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介護保険と障害福祉サービスはどう違う?併用のポイント

📖 約52✍️ 高橋 健一
介護保険と障害福祉サービスはどう違う?併用のポイント
介護保険と障害福祉サービスは、それぞれ高齢者の介護と障害者の自立支援を目的としており、対象者やサービス内容が異なります。特に65歳を境に「原則介護保険優先」というルールが適用され、同じようなサービス(例:ホームヘルプ)は介護保険へ移行します。しかし、就労支援などの「訓練等給付」は引き続き障害福祉サービスとして併用が可能です。円滑な移行・併用のためには、要介護認定の申請を行い、ケアマネジャーと相談支援専門員が連携することが不可欠です。費用負担についても各種軽減措置があるため、不安があれば市区町村の窓口や専門家に相談することが重要です。

介護保険と障害福祉サービスはどう違う?併用のポイントを徹底解説

「介護保険と障害福祉サービス、どちらを使えばいいの?」「両方使えるって聞いたけど、どういうルール?」

障害のある方やそのご家族、支援者の方々から、このようなご質問をいただくことは少なくありません。制度が複雑に絡み合っているため、理解しづらいと感じるのは当然のことです。

この記事では、介護保険制度と障害福祉サービスの違い、そして65歳を境に発生する「サービス併用のルール」について、専門用語をかみ砕いて、わかりやすく、親しみやすい言葉で徹底的に解説していきます。

この記事を最後までお読みいただくことで、あなたやあなたの大切な方が、必要なサービスを漏れなく、そしてスムーズに利用できるための道筋がきっと見えてきます。ぜひ最後までお付き合いください。


介護保険と障害福祉サービス、基本的な違いを知ろう

まずは、この二つの制度が、どのような目的で、どのような人を対象に作られているのか、その基本的な違いから理解を深めていきましょう。両者は、名前は似ていても、その成り立ちと対象者、そして提供されるサービスに大きな違いがあります。

制度の目的と対象者の違い

介護保険制度は、主に高齢者の介護を社会全体で支えることを目的に、2000年に創設されました。対象となるのは、原則として65歳以上の方で、要介護認定または要支援認定を受けた方です。

しかし、特定の16種類の特定疾病(例:末期がん、関節リウマチなど)が原因で介護が必要になった場合は、40歳から64歳の方でも対象となります。高齢になり、身体機能や認知機能が低下したことによる生活上の困難をサポートするための制度だと言えます。

一方、障害福祉サービスは、障害のある方が地域社会で自立した生活を送ることを支援するために設けられた制度です。身体障害、知的障害、精神障害、難病を持つ方など、年齢を問わず幅広い方が対象となります。

この制度の目的は、単に「介護」を提供するだけでなく、「社会参加」や「働くこと」など、障害のある方一人ひとりの自己実現をサポートする点に重点が置かれています。

💡 ポイント

介護保険は主に「高齢者の介護」が目的、障害福祉サービスは「障害者の自立支援」が目的と、根本的な設計思想が異なります。

提供されるサービス内容の比較

提供されるサービスの内容にも、明確な違いがあります。介護保険のサービスは、主に「居宅サービス」「施設サービス」「地域密着型サービス」に分類されます。

具体的なサービスとしては、訪問介護(ホームヘルプ)、通所介護(デイサービス)、短期入所生活介護(ショートステイ)などがあり、食事、入浴、排せつなどの日常生活上の援助が中心となります。

対して、障害福祉サービスは、「介護給付」と「訓練等給付」の二本柱で構成されています。介護給付には居宅介護(ホームヘルプ)や生活介護など、介護保険と似たサービスもありますが、特徴的なのは訓練等給付です。

訓練等給付には、就労移行支援や就労継続支援、自立訓練(生活訓練・機能訓練)などがあり、社会で生活していくためのスキル習得や、働くためのサポートに重点を置いたサービスが豊富に用意されています。

項目 介護保険サービス 障害福祉サービス
根拠法 介護保険法 障害者総合支援法
主な対象年齢 原則65歳以上 年齢制限なし(児童福祉法との連携あり)
目的 高齢者の介護を社会全体で支える 障害者の地域生活と自立を支援する
主なサービス例 訪問介護、通所介護、短期入所 居宅介護、生活介護、就労移行支援


65歳が境目!「原則介護保険優先」のルールとは

多くの方が混乱する最大のポイントが、65歳になった時のルールの変更です。障害のある方が65歳になると、原則として介護保険サービスが優先的に適用されるという大きな制度上の原則があります。これを「原則介護保険優先」の原則と言います。

