家庭の負担を減らす介護サービス活用法

共倒れを防ぐ!家庭の負担を軽減する障害福祉サービスの活用術
「毎日続く介護や支援で、心身ともに疲れ切ってしまった」「自分の時間や、他の家族との時間を確保したいけれど、なかなか難しい」
障害のある方を支えるご家族が抱える負担は、計り知れません。特に、長期間にわたる在宅支援は、ご家族自身の健康や生活、そして人間関係にも影響を及ぼし、「共倒れ」という深刻な状況に繋がりかねません。
この記事では、ご家族の負担を軽減し、誰もが笑顔でいられる生活を取り戻すために、障害福祉サービスを最大限に活用する方法を、具体的なサービスや制度の知識を交えて徹底的に解説します。
ご家族の皆様が「頼ってもいいんだ」「休むことは悪いことではない」と感じられるよう、「レスパイト(休息)」の重要性と、それを実現するための実践的なノウハウをご紹介します。
「レスパイト」の必要性を知る:休むことの重要性
ご家族による支援は愛情深く、かけがえのないものですが、限界を超えてしまうと、支援の質が低下したり、ご家族自身の心身の健康を損なったりする危険性があります。まずは、「休むこと(レスパイト)」の重要性を理解しましょう。
共倒れを防ぐためのサービス利用
多くのご家族は「自分がやらなければ」という責任感や、「他人を頼るのは申し訳ない」という遠慮から、支援をすべて抱え込んでしまいがちです。しかし、支援はマラソンであり、持続可能な体制でなければ、いつか破綻してしまいます。
障害福祉サービスには、ご本人の生活を支援するだけでなく、ご家族が一時的に休息を取るための機能が組み込まれています。この「レスパイト機能」は、ご家族の疲労回復や、ご自身の生活、仕事、趣味などの時間を確保するために、非常に重要な役割を果たします。
行政や社会が提供するサービスを利用することは、決して「手抜き」や「甘え」ではありません。「より良い支援を長く続けるため」に必要な戦略であり、社会的にも推奨されていることです。サービスを積極的に活用することで、ご家族は心にゆとりを持ち、結果的にご本人に対しても穏やかで質の高い支援を提供できるようになります。
💡 ポイント
レスパイトとは「一時的な休息」を意味し、ご家族が心身を休めたり、私的な用事を済ませたりするために、支援を外部のサービスに一時的に委ねることです。
家族のQOL(生活の質)向上を目指す
障害福祉サービスの活用は、ご本人だけでなく、ご家族全員のQOL(Quality of Life:生活の質)の向上に直結します。24時間支援から解放されることで、ご家族は以下のような恩恵を得ることができます。
- 身体的疲労の回復: 睡眠時間の確保や、慢性的な肩こり・腰痛の改善。
- 精神的ストレスの軽減: 常に緊張状態にある心理的な負担からの解放。
- 社会生活の維持: 仕事の継続、友人との交流、趣味の時間など、社会とのつながりの維持。
- 家族関係の改善: 夫婦やきょうだい間の介護負担の偏りを解消し、家族間の会話や笑顔が増える。
サービスを利用して心にゆとりが生まれると、「支援しなければならない」という義務感から、「一緒に楽しむ時間」へと意識が変化し、ご本人との関係もより良好になるという好循環が生まれます。
レスパイトの王道:短期入所(ショートステイ)の活用
ご家族のレスパイトを目的としたサービスの中で、最も活用されているのが「短期入所(ショートステイ)」です。計画的に利用することで、まとまった休息時間を確保できます。
短期入所の仕組みと利用対象者
短期入所(正式名称:短期入所事業)は、ご本人が一時的に福祉施設や医療施設に入所し、必要な介護や生活支援、リハビリテーションなどを受けることができるサービスです。利用期間は原則として連続30日以内とされています。
対象となるのは、主に障害支援区分が区分1以上の方で、日常生活において介護が必要な方です。サービスの利用目的は、ご本人の療養や生活の場を提供することもありますが、特に「家族の病気や休息、冠婚葬祭などの際に、一時的に支援を代替すること」が重要な目的として定められています。
短期入所の種類には、大きく分けて「福祉型」と「医療型」があり、ご本人の状態(医療的ケアの必要性など)に応じて選択します。福祉型は主に障害者支援施設などで、医療型は病院や診療所などで提供されます。
⚠️ 注意
短期入所は人気が高く、特に長期休暇期間などは予約が取りにくい傾向があります。ご家族の予定が決まったら、できるだけ早めに相談支援専門員に相談し、予約の確保に動くことが成功のコツです。
