疲れやすい体質って何?考えられる原因と改善方法

疲れやすい体質って何?考えられる原因と改善方法
「人よりもすぐに疲れてしまう」「休息しても疲れが取れない」「いつも体が重い」—このような慢性的な疲労感に悩まされていませんか。
特に障害特性を持つ方にとって、疲れやすさ(易疲労性)は、単なる体力不足ではなく、脳の機能特性や環境への過剰な適応が原因となっていることが多くあります。
この記事では、なぜ疲れやすい体質になってしまうのかを、医学的な観点と障害特性の観点の両方から深掘りし、その上で日常生活で取り組める具体的な改善方法を詳しくご紹介します。
疲れやすさの原因を知り、適切な対策を講じることで、日々のエネルギーを効果的にマネジメントし、より快適な生活を送るためのヒントを見つけていきましょう。
「疲れやすさ」の正体と障害特性との関係
疲れやすさ(易疲労性)は、多くの障害当事者や、精神的な不調を抱える方が抱える共通の悩みです。その原因は、身体的なものだけでなく、脳と心の機能に深く根ざしています。
見えない「脳の疲労」の蓄積
発達障害(ASD、ADHDなど)を持つ方の中には、日常生活で脳が非当事者よりもはるかに多くのエネルギーを消費している場合があります。
例えば、聴覚過敏や視覚過敏がある場合、常に大量の感覚情報を選別・処理するために脳はフル稼働しています。また、空気を読んだり、コミュニケーションの定型パターンを意識的に行うことも、膨大な脳のワーキングメモリ(作業記憶)を消費します。
この脳の過剰な活動が「見えない疲労」として蓄積され、結果的に強い倦怠感や「動けない」という身体的な疲労として現れます。
ストレスによる「自律神経の乱れ」
慢性的な疲労の大きな原因の一つが、自律神経の乱れです。
自律神経は、体を活動させる交感神経と、体を休ませる副交感神経から成り立っていますが、ストレスが続くと常に交感神経が優位な状態になります。
体が常に緊張状態にあると、本来休息すべき時間にも心身が休まらず、疲労物質が分解されずに蓄積されてしまいます。
この乱れは、不安障害やうつ病などの精神疾患を抱える方にも強く見られ、疲れやすさと密接に関連しています。
「朝起きても、すでに体が疲れている。夜中に何度も目が覚めて、体が休まる時間がありません。」
— 当事者の声(30代・慢性疲労)
「慢性炎症」と内科的な原因
長期間にわたる疲れやすさの背景には、身体的な病気が隠れている可能性もあります。特に注意すべきは、慢性疲労症候群(CFS)や、甲状腺機能低下症、貧血などです。
慢性疲労症候群は、激しい疲労感が6ヶ月以上続き、休んでも改善しない状態を指し、脳や免疫機能の異常が関係していると考えられています。
疲れやすさが続く場合は、まず医療機関(内科や心療内科)を受診し、身体的な異常がないかを確認することが重要です。
疲れやすさを改善する「エネルギー管理」の基本
疲れやすい体質を改善するためには、やみくもに頑張るのではなく、自分の使えるエネルギーを客観的に把握し、計画的に使う「エネルギー管理(エナジー・マネジメント)」の視点が不可欠です。
「バッテリー残量」を可視化する
自分の疲労度を客観的に把握するために、日々の活動を「バッテリー残量」として可視化しましょう。
- 疲労度を数値化:毎日、朝、昼、晩に自分の疲労度を10段階(10=満タン、0=ゼロ)で記録する。
- 活動と関連付け:その日にどのような活動(仕事、人との交流、感覚刺激の強い場所への外出など)をしたかを併せて記録する。
- トリガーの特定:記録から、自分のエネルギーを大きく消耗させる活動や環境(トリガー)を特定する。
この記録により、自分のエネルギーの「持ち時間」がわかり、過剰な活動を事前に防ぐことができるようになります。
「予防的な休息」を習慣化する
疲れてから休むのではなく、疲労が溜まる前に休息を取る「予防的な休息」を習慣化しましょう。
エネルギー残量が常に70%以下になる前に、必ず意図的に活動を中断し、休息を取る時間を確保します。
✅ 成功のコツ
トリガーとなる活動を行う前後に、必ず10〜15分間の短い休憩(マイクロブレイク)をスケジュールに入れましょう。休憩中は、目をつぶる、ノイズキャンセリングヘッドホンを使うなど、脳への刺激を意図的に最小限にすることがポイントです。
「活動の配分」を戦略的に行う
使えるエネルギーに限りがあることを前提に、一日の活動の配分を戦略的に行います。
