はじめての福祉サービス:種類・対象・費用をわかりやすく解説

はじめての福祉サービス:種類・対象・費用を徹底解説
障害があると診断された時や、これからの生活に不自由を感じ始めた時、「一体どんな助けを借りられるのだろう?」と不安になるのはとても自然なことです。福祉サービスは種類が多く、制度の名前も難しそうに見えますが、一つひとつは皆さんの「自分らしい暮らし」を支えるために作られた大切なツールです。
この記事では、福祉サービスの全体像から、対象となる方の条件、気になる費用の仕組みまで、はじめての方にも分かりやすく解説します。自分に合ったサービスを見つけ、活用するための第一歩として、ぜひこの記事を役立ててください。これからの生活が少しでも軽やかになるよう、一緒に学んでいきましょう。
障害福祉サービスの全体像と仕組み
障害者総合支援法とは何か
日本の障害福祉の根幹を成しているのが「障害者総合支援法」という法律です。この法律は、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)、そして特定の難病をお持ちの方が、地域で安心して暮らせるように必要な支援を行うことを目的としています。
以前は障害の種類ごとに制度がバラバラでしたが、現在はこれらが一本化され、共通の仕組みでサービスを受けられるようになっています。ただし、利用するためには「障害福祉サービス受給者証」の申請が必要となり、お住まいの市区町村が窓口となります。まずはこの法律が「暮らしを支える共通のルール」であることを覚えておきましょう。
自立支援給付と地域生活支援事業
障害福祉サービスは大きく分けて2つのカテゴリーに分類されます。一つは全国一律の基準で提供される「自立支援給付」で、もう一つは各自治体が地域のニーズに合わせて独自に行う「地域生活支援事業」です。
自立支援給付には、後述する介護給付や訓練等給付が含まれ、個別のニーズに合わせて利用時間が決定されます。一方の地域生活支援事業は、移動支援(ガイドヘルプ)や手話通訳者の派遣などが含まれ、自治体によって内容が異なる場合があります。まずは自分がどちらのタイプの支援を必要としているか、大まかに整理することが大切です。
サービスの支給決定までの流れ
サービスを利用するためには、単に「使いたい」と伝えるだけでなく、一定の手順を踏む必要があります。一般的には、市区町村への申請、認定調査、サービス等利用計画の作成、そして支給決定というステップを進みます。
認定調査では、生活のどの部分にサポートが必要かを細かく聞き取られます。また、「サービス等利用計画」は相談支援専門員と一緒に作成するもので、将来どのような生活を送りたいかという目標を立てる重要なプロセスです。時間は少しかかりますが、専門家と相談しながら進めることができるので安心してください。
💡 ポイント
サービス等利用計画は、自分で作成する(セルフケアプラン)ことも可能ですが、基本的には相談支援事業所に所属する「相談支援専門員」に依頼するのがスムーズです。
自宅での生活を助ける介護給付サービス
居宅介護と重度訪問介護
「居宅介護」はいわゆるホームヘルプサービスのことで、ヘルパーが自宅を訪問して生活を支えてくれます。具体的な内容としては、入浴、排泄、食事の介助を行う「身体介護」と、調理、洗濯、掃除などを行う「家事援助」の二つの柱があります。
一方で、重度の肢体不自由や知的・精神障害があり、常に介護を必要とする方には「重度訪問介護」が用意されています。こちらは比較的長時間の利用が可能で、見守りや外出時のサポートも包括的に受けられます。一人暮らしを希望する重度障害者の方にとって、自立を支える極めて重要なサービスです。
同行援護と行動援護の役割
外出時の不安を解消するための専門的なサービスもあります。視覚障害がある方を対象とした「同行援護」は、移動のサポートだけでなく、代読や代筆、周囲の状況説明など、視覚情報を補うための支援を行います。