なぜ65歳で優先順位が変わるのか

この優先原則は、制度の公平性を保つために設けられています。65歳になった時点で、もし障害のある方とそうでない方の両方が介護の必要性を生じた場合、どちらも高齢者として介護保険の対象者となるからです。

日本には、社会保障制度がいくつもありますが、費用負担やサービス提供の公平性を保つため、「同じニーズには一つの制度で対応する」という考え方が根底にあります。障害福祉サービスは、本来であれば65歳未満の障害者を想定した制度であり、高齢者への介護は介護保険で一元化することが国の基本方針となっています。

この優先原則は、サービスの質が劣るというわけではなく、単に制度上の窓口が変わるという風に捉えていただくとわかりやすいかもしれません。長年利用してきたサービスが変わることへの不安はあるかと思いますが、ご自身の状況に合わせて最適なサービスを確保するための手続きだとご理解ください。

⚠️ 注意

65歳になり介護保険の対象となっても、手続きをしなければ自動的にサービスが切り替わるわけではありません。必ずお住まいの市区町村の窓口や相談支援事業所にご相談ください。

「合算」と「並行利用」の具体例

「原則介護保険優先」と言っても、障害福祉サービスでしか受けられない専門性の高いサービスや、介護保険にはない訓練系のサービスもあります。そのような場合、例外的に二つの制度の「合算」や「並行利用(併用)」が認められます。

例えば、介護保険の訪問介護を利用しても、以前から受けていた重度訪問介護(障害福祉サービス)の特定の支援内容(例:移動中の見守りや服薬介助など、介護保険ではカバーしきれない部分)が必要な場合は、サービス内容を調整して両方を併用できる場合があります。

また、リハビリテーションや就労支援など、介護保険には存在しない「訓練等給付」に該当するサービスは、65歳以降も引き続き障害福祉サービスとして利用することが可能です。つまり、「介護」の部分は介護保険へ移行しますが、「自立支援」の部分は障害福祉サービスに残るというイメージです。

「私は67歳ですが、週に2回、以前から利用している就労継続支援B型(障害福祉サービス)に通い続けています。自宅での身体介護は介護保険の訪問介護に切り替わりましたが、働くための支援はそのまま継続できていて助かっています。」

— 当事者の声(仮名:Aさん)


サービス併用をスムーズにするための手順と相談窓口

制度の仕組みがわかっても、実際に手続きとなると複雑で、どこから手を付けていいか迷ってしまいますよね。ここでは、65歳前後のサービス移行・併用をスムーズに行うための具体的なステップと、頼りになる相談窓口をご紹介します。

ステップ1:まずは要介護認定の申請

障害のある方が65歳に近づいたら、あるいは既に65歳を超えていて介護保険のサービス利用が必要と感じたら、まずは市区町村の窓口(福祉課や介護保険課)で要介護認定の申請を行うことが第一歩となります。

要介護認定は、介護保険のサービスを利用するために必須の手続きです。申請すると、訪問調査や主治医の意見書に基づき、要介護度(要支援1〜2、要介護1〜5)が決定されます。この認定結果が、受けられる介護保険サービスの量や種類を決める基盤となります。

既に障害支援区分(例:区分3など)を受けている方も、介護保険の要介護認定は別個に申請が必要です。この申請をしないと、介護保険優先の原則が適用されず、結果として必要なサービスを受けられない期間が発生してしまうリスクがあります。

  1. お住まいの市区町村の窓口に申請書を提出します。
  2. 調査員による訪問調査(心身の状態や生活状況の確認)が行われます。
  3. 主治医に意見書の作成を依頼します。
  4. 審査・判定を経て、要介護度または要支援度が決定し通知されます。

ステップ2:ケアマネジャーと相談支援専門員との連携

要介護認定が下りたら、次に必要となるのが「ケアプラン」の作成です。介護保険サービスの利用計画を作成するのはケアマネジャー(介護支援専門員)の役割です。

一方、障害福祉サービスを利用するための計画を作成するのは相談支援専門員です。65歳を境に両方のサービスを利用する、または切り替える際には、この二つの専門職が密に連携し、利用者のニーズを共有することが極めて重要となります。

利用者ご本人やご家族は、相談支援専門員やケアマネジャーに対し、「これまで受けていたサービスで特に助かっていたこと」「生活の中でどうしても欠かせない支援」「将来的に挑戦したいこと(例:就労、社会活動)」などを具体的に伝えることが成功の鍵となります。

