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障害者向け自治体サービスの種類と使い方

📖 約32✍️ 高橋 健一
障害者向け自治体サービスの種類と使い方
障害者向け自治体サービスは、国制度を補完し、地域独自のニーズに合わせた支援を提供しています。特に、医療費自己負担を軽減する心身障害者医療費助成(マル障など)や、日常生活用具の独自給付、交通費助成などは、経済的負担を大きく軽減します。また、移動支援や日中一時支援といった地域密着型のサービスは、生活の質とご家族の休息を確保します。サービス活用のためには、お住まいの自治体の「福祉のしおり」を入手し、相談支援専門員に自治体独自のサービスについて質問し、申請漏れを防ぐことが重要です。

障害者向け自治体サービスの種類と活用法

障害福祉サービスというと、国が定めた法律(障害者総合支援法)に基づくサービスが中心だと思われがちですが、実は各自治体(市区町村や都道府県)が独自に提供しているサービスや助成制度が、日常生活の質を大きく左右します。これらの自治体サービスは、国制度ではカバーしきれない、地域の特性やニーズに合わせた細やかな支援を提供しています。

しかし、自治体サービスは地域によって内容が大きく異なり、情報が散逸しているため、「どのようなサービスがあるのかわからない」「どうやって申請すればいいのか」と悩んでいる方も少なくありません。特に、経済的な支援や生活環境の整備に関するサービスは、知っているか知らないかで生活の負担度が大きく変わってきます。

この記事では、全国の自治体が共通して提供していることが多い主要なサービスを種類別に整理し、その具体的な活用方法と申請のポイントを徹底解説します。ご自身やご家族が住む地域の情報を確実に把握し、必要な支援を漏れなく活用するための道標としてご活用ください。


経済的な負担を軽減する自治体助成サービス

障害のある方やそのご家族にとって、日々の医療費や生活費、そして移動にかかる交通費は大きな経済的な負担となります。自治体サービスの中で最も活用すべきなのは、この経済的な負担を直接的に軽減してくれる各種助成制度です。

ここでは、生活を支える上で重要な経済的支援サービスを紹介します。

心身障害者医療費助成制度(マル障など)

前述の他の記事でも触れましたが、心身障害者医療費助成制度は、自治体が独自に実施している、医療費の自己負担分を助成する制度です。自治体によって「マル障」「重度心身障害者医療費助成」など様々な名称で呼ばれています。

主な特徴と活用ポイント:

  • 対象者:身体障害者手帳の一定以上の等級(例:1級・2級)、療育手帳A判定、精神障害者保健福祉手帳1級など、重度の障害を持つ方。
  • 助成内容:医療機関窓口で支払う保険診療分の自己負担額を全額または一部助成します。
  • 所得制限:多くの自治体で、ご本人や扶養義務者の所得による制限が設けられています。

この制度は、自立支援医療制度と併用できることが最大のメリットであり、医療費負担を大幅に軽減するために必須のサービスです。

日常生活用具の給付・貸与制度

日常生活用具給付等事業は、障害者総合支援法に基づくサービスですが、具体的な給付品目や自己負担額については、各自治体の裁量に委ねられている部分が大きいです。そのため、実質的に自治体サービスの色合いが濃いといえます。

給付対象となる用具の例:

用具の分類 具体的な品目
介護・移動支援 特殊寝台、入浴補助用具、歩行補助つえ
情報・意思疎通 点字器、視覚障害者用時計、コミュニケーション機器
排泄管理 ストーマ用装具、紙おむつ(特に重度の方)

💡 ポイント

給付の対象となる品目は、自治体の予算によって大きく異なり、「電動車いすのバッテリー」や「火災警報器」など、地域独自の品目を追加している自治体もあります。毎年、自治体の発行するパンフレットで確認しましょう。

交通費の助成・公共料金の減免

障害者手帳を提示することで受けられる公共交通機関の割引とは別に、多くの自治体ではタクシー利用料金の助成券バス運賃の助成を実施しています。特に、車いすを利用する方や、肢体不自由で公共交通機関の利用が困難な方にとって、大きな支援となります。

また、水道料金、下水道料金、NHK受信料など、公共料金の一部減免も自治体の窓口で手続きが必要です。これらは、手帳の等級に応じて適用されるため、手帳を取得したらすぐに確認すべき項目です。


生活環境を向上させる地域密着サービス

国が定める訪問介護や日中活動のサービス以外にも、障害のある方が地域で安全かつ快適に暮らせるように、自治体が主体となって提供するきめ細やかな生活支援サービスがあります。これらは、特に独居の方や、高齢の親が介護をしている世帯で役立ちます。

地域密着型の支援サービスを活用し、生活の安心度を高めましょう。

移動支援(ガイドヘルプ)の拡充

移動支援(ガイドヘルプ)は、障害者総合支援法における「地域生活支援事業」の一つであり、各自治体の判断で内容が決定されるサービスです。国制度の居宅介護では認められない、社会生活上必要な外出(趣味、買い物など)の支援を目的としています。

