障害者手帳が更新できない/落ちたときの理由と対処法

長年利用してきた障害者手帳の更新ができなかったり、等級が下がってしまったりしたとき、「これからどうなってしまうのだろう」「必要な支援が受けられなくなったらどうしよう」と、大きな不安に襲われるのは当然のことです。 手帳は、単なる証明書ではなく、日々の生活を支える大切な基盤だからこそ、その結果は重く受け止められます。
このガイドでは、手帳の更新ができない・落ちる(不認定となる)主な理由や、等級が下がってしまう原因を、手帳の種類ごとに詳しく解説します。 さらに、不服申立て(審査請求)の手続きや、手帳に頼らず支援を継続するための具体的な対処法まで、次のアクションにつながる情報を提供します。 私たちと一緒に、この困難な状況を乗り越えるための道筋を見つけましょう。
手帳更新ができない・落ちる主な理由
障害者手帳(身体、療育、精神)の更新ができない、または「落ちる」(不認定となる)原因は、主に「障害の改善」と「申請内容の不備」の二つに分けられます。 手帳制度は、その時点の障害の程度に基づいて支援の必要性を判断するものですから、医学的な変化や評価の仕方の変化が直接影響します。
理由1:障害の改善・機能の回復
最もポジティブではあるものの、手帳の不認定や等級低下につながるのが、治療やリハビリテーション、時間の経過による障害の改善です。
- 身体障害者手帳:
特に、人工関節置換術や一部の内科的疾患の治療などにより、機能回復が顕著に認められた場合、基準以上の障害がないと判断され、手帳が非該当となったり、等級が軽くなったりすることがあります。
- 療育手帳:
発達期にある児童の場合、療育や教育的支援の結果、知能指数(IQ)や日常生活能力が大幅に向上したと判定された場合、軽度(B2)の基準すら満たさなくなることがあります。
- 精神障害者保健福祉手帳:
精神疾患は病状の波が大きいですが、更新時の診断書で病状が長期的に安定し、服薬や通院により日常生活能力が著しく回復したと判断された場合、非該当となることがあります。
💡 ポイント
特に「改善」が理由である場合、それは生活の質の向上を意味します。 手帳の非該当は残念ですが、機能が改善したという事実を前向きに捉えることも大切です。
理由2:診断書・意見書の内容の不備や変更
手帳の更新は、主に提出された診断書や意見書に基づいて審査されます。 内容が不十分であったり、以前と評価が異なっていたりすると、不認定につながることがあります。
- 情報不足:
日常生活における具体的な「困りごと」や「必要な援助」について、医師への伝達が不足していたり、診断書に十分に記載されていなかったりした場合、審査機関は障害の重さを正しく判断できません。
- 主治医の変更:
手帳申請に不慣れな医師や、以前の医師と評価基準が異なる医師に診断書を依頼した場合、等級が下がる、または不認定となるケースがあります。 医師は医学的な所見を記載しますが、手帳制度の基準とのすり合わせが不足することがあります。
- 客観的検査データの不足:
身体障害や内部障害の場合、最新の検査データ(例:関節可動域、血液検査値など)が添付されていなかったり、基準値をわずかに上回っていたりすると、不認定となることがあります。
手帳の種類別:更新できない原因と等級低下
各手帳には、それぞれの障害特性に応じた更新・再判定の仕組みがあります。 その特性を踏まえた上で、なぜ更新が難しくなるのか、具体的な原因を見ていきましょう。
身体障害者手帳:永続性と再認定の判断
身体障害者手帳は、本来「永続的な障害」が前提ですが、将来的に機能回復が見込まれる場合には、交付時に「再認定期限」が設けられます。
- 再認定期限後の改善:
期限が来て再認定を受けた際、機能障害が以前の等級を下回るレベルに改善していると判断されると、等級が下がるか、非該当となります。 例えば、人工関節置換術後のリハビリが功を奏し、可動域が大きく改善したケースなどが該当します。
- 内部障害の検査値の変化:
心臓や腎臓などの内部障害の場合、治療の進歩や生活習慣の改善により、血液検査や心機能検査の数値が認定基準から外れた場合、等級が下がることがあります。
⚠️ 注意
身体障害者手帳の再認定で等級が下がった、または非該当になった場合、重度訪問介護など身体介護を中心とした福祉サービスの支給決定も同時に見直しが入る可能性が高いです。
療育手帳:発達の進展と判定機関の評価
療育手帳の再判定は、子どもの発達段階や生活能力の変化を評価する重要な機会です。
- 知的障害の基準からの逸脱:
療育的支援を継続した結果、再判定時の知能検査でIQが70を超えるなど、知的障害の医学的な基準を満たさなくなった場合、手帳は失効します。 ただし、IQが70を超えても、社会生活での困難(二次障害など)が著しい場合は、精神障害者保健福祉手帳の取得を検討できます。
- 日常生活能力の過大評価:
特に成人期以降の更新時、保護者や支援者が「できるようになったこと」のみに焦点を当てて報告してしまうと、「援助なしではできないこと」が見落とされ、実態よりも軽く評価されることがあります。
精神障害者保健福祉手帳:病状の安定と社会適応能力
精神障害者手帳は2年ごとの更新制であり、更新が否認される、または等級が下がるケースが比較的多く見られます。
- 病状の著しい安定:
治療やリハビリテーションにより、病状が安定し、日常生活における援助や配慮が不要なレベルまで改善したと主治医が診断書に記載した場合、不認定となります。 特に3級(軽度)の場合、軽微な改善でも非該当となる可能性があります。
