障害者の緊急時医療サポート:連絡先と対応方法

🚨 障害のある方の緊急時医療サポート:命を守る連絡先と冷静な対応方法ガイド
「夜間に急な発熱があったけれど、どの病院に連れて行けばいいかわからない…」「パニックで意識を失ったとき、救急隊員に重要な情報が伝わるだろうか?」「日頃の支援者と医療機関との間で、緊急時の手順が共有できていない」
障害のある方にとって、**緊急時(急病、事故、急な体調の悪化)**の対応は、命に関わる最も重大な課題の一つです。特に、体調不良を言葉で伝えにくい方や、移動に制限がある方、複数の慢性疾患や常用薬がある方の場合、一刻を争う状況で適切な医療へ繋ぐための手順と情報が不可欠となります。
緊急時の対応が遅れたり、必要な情報が伝わらなかったりすると、診断や処置の遅れ、不適切な治療、あるいは二次的な怪我を引き起こすリスクがあります。
この記事では、障害のある方の緊急時対応に特化し、**「事前準備」「初期対応(救急車を呼ぶ判断)」「医療機関への情報伝達」**の三つのフェーズに基づいた具体的なガイドラインを徹底的に解説します。緊急連絡先リストの作成、情報携帯ツールの活用、そして救急隊員や医師への効果的な情報伝達法など、「命を守るための行動マニュアル」を構築しましょう。
📋 1. 【事前準備】緊急時を想定した情報と体制の構築
緊急時に冷静に対応できるかどうかは、事前の準備にかかっています。必要な情報を整理し、関係者間で共有することが、最も重要な初動対応となります。
① 緊急連絡先リストの作成と周知
体調不良が起こった際、最初に連絡すべき人・場所を明確にしたリストを作成し、ご家族や支援者がいつでもアクセスできる場所に掲示しておきます。
- **かかりつけ医・訪問診療医:**診療時間内・時間外(24時間対応番号)の両方を記載。在宅医療を受けている場合は、必ず主治医を最初に連絡します。
- 訪問看護ステーション:契約している訪問看護ステーションの緊急時連絡先。夜間・休日対応の可否も確認しておきます。
- **相談支援専門員・サービス事業所:**福祉サービスを利用している場合、責任者(サービス管理責任者や施設長など)の連絡先。
- **キーパーソン:**ご家族や後見人など、医療的な判断を代行できる人の連絡先(複数)。
💡 掲示場所
リストは、電話のそば、冷蔵庫のドア、支援事業所のオフィスなど、誰もがすぐに確認できる場所に大きく掲示しましょう。
② 命を守る「緊急情報サマリー」の携帯
救急隊員や初診の医師に、ご本人の状態を迅速に理解してもらうためのA4一枚の情報シートを常に携帯させます。
- 必須記載事項:
- **アレルギー情報:**薬(特に抗生剤)や食物のアレルギー。
- **常用薬リスト:**薬の名称、用量、服用目的(てんかん薬、精神安定剤など)。
- **基礎疾患・特記事項:**てんかんの種類、重度の肢体不自由、糖尿病などの診断名。
- 意思表示:延命治療に関する事前指示(ACP)の有無。
- コミュニケーション方法:「筆談のみ可」「大きな声はパニックになる」など、医療職への配慮を求める情報。
- 携帯方法:このシートをラミネート加工し、かばんの目立つ場所、またはヘルプマークの裏側に装着するなど、すぐに取り出せるようにします。
③ 災害・停電時の医療機器の準備
人工呼吸器や吸引器など、電力に依存する医療機器を使用している方は、災害や停電を想定した準備が必要です。
- 予備電源の確保:医療機器を数時間動かせる予備のバッテリーやポータブル電源を準備し、定期的に充電チェックを行います。
- **手動式器具の用意:**吸引器が動かない場合に備え、手動の吸引ポンプを準備し、使用方法を支援員全員が習得しておきます。
- **緊急連絡網の共有:**災害時、機器メーカーや電力会社、訪問看護ステーションに連絡する優先順位を決めておきます。
📞 2. 【初期対応】救急車を呼ぶ判断と通報の仕方
緊急時、すぐに119番通報すべきか、かかりつけ医に連絡すべきか、冷静に判断するための基準を確立します。
救急車(119番)を呼ぶべき緊急性の高い症状
ご本人が言葉で訴えられなくても、以下の症状が見られた場合は、迷わず119番通報し、救急車を要請します。
| 症状のカテゴリー | 具体的なチェック項目 |
|---|---|
| 意識・呼吸 | 意識がない、呼びかけに反応しない、呼吸が停止している、呼吸が極度に速い/浅い。 |
| 発作・麻痺 | てんかん発作が5分以上続く、手足の急な麻痺やしびれ、ろれつが回らない(脳卒中の可能性)。 |
| 出血・外傷 | 大量の出血が止まらない、頭部を強く打った、高所からの転落や交通事故。 |
| 循環器系 | 胸の激しい痛み(心筋梗塞の可能性)、急な顔面蒼白、冷や汗。 |
| 高熱 | 40℃以上の高熱が続き、水分が摂れない、痙攣を伴う。 |
**「普段と様子が全く違う」**という直感も、救急車を呼ぶための重要な判断材料となります。
通報時の冷静な情報伝達