| エネルギー消費 | 活動例 |
|---|---|
| 高(20%消費) | 新しい人との面談、満員電車での通勤、感覚刺激の強い場所での作業 |
| 中(10%消費) | 馴染みのメンバーとの会議、静かな場所での単純作業、家事 |
| 低(5%消費) | 一人での散歩、趣味の時間、読書 |
「高」の活動を連続させず、間に必ず「低」の活動や予防的休息を挟むように計画することで、エネルギー切れを防ぎます。
脳と体の疲労を軽減する「生活習慣」の改善
疲れにくい体質を作るためには、日々の生活習慣を見直し、自律神経と脳を安定させるための土台を整えることが不可欠です。
睡眠の質を高める「睡眠衛生」
質の高い睡眠は、脳の疲労を回復させる唯一の方法です。以下の「睡眠衛生」の習慣を徹底しましょう。
- 一定のリズム:週末も含め、毎日同じ時間に寝起きする習慣をつける。
- 光のコントロール:寝る1時間前からは、スマートフォンやパソコンなどのブルーライトを遮断する。朝起きたらすぐに日光を浴びる。
- 寝室の環境:寝室を暗く静かにし、室温は体温より少し低めの快適な温度に保つ。
睡眠の質が改善されるだけで、日中の倦怠感が30%以上軽減されたという調査結果もあります。
自律神経を整える「マイルドな運動」
極端な運動は疲れを増大させますが、マイルドな有酸素運動は、自律神経のバランスを整え、質の良い睡眠を促すのに有効です。
💡 ポイント
疲れを感じさせない程度の、ゆっくりとした運動を継続しましょう。
- ウォーキング:毎日20〜30分、景色を楽しみながらゆっくりと歩く。
- ストレッチ:特に肩甲骨周りや股関節のストレッチを寝る前に行い、体の緊張をほぐす。
- ヨガ・太極拳:呼吸と動きを連動させる運動は、自律神経を調整する効果が高いです。
脳の機能を支える「食事」の工夫
脳が正常に機能し、疲れにくい状態を保つためには、栄養バランスの取れた食事が重要です。
特に、以下の栄養素を意識的に摂取しましょう。
| 栄養素 | 疲労回復への効果 |
|---|---|
| ビタミンB群 | エネルギー代謝を助け、疲労物質の分解を促進 |
| 鉄分・タンパク質 | 酸素運搬や体の修復に不可欠(貧血予防) |
| オメガ3脂肪酸 | 脳の炎症を抑え、精神的な安定に寄与 |
カフェインや糖質の過剰摂取は、一時的にエネルギーを上げるものの、その後の急激な低下を招き、結果的に疲労感を増大させるため、摂取量に注意しましょう。
疲れやすさへの「社会的な調整」と支援活用
疲れやすさの大きな原因となる、社会生活でのストレスや過度な適応を軽減するためには、外部の支援を活用した「社会的な環境調整」が欠かせません。
「合理的配慮」による労働環境の調整
職場での過度な疲労が原因で疲れやすい体質になっている場合、合理的配慮を求めることで、労働環境を自分に合わせて調整しましょう。
- 勤務形態の調整:フレックスタイムの利用、短時間勤務、在宅勤務(テレワーク)の導入。
- 業務の調整:感覚刺激の強い場所での作業を避ける、人との対話が少ない業務に集中する時間の確保。
- 休憩時間の調整:通常の休憩時間以外に、脳を休ませるための追加の休憩(ブレイクタイム)を取得する許可。
これらの配慮は、就労移行支援事業所や障害者職業センターを通して、職場に提案してもらうことが可能です。
福祉サービスを活用した「休息の場」の確保
疲れやすい体質で家事や日常生活の維持が難しい場合、障害福祉サービスを活用して「休息の場」や「手助け」を確保しましょう。
⚠️ 注意
疲れやすいことを理由に家事などを全て家族に任せてしまうと、家族の疲労が蓄積し、共倒れになるリスクがあります。福祉サービスを利用して、家族と本人の両方に休息を与えることが大切です。
具体的には、居宅介護(ホームヘルプ)による家事援助や、自立訓練(生活訓練)での安定した生活リズム作りをサポートしてもらうことが考えられます。
「支援者」との連携による疲労の早期発見
自分自身で疲労の蓄積に気づくのが難しい場合、信頼できる支援者(相談支援専門員、主治医、ジョブコーチなど)と連携し、疲労のサインを共有しておきましょう。
支援者に、あなたの「疲労のサイン」(例:会話が途切れる、イライラが増える、過眠になる)を教えておくことで、サインが出た際に早期に休息や医療機関への受診を促してもらうことができます。