知的障害や精神障害により、行動に著しい困難がある場合には「行動援護」が適用されます。パニックの予防や、危険を回避するための適切な援助が行われるため、ご本人だけでなくご家族の安心感にもつながります。これらのサービスは、社会との接点を保ち続けるための心強い味方となってくれます。
短期入所(ショートステイ)の活用
普段自宅で介護しているご家族が病気になったり、冠婚葬祭があったり、あるいは休息(レスパイト)が必要になったりした時に、施設に短期間宿泊できるのが「短期入所」です。一晩から数日間の宿泊が可能で、日常生活のサポートを受けながら過ごすことができます。
ショートステイは、将来的に施設やグループホームへの入居を検討している場合の「お試し」として利用されることもあります。ご本人が慣れない環境でも安心して過ごせる場所を見つけておくことは、リスク管理の観点からも非常に有効なアクションと言えるでしょう。
✅ 成功のコツ
ヘルパーさんと相性が合うか不安な場合は、複数の事業所を見学したり、短時間の利用からスタートしたりして、徐々に信頼関係を築いていくのがおすすめです。
自立や就労を目指す訓練等給付サービス
自立訓練(機能訓練・生活訓練)
「自立訓練」は、リハビリテーションや日常生活のスキルアップを目指すための期間限定サービスです。身体機能の回復を目指す「機能訓練」と、入浴や掃除などの自立した生活スキルを学ぶ「生活訓練」の2種類があります。
例えば、入院生活が長かった方が一人暮らしを始める前や、精神的な不調から社会復帰を目指す段階で利用されます。あくまで「訓練」が目的であるため、利用期間が定められているのが特徴です。ステップアップのための通過点として活用することで、自信を持って次の段階へ進むことができます。
就労移行支援と就労継続支援
「働きたい」という気持ちを支えるのが就労系のサービスです。一般企業への就職を目指す「就労移行支援」は、PCスキルやビジネスマナーの習得、職場実習などを提供し、原則として2年間の期限内に就職を目指します。
一方で、すぐに一般就職が難しい場合には「就労継続支援」があります。雇用契約を結んで給与を得るA型と、体調に合わせて作業を行い「工賃」を得るB型の2種類があります。自分のペースに合わせて、働く喜びや居場所を得ることができる、非常に利用者の多いサービスです。
就労定着支援の重要性
就職が決まった後のサポートとして近年注目されているのが「就労定着支援」です。就職して半年が経過した後に利用できるサービスで、職場での悩み相談や、企業側への配慮の依頼などを間に入って調整してくれます。
「仕事は決まったけれど、人間関係が不安」「体力が続くか心配」という方は多いですが、この支援があることで離職率が大きく下がることがデータでも示されています。長く働き続けるためには、専門家による定期的なフォローアップをあらかじめ計画に入れておくことが賢明です。
| サービス名 | 主な内容 | 利用期間の目安 |
|---|---|---|
| 自立訓練 | 身体・生活スキルの向上 | 原則1〜2年 |
| 就労移行支援 | 一般企業への就職準備 | 原則2年 |
| 就労継続支援 | 福祉的就労の場を提供 | 期限なし |
日中の活動や住まいを支えるサービス
生活介護(デイサービス)の過ごし方
常に介護を必要とする方が、昼間に施設へ通って受けるサービスが「生活介護」です。入浴や食事の介助といった日常のサポートだけでなく、創作活動やレクリエーション、リハビリテーションなどが行われます。
家で過ごす時間が長くなると、ご本人もご家族も閉塞感を感じてしまうことがあります。デイサービスを利用することで、社会的な交流の場が得られ、生活リズムの改善や心身のリフレッシュにつながります。多くの施設では送迎サービスも行っているため、通いやすさも魅力の一つです。
共同生活援助(グループホーム)
「共同生活援助」、一般的にグループホームと呼ばれるこのサービスは、障害のある方が数人で共同生活を送る住まいの場です。世話人や生活支援員が配置されており、食事の提供や日常生活の相談に乗ってくれます。