賢く使うための「年間計画」の立て方
短期入所を有効活用するためには、場当たり的な利用ではなく、年間を通じた「計画的な利用」を心がけることが大切です。
相談支援専門員と話し合い、以下の要素を考慮に入れた利用計画を立ててみましょう。
- 季節的な利用: 家族旅行や年末年始の行事など、家族が支援から離れる必要がある時期。
- 定期的なレスパイト: 3ヶ月に一度など、定期的に週末を利用して休息日を設ける。
- 緊急時の予備枠: 家族の急な体調不良や入院など、予測できない事態に備えた利用枠を事業所と相談しておく。
特に、重度の医療的ケアが必要な方は受け入れ可能な施設が少ないため、普段から複数の施設を見学し、登録を済ませておくことが、緊急時にも安心できる体制づくりに繋がります。
「私たちは年に2回、夫婦で旅行に行くために短期入所を必ず利用しています。数日前から入所先の担当者と綿密に情報共有し、安心して預けることができるおかげで、夫婦の絆も深まっています。」
— 当事者の声(仮名:Dさんの父親)
自宅で受けるレスパイト:訪問系サービスの柔軟な活用
短期入所だけでなく、訪問系のサービスも、ご家族の負担を軽減する上で非常に大きな役割を果たします。自宅で支援を受けられるため、環境の変化が苦手な方や、数時間の休息が欲しい場合に最適です。
居宅介護・重度訪問介護を「家族不在時」に使う
「居宅介護」(ホームヘルプ)は、ご本人の自宅で、食事、入浴、排泄などの身体介護や、調理、洗濯などの生活援助を受けることができるサービスです。
このサービスは、ご家族が在宅している時間帯にも利用可能ですが、特にご家族が買い物や通院、仕事などで一時的に不在になる時間帯にヘルパーに支援に入ってもらうことで、ご本人の安全を確保しつつ、ご家族は安心して外出することができます。
また、重度の障害を持つ方向けの「重度訪問介護」は、より長時間の支援や、医療的ケア、外出時の支援まで包括的に提供されるため、ご家族が終日外出する場合や、夜間の睡眠時間を確保したい場合に、非常に強力なレスパイト機能を発揮します。
✅ 成功のコツ
相談支援専門員に「ご家族の休息や外出の時間を確保したい」という明確な目的を伝え、サービス等利用計画にその旨を具体的に盛り込んでもらうことで、レスパイトを目的とした訪問サービスを適切に利用しやすくなります。
移動支援で「自由な時間」を生み出す
「移動支援」は、主に屋外での移動が困難な方に、外出のための支援(移動中の介護や見守り)を提供するサービスです。このサービスは、ご本人が社会参加や余暇活動を行うことを目的としていますが、ご家族の負担軽減にも大きく役立ちます。
例えば、ご本人が移動支援を利用してヘルパーと一緒に散歩や買い物に出かけている間、ご家族は自宅で完全にフリーな時間を持つことができます。これは、家にいながらにして得られる、非常に貴重なレスパイトとなります。
移動支援は、居宅介護のサービスとは別枠で支給決定されることが多いため、それぞれのサービスを組み合わせて利用することで、支援の幅を広げることができます。ご本人の希望とご家族の休息を両立できる、非常に柔軟なサービスです。
| サービス名 | レスパイト機能の側面 | 主な利用シーン |
|---|---|---|
| 短期入所 | 宿泊を伴う長時間の休息(家族の入院、旅行など) | 計画的な休息、緊急時の対応 |
| 居宅介護 | 家族の短時間の外出や家事負担の軽減 | 家族が仕事、買い物、通院している時間帯 |
| 重度訪問介護 | 終日の支援、夜間睡眠時間の確保 | 家族が終日外出、夜間の見守りが必要な時間帯 |
| 移動支援 | 家族不在時の外出支援、家族の在宅休息時間の確保 | ご本人が外出活動を行っている時間帯 |
家庭内のコミュニケーションとサービスの連携のコツ
サービスを最大限に活用し、家庭内の負担を減らすためには、ご家族間のコミュニケーションと、サービス提供者との密な連携が不可欠です。
家族内での「負担の見える化」と役割分担
家庭内の支援の負担が特定の人物(例えば主に母親)に集中すると、その人の疲弊は加速し、やがて家族関係の軋轢にも繋がります。まず、ご家族間で「誰が、いつ、どれくらいの支援を行っているか」を具体的に書き出し、「負担の見える化」を行いましょう。
支援の内容や時間(例:夜間対応、入浴介助、病院への送迎など)を明確にすることで、サービスによって補うべき部分がどこにあるのか、家族内で分担しきれない部分はどこなのかが明確になります。