119番通報時、障害のある方の場合は特に、迅速かつ正確な情報伝達が重要です。
- 伝えるべき情報:
- 住所:正確な住所と、目印となる建物。
- 容体:「〇〇(氏名)が意識不明です」「〇〇(氏名)がてんかん発作で5分経ちました」と具体的に伝える。
- 障害特性:「〇〇(氏名)は車椅子使用者です」「知的障害があり、パニックになる可能性があります」と伝達し、救急隊員に配慮を促します。
- **指示に従う:**通報後は、電話を切らずに救急隊員や通信指令員の質問や指示に正確に答えます。
救急車を呼ばない場合の相談先
緊急性は低いが、夜間や休日のためかかりつけ医に繋がらない場合は、地域の救急相談窓口や小児救急電話相談を活用します。
- **♯7119(救急安心センター事業):急な病気や怪我で「救急車を呼ぶべきか迷ったとき」**に、医師や看護師、相談員に相談できます(実施していない地域もあります)。
- **♯8000(小児救急電話相談):**主に小児(乳幼児〜中学生)の急な病気や怪我に関する相談に、医師や看護師が対応します。
🏥 3. 【医療連携】搬送先での情報伝達と支援
救急搬送された病院(救急外来)は、ご本人のことを何も知らない初診の医療機関であることが多いです。いかに迅速に重要な情報を伝えるかが、適切な治療の鍵となります。
情報伝達の優先順位
病院に到着したら、医療職へ以下の情報を優先順位をつけて提示します。
- **緊急情報サマリー(最優先):**アレルギーと常用薬を記載したシートを、口頭で説明する前に提示します。
- **お薬手帳・健康ファイル:**服用中の全ての薬、過去の検査結果、主治医の連絡先などを提示します。
- 現在の状況:「いつから」「どのような症状が」「どのくらいの頻度で」起こっているのかを簡潔に伝えます。
✅ 診察室でのコツ
障害のある方の救急受診では、**「なぜいつもと違うのか」**を伝えることが特に重要です。「普段は歩けますが、今朝から右足だけ麻痺しています」「普段は発作は週1回ですが、今日はすでに3回目です」など、通常の状態との比較を明確に伝えましょう。
福祉サービスとの連携と付き添い
緊急時にも、福祉サービスや支援者のサポートを受けることで、ご家族やご本人の負担を軽減できます。
- **移動・行動援護の活用:**パニックや興奮を伴う方の場合、行動援護サービスの支援員に救急外来での付き添いを依頼し、静かな場所での待機や声かけの支援をしてもらうことができます。
- 情報提供:日頃のケアを担当している支援員や訪問看護師から、主治医や救急病院に直接電話で情報を提供してもらうことも有効です。
- 医療ソーシャルワーカー(MSW)への相談:入院が必要になった場合や、今後の医療体制に不安がある場合は、病院のMSWに相談し、公費負担医療の活用や退院後の在宅サービスの調整を依頼しましょう。
📚 4. 【障害特性別】緊急時の対応の工夫
障害の種類によって、緊急時に必要な配慮や対応方法は異なります。
知的障害・発達障害のある方への対応
パニックや混乱、痛みの伝達の困難さに配慮します。
- **安心感の確保:**病院では、**慣れた人(ご家族や支援員)**が常にそばにいるようにします。
- 視覚的な説明:急な処置や検査が必要な場合、「次に何をされるか」を、医師や看護師に簡単な言葉や絵で説明してもらうよう要請します。
- **痛みや不調のサイン:**痛みや不調を言葉で訴えられない場合、自傷行為、激しい拒否、体の一部を叩く、普段と違う興奮など、非言語的なサインを医療職に伝えます。
重度身体障害(医療的ケア)のある方への対応
生命維持に関わる医療機器の管理が最優先となります。
- **医療機器の提示:**救急隊員や病院に、**使用中の医療機器(人工呼吸器、胃ろう、輸液ポンプなど)**の取扱説明書や連絡先をすぐに提示します。
- 体位の工夫:麻痺や拘縮がある場合、褥瘡の予防や呼吸のしやすさを確保するため、体位の保持について具体的な指示を医療職に伝えます。
- **嚥下機能の注意喚起:誤嚥性肺炎のリスクがある場合、「口から飲食物を摂らせないでください」**など、誤嚥防止に関する注意を強く伝えます。
🤝 5. 緊急時の備えを継続するための体制構築
緊急時の備えは、一度作ったら終わりではありません。関係者間で継続的に訓練し、見直していくことが重要です。
訓練とシミュレーションの実施
支援事業所やご家庭で、定期的に緊急時対応の訓練を行いましょう。
- 訓練内容:「急に意識を失った」「てんかん発作が起こった」など、具体的なシナリオを設定し、119番通報の練習、情報サマリーを渡す練習、医療機器のバッテリー操作の練習などを実施します。
- **訪問看護師との連携:**訪問看護師の訪問時に、救命処置(吸引、心肺蘇生)や機器のトラブル対応について、支援員や家族が一緒に学ぶ機会を設けます。
情報の定期的な見直しと更新