「親元を離れて自立したいけれど、完全な一人暮らしは不安」という方に最適です。最近では、一軒家タイプだけでなく、アパートの各部屋を借り上げる「サテライト型」も増えており、プライバシーを確保しながら必要な時だけ助けを借りるという、より自由度の高い暮らしも可能になっています。
施設入所支援の現在
夜間の介護が必要な方を対象に、施設に入居して支援を受けるのが「施設入所支援」です。主として日中は生活介護などのサービスを利用し、夜間や休日に施設で過ごす形態をとります。
かつての「一生を施設で過ごす」というイメージから、現在は「地域生活に向けた準備の場」や「手厚い介護が必要な方の安心できる居場所」へと役割が変化しています。ご本人の障害特性や必要なケアの度合い、そして何よりご本人の希望を第一に考えて選択することが大切です。
⚠️ 注意
グループホームや施設は、空き状況によってすぐに入居できない場合があります。将来の住まいとして検討しているなら、早めに見学を行い、待機登録をしておくなどの準備が必要です。
利用料金と負担を抑える仕組み
1割負担と所得に応じた上限額
障害福祉サービスの利用料金は、原則として「かかった費用の1割」を自己負担します。しかし、多くのサービスを利用しても支払いが過大にならないよう、世帯の所得状況に応じて「ひと月あたりの負担上限月額」が定められています。
具体的には、生活保護受給世帯や市町村民税非課税世帯の方は、自己負担額が0円となります。また、一般世帯(市町村民税課税世帯)であっても、所得が一定以下の場合は37,200円が上限となります。高額なサービスを毎日利用したとしても、この金額を超えて支払う必要がないのが、この制度の優しいポイントです。
高額障害福祉サービス等給付費
世帯内に複数の障害者がいたり、障害福祉サービスと介護保険サービスを併用していたりする場合、合算した負担額が一定の基準を超えると、超えた分が払い戻される「高額障害福祉サービス等給付費」という制度があります。
これにより、家族全員の福祉コストが家計を圧迫しないよう配慮されています。基本的には自治体から案内が届きますが、不明な点があれば領収書を保管した上で役所の窓口で確認してみましょう。また、就労移行支援や自立訓練の利用者で、特定の条件を満たす場合には、昼食代の補助が出るケースもあります。
補足給付と特定入所者食費等給付費
施設に入所したりグループホームを利用したりする場合、家賃(光熱水費)や食費の実費負担が発生します。これに対して、所得が低い方を対象に行われるのが「補足給付」です。
これにより、手元に一定の生活費が残るように調整されるため、収入が障害年金のみの方であっても、住まいを失うことなくサービスを利用し続けることができます。お金の面で「自分には無理だ」と諦める前に、こうした細かな補助制度について相談支援専門員に確認してみてください。
| 世帯の所得区分 | 負担上限月額 |
|---|---|
| 生活保護・非課税世帯 | 0円 |
| 一般1(所得割16万円未満) | 9,300円 |
| 一般2(上記以外) | 37,200円 |
よくある質問と具体的な対処法
Q1. 障害者手帳がないとサービスは受けられませんか?
必ずしも手帳が必要とは限りません。精神障害や難病の方などで、医師の診断書や「自立支援医療受給者証」によって、支援が必要であると認められれば、障害者総合支援法の対象となります。ただし、サービスの種類や自治体の判断によって基準が異なる場合があるため、まずは地域の福祉窓口で「手帳はないが、困りごとがある」と相談してみるのが一番の近道です。
Q2. 65歳を過ぎたらどうなりますか?
日本の制度では、原則として65歳以上になると障害福祉サービスよりも「介護保険サービス」が優先されます。これを「介護保険優先原則」と呼びます。ただし、介護保険に似たサービスがない場合(同行援護など)や、これまでの支援の継続性が重要と判断される場合には、引き続き障害福祉サービスを利用できることもあります。65歳が近づいてきたら、早めにケアマネジャーと相談支援専門員を交えて話し合いを持ちましょう。
Q3. サービスが合わない時に事業所を変えられますか?