✅ 成功のコツ

65歳になる数ヶ月前から、相談支援専門員とケアマネジャーを交えた三者面談(または四者面談)を行い、移行後のサービス内容について事前に合意を形成しておくことがトラブルを防ぐ最善策です。

ステップ3:支給決定プロセスとサービス提供事業所の選定

ケアプラン(介護保険)とサービス等利用計画(障害福祉サービス)が作成されたら、市区町村に提出し、審査を経て「支給決定」を受けます。この支給決定によって、正式にサービス利用が可能になります。

また、サービス提供事業所の選定も重要なステップです。障害福祉サービスと介護保険サービスの両方の事業所を兼ねている事業所を選ぶことができれば、顔なじみのスタッフに引き続き支援を受けられる可能性が高まり、利用者にとって大きな安心材料となります。

事業所を選ぶ際には、単にサービス内容だけでなく、事業所の理念やスタッフの経験、そして何よりもご本人との相性を重視し、いくつかの候補を比較検討することをおすすめします。


金銭面はどうなる?費用負担と助成制度

サービスの併用や切り替えを考える上で、無視できないのが費用負担、つまりお金の話です。介護保険と障害福祉サービスでは、費用負担の考え方や上限額が異なります。この違いを理解しておくと、経済的な不安を減らすことができます。

介護保険サービスの費用負担の仕組み

介護保険サービスを利用する場合、原則として利用料の1割(所得に応じて2割または3割)を自己負担します。残りの9割(または8割、7割)は、公費(税金)と介護保険料でまかなわれます。

しかし、自己負担額が一定額を超えた場合、超過分が払い戻される「高額介護サービス費」の制度があります。この制度により、利用者の所得に応じて負担の上限額が設定されており、過度な負担が生じないよう配慮されています。

所得区分 月額上限額の目安
現役並み所得者 44,400円
一般世帯 24,600円
住民税非課税世帯 15,000円

※上記は概算です。正確な情報は市区町村にお問い合わせください。

障害福祉サービスの費用負担と軽減措置

障害福祉サービスの場合も、原則として費用の1割が自己負担となります。しかし、この自己負担額についても、世帯の所得状況に応じて「負担上限月額」が設定されており、上限を超えた分の負担は免除されます。

特に注目すべきは、多くの障害福祉サービス利用者が属する「一般1(市町村民税課税世帯)」や「一般2(市町村民税非課税世帯)」では、負担上限月額が非常に低く抑えられている点です。

また、65歳以上で介護保険サービスと障害福祉サービスを併用している場合、どちらのサービスも自己負担が発生しますが、その合計額が一定の上限を超えた場合に負担を軽減する「高額障害福祉サービス費」「特定障害者に対する配慮」などの制度もあります。

💡 ポイント

65歳以上で両方のサービスを利用している場合、自己負担額が高額になりすぎないよう、市区町村の窓口で「特定障害者に対する配慮」の適用など、各種軽減措置について必ず確認しましょう。

実例:両サービス併用世帯の負担軽減

たとえば、Aさん(68歳、障害支援区分3、要介護2)が介護保険の訪問介護と、障害福祉サービスの移動支援(訓練等給付)を併用しているとします。

介護保険サービスにかかる費用(1割負担)と、障害福祉サービスにかかる費用(1割負担)の月々の合計が、Aさんの世帯の負担上限月額(例えば24,600円)を超えてしまった場合、超過した金額は公費で負担されます。

このように、費用負担の制度は非常に複雑ですが、「所得に応じて上限が設けられているから、過度に心配しなくても良い」ということをまず理解し、具体的な計算や手続きは、必ずケアマネジャーや相談支援専門員に確認を依頼しましょう。


よくある質問と具体的な相談窓口

ここまで介護保険と障害福祉サービスの併用について解説してきましたが、実際の現場では細かな疑問や不安が次々と出てくるものです。ここでは、よくある質問にお答えし、最後に具体的な相談窓口をご紹介します。

Q1: 65歳を過ぎても障害福祉サービスを継続できる例外はありますか?

はい、あります。最も重要な例外が「訓練等給付」に該当するサービスです。就労移行支援、就労継続支援、自立訓練などは、介護保険に同様のサービスが存在しないため、65歳以降も引き続き障害福祉サービスとして利用することができます。

また、介護保険の訪問介護では対応できない、非常に専門的な支援が必要な場合(例:人工呼吸器を装着している方への重度訪問介護など)、市区町村の判断により、障害福祉サービスの利用が例外的に認められる場合があります。この判断は、市区町村の裁量に委ねられるため、必ず個別具体的に相談することが重要です。

Q2: 以前使っていた障害福祉サービスの事業所を介護保険で使えますか?