- 「能力障害の状態」の回復:
等級判定で重視される「能力障害の状態」(食事、清潔保持、対人関係など)が、更新時に著しく改善していると判断された場合、等級が下がります。 例えば、就労継続支援(B型)から一般就労へ移行できた、など社会適応の改善が大きな要因となることがあります。
不認定・等級低下の結果が出たときの対処法
手帳の更新ができなかったり、等級が下がってしまったりした場合、まずはその結果を冷静に受け止め、なぜそのような結果になったのかを分析することが大切です。 その上で、公的な手続きとして「不服申立て」を行うか、生活の基盤を立て直すための「次の支援」を探すかの行動に移ります。
対処法1:不服申立て(審査請求)を行う
審査結果に納得がいかない場合は、「不服申立て」(行政不服審査法に基づく審査請求)を行うことができます。
- 期限の確認:
審査請求には、結果通知を受け取った日の翌日から3ヶ月以内という厳格な期限が設けられています。 この期限を過ぎると、原則として審査請求はできなくなりますので、迅速な対応が必要です。
- 請求先の確認:
審査請求の窓口は、手帳を交付した都道府県知事または政令指定都市の市長など、それぞれの処分庁の上級行政庁となります。 通知書に記載されているはずですので確認してください。
- 準備と戦略:
審査請求では、「元の判定が誤っていたこと」を証明するための新たな医学的証拠や、日常生活における困難さを示す詳細な資料(生活記録、支援者の意見書など)を提出します。 この手続きは専門性が高いため、弁護士や行政書士、または相談支援事業所などの専門家に相談することを強くおすすめします。
「等級が3級から非該当になった際、すぐに諦めず行政書士に相談しました。日常生活の困難さをより具体的に示す記録を添えて審査請求を行った結果、無事に3級が再認定されました。」
— 精神障害者保健福祉手帳所持者の声(再認定)
対処法2:診断書の再検討と再申請
審査請求とは別に、診断書の内容に不備があったと判断できる場合は、改めて申請を行うことも選択肢の一つです。
- 医師との再面談:
主治医に対し、「なぜ不認定になったのか」という通知書の内容を共有し、前回の診断書で十分に伝わっていなかった困難な状況を再度詳しく伝えます。 特に、精神障害や知的障害の場合、日々の生活の具体的なエピソードが重要になります。
- 半年後の再申請を検討:
特に精神障害者手帳の場合、不認定から数ヶ月後に病状が悪化し、再度認定基準を満たすケースもあります。 診断書の日付を改めて、申請のタイミングを見直すことも一つの戦略です。
手帳非該当後のサービス・支援の継続方法
手帳の更新ができなくなったとしても、すべての支援が失われるわけではありません。 手帳以外の制度や、地域独自の支援制度を活用することで、必要なサポートを継続できます。
障害福祉サービスからの切り替え
手帳がないと、障害者総合支援法に基づく福祉サービスの多くは利用できなくなります。 しかし、以下のような代替サービスや制度の活用を検討できます。
- 介護保険制度の利用(65歳以上):
65歳以上の方で要介護認定を受けている場合は、介護保険制度に基づくホームヘルプやデイサービスを利用できます。 この場合、障害者手帳の有無は関係ありません。
- 地域生活支援事業の活用:
各自治体が独自に実施している「地域生活支援事業」の中には、手帳の有無にかかわらず利用できるサービス(例:相談支援、地域活動支援センター事業の一部など)が含まれていることがあります。 お住まいの自治体の情報を確認しましょう。
✅ 成功のコツ
手帳を失効した場合、すぐに相談支援事業所や地域包括支援センター(65歳以上)に連絡し、現在のサービスが継続できるか、代替サービスがあるかを確認しましょう。 支援の空白期間を作らないことが最優先です。
経済的支援・医療費助成の再確認
手帳の失効に伴い、同時に失われる可能性の高い経済的なメリットもあります。
- 税制優遇(障害者控除):
手帳がないと障害者控除は受けられなくなります。 ただし、「障害者控除対象者認定書」という制度があり、65歳以上で特定の要件を満たす場合は、手帳がなくても控除を受けられる可能性があります。
- 医療費助成:
精神障害者手帳がない場合でも、「自立支援医療(精神通院医療)」は手帳とは別の制度であり、病状が継続している限り利用可能です。 医療費の負担軽減は継続できる可能性が高いので、必ず確認してください。
交通機関や施設利用の割引は受けられなくなりますが、生活の基盤となる医療費や税制優遇については、代替制度がないか確認することが重要です。
再度の申請時期を見極める
手帳が不認定となった後も、病状や機能障害が再び悪化し、認定基準を満たす状況になることもあります。
特に精神障害者保健福祉手帳の場合、病状悪化の診断書をもって不認定から6ヶ月以上経過していなくても再申請が可能となる場合があるため、主治医と相談しながら再度の申請時期を見極めることが大切です。 再申請の際には、不認定になった理由を明確にし、その点を補強する具体的な証拠を提出できるよう準備しましょう。
よくある質問と制度活用への心構え
手帳の更新で不認定となった際の、心理的な側面も含めたよくある質問にお答えします。
Q&A:不安を乗り越えるために
Q1. 等級が下がった場合、サービスはすぐに打ち切られますか?