「移動支援のおかげで、私は一人で映画を見に行くことができ、友人とカフェでお茶をする時間も持てています。ヘルパーさんに気兼ねなく趣味の外出をお願いできるのは、生活の質の維持に不可欠です。このサービスがなかったら、家に引きこもっていたかもしれません。」

— 30代・視覚障害のある方

自治体によっては、利用できる時間数の上限を国の基準よりも広く設定したり、独自の加算を設けたりすることで、利用者のニーズに柔軟に対応しています。

日中一時支援事業(レスパイトケア)

日中一時支援事業もまた、地域生活支援事業の一つであり、ご家族の休息(レスパイト)を目的としたサービスです。障害のある方を日中、施設などで一時的に預かり、必要な支援を行います。

⚠️ 注意

このサービスは、国制度の「短期入所(ショートステイ)」とは異なり、宿泊を伴いません。主に、ご家族が日中の用事や休息のために利用します。短期入所よりも柔軟な時間設定で利用できることが多いのが特徴です。

提供する施設や時間帯、利用料金は自治体ごとに異なります。ご家族の介護負担軽減のために、短期入所と組み合わせて利用することで、さらに効果が高まります。

緊急時の対応支援と見守りサービス

高齢者向けのサービスと連携し、障害のある独居の方や、高齢の親と二人暮らしの世帯を対象とした緊急時対応支援や安否確認サービスを提供している自治体もあります。

  • 緊急通報システム:ペンダント型の緊急通報装置を貸与し、体調急変時に警備会社などに通報できるシステム。
  • 定期的な安否確認:地域の民生委員やボランティア、あるいは委託された業者が定期的に訪問し、安否を確認するサービス。

これらのサービスは、ご家族の精神的な安心感に繋がり、特に遠方に住むご家族の不安を和らげます。


住まいと暮らしのバリアフリー支援

障害のある方が安全に、そして自分らしく暮らすためには、住環境の整備が欠かせません。住宅改修や引越しに伴う支援も、自治体サービスとして提供されています。これらの支援は、国の介護保険や障害者総合支援法とは別枠で上乗せされることが多く、経済的に大きなメリットがあります。

住環境整備に関する自治体サービスのポイントを紹介します。

住宅改修費の助成(上乗せ・独自)

障害者総合支援法や介護保険制度にも住宅改修費の給付がありますが、自治体はこれらに加えて、独自の助成制度や、上乗せの助成額を設定している場合があります。

改修費助成の種類 助成額の上限の例
国制度による給付(共通) 20万円(原則)
自治体独自の助成(上乗せ) 国制度の枠外で追加で30万円を助成(地域による)
重度障害者向け独自制度 特に重度の障害を持つ方に対し、上限を大幅に引き上げ(地域による)

手すりの設置、段差の解消、引き戸への変更など、バリアフリー化に必要な改修費用を大幅に賄うことができるため、改修工事を行う前に必ず自治体の窓口に相談してください。

転居費用や入居支援サービス

グループホームやケアホームへの入居、あるいはバリアフリー住宅への引越しを検討している方に対し、転居費用の一部を助成したり、敷金・礼金などの初期費用を支援したりする自治体が存在します。

✅ 成功のコツ

特に地方自治体では、障害者の地域移行を積極的に推進しており、引っ越し代や生活立ち上げ費用を支援する独自の制度を設けていることがあります。これは、ご本人の生活の場を広げる上で、経済的なハードルを下げる大変有効な支援です。

これらの支援は、福祉担当課だけでなく、住まい関連の部署が窓口となっている場合もあるため、総合的な情報収集が必要です。

地域活動支援センターの活用

地域活動支援センター(地域生活支援事業)は、創作活動や生産活動の機会提供、地域住民との交流を目的とした施設です。手帳の有無に関わらず利用でき、地域の情報交換の場日中の居場所として機能しています。

特に、精神障害や発達障害を持つ方にとって、地域社会との繋がりを維持し、孤独感を解消するための重要な拠点となります。お住まいの地域にどのような活動支援センターがあるか、福祉担当課に尋ねてみましょう。


申請の「壁」を乗り越えるための具体的なステップ

自治体サービスは多岐にわたりますが、利用するためにはご自身で情報を探し出し、申請手続きを行う必要があります。この「申請の壁」を乗り越えることが、サービス活用の成否を分けます。

ステップ1:市区町村の「ガイドブック」を入手

自治体サービスの情報は、インターネット上のウェブサイト、または「障害者福祉のしおり」「生活支援ガイドブック」といった冊子にまとめられています。まずは、お住まいの市区町村の福祉担当窓口で、最新の冊子を入手しましょう。

冊子には、国制度のサービスだけでなく、自治体が独自に行っている助成や事業が網羅的に掲載されています。この冊子が、サービス活用のための「情報源」となります。

ステップ2:相談支援専門員に「自治体独自サービス」を質問する

障害福祉サービスを利用している方は、担当の相談支援専門員がついています。専門員は、国制度だけでなく、地域独自のサービスについても熟知しているプロフェッショナルです。

面談の際、必ず以下の質問を投げかけましょう。

  • 「現在のサービス利用計画に加えて、他に利用できる自治体独自の助成やサービスはありませんか?」
  • 「特に医療費や交通費に関する独自の助成があれば教えてください。」