そして、それぞれの家族が「得意なこと」「負担にならないこと」を考慮して、新しい役割分担を話し合います。サービスは、家族が担うべき「愛情や関わり」以外の、身体的・時間的な負担を肩代わりしてもらうものとして位置づけましょう。
「以前はすべてを一人で抱え込み、夫や子どもに強く当たってしまうことがありました。支援専門員に促され、家族会議で負担を共有したところ、夜間の対応は夫が、日中の通院はヘルパーさんが担ってくれるようになり、心に余裕ができました。」
— 支援者の声(仮名:Eさん)
相談支援専門員との関係性を築く
サービスの利用計画作成から、事業所との調整、緊急時の対応まで、「相談支援専門員」はご家族の負担軽減のキーパーソンとなります。彼らとの信頼関係を築くことが、サービスの円滑な利用に繋がります。
相談支援専門員には、ご本人の状況だけでなく、ご家族の疲労度や切実なニーズを正直に伝えましょう。「もう限界だ」「とにかく休みたい」といった感情も含めて共有することで、専門員はレスパイトを重視した計画を提案しやすくなります。
- 希望を明確に伝える: 「週に○時間、自分の自由な時間が欲しい」「夜間はぐっすり眠りたい」など、具体的な希望を伝える。
- 家庭の状況を開示する: 家族構成、同居者の健康状態、きょうだいの状況など、支援に必要な背景情報を提供する。
- 定期的な見直しを依頼する: 支援計画は一度作ったら終わりではなく、家族の状況やご本人の状態に応じて、定期的に見直しをお願いする。
💡 ポイント
相談支援専門員を「手続きの代行者」と捉えるだけでなく、「家庭の負担軽減のための戦略を一緒に考えてくれるパートナー」として捉え、積極的に相談しましょう。
その他の見落としがちな負担軽減サービス
短期入所や訪問サービスだけでなく、日常生活の小さな負担を積み重ねて減らすことができる、見落とされがちなサービスも積極的に活用しましょう。
金銭的な負担を減らす制度の活用
サービス利用料の自己負担は、家庭の経済的な負担となり得ます。障害福祉サービスには、世帯の所得に応じて自己負担額に上限が設けられる「負担上限月額」の制度があります。
また、医療費が高額になった場合に払い戻しを受けられる「高額療養費制度」や、所得税・住民税の負担を軽減する「障害者控除」など、様々な公的制度があります。これらの制度を漏れなく活用することで、家庭の経済的な負担を軽減し、心にゆとりを生み出すことができます。
これらの制度の申請手続きは複雑な場合もあるため、市区町村の福祉課や、社会福祉協議会の生活支援相談員などに相談してみることをお勧めします。
日常生活用具給付事業で負担を減らす
日常生活用具給付事業は、身体の機能の低下や、生活上の困難を補うための様々な福祉用具を、原則として1割の自己負担で購入・レンタルできる制度です。
例えば、以下のような用具は、ご家族の介護負担を大幅に軽減する可能性があります。
- 特殊寝台・入浴補助用具: 身体介護の負担軽減
- 意思伝達装置: コミュニケーションに関する負担軽減
- 移動支援機器: 外出時の負担軽減
特に、体位交換や入浴など、身体的な介助を伴う場面で福祉用具を導入することで、ご家族が腰を痛めたり、無理な体勢で介助したりするリスクを減らすことができます。これもまた、共倒れを防ぐための重要な投資です。
⚠️ 注意
日常生活用具の給付対象品目や自己負担額は、市区町村によって異なる場合があります。必ずお住まいの自治体の窓口で詳細を確認しましょう。
日中活動系のサービスで家族の時間を創出
重度の障害を持つ方向けの「生活介護」や、創作・生産活動を行う「就労継続支援」などの日中活動系のサービスも、間接的なレスパイト効果をもたらします。
ご本人が日中、施設に通所して活動している間は、ご家族は家事や仕事、あるいは完全な休息の時間に充てることができます。これにより、夕方以降にご本人を迎え入れた際に、家族が心身ともにリフレッシュした状態で支援にあたることが可能になります。
日中活動は、ご本人の生活のハリや社会参加にも繋がるため、ご家族の負担軽減とご本人のQOL向上の「一石二鳥」のサービスと言えるでしょう。
よくある質問とご家族へのメッセージ
サービス活用をためらうご家族からよく聞かれる疑問や、記事を読んだ方に伝えたい温かいメッセージをまとめます。
Q1: サービスを使いすぎるのは良くないですか?