はい、事業所の変更はいつでも可能です。福祉サービスは契約に基づいたものですので、ご本人の希望で他の事業所へ移ることに法的な制限はありません。ただし、新しい事業所の空き状況や、支給量の再調整が必要になることもあるため、まずは担当の相談支援専門員に「今の事業所のここが合わない」と正直に伝えることから始めてください。より良い支援環境を探すことは、わがままではなく「権利」です。
Q4. 相談支援専門員さんはどうやって探せばいいですか?
市区町村の障害福祉課に行くと、地域にある「指定特定相談支援事業所」の一覧表をもらうことができます。また、最近では自治体のホームページで各事業所の特徴(身体障害に強い、精神障害を専門にしている等)を公開していることも多いです。まずは電話で問い合わせてみて、話しやすそうな方や、自分の障害特性に理解がありそうな所を選んでみましょう。
「福祉サービスを使い始めてから、家族との喧嘩が減り、自分の時間を持てるようになりました。助けを求めることは、自分と家族を守ることなんだと実感しています。」
— 精神障害のあるお子さんを持つDさん
まとめ
はじめて福祉サービスに触れる時は、その仕組みの複雑さに戸惑うこともあるかもしれません。しかし、すべてのサービスは「あなたがあなたらしく生きるため」に存在しています。家事を手伝ってもらう、働く練習をする、仲間のいる場所へ通う。こうした一つひとつの積み重ねが、生活の質を大きく変えていきます。
大切なのは、すべてを自分で理解しようとしすぎないことです。地域には「相談支援専門員」という、制度とあなたをつなぐプロフェッショナルがいます。まずは「今の生活で何に困っているか」を言葉にすることから始めてみてください。その声が、新しいサポートの扉を開く鍵になります。あなたのこれからの生活が、福祉という支えを得て、より豊かで安心できるものになることを心から願っています。
まとめ
- 障害福祉サービスは「自立支援給付」と「地域生活支援事業」の二本柱で構成されています。
- 利用には「受給者証」が必要で、相談支援専門員と一緒に「利用計画」を立てるのが基本ステップです。
- 自己負担額は原則1割ですが、所得に応じて「上限額」が決まっているため、家計への過度な負担は抑えられます。
- サービスは「生活を助けるもの」から「働くためのもの」まで多岐にわたり、状況に合わせていつでも見直しや変更が可能です。

高橋 健一
(たかはし けんいち)50歳📜 保有資格:
社会福祉士
市役所の障害福祉課で20年間勤務し、制度の運用や窓口対応を担当してきました。「制度は難しい」と言われますが、知れば使える便利なツールです。行政の内側から見た制度のポイントを、分かりやすくお伝えします。
大学卒業後、地方自治体に入庁し、障害福祉課に配属されて20年。障害者手帳の交付、障害福祉サービスの支給決定、各種手当の申請受付など、幅広い業務を経験しました。行政職員として心がけていたのは、「制度を正確に伝えつつ、温かく対応する」こと。窓口に来られる方は不安を抱えています。制度の説明だけでなく、その方の状況に合わせた情報提供を大切にしてきました。退職後、民間の相談支援事業所に転職し、今度は「申請する側」の視点も理解できました。行政と民間、両方の経験を活かして、制度の仕組みだけでなく、「実際にどう使うか」まで伝えられるのが強みです。記事では、障害者総合支援法、障害者雇用促進法、各種手当など、制度の正確な情報を「難しい言葉を使わず」解説します。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
公務員として地域に貢献したいと思い、障害福祉課に配属されたことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
窓口対応で、制度を活用して生活が楽になったと感謝されたこと。行政と民間両方の視点を得られたこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
制度の正確な情報を「難しい言葉を使わず」伝えることを大切にしています。
🎨 趣味・特技
将棋、歴史小説
🔍 最近気になっているテーマ
マイナンバーと福祉制度の連携、自治体DXの進展