専門員に質問することで、ご自身の状況に合わせて最適な自治体サービスをリストアップしてもらえます。

ステップ3:制度の「窓口」を確認し、二重申請を防ぐ

自治体サービスの中には、福祉担当課ではなく、交通政策課、上下水道局、税務課など、様々な部署が窓口となっているものがあります。申請する前に必ず窓口を確認しましょう。

⚠️ 注意

特に住宅改修費の助成などでは、国(介護保険・障害者総合支援法)と自治体の助成を二重に受給できない、あるいは国制度を先に利用することが条件となっている場合があります。申請手続きの順番を間違えないよう、必ず窓口に確認してください。

申請書類や必要な添付書類もサービスごとに異なるため、事前に電話で確認し、スムーズな申請を目指しましょう。


よくある質問(FAQ)と次のアクション

自治体サービスは地域差が大きいため、共通する疑問と、サービス活用に向けた具体的な次のアクションを提案します。

Q1:自治体サービスは「地域外でも利用できる」か?

A:原則として、自治体が独自に提供するサービスや助成は、その自治体(市区町村)に住民票がある方を対象としています。そのため、他の地域に引っ越した場合、前の地域のサービスは利用できなくなります。

ただし、県や都道府県単位の助成制度(例:都道府県が実施する医療費助成)であれば、県内全域で利用可能です。転居の際は、新しい地域の福祉担当課に必ずサービス内容を再確認する必要があります。

Q2:「所得制限」の基準は、どこで確認すればよいか?

A:自治体サービスの所得制限は、主に住民税の課税状況に基づいて判断されます。基準となる金額は、サービスの種類や自治体によって細かく異なります。

所得制限の具体的な基準は、自治体の「障害者福祉のしおり」に必ず記載されています。ご自身の収入や扶養家族の状況と照らし合わせ、不安な場合は税務担当課または福祉担当課に相談してみましょう。

Q3:手帳の有無が「自治体サービス」に与える影響は?

A:多くの自治体サービスは、障害者手帳(身体、精神、療育)を保有していることを前提としています。特に、医療費助成や日常生活用具の給付は、手帳の等級に応じて対象が決められます。

しかし、地域活動支援センターや一部の相談支援事業など、手帳を持っていなくても利用できるサービスもあります。手帳の申請が難しい場合は、手帳不要のサービスから活用を始めることを検討してください。

次のアクション:お住まいの地域の「福祉のしおり」を入手する

障害者向け自治体サービスを最大限に活用するための次のアクションは、お住まいの市区町村の福祉担当窓口またはウェブサイトで、最新の「障害者福祉のしおり」または「ガイドブック」を入手することです。

この一冊には、あなたの生活を助ける独自のサービスが詰まっています。冊子を入手したら、特に医療費助成、日常生活用具、交通費助成のページから目を通し、ご自身の利用資格を確認してみましょう。


まとめ

  • 障害者向け自治体サービスは、国制度ではカバーされない地域のニーズに対応するために提供され、特に経済的な助成や生活環境の整備に関する支援が充実しています。
  • 特に活用すべきは、医療費の自己負担を軽減する心身障害者医療費助成制度や、ご家族の負担を減らす日中一時支援(レスパイト)などの地域生活支援事業です。
  • サービス活用の成功には、お住まいの市区町村の「福祉のしおり」で情報を網羅的に把握し、相談支援専門員に自治体独自のサービスについて質問することが不可欠です。

高橋 健一

高橋 健一

たかはし けんいち50
担当📚 実務経験 25
🎯 制度・法律🎯 医療・福祉制度

📜 保有資格:
社会福祉士

市役所の障害福祉課で20年間勤務し、制度の運用や窓口対応を担当してきました。「制度は難しい」と言われますが、知れば使える便利なツールです。行政の内側から見た制度のポイントを、分かりやすくお伝えします。

大学卒業後、地方自治体に入庁し、障害福祉課に配属されて20年。障害者手帳の交付、障害福祉サービスの支給決定、各種手当の申請受付など、幅広い業務を経験しました。行政職員として心がけていたのは、「制度を正確に伝えつつ、温かく対応する」こと。窓口に来られる方は不安を抱えています。制度の説明だけでなく、その方の状況に合わせた情報提供を大切にしてきました。退職後、民間の相談支援事業所に転職し、今度は「申請する側」の視点も理解できました。行政と民間、両方の経験を活かして、制度の仕組みだけでなく、「実際にどう使うか」まで伝えられるのが強みです。記事では、障害者総合支援法、障害者雇用促進法、各種手当など、制度の正確な情報を「難しい言葉を使わず」解説します。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

公務員として地域に貢献したいと思い、障害福祉課に配属されたことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

窓口対応で、制度を活用して生活が楽になったと感謝されたこと。行政と民間両方の視点を得られたこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

制度の正確な情報を「難しい言葉を使わず」伝えることを大切にしています。

🎨 趣味・特技

将棋、歴史小説

🔍 最近気になっているテーマ

マイナンバーと福祉制度の連携、自治体DXの進展

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