い支援体制を整えるための重要なフィードバックになります。
「自分一人で抱え込まずに、希望を言葉にすること。それが、新しい自分に出会うための第一歩になります。」
— 障害当事者の家族より
【よくある質問】相談に関する不安を解消しよう
Q. 診断名がはっきりしていなくても相談できますか?
A. はい、もちろんです。確定した診断名がなくても、生活に困難を感じているのであれば、相談窓口を利用することができます。医師の診断を受けるべきかどうかのアドバイスや、適切な医療機関の紹介を受けることも可能です。まずは「困っている」という事実を伝えに行きましょう。
Q. 相談内容が外部に漏れることはありませんか?
A. 相談には厳格な守秘義務があります。相談員には法律や職務上の守秘義務があり、本人の同意なしに情報を外部に漏らすことはありません。安心して今の状況を詳しくお話しください。ただし、生命の危険がある場合などは、例外的に関係機関と連携することがあります。
Q. 家族だけでも相談に行ってもいいですか?
A. ご家族のみの相談も受け付けています。本人が相談に行くことを拒んでいる場合や、体調が悪くて外出できない場合など、まずはご家族が現状を伝え、どのように本人をサポートすべきかを一緒に考えることができます。ご家族自身のケアについても相談に乗ってくれますよ。
Q. 相談にお金はかかりますか?
A. 公的な窓口や指定相談支援事業所での相談は原則無料です。福祉サービスの計画作成(サービス等利用計画)などの費用も、基本的には公費で賄われるため、自己負担はありません。安心してお問い合わせください。
⚠️ 注意
民間企業のコンサルティングサービスなどは有料の場合があります。事前に「無料の相談窓口ですか?」と確認しておくと安心です。
まとめ
障害福祉の相談は、新しい生活の扉を開くための鍵です。準備をすることで、その鍵をより確実に回すことができるようになります。今回ご紹介した情報リストを参考に、少しずつ自分自身の状況を整理してみてください。
- 基本情報と手帳の有無を確認し、コピーを用意しておく。
- 病歴や服薬状況をメモし、お薬手帳を忘れずに持参する。
- 日常生活の「できること」と「できないこと」を具体的に書き出す。
- 現在の収入や利用中のサービスを把握しておく。
- 将来どうなりたいかという希望や小さな目標を言葉にする。
- 「完璧な準備」を求めず、まずは相談の場に行くことを優先する。
相談に行くことは、決して恥ずかしいことでも、わがままなことでもありません。あなたがより豊かな人生を送るために、社会の資源を賢く使うためのステップです。この記事が、あなたの第一歩を後押しするものになれば幸いです。
次は、お住まいの地域の役所にある「障害福祉課」や「基幹相談支援センター」の電話番号を調べてみることから始めてみませんか?

高橋 健一
(たかはし けんいち)50歳📜 保有資格:
社会福祉士
市役所の障害福祉課で20年間勤務し、制度の運用や窓口対応を担当してきました。「制度は難しい」と言われますが、知れば使える便利なツールです。行政の内側から見た制度のポイントを、分かりやすくお伝えします。
大学卒業後、地方自治体に入庁し、障害福祉課に配属されて20年。障害者手帳の交付、障害福祉サービスの支給決定、各種手当の申請受付など、幅広い業務を経験しました。行政職員として心がけていたのは、「制度を正確に伝えつつ、温かく対応する」こと。窓口に来られる方は不安を抱えています。制度の説明だけでなく、その方の状況に合わせた情報提供を大切にしてきました。退職後、民間の相談支援事業所に転職し、今度は「申請する側」の視点も理解できました。行政と民間、両方の経験を活かして、制度の仕組みだけでなく、「実際にどう使うか」まで伝えられるのが強みです。記事では、障害者総合支援法、障害者雇用促進法、各種手当など、制度の正確な情報を「難しい言葉を使わず」解説します。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
公務員として地域に貢献したいと思い、障害福祉課に配属されたことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
窓口対応で、制度を活用して生活が楽になったと感謝されたこと。行政と民間両方の視点を得られたこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
制度の正確な情報を「難しい言葉を使わず」伝えることを大切にしています。
🎨 趣味・特技
将棋、歴史小説
🔍 最近気になっているテーマ
マイナンバーと福祉制度の連携、自治体DXの進展