よくある質問(FAQ)と相談窓口
疲れやすさに関する、当事者の方やご家族からの疑問にお答えします。
Q. 頑張りすぎてしまうのをやめるには?
A. 疲れやすい方の中には、「休むことは悪いことだ」という強い固定観念(認知の歪み)を持っている方が多くいます。
これを改善するために、「休むことは、次の活動のためのエネルギーを充電する、大切な仕事だ」と、休息をポジティブな「タスク」として捉え直しましょう。先にご紹介した「予防的な休息」を、スケジュールに組み込み、それを守ることを最優先にしてください。
Q. 家族(支援者)の疲れやすさにどう接すればいいですか?
A. 疲れやすい当事者に対し、「休めば治る」という単純な励ましは逆効果です。
まずは、その疲れが「脳の機能特性によるもの」であり、努力不足ではないことを理解し、共感を示すことが重要です。その上で、本人が「エネルギー管理」を実践できるよう、休息を促したり、福祉サービスへのアクセスを手伝ったりといった具体的なサポートを提供しましょう。
Q. 慢性疲労症候群(CFS)の診断はどうすれば受けられますか?
A. 慢性疲労症候群の診断は、一般的な内科では難しく、専門の医療機関(CFS専門外来、総合診療科など)を受診する必要があります。
6ヶ月以上にわたり、休んでも改善しない強い疲労感がある場合は、まずかかりつけの精神科や心療内科の医師に相談し、専門外来への紹介状を書いてもらうのがスムーズです。
まとめ
- 疲れやすさ(易疲労性)は、感覚刺激の処理やコミュニケーションによる「脳の疲労」の蓄積、自律神経の乱れが主な原因です。
- 改善には、「バッテリー残量」の可視化と、疲れる前に休む「予防的な休息」といったエネルギー管理の視点が不可欠です。
- 質の高い睡眠、マイルドな運動、栄養バランスの取れた食事、そして合理的配慮による労働環境の調整が、疲れにくい体質を作る土台となります。
疲れやすい体質は、生活習慣や環境を整えることで、必ず改善の方向に向かいます。
まずは、ご自身の疲れの原因が身体的なものか、精神的なものかを見極めるため、かかりつけの医師や精神科医に「慢性的な疲労感」について相談してみるという、次のアクションに進んでみましょう。
主な相談窓口・参考情報
- 内科・心療内科: 疲れやすさの原因となる身体疾患の検査、慢性疲労症候群の相談。
- 障害者就業・生活支援センター: 職場での合理的配慮(勤務時間、休憩、業務内容)の交渉支援。
- 自立訓練(生活訓練)事業所: 安定した生活リズムやエネルギー管理方法の訓練。

酒井 勝利
(さかい かつとし)38歳📜 保有資格:
作業療法士、福祉住環境コーディネーター
作業療法士として病院・施設で12年勤務。「できないこと」を「できる」に変える福祉用具や環境調整の専門家です。車椅子、杖、リフトなどの選び方から、住宅改修まで、実践的な情報をお届けします。
リハビリテーション専門学校を卒業後、総合病院で5年、障害者支援施設で7年、作業療法士として勤務してきました。特に力を入れているのは、福祉用具を活用した「できることを増やす」支援。例えば、片麻痺がある方が自助具を使って料理ができるようになったり、車椅子の選び方一つで外出の頻度が劇的に変わったりします。印象的だったのは、重度の身体障害がある方が、適切な電動車椅子と環境調整により、念願だった一人での買い物を実現したこと。「自分でできる」という自信が、その方の人生を大きく変えました。記事では、福祉用具の選び方、住宅改修のポイント、補助金の活用方法など、「生活をより便利に、より自立的に」するための情報を発信します。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
リハビリの仕事を通じて、「できないこと」を「できる」に変える喜びを知ったことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
重度の身体障害がある方が、適切な電動車椅子で一人での買い物を実現したこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
福祉用具を活用して「生活をより便利に、より自立的に」する情報を発信します。
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