いいえ、そのようなことはありません。必要なサービスを必要なだけ使うことが、国の制度の目的です。サービスは、ご家族が笑顔で、そして健康に支援を続けるための「燃料」のようなものです。
遠慮や罪悪感から利用を控えることは、ご家族自身の健康を損ない、結果としてご本人への支援が途切れてしまうリスクを高めます。相談支援専門員や市区町村は、ご家族の負担軽減のためにサービスを設計してくれる立場です。安心して、正直に支援の必要性を伝えましょう。
Q2: サービス利用開始後の注意点はありますか?
サービス利用開始後は、事業所とのコミュニケーションを密に取ることが重要です。特に、「ご本人に関する大切な情報」や「支援のやり方」は、マニュアル化してヘルパーや施設スタッフと共有できるようにしておきましょう。
また、支援内容に不満や不安がある場合は、我慢せずにすぐに事業所や相談支援専門員に相談してください。支援は、ご本人とご家族、そしてサービス提供者の三者で作り上げていくものです。
Q3: 相談窓口はどこから始めればいいですか?
まずは、お住まいの市区町村の障害福祉課、または契約している指定特定相談支援事業所の相談支援専門員に相談することから始めましょう。
もし、まだ相談支援専門員と契約していない場合は、福祉課に問い合わせて、地域の事業所を紹介してもらうことができます。最初の相談先として最も身近で確実なのは、地域の保健福祉センターなども挙げられます。
✅ ご家族へのメッセージ
あなたは、一人で頑張りすぎなくて大丈夫です。あなたが休息することは、ご本人への最高の支援の一つです。この社会には、あなたとご本人を支えるための制度と専門家がたくさんいます。どうか、その手を頼ってください。
まとめ
障害のある方を支えるご家族の負担を軽減し、共倒れを防ぐための鍵は、「レスパイト(休息)」の重要性を理解し、障害福祉サービスを戦略的に活用することにあります。
短期入所による計画的な休息の確保、居宅介護や重度訪問介護による家庭内での負担軽減、そして移動支援によるご家族の自由な時間の創出は、すべてご家族の健康とQOL向上に繋がります。
サービスを使いこなすためには、ご家族内の負担の見える化、そして相談支援専門員との信頼関係構築が不可欠です。あなたは一人ではありません。社会資源を最大限に活用し、誰もが笑顔でいられる持続可能な支援体制を築いていきましょう。
次のアクション
- 現在の介護負担度を紙に書き出し、どの部分をサービスで補いたいか明確にしましょう。
- 相談支援専門員または市区町村の障害福祉課に、「レスパイト目的の短期入所や訪問介護の利用」について相談の予約を入れましょう。
- 現在のサービス等利用計画に「家族の休息」が明確に位置づけられているか確認しましょう。

谷口 理恵
(たにぐち りえ)45歳📜 保有資格:
介護福祉士、ケアマネージャー、サービス管理責任者
介護福祉士として15年間現場で働き、現在はグループホームの管理者。「地域で自分らしく暮らす」を支えるために、住まい・生活・地域資源に関する情報発信を担当しています。実際の支援現場で感じた「これ知りたかった!」という情報をお届けします。
介護福祉士として障害者施設で10年、その後ケアマネージャーの資格を取得し、相談支援専門員として5年勤務。現在はグループホーム(定員10名)の管理者として、利用者の方々の日々の生活を支えています。この仕事を選んだきっかけは、大学時代のボランティアで知的障害のある方と出会ったこと。「普通」の定義は人それぞれで、大切なのは本人が望む生活を実現することだと気づかされました。特に力を入れているのは、地域との繋がりづくり。近所のスーパーや美容院、カフェなど、日常的に利用できる場所を増やすことで、「施設の中だけ」ではない豊かな生活を支援しています。記事では、グループホームでの実際の生活の様子や、地域の障害福祉サービス事業所の選び方など、現場の生の声をお伝えしていきます。
もっと詳しく▼
💭 福祉の道を選んだ理由
大学時代のボランティアで知的障害のある方と出会い、「普通」の定義は人それぞれだと気づいたことがきっかけです。
✨ 印象に残っている出来事
近所のスーパーや美容院など、日常的に利用できる場所を増やすことで、利用者の生活が豊かになったこと。
✍️ 記事を書く上で大切にしていること
現場の生の声を大切に、「これ知りたかった!」という情報を届けることを心がけています。
🎨 趣味・特技
料理、ガーデニング
🔍 最近気になっているテーマ
一人暮らし支援の新しい形、地域住民との共生