はい、可能です。多くの訪問介護や通所介護の事業所は、「介護保険事業所」と「障害福祉サービス事業所」の両方の指定を受けているケースが多いです。

この場合、65歳を境に利用するサービスが介護保険に切り替わっても、同じ事業所の、顔なじみのスタッフが引き続きサービスを提供してくれる可能性が高いです。事業所のスタッフに、65歳以降のサービス移行について、事前に相談してみるのが良いでしょう。

Q3: 相談の専門家はどこにいますか?

相談する専門家は、制度によって異なりますが、まずは以下の窓口に相談されることをお勧めします。

  • 障害福祉サービス全般:市区町村の障害福祉課、または指定特定相談支援事業所の相談支援専門員
  • 介護保険サービス全般:市区町村の介護保険課、または居宅介護支援事業所のケアマネジャー
  • 両制度の移行や併用お住まいの市区町村の相談窓口が最も確実です。両制度を所管する部署間で連携を取ってくれるはずです。

特に、地域包括支援センターは、高齢者の方を対象に、介護保険だけでなく様々な相談を受け付けているため、65歳以降の生活全般の相談先として大変頼りになります。

💡 ポイント

サービス移行期は、手続きが多岐にわたります。まずは「相談支援専門員」か「ケアマネジャー」のうち、より信頼できると感じる専門家を一人決め、その方を窓口として情報の整理や手続きの代行をお願いするのが効率的です。


まとめ

介護保険と障害福祉サービスは、それぞれ目的や対象は異なりますが、どちらも利用者の生活を支え、自立を助けるという共通の目標を持っています。65歳を境に「原則介護保険優先」という大きなルールがありますが、訓練等給付などの重要なサービスは引き続き障害福祉サービスとして併用が可能です。

制度の複雑さに戸惑うこともあるかと思いますが、必ず「相談支援専門員」と「ケアマネジャー」の二人の専門家が、あなたの生活を支えるための計画作成をサポートしてくれます。

大切なのは、ご本人の「どう生きたいか」「どんな支援が必要か」という希望を具体的に伝えることです。今日から、まずは地域の相談窓口に一歩踏み出し、あなたにとって最適な支援の形を探す旅を始めてみませんか。

次のアクション

  • 65歳に近い方は、まずは市区町村の介護保険窓口で要介護認定の申請について相談しましょう。
  • 現在の相談支援専門員に、65歳以降のサービス移行に関する意向を伝え、早めの情報共有をお願いしましょう。
  • ご自宅で利用しているサービス事業所が、介護保険の「指定事業者」も兼ねているかを確認してみましょう。

高橋 健一

高橋 健一

たかはし けんいち50
担当📚 実務経験 25
🎯 制度・法律🎯 医療・福祉制度

📜 保有資格:
社会福祉士

市役所の障害福祉課で20年間勤務し、制度の運用や窓口対応を担当してきました。「制度は難しい」と言われますが、知れば使える便利なツールです。行政の内側から見た制度のポイントを、分かりやすくお伝えします。

大学卒業後、地方自治体に入庁し、障害福祉課に配属されて20年。障害者手帳の交付、障害福祉サービスの支給決定、各種手当の申請受付など、幅広い業務を経験しました。行政職員として心がけていたのは、「制度を正確に伝えつつ、温かく対応する」こと。窓口に来られる方は不安を抱えています。制度の説明だけでなく、その方の状況に合わせた情報提供を大切にしてきました。退職後、民間の相談支援事業所に転職し、今度は「申請する側」の視点も理解できました。行政と民間、両方の経験を活かして、制度の仕組みだけでなく、「実際にどう使うか」まで伝えられるのが強みです。記事では、障害者総合支援法、障害者雇用促進法、各種手当など、制度の正確な情報を「難しい言葉を使わず」解説します。

もっと詳しく

💭 福祉の道を選んだ理由

公務員として地域に貢献したいと思い、障害福祉課に配属されたことがきっかけです。

✨ 印象に残っている出来事

窓口対応で、制度を活用して生活が楽になったと感謝されたこと。行政と民間両方の視点を得られたこと。

✍️ 記事を書く上で大切にしていること

制度の正確な情報を「難しい言葉を使わず」伝えることを大切にしています。

🎨 趣味・特技

将棋、歴史小説

🔍 最近気になっているテーマ

マイナンバーと福祉制度の連携、自治体DXの進展

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