A. すぐにサービスが打ち切られるわけではありません。 しかし、等級が下がると、利用できるサービスの「量」や「種類」が見直しの対象となります。 特に重度の方を対象としたサービス(例:重度訪問介護)は、等級低下に伴い支給量が減る可能性が高いです。 サービス等利用計画を作成した相談支援専門員に、早急に見直しの相談をしてください。
Q2. 審査請求は成功率が低いと聞きましたが、本当ですか?
A. 審査請求は、新規の申請や更新に比べて手続きが複雑で、医学的・制度的な根拠の提示が必要なため、難易度は高いと言えます。 しかし、不認定の理由が申請側の情報不足や審査機関の誤認にある場合は、成功する可能性があります。 諦めずに、専門家(行政書士や弁護士)の支援を受けて、具体的な証拠を揃えて臨むことが重要です。
Q3. 療育手帳が失効しましたが、障害者雇用で働きたいです。
A. 療育手帳が失効しても、精神障害者保健福祉手帳や身体障害者手帳を取得すれば、引き続き障害者雇用枠で働くことは可能です。 また、療育手帳の基準からは外れても、発達障害などによる困難が残る場合は、精神障害者保健福祉手帳の取得を検討してみてください。
制度活用への心構えと次のアクション
手帳の不認定や等級低下は、ショックな出来事ですが、それは「障害の程度が改善した」または「申請書類の提示方法に課題があった」という事実を示すものです。
- 心理的なケアを優先する:
まずは、今回の結果で受けたショックや不安を、家族や支援者、カウンセラーに話すなどして、心理的な安定を図ることが大切です。
- 地域のネットワークを頼る:
手帳に依存せず、地域のNPOや当事者会、ピアサポートなどの支援ネットワークを頼りましょう。 手帳がなくても、精神的なサポートや情報提供は得られます。
- 公的な相談窓口を活用する:
不服申立ての手続きや、今後の生活の相談は、市区町村の福祉担当窓口や障害者更生相談所などの公的な専門機関に遠慮なく相談してください。 彼らは、あなたの生活を支えるための専門家です。
手帳の有無に関わらず、誰もが安心して暮らせる社会を目指し、私たちも情報発信を続けてまいります。
まとめ
- 障害者手帳の更新ができない・落ちる主な理由は、障害の改善・機能回復と診断書・意見書の内容の不備です。
- 特に精神手帳は、病状の安定と社会適応能力の回復により等級低下や不認定となりやすい特性があります。
- 判定結果に不服がある場合は、通知書受領後3ヶ月以内に審査請求(不服申立て)を行うことが可能です。
- 手帳が非該当になった後も、自立支援医療制度や介護保険、地域生活支援事業など、手帳以外の支援制度の活用を検討できます。

金子 匠
(かねこ たくみ)55歳📜 保有資格:
社会福祉士、精神保健福祉士
障害者支援施設で30年間勤務し、施設長を経験。現在はすぐサポ編集長として、障害のある方とご家族が必要な情報にアクセスできる環境づくりに取り組んでいます。「制度は複雑だけど、使えば生活が楽になる」という信念のもと、分かりやすい情報発信を心がけています。
大学卒業後、障害者支援施設に就職し、30年間にわたり現場で支援に携わってきました。生活支援員として10年、サービス管理責任者として15年、そして施設長として5年の経験があります。特に印象に残っているのは、重度の知的障害があり、施設入所が当然と思われていた方が、適切な支援と環境調整により地域での一人暮らしを実現したケースです。「できない」と決めつけず、その人に合った支援を考えることの大切さを学びました。現在は現場を離れ、すぐサポの編集長として、これまでの経験を記事という形で多くの方に届けることをミッションとしています。制度や法律の解説記事では、「専門用語を使わず、中学生でも分かる言葉で」を心がけています。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学で社会福祉を学び、実習で出会った利用者の方々の笑顔に感動したことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
重度の知的障害のある方が、適切な支援により地域での一人暮らしを実現したこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
専門用語を使わず、中学生でも分かる言葉で伝えることを大切にしています。
🎨 趣味・特技
読書、散歩
🔍 最近気になっているテーマ
障害者総合支援法の改正動向、ICTを活用した新しい支援の形