緊急時に提示する情報(緊急情報サマリー、お薬手帳)は、最低でも半年に一度、以下のタイミングで必ず見直します。
- 薬の変更があったとき
- 入院・手術があったとき
- 主治医や訪問看護ステーションが変更になったとき
- アレルギーが新しく判明したとき
🚨 支援者全員への周知徹底
緊急時の連絡先や対応マニュアルは、関わる全ての支援員、ヘルパー、家族がアクセスし、内容を理解していることが必須です。定期的な職員研修や家族会議の場で必ず共有しましょう。
🤝 6. 相談窓口と緊急時サポートのためのアクションプラン
緊急時サポート体制の構築について、迷いや不安がある場合は、専門家のサポートを受けましょう。
緊急時サポートに関する主な相談窓口
緊急時の体制構築について、相談すべき窓口は以下の通りです。
| 窓口 | 主な相談内容 |
|---|---|
| かかりつけ医・訪問診療医 | 緊急時の連絡体制、病院への搬送先、ACP(事前指示)に関する相談。 |
| 訪問看護ステーション | 医療機器の操作訓練、救命処置指導、24時間体制の確認。 |
| 相談支援専門員 | 行動援護・移動支援など緊急時の福祉サービスの調整、情報サマリー作成のアドバイス。 |
| 地域の消防本部(119番) | 地域の救急搬送のルール、事前登録制度(一部自治体)の有無。 |
緊急時サポート体制構築のためのアクションプラン
- 情報サマリーの作成と携帯:****アレルギーと常用薬を含む緊急情報サマリーをA4一枚で作成し、ラミネート加工して常に携帯できるようにする。
- 連携体制の確立:****かかりつけ医、訪問看護師、支援事業所の24時間連絡先を含む緊急連絡先リストを作成し、周知する。
- 救急相談窓口の登録:スマートフォンに♯7119や♯8000の番号を登録し、迷ったときにすぐに相談できる体制を整える。
- 訓練の実施:支援員や家族間で、119番通報や医療機器の操作に関するシミュレーション訓練を定期的に実施する。
緊急時の適切な対応は、命を守る最前線です。事前の周到な準備と、関係者全員の情報共有によって、最も危険な状況を乗り越える力をつけましょう。
まとめ
- 緊急時の対応は事前準備が全てであり、かかりつけ医、訪問看護師、キーパーソンの24時間連絡先リストを誰もが見られる場所に掲示する。
- 救急隊員への迅速な情報伝達のため、アレルギー、常用薬、基礎疾患を記載した**「緊急情報サマリー」を常に携帯し、口頭説明より先に提示する。
- 救急車(119番)を呼ぶべき緊急性の高い症状(意識不明、5分以上続く発作、急な麻痺など)を把握し、迷った場合は♯7119などの救急相談窓口を活用する。
- 病院到着後は、緊急情報サマリーとお薬手帳を提示し、普段の状態との比較を具体的に伝えることが、適切な治療に繋がる。
- 緊急時の体制は継続的な訓練と情報の更新**が不可欠であり、相談支援専門員と連携し、福祉サービス(行動援護など)と医療サービスを連携させて備える。

阿部 菜摘
(あべ なつみ)36歳📜 保有資格:
社会保険労務士、精神保健福祉士
社会保険労務士として障害年金の申請支援を専門に12年。「難しい」と言われる障害年金を、分かりやすく解説します。医療費助成、各種手当など、お金に関する制度情報をお届けします。
大学卒業後、社会保険労務士事務所に就職し、障害年金の申請支援を専門に担当してきました。これまで500件以上の申請をサポートし、多くの方の生活を支えるお手伝いをしてきました。障害年金は「難しい」「通らない」と諦めている方が多いですが、適切な書類準備と申請を行えば、受給できる可能性は十分あります。実際、初診日の証明が難しいケースでも工夫して認定を受けた例もあります。特に心に残っているのは、精神障害で長年苦しんでいた方が障害年金を受給できたことで、「経済的な不安が減り、治療に専念できるようになった」と感謝されたこと。制度を知ることの大切さを実感しました。記事では、障害年金の申請方法、特別障害者手当、医療費助成など、「知らないと損する」お金の制度を、専門家として正確かつ分かりやすく解説します。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
社会保険労務士として、障害年金の申請支援を通じて多くの方の生活を支えたいと思ったことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
精神障害のある方が障害年金を受給でき、「経済的な不安が減り、治療に専念できるようになった」と感謝されたこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
「知らないと損する」お金の制度を、専門家として正確かつ分かりやすく解説します。
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障害年金のオンライン申請、制度の周知不足問